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「あ、真人さん」
「由花さん…… 雫さんと光ちゃんも……. 楽しめてますかね……?」
「ふふ、楽しませてもらってます」
「はいっ! ご飯とっても美味しいですっ!」
真人はそれぞれ一家族ずつ挨拶に回っていくことにし、最初は由花の近くへとやってきた。
「先ほどの宣言、とても素晴らしかったですよ」
「そう言ってもらえて良かったです……!」
「まさかこの子がこんなに早く身を固めることになるなんてね…… ちょっと前までは男のおの字も知らなかったのに、ある日突然身だしなみとかに気を遣い始めて……」
「お姉ちゃん、綺麗になった!」
「ち、ちょっとお母さん…… 光も……」
「とてもいいことなんだからいいじゃない。 ……普段、私は仕事が忙しいものですから、あまりこの子達との時間を取れてなくて…… だから今回の事は本当に喜ばしいと思っています」
「ちなみに普段、お仕事はなにを……?」
「一応、俳優業をやらせてもらっています」
聞けば雫は本名名義で活動しているらしく、今日も本来は仕事だったらしいが、同じ現場のキャストのスケジュールが合わなくなり、今日の仕事は無くなったそうだ。
「わぁ…… 本物の雫さんだ……」
そう言っているのは那波で、とても憧れのこもった目線を向けていた。
「姉さん、ファンだったりするの……?」
「そりゃあもう! 雫さんはとってもマルチに活躍されててすごいんだぞ?」
「あら、嬉しいですね。 那波さんとお呼びしても?」
「は、はいっ、ぜひっ!」
「那波さんも、由花の事お願いします。 色々と迷惑をおかけするかもしれませんが」
「あ、いえ、由花はとってもいい子ですから大丈夫ですよ。 真人とも私達とも仲良くできてますから」
「それは良かったです。 ……あと、お願いなのですけど、由花に女らしさというか、ファッションとかメイクも教えてあげてください。 私も軽くは教えたのですが、女としてはまだまだですから」
「ふふ、分かりました。 でも由花は最近自分から色々とそういう女としての知識をつけようと動いてますよ」
「そうですよっ。 お母さんに言われなくても、ちゃんとしてますっ」
ちょっと拗ねたようにそういう由花はあまり見たことがなく、これが家族間での距離感なのだろう。
「お姉ちゃんは真人さんのどこが好きになったのー?」
「んぇっ!? き、急ですね、光……」
無邪気にそう発言したのは光で、初めて目の当たりにする男女の関係に興味津々なようだ。
見れば雫も興味があるらしく、期待のこもった目で由花の事を見ていた。
「その、真人さんといると本当に自然体になれるというか…… 一緒にいてとても心地よいところが1番好きです…… も、もちろんお顔とか性格もとっても好ましいと思ってますっ」
「あらあら、本当にベタ惚れね」
「お姉ちゃん、顔真っ赤っかだよー」
「い、言わないでくださいっ」
恥ずかしがる由花はとても可愛らしく、由花には悪いがその場にいた他の面子はそれを見てほっこりとさせてもらった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「音夢さん…… 沙奈江さんと隆さんも……」
「ん、ダーリン」
「おや、真人君」
「楽しんでもらえてますかね……?」
「えぇ、とっても楽しいですよ。 色んな方から色んなお話聞けてますので」
次にやってきたのは如月家のところだ。
「それにしても、仲もちゃんといいようで安心したよ」
いつも通り真人にギュッと抱きつく音夢を見て隆がそう言った。
「大丈夫ですか? いつもそんな感じで抱きついたりしてるようですけど、迷惑じゃないですか?」
「いえ、こういう音夢さんの積極的なところはとてもありがたいです……! 僕が割と消極的なので、釣り合いが取れているというか……」
「消極的というが、さっきの宣言はとっても素晴らしかったよ。 君はいい意味で男性らしく無いというか、常識では考えられないような事をするね?」
「音夢さん始め、僕の周りの女性陣は本当に積極的なので…… 僕もそれに応えたかったんです……!」
「ダーリン、さっきの言葉はとっても嬉しかった。 もう、好きとか愛してるとかそんな言葉じゃ言い表せないくらいダーリンのことを想ってる」
「音夢のそんな幸せそうな顔が見れて私達も嬉しいよ」
「おじいちゃん、おばあちゃん待ってて? そう遠くない未来にひ孫もできるから。 ね、ダーリン♡」
「そ、そうだねっ…… いずれは……!」
「3人は欲しい♡」
そう言う音夢の表情は幸せそうなものの中に、真人の事を誘うような表情も少し混ざっていた。
「はっはっは。 まぁ、孫はまだ少し先だろうから、まずは学校生活を楽しんでな。 一生に一度きりなのだから沢山思い出を作ってくれ」
「はい……! ありがとうございます……!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あっ、まさくん!」
次にやってきたのは梓と桃のところだ。
「真人さん、改めて梓のことを受け入れてくださりありがとうございます」
「いえ、僕からしても、梓さんが僕と一緒にいてくれると決断してくれて本当にありがたいので……!」
「まさくんっ♡ 嬉しいよっ♡」
そう言いながら梓はガバチョッと真人に抱きついてきた。
「えへへぇ……♡」
「もう、この子ったらさっきからずっとこんな感じでニマニマしてて…… まぁ、あれだけ素敵な言葉をいただけたらこうなるのも分かりますが」
ゴロニャンと猫が甘えるかのように、梓は真人に頭を擦り付けてもくる。
「あ、それで真人さんに相談なのですが、先ほどのお言葉を少し仕事の参考にさせていただきたいんですけど、いいですか?」
「仕事って……?」
「一応、私は作詞や作曲を生業としてまして。 先程の真人さんの言葉はとてもインスピレーションが掻き立てられたので、ぜひ参考にしたいんですよ。 もちろん、言葉そのまま使うわけでもありませんので、あくまでも参考程度と思ってもらって大丈夫です」
「なるほど…… 僕は全然大丈夫ですよ……! お力になれたのなら嬉しいです……!」
「ママ! その曲、私が歌うから! 絶対!」
「まだ完成するかも決まってないわよ」
「いーや、ママならきっといい曲にしてくれるもん! 私の1stシングルもとっても良かったし!」
「梓さんの曲を桃さんが書いてるんですか……?」
「梓が歌手になると決めるまでは、作家事務所に所属してたんですが、今は独立して梓だけのために歌を作っています。 編曲家や演奏家も数名の小さな事務所ですけどね」
「すごいですね……!」
「聞けば真人さんもお歌が中々お上手だとか? 良ければ梓とのデュエット曲でも作りますか?」
「え、いや、僕なんてそんな……」
「それすごいやりたいっ! ねぇっ、まさくんやろうよっ!」
「う、うーん……」
「こら、梓? 強要はしちゃダメよ? 半分冗談みたいなものなんだから」
「えーっ…… でもそっか、ごめんね、まさくん?」
「いや、大丈夫…… その、梓さんがやりたいなら前向きに検討するよ……!」
「えっ、ほんとっ!?」
「桃さんの前で今度歌を歌ってみたりしてから判断してもらうことになるだろうけど…… 下手なものを作るわけにもいかないだろうし……」
「本当にお優しいですね、真人さんは。 こんな感じで我が強い娘ですけど、大丈夫でしょうかね?」
「さっきも言いましたけど、僕はそういう梓さんの真っ直ぐしたところが好きなので…… 僕もできれば応えられるようにしたいんです……!」
「そうですか。 梓、真人さんが優しいからってお願いばかりしちゃダメよ?」
「わ、分かってるもん! それに、私だってまさくんがしたい事とかあったらそれを叶えてあげたいし!」
「ありがとう、梓さん……!」
「ふふ、なんだかんだお似合いかもしれませんね」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おっ、真人君! いやー、かっこよかったよ、さっきの!」
「明里さん…… ありがとうございます……!」
「女からしたらあんなこと言ってもらえるなんて夢みたいなもんだからね。 全く、美晴は運がいいね?」
「それはそうっすね…… 真人っちと出会えたのはマジで運が良かったっす! もう一生分の運使い切っちゃったかもしんないっすね」
「そうかもね。 そうだ、花? なんか聞きたいことがあるんだろ?」
「あ、うんっ…… えっと、真人お兄ちゃんって呼んでもいい?」
「うん、大丈夫だよ……! 僕も花ちゃんって呼ぶね……?」
「ありがとっ。 その、なんで真人お兄ちゃんはあんな人前で堂々としてられるの……?」
「僕、堂々としてたかな……?」
「してたっすよ? とってもカッコよかったっす♡」
「えっと、僕もそんなに普段は堂々としてないよ……? でも、やる時はやらなきゃいけない時もあるから……」
「花、学校行ってるけど、みんなと上手く話せなくて…… まだ友達いないの……」
「そうなんだ…… 花ちゃんはその、お友達は欲しいって思ってる……?」
「う、うん…… みんな一緒に遊んでるの羨ましい……」
「それなら勇気を出して一度話しかけてみるしかないかな…… 隣の席の子とかに本当に些細なことでもいいから頑張って一度声をかけてみな……? どう、できそうかな……?」
「う、うんっ。 頑張るっ」
「頑張って……! あ、じゃあ花ちゃん、いきなりだけど、僕とお友達になってくれないかな……?」
「えっ?」
「嫌かな……?」
「う、ううんっ! お兄ちゃんと友達嬉しい!」
「良かった……! どうかな、お友達になるのってこれだけでいいんだよ……? この一言を花ちゃんがちょっと頑張って言えば、友達はきっとできるから……! 簡単そうでしょ……?」
「うんっ、花にもできそうっ!」
「じゃあまた今度、お友達できたか聞かせてね……? もし、上手くいかなかったらまた一緒にお友達作る方法考えよう……?」
「うんっ!」
花は少し自信がついたようで、とても良い笑顔を見せてくれた。
真人はつい、そんな花の頭を撫でてしまう。
「あっ……」
「あ、ごめんつい……」
「ううん、嬉しいっ! もっと撫でて?」
その後も真人は1分ほど花の頭を撫で続け、今度会う時に友達ができていたらご褒美にまた撫でてあげるという約束をした。
「ははっ、ありがとね真人君。 美晴だけじゃなく花にも気を遣ってくれて!」
「花ちゃんは義妹になるわけですし、これくらいで良いのなら喜んでしますよ……!」
なんだかんだ花にも気に入られた真人は、有意義な時間を過ごすことができた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
食事を始めて2時間近く経ち、あれだけあった料理もほとんどが食べ尽くされ、時間も中々遅くなってきたのでそろそろ解散することになった。
「花ちゃんバイバイ!」
「光お姉ちゃんもバイバイっ」
花と光の妹コンビもどうやら仲良くなったらしく、2人でブンブン腕を振りながらお別れの挨拶をしていた。
梓達4人も今日は全員自分の家に帰るらしく、そこで改めて家族と話すことを話し、また明日からは真人の家で過ごすそうだ。
「皆さん、今日はありがとうございました……! もし何かありましたら気軽に連絡取ってもらって大丈夫ですので、今後もよろしくお願いします……!」
最後まで真人が丁寧に振る舞ったことで、保護者達も安心して娘達を任せられると改めて思いながら帰路についていった。
「いやー、急だったけど上手くいってよかったわねっ。 お疲れ様、まーくんっ!」
「すごく緊張したよ……」
「ふふ、とっても素晴らしい振る舞いだったぞ。 流石は真人だな」
残ったメンツでお皿やテーブルの後片付けをしていく。
その後はそのままの流れで、みんな一緒にお風呂に入ることになった。
「今日頑張った真人君はもう何もしなくて良いわよ♡」
「後は私達にお任せください♡」
「あ、じゃあこれ使いましょう~♡」
「いいですね♡」
李梨花とエマが持ってきたのは、大きなエアーマットで、真人はそこに仰向けで寝かされた。
恋人達はそんな真人を体中マッサージしながら洗っていく。
「みんな、気持ちいいよ……!」
たっぷりと時間をかけて極楽なマッサージを受けた後は、みんなで湯船に浸かり体を温めていく。
真人の周りには、両足に愛莉と美香が乗って前からしなだれかかり、腕には真那と那波が抱きつき、李梨花とエマは真人の背中にピトリとくっついていた。
「なんか、みんな今日はいつも以上にくっついてくるね……?」
「だって、まーくんがさっきとっても嬉しいこと言ってたから♡」
「ご主人様のお言葉、とっても心に沁みました♡」
「ならよかったです……!」
「ねぇねぇ、真人君? 婚約した訳だし、そろそろ私達にもタメ口で話して欲しいわ♡」
「確かに~♡」
「敬語だとちょっと真人様と距離感ある感じがしちゃいますもんね♡」
「えっと、みんながそれで良ければ……!」
「はい、じゃあ一回呼んでみて♡?」
「み、美香……?」
「えぇっ♡」
「愛莉……」
「はいっ♡」
「李梨花……」
「はい~♡」
「エマ……」
「は、はい……♡」
「えっと、これからもよろしく……! 愛してるよ……!」
「「「「こちらこそっ♡」」」」
4人は更に嬉しそうな表情で、真人に抱きついてる腕の力を強めていった。
「4人の親御さんにも挨拶しないとね……」
「まぁ、それはまたその内計画すればいいんじゃないか♡?」
他愛もない話をしつつ、真人と恋人達はスキンシップを楽しみながらお風呂を楽しんでいった。
「まーくん、この後はみんなで一緒に寝ようね♡」
「うん、わかった……!」
ただ、もう少し夜は続くようだ。
「由花さん…… 雫さんと光ちゃんも……. 楽しめてますかね……?」
「ふふ、楽しませてもらってます」
「はいっ! ご飯とっても美味しいですっ!」
真人はそれぞれ一家族ずつ挨拶に回っていくことにし、最初は由花の近くへとやってきた。
「先ほどの宣言、とても素晴らしかったですよ」
「そう言ってもらえて良かったです……!」
「まさかこの子がこんなに早く身を固めることになるなんてね…… ちょっと前までは男のおの字も知らなかったのに、ある日突然身だしなみとかに気を遣い始めて……」
「お姉ちゃん、綺麗になった!」
「ち、ちょっとお母さん…… 光も……」
「とてもいいことなんだからいいじゃない。 ……普段、私は仕事が忙しいものですから、あまりこの子達との時間を取れてなくて…… だから今回の事は本当に喜ばしいと思っています」
「ちなみに普段、お仕事はなにを……?」
「一応、俳優業をやらせてもらっています」
聞けば雫は本名名義で活動しているらしく、今日も本来は仕事だったらしいが、同じ現場のキャストのスケジュールが合わなくなり、今日の仕事は無くなったそうだ。
「わぁ…… 本物の雫さんだ……」
そう言っているのは那波で、とても憧れのこもった目線を向けていた。
「姉さん、ファンだったりするの……?」
「そりゃあもう! 雫さんはとってもマルチに活躍されててすごいんだぞ?」
「あら、嬉しいですね。 那波さんとお呼びしても?」
「は、はいっ、ぜひっ!」
「那波さんも、由花の事お願いします。 色々と迷惑をおかけするかもしれませんが」
「あ、いえ、由花はとってもいい子ですから大丈夫ですよ。 真人とも私達とも仲良くできてますから」
「それは良かったです。 ……あと、お願いなのですけど、由花に女らしさというか、ファッションとかメイクも教えてあげてください。 私も軽くは教えたのですが、女としてはまだまだですから」
「ふふ、分かりました。 でも由花は最近自分から色々とそういう女としての知識をつけようと動いてますよ」
「そうですよっ。 お母さんに言われなくても、ちゃんとしてますっ」
ちょっと拗ねたようにそういう由花はあまり見たことがなく、これが家族間での距離感なのだろう。
「お姉ちゃんは真人さんのどこが好きになったのー?」
「んぇっ!? き、急ですね、光……」
無邪気にそう発言したのは光で、初めて目の当たりにする男女の関係に興味津々なようだ。
見れば雫も興味があるらしく、期待のこもった目で由花の事を見ていた。
「その、真人さんといると本当に自然体になれるというか…… 一緒にいてとても心地よいところが1番好きです…… も、もちろんお顔とか性格もとっても好ましいと思ってますっ」
「あらあら、本当にベタ惚れね」
「お姉ちゃん、顔真っ赤っかだよー」
「い、言わないでくださいっ」
恥ずかしがる由花はとても可愛らしく、由花には悪いがその場にいた他の面子はそれを見てほっこりとさせてもらった。
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「音夢さん…… 沙奈江さんと隆さんも……」
「ん、ダーリン」
「おや、真人君」
「楽しんでもらえてますかね……?」
「えぇ、とっても楽しいですよ。 色んな方から色んなお話聞けてますので」
次にやってきたのは如月家のところだ。
「それにしても、仲もちゃんといいようで安心したよ」
いつも通り真人にギュッと抱きつく音夢を見て隆がそう言った。
「大丈夫ですか? いつもそんな感じで抱きついたりしてるようですけど、迷惑じゃないですか?」
「いえ、こういう音夢さんの積極的なところはとてもありがたいです……! 僕が割と消極的なので、釣り合いが取れているというか……」
「消極的というが、さっきの宣言はとっても素晴らしかったよ。 君はいい意味で男性らしく無いというか、常識では考えられないような事をするね?」
「音夢さん始め、僕の周りの女性陣は本当に積極的なので…… 僕もそれに応えたかったんです……!」
「ダーリン、さっきの言葉はとっても嬉しかった。 もう、好きとか愛してるとかそんな言葉じゃ言い表せないくらいダーリンのことを想ってる」
「音夢のそんな幸せそうな顔が見れて私達も嬉しいよ」
「おじいちゃん、おばあちゃん待ってて? そう遠くない未来にひ孫もできるから。 ね、ダーリン♡」
「そ、そうだねっ…… いずれは……!」
「3人は欲しい♡」
そう言う音夢の表情は幸せそうなものの中に、真人の事を誘うような表情も少し混ざっていた。
「はっはっは。 まぁ、孫はまだ少し先だろうから、まずは学校生活を楽しんでな。 一生に一度きりなのだから沢山思い出を作ってくれ」
「はい……! ありがとうございます……!」
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「あっ、まさくん!」
次にやってきたのは梓と桃のところだ。
「真人さん、改めて梓のことを受け入れてくださりありがとうございます」
「いえ、僕からしても、梓さんが僕と一緒にいてくれると決断してくれて本当にありがたいので……!」
「まさくんっ♡ 嬉しいよっ♡」
そう言いながら梓はガバチョッと真人に抱きついてきた。
「えへへぇ……♡」
「もう、この子ったらさっきからずっとこんな感じでニマニマしてて…… まぁ、あれだけ素敵な言葉をいただけたらこうなるのも分かりますが」
ゴロニャンと猫が甘えるかのように、梓は真人に頭を擦り付けてもくる。
「あ、それで真人さんに相談なのですが、先ほどのお言葉を少し仕事の参考にさせていただきたいんですけど、いいですか?」
「仕事って……?」
「一応、私は作詞や作曲を生業としてまして。 先程の真人さんの言葉はとてもインスピレーションが掻き立てられたので、ぜひ参考にしたいんですよ。 もちろん、言葉そのまま使うわけでもありませんので、あくまでも参考程度と思ってもらって大丈夫です」
「なるほど…… 僕は全然大丈夫ですよ……! お力になれたのなら嬉しいです……!」
「ママ! その曲、私が歌うから! 絶対!」
「まだ完成するかも決まってないわよ」
「いーや、ママならきっといい曲にしてくれるもん! 私の1stシングルもとっても良かったし!」
「梓さんの曲を桃さんが書いてるんですか……?」
「梓が歌手になると決めるまでは、作家事務所に所属してたんですが、今は独立して梓だけのために歌を作っています。 編曲家や演奏家も数名の小さな事務所ですけどね」
「すごいですね……!」
「聞けば真人さんもお歌が中々お上手だとか? 良ければ梓とのデュエット曲でも作りますか?」
「え、いや、僕なんてそんな……」
「それすごいやりたいっ! ねぇっ、まさくんやろうよっ!」
「う、うーん……」
「こら、梓? 強要はしちゃダメよ? 半分冗談みたいなものなんだから」
「えーっ…… でもそっか、ごめんね、まさくん?」
「いや、大丈夫…… その、梓さんがやりたいなら前向きに検討するよ……!」
「えっ、ほんとっ!?」
「桃さんの前で今度歌を歌ってみたりしてから判断してもらうことになるだろうけど…… 下手なものを作るわけにもいかないだろうし……」
「本当にお優しいですね、真人さんは。 こんな感じで我が強い娘ですけど、大丈夫でしょうかね?」
「さっきも言いましたけど、僕はそういう梓さんの真っ直ぐしたところが好きなので…… 僕もできれば応えられるようにしたいんです……!」
「そうですか。 梓、真人さんが優しいからってお願いばかりしちゃダメよ?」
「わ、分かってるもん! それに、私だってまさくんがしたい事とかあったらそれを叶えてあげたいし!」
「ありがとう、梓さん……!」
「ふふ、なんだかんだお似合いかもしれませんね」
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「おっ、真人君! いやー、かっこよかったよ、さっきの!」
「明里さん…… ありがとうございます……!」
「女からしたらあんなこと言ってもらえるなんて夢みたいなもんだからね。 全く、美晴は運がいいね?」
「それはそうっすね…… 真人っちと出会えたのはマジで運が良かったっす! もう一生分の運使い切っちゃったかもしんないっすね」
「そうかもね。 そうだ、花? なんか聞きたいことがあるんだろ?」
「あ、うんっ…… えっと、真人お兄ちゃんって呼んでもいい?」
「うん、大丈夫だよ……! 僕も花ちゃんって呼ぶね……?」
「ありがとっ。 その、なんで真人お兄ちゃんはあんな人前で堂々としてられるの……?」
「僕、堂々としてたかな……?」
「してたっすよ? とってもカッコよかったっす♡」
「えっと、僕もそんなに普段は堂々としてないよ……? でも、やる時はやらなきゃいけない時もあるから……」
「花、学校行ってるけど、みんなと上手く話せなくて…… まだ友達いないの……」
「そうなんだ…… 花ちゃんはその、お友達は欲しいって思ってる……?」
「う、うん…… みんな一緒に遊んでるの羨ましい……」
「それなら勇気を出して一度話しかけてみるしかないかな…… 隣の席の子とかに本当に些細なことでもいいから頑張って一度声をかけてみな……? どう、できそうかな……?」
「う、うんっ。 頑張るっ」
「頑張って……! あ、じゃあ花ちゃん、いきなりだけど、僕とお友達になってくれないかな……?」
「えっ?」
「嫌かな……?」
「う、ううんっ! お兄ちゃんと友達嬉しい!」
「良かった……! どうかな、お友達になるのってこれだけでいいんだよ……? この一言を花ちゃんがちょっと頑張って言えば、友達はきっとできるから……! 簡単そうでしょ……?」
「うんっ、花にもできそうっ!」
「じゃあまた今度、お友達できたか聞かせてね……? もし、上手くいかなかったらまた一緒にお友達作る方法考えよう……?」
「うんっ!」
花は少し自信がついたようで、とても良い笑顔を見せてくれた。
真人はつい、そんな花の頭を撫でてしまう。
「あっ……」
「あ、ごめんつい……」
「ううん、嬉しいっ! もっと撫でて?」
その後も真人は1分ほど花の頭を撫で続け、今度会う時に友達ができていたらご褒美にまた撫でてあげるという約束をした。
「ははっ、ありがとね真人君。 美晴だけじゃなく花にも気を遣ってくれて!」
「花ちゃんは義妹になるわけですし、これくらいで良いのなら喜んでしますよ……!」
なんだかんだ花にも気に入られた真人は、有意義な時間を過ごすことができた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
食事を始めて2時間近く経ち、あれだけあった料理もほとんどが食べ尽くされ、時間も中々遅くなってきたのでそろそろ解散することになった。
「花ちゃんバイバイ!」
「光お姉ちゃんもバイバイっ」
花と光の妹コンビもどうやら仲良くなったらしく、2人でブンブン腕を振りながらお別れの挨拶をしていた。
梓達4人も今日は全員自分の家に帰るらしく、そこで改めて家族と話すことを話し、また明日からは真人の家で過ごすそうだ。
「皆さん、今日はありがとうございました……! もし何かありましたら気軽に連絡取ってもらって大丈夫ですので、今後もよろしくお願いします……!」
最後まで真人が丁寧に振る舞ったことで、保護者達も安心して娘達を任せられると改めて思いながら帰路についていった。
「いやー、急だったけど上手くいってよかったわねっ。 お疲れ様、まーくんっ!」
「すごく緊張したよ……」
「ふふ、とっても素晴らしい振る舞いだったぞ。 流石は真人だな」
残ったメンツでお皿やテーブルの後片付けをしていく。
その後はそのままの流れで、みんな一緒にお風呂に入ることになった。
「今日頑張った真人君はもう何もしなくて良いわよ♡」
「後は私達にお任せください♡」
「あ、じゃあこれ使いましょう~♡」
「いいですね♡」
李梨花とエマが持ってきたのは、大きなエアーマットで、真人はそこに仰向けで寝かされた。
恋人達はそんな真人を体中マッサージしながら洗っていく。
「みんな、気持ちいいよ……!」
たっぷりと時間をかけて極楽なマッサージを受けた後は、みんなで湯船に浸かり体を温めていく。
真人の周りには、両足に愛莉と美香が乗って前からしなだれかかり、腕には真那と那波が抱きつき、李梨花とエマは真人の背中にピトリとくっついていた。
「なんか、みんな今日はいつも以上にくっついてくるね……?」
「だって、まーくんがさっきとっても嬉しいこと言ってたから♡」
「ご主人様のお言葉、とっても心に沁みました♡」
「ならよかったです……!」
「ねぇねぇ、真人君? 婚約した訳だし、そろそろ私達にもタメ口で話して欲しいわ♡」
「確かに~♡」
「敬語だとちょっと真人様と距離感ある感じがしちゃいますもんね♡」
「えっと、みんながそれで良ければ……!」
「はい、じゃあ一回呼んでみて♡?」
「み、美香……?」
「えぇっ♡」
「愛莉……」
「はいっ♡」
「李梨花……」
「はい~♡」
「エマ……」
「は、はい……♡」
「えっと、これからもよろしく……! 愛してるよ……!」
「「「「こちらこそっ♡」」」」
4人は更に嬉しそうな表情で、真人に抱きついてる腕の力を強めていった。
「4人の親御さんにも挨拶しないとね……」
「まぁ、それはまたその内計画すればいいんじゃないか♡?」
他愛もない話をしつつ、真人と恋人達はスキンシップを楽しみながらお風呂を楽しんでいった。
「まーくん、この後はみんなで一緒に寝ようね♡」
「うん、わかった……!」
ただ、もう少し夜は続くようだ。
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