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#25 学校での一幕 梓&由花
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今日は5日ぶりの登校。
今は梓以外が授業に出ているので、梓と2人きりの時間になっている。
「うーん、なにしよっか?」
「梓さんは、したいことある……?」
「私は真人君とお話しできるだけでも結構楽しいからなー。 とりあえず、多目的室行かない? ずっと立ってるのもアレだし!」
「うん、いいよ……」
この学校では空き教室は多目的室として扱い、そこでは座って何か食べたりなどもしてOKなのだ。
「着いたけど、誰もいないね……?」
「まぁ、一年生の中で必須授業以外で学校に来てるの真人君くらいだしね!」
2人はとりあえず、椅子に座って時間を潰すことにした。
それと、ちょっと前に5人で集まった時に、真人が敬語なのに違和感を感じた面々がタメ口でいいと言ってきたので、少し真人からの言葉が砕けたものになっていたりもしている。
「真人君は私に聞きたいこととかある?」
「梓さんに……? うーん、あ、梓さんって歌手活動? してるって聞いたけど、どんな感じなの……?」
「えっとねー、私は基本歌がメインで活動してるよ! 今度、歌番組にも出させてもらうんだ~♪」
「すごいね…… 放送日とか決まったら教えて欲しいな……」
「真人君、聞いてくれるのっ!? それは頑張らないとだなー。 あ、そうだっ」
梓はおもむろに椅子から立ち上がると、少し広めのスペースの真ん中に立った。
「今度ね、新曲のMV撮影で少しだけ踊るパートがあるんだけど、見てもらってもいい?」
「え、いいの……?」
「うんっ! 男の子の意見なんてかなり貴重だからね! なにか思ったことあったら教えてほしいな!」
早速、梓はメロディーを口ずさみながら踊り始めた。
上履きということもあって、おそらく本気で踊ってはいないのだろうが、それでも梓のダンスはとても上手く、口ずさんでるメロディーもとても綺麗なものだった。
(なんか、一気にオーラが増したというか…… 流石、プロの人は違うな……)
1分ほどの長さの可愛い振り付けのダンスを見せてくれた梓は、軽やかな足取りで真人のそばまでやってきた。
「どうだった? 今の感じで撮るんだけど」
「凄い、上手かったよ…… 僕は素人だからあんまり言葉にできないけど、歌は上手いし踊りは可愛かったと思う……」
「えへへ…… そこまで言われると照れちゃうなっ。 ありがとう!」
「こちらこそ……」
梓は席に戻り、持っていた冷たい水を少し飲んだ。
「ふうっ、やっぱり本業じゃないからちょっと疲れちゃうよね」
「練習とか、どうしてるの……?」
「一応、事務所でダンスのレッスンとかは少しだけ受けてるよ? まぁ、最低限だけどねっ」
「それで、あんなに踊れるんだね……」
「いやー、でも世の中にはもっと凄い人達もいるからねー。 もう少し私もダンスの練習増やそうかなー」
「頑張るね…… すごいや……」
「でもねー、私はやっぱり歌を頑張りたいんだよなー。 歌は正直、誰にも負けないって言えるくらい自信あるんだ!」
「もう、デビューはしてるんだったよね……?」
「そう! 動画投稿サイトで歌を歌ってたらそれがすごいバズったの! ……えっと、コレだね! あっ、ちょっと見ない間にまた再生数増えてる!」
梓が携帯で見せてくれたのはAzuという名義のチャンネルで、ほとんどが生放送で歌っている動画だったが、どれも再生数が数十万を超えていて、中には100万再生に届きそうなものまであった。
「凄すぎない……? 梓さん……?」
「ふっふっふっ、見直したかね?」
「元々凄いのかなとは思ってたけど…… こんなに凄いとは思ってなかった……」
「おう…… そんなに褒められるとは……!」
「帰ったら見てみるね……」
「うんっ、感想聞かせてね! そういえば、真人君なんか雰囲気変わったね?」
「え、そう……?」
「なんか大人びたっていうかなんというか? うーん、言葉で表すの難しいな」
真人の中では色々と心当たりはあったが、ここは黙っておく事にした。
「真人君はやっぱり、女の人に対して普通に接してるよね? 普段そういう機会があったりするの?」
「家に女の人はいるから、あると言えばあるんじゃないかな……?」
「お母さんとか?」
「うん、あと姉さんとか、他にも何人か……」
「えっ、何人もいるの? どういうこと? みんな家族なの?」
「いや、家族は母さんと姉さんだけかな……」
「じゃあ、他の人は?」
「護衛官の人とか、専属の医師と看護婦の人と、あとハウスキーパーさんだね……」
「えぇ? みんな同じ家に住んでるの?」
「うん…… おかしいかな……?」
「うーん、護衛官はともかく医師さんとかも一緒ってなると…… というか、大半の男の人はあんまり身の回りに女性を置きたがらないと思うよ?」
「そうなんだ……」
「しかも、そんなに大人数が住める家なんだね?」
「あー…… そうだね、結構広いね……」
「すごいなぁ…… ねぇっ、今度遊びに行ってみたいって言ったらだめかな?」
「僕は、いいんだけど…… 他の人達にも聞かないとなんとも……」
「そっかぁー、良ければ聞いてみてくれると嬉しいなっ!」
「うん、それはちゃんと聞くよ……」
「最初は班員みんなで行くのがいいよね。 真人君のお母さんとかにも挨拶したいし!」
「分かった、聞いておくね……」
「ありがとー!」
その後も真人と梓は、時間が来るまで他愛もない会話をずっとしていた。
ちなみに、帰って家に住む女性達に聞いたところ、班員の子達が遊びに来ることは大歓迎だそうだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「すみません、お待たせしました」
「ううん、大丈夫……」
人が変わって今度は由花と2人きりの時間となった。
なにやら前の授業が少し長引いたらしく、5分ほど集合するのが遅れていた。
「その、申し訳ないんですけど、少し図書館の方に行ってもいいですか? 前の授業で気になるところがあって少し調べたいんです」
「もちろんです……」
「ありがとうございます」
というわけでやってきた図書館は、校舎とは別の二階建ての建物が丸ごと図書館になっており、入り口から見ただけでもかなりの量の本があることが分かった。
「勉強用の個室がありますから、そこに本を探しながら行きましょう?」
「分かりました……」
由花に付いていき、図書館を進んでゆく。
軽くみただけでも本当に大量の本があり、ラノベのようなものから分厚い辞書のような参考書まで色々な種類があった。
由花はその中から目当ての本を1冊抜き取り、個室がある方へと向かっていった。
そしてたどり着いた個室は、思ったより広く、大きな机に椅子が2つ置いてあった。
「それじゃあ、先にちょっと調べ物をさせてください。 お暇だったら、本とかを見に行っても大丈夫ですよ」
「いや、折角だし一緒にいるよ……」
「そうですか」
由花は鞄からノートを取り出すと、参考書を広げて色々とノートに書き込みを始めた。
その横顔から見える表情はとても真剣で、真人にはなんだか凄く綺麗な姿に見えた。
(何事でも、一生懸命取り組んでる人の姿って、なんかいいよね……)
真人も少し気になったので、横から邪魔をしないようこっそり本に何が書かれているか見てみたのだが、冗談抜きでなにも内容が理解できなかった。
日本語で書いてあるはずなのに、言ってることのほとんどが理解することが出来なかったので、真人はその本を読むのを諦め、視線を外した。
それならばノートはどうなのかと、こちらもチラッと覗いてみると、なんとこちらは全部英語で書いてあった。
なのでそれに関しては、もはや読み取ることすらできなかった。
そんなこんなで、10分ほど由花は調べ物を続け、真人はその間、由花の横顔をぼけっと見つめていた。
「ふぅ、こんなものですかね」
「あ、早いね……? もういいの……?」
「はい。 調べたいと言ってもほぼ分かっていることだったので」
「由花さん、やっぱり凄いんだね……」
「えっ、なんですか急に?」
「本の内容とかチラッと見たけど、僕には何一つ分かんなかったし…… ノートは全部英語で書いてあるし……」
「そりゃまぁ、専門知識ですから。 ノートの方はついでですね。 知識って使わないとすぐ忘れてしまいますから」
「すごい、カッコいいね……」
「そ、そんな目で見られると流石に照れますね…… 私にとっては当たり前なんですけど……」
「それでも、自分ができないことをサラッとやれる人はすごいって思うな……」
「あ、ありがとうございます。 真人さんは、私になにか聞きたいこととかありますか?」
「うーん、あ…… 由花さんはなんで助産師を目指してるの……?」
「結構、単純な理由なんですけど…… 私には少し歳の離れた妹がいて、その妹がかなりの難産だったんです。
それでも、母に寄り添う助産師さんが、沢山励ましてくれたりしているのを手術室の扉越しにですけど聞いたり、後で母も凄く助かったと言っていたので、憧れを抱いたんです」
「なるほど、それでここまで勉強できるって凄いですね……」
「私が目指してるのは男の子の出産にも立ち会うことができる、助産師の中でもかなり上の方の階級ですからね。 これぐらいはできないと」
「頑張ってください……! その、僕には応援ぐらいしかできないですけど……」
「ふふ、十分です。 真人さんに応援されてると思えばもっと頑張れそうです」
「なら良かったです……」
「他には何かありますか?」
「あ、じゃあ…… 日本の結婚制度について教えてもらえませんか……?」
「全然いいですよ。 真人さんはどれくらいの知識は現状持っているんですか?」
「一夫多妻が認められてるってことくらいですね……」
「ふむふむ…… そうですね、一夫多妻は認められています。 が、実際には望んでその制度を使っている男性は半数もいませんね」
「そうなんですか……?」
「はい。 そもそも、男性にも一応義務はあって、20歳になるまでに婚約、結婚していない場合、国が選んだ女性複数名と強制的に結婚、もしくは週に2回の精子提供が求められるようになります」
「へぇ……?」
「当然、男性は嫌がりますから、どうにかして1人と婚約をします。
そうすればひとまず安心ですね。
ただ、婚約しただけだとだめで、今度は24歳になるまでに子を成さなかった場合、同様の義務が発生します」
「なるほど……」
「まぁ、言ってしまえば1人と結婚して子を成せば一生義務は発生しないんです。
だから基本は一対一の夫婦となることが多いですね。
ただ、複数人の妻を娶ることにもメリットは沢山あります」
「例えば……?」
「夫婦生活に関する事に対して大幅にサポートが受けれます。
住居やもし結婚式をする場合などは流石に無料とまではいきませんが、かなり相場より割引をしてもらえます。
それに、複数人と子を成した場合、助成金の額がかなり増えます。
養育費に関してはそれでほぼ賄えるくらいの額はもらえますね。
その他にも細かいサポートが色々とありますから、ちゃんとメリットはあるんです」
「ちなみに、女性側って自分の他にも妻がいることってどう思いますか……?」
「個人差はあると思いますが、私含めて大体の女性は非常に好ましい事だと思うと思いますよ。
やはり、1人だと大変なことも多いですから。
周りに同じ立場の人がいれば協力もできますしね」
「なるほど、分かりました…… ありがとうございます、丁寧に教えてくれて……」
「いえいえ、こんな事でよかったらいつでも聞いてください」
2人はその後も色々な事を話し合い、有意義な時間を過ごした。
今は梓以外が授業に出ているので、梓と2人きりの時間になっている。
「うーん、なにしよっか?」
「梓さんは、したいことある……?」
「私は真人君とお話しできるだけでも結構楽しいからなー。 とりあえず、多目的室行かない? ずっと立ってるのもアレだし!」
「うん、いいよ……」
この学校では空き教室は多目的室として扱い、そこでは座って何か食べたりなどもしてOKなのだ。
「着いたけど、誰もいないね……?」
「まぁ、一年生の中で必須授業以外で学校に来てるの真人君くらいだしね!」
2人はとりあえず、椅子に座って時間を潰すことにした。
それと、ちょっと前に5人で集まった時に、真人が敬語なのに違和感を感じた面々がタメ口でいいと言ってきたので、少し真人からの言葉が砕けたものになっていたりもしている。
「真人君は私に聞きたいこととかある?」
「梓さんに……? うーん、あ、梓さんって歌手活動? してるって聞いたけど、どんな感じなの……?」
「えっとねー、私は基本歌がメインで活動してるよ! 今度、歌番組にも出させてもらうんだ~♪」
「すごいね…… 放送日とか決まったら教えて欲しいな……」
「真人君、聞いてくれるのっ!? それは頑張らないとだなー。 あ、そうだっ」
梓はおもむろに椅子から立ち上がると、少し広めのスペースの真ん中に立った。
「今度ね、新曲のMV撮影で少しだけ踊るパートがあるんだけど、見てもらってもいい?」
「え、いいの……?」
「うんっ! 男の子の意見なんてかなり貴重だからね! なにか思ったことあったら教えてほしいな!」
早速、梓はメロディーを口ずさみながら踊り始めた。
上履きということもあって、おそらく本気で踊ってはいないのだろうが、それでも梓のダンスはとても上手く、口ずさんでるメロディーもとても綺麗なものだった。
(なんか、一気にオーラが増したというか…… 流石、プロの人は違うな……)
1分ほどの長さの可愛い振り付けのダンスを見せてくれた梓は、軽やかな足取りで真人のそばまでやってきた。
「どうだった? 今の感じで撮るんだけど」
「凄い、上手かったよ…… 僕は素人だからあんまり言葉にできないけど、歌は上手いし踊りは可愛かったと思う……」
「えへへ…… そこまで言われると照れちゃうなっ。 ありがとう!」
「こちらこそ……」
梓は席に戻り、持っていた冷たい水を少し飲んだ。
「ふうっ、やっぱり本業じゃないからちょっと疲れちゃうよね」
「練習とか、どうしてるの……?」
「一応、事務所でダンスのレッスンとかは少しだけ受けてるよ? まぁ、最低限だけどねっ」
「それで、あんなに踊れるんだね……」
「いやー、でも世の中にはもっと凄い人達もいるからねー。 もう少し私もダンスの練習増やそうかなー」
「頑張るね…… すごいや……」
「でもねー、私はやっぱり歌を頑張りたいんだよなー。 歌は正直、誰にも負けないって言えるくらい自信あるんだ!」
「もう、デビューはしてるんだったよね……?」
「そう! 動画投稿サイトで歌を歌ってたらそれがすごいバズったの! ……えっと、コレだね! あっ、ちょっと見ない間にまた再生数増えてる!」
梓が携帯で見せてくれたのはAzuという名義のチャンネルで、ほとんどが生放送で歌っている動画だったが、どれも再生数が数十万を超えていて、中には100万再生に届きそうなものまであった。
「凄すぎない……? 梓さん……?」
「ふっふっふっ、見直したかね?」
「元々凄いのかなとは思ってたけど…… こんなに凄いとは思ってなかった……」
「おう…… そんなに褒められるとは……!」
「帰ったら見てみるね……」
「うんっ、感想聞かせてね! そういえば、真人君なんか雰囲気変わったね?」
「え、そう……?」
「なんか大人びたっていうかなんというか? うーん、言葉で表すの難しいな」
真人の中では色々と心当たりはあったが、ここは黙っておく事にした。
「真人君はやっぱり、女の人に対して普通に接してるよね? 普段そういう機会があったりするの?」
「家に女の人はいるから、あると言えばあるんじゃないかな……?」
「お母さんとか?」
「うん、あと姉さんとか、他にも何人か……」
「えっ、何人もいるの? どういうこと? みんな家族なの?」
「いや、家族は母さんと姉さんだけかな……」
「じゃあ、他の人は?」
「護衛官の人とか、専属の医師と看護婦の人と、あとハウスキーパーさんだね……」
「えぇ? みんな同じ家に住んでるの?」
「うん…… おかしいかな……?」
「うーん、護衛官はともかく医師さんとかも一緒ってなると…… というか、大半の男の人はあんまり身の回りに女性を置きたがらないと思うよ?」
「そうなんだ……」
「しかも、そんなに大人数が住める家なんだね?」
「あー…… そうだね、結構広いね……」
「すごいなぁ…… ねぇっ、今度遊びに行ってみたいって言ったらだめかな?」
「僕は、いいんだけど…… 他の人達にも聞かないとなんとも……」
「そっかぁー、良ければ聞いてみてくれると嬉しいなっ!」
「うん、それはちゃんと聞くよ……」
「最初は班員みんなで行くのがいいよね。 真人君のお母さんとかにも挨拶したいし!」
「分かった、聞いておくね……」
「ありがとー!」
その後も真人と梓は、時間が来るまで他愛もない会話をずっとしていた。
ちなみに、帰って家に住む女性達に聞いたところ、班員の子達が遊びに来ることは大歓迎だそうだった。
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「すみません、お待たせしました」
「ううん、大丈夫……」
人が変わって今度は由花と2人きりの時間となった。
なにやら前の授業が少し長引いたらしく、5分ほど集合するのが遅れていた。
「その、申し訳ないんですけど、少し図書館の方に行ってもいいですか? 前の授業で気になるところがあって少し調べたいんです」
「もちろんです……」
「ありがとうございます」
というわけでやってきた図書館は、校舎とは別の二階建ての建物が丸ごと図書館になっており、入り口から見ただけでもかなりの量の本があることが分かった。
「勉強用の個室がありますから、そこに本を探しながら行きましょう?」
「分かりました……」
由花に付いていき、図書館を進んでゆく。
軽くみただけでも本当に大量の本があり、ラノベのようなものから分厚い辞書のような参考書まで色々な種類があった。
由花はその中から目当ての本を1冊抜き取り、個室がある方へと向かっていった。
そしてたどり着いた個室は、思ったより広く、大きな机に椅子が2つ置いてあった。
「それじゃあ、先にちょっと調べ物をさせてください。 お暇だったら、本とかを見に行っても大丈夫ですよ」
「いや、折角だし一緒にいるよ……」
「そうですか」
由花は鞄からノートを取り出すと、参考書を広げて色々とノートに書き込みを始めた。
その横顔から見える表情はとても真剣で、真人にはなんだか凄く綺麗な姿に見えた。
(何事でも、一生懸命取り組んでる人の姿って、なんかいいよね……)
真人も少し気になったので、横から邪魔をしないようこっそり本に何が書かれているか見てみたのだが、冗談抜きでなにも内容が理解できなかった。
日本語で書いてあるはずなのに、言ってることのほとんどが理解することが出来なかったので、真人はその本を読むのを諦め、視線を外した。
それならばノートはどうなのかと、こちらもチラッと覗いてみると、なんとこちらは全部英語で書いてあった。
なのでそれに関しては、もはや読み取ることすらできなかった。
そんなこんなで、10分ほど由花は調べ物を続け、真人はその間、由花の横顔をぼけっと見つめていた。
「ふぅ、こんなものですかね」
「あ、早いね……? もういいの……?」
「はい。 調べたいと言ってもほぼ分かっていることだったので」
「由花さん、やっぱり凄いんだね……」
「えっ、なんですか急に?」
「本の内容とかチラッと見たけど、僕には何一つ分かんなかったし…… ノートは全部英語で書いてあるし……」
「そりゃまぁ、専門知識ですから。 ノートの方はついでですね。 知識って使わないとすぐ忘れてしまいますから」
「すごい、カッコいいね……」
「そ、そんな目で見られると流石に照れますね…… 私にとっては当たり前なんですけど……」
「それでも、自分ができないことをサラッとやれる人はすごいって思うな……」
「あ、ありがとうございます。 真人さんは、私になにか聞きたいこととかありますか?」
「うーん、あ…… 由花さんはなんで助産師を目指してるの……?」
「結構、単純な理由なんですけど…… 私には少し歳の離れた妹がいて、その妹がかなりの難産だったんです。
それでも、母に寄り添う助産師さんが、沢山励ましてくれたりしているのを手術室の扉越しにですけど聞いたり、後で母も凄く助かったと言っていたので、憧れを抱いたんです」
「なるほど、それでここまで勉強できるって凄いですね……」
「私が目指してるのは男の子の出産にも立ち会うことができる、助産師の中でもかなり上の方の階級ですからね。 これぐらいはできないと」
「頑張ってください……! その、僕には応援ぐらいしかできないですけど……」
「ふふ、十分です。 真人さんに応援されてると思えばもっと頑張れそうです」
「なら良かったです……」
「他には何かありますか?」
「あ、じゃあ…… 日本の結婚制度について教えてもらえませんか……?」
「全然いいですよ。 真人さんはどれくらいの知識は現状持っているんですか?」
「一夫多妻が認められてるってことくらいですね……」
「ふむふむ…… そうですね、一夫多妻は認められています。 が、実際には望んでその制度を使っている男性は半数もいませんね」
「そうなんですか……?」
「はい。 そもそも、男性にも一応義務はあって、20歳になるまでに婚約、結婚していない場合、国が選んだ女性複数名と強制的に結婚、もしくは週に2回の精子提供が求められるようになります」
「へぇ……?」
「当然、男性は嫌がりますから、どうにかして1人と婚約をします。
そうすればひとまず安心ですね。
ただ、婚約しただけだとだめで、今度は24歳になるまでに子を成さなかった場合、同様の義務が発生します」
「なるほど……」
「まぁ、言ってしまえば1人と結婚して子を成せば一生義務は発生しないんです。
だから基本は一対一の夫婦となることが多いですね。
ただ、複数人の妻を娶ることにもメリットは沢山あります」
「例えば……?」
「夫婦生活に関する事に対して大幅にサポートが受けれます。
住居やもし結婚式をする場合などは流石に無料とまではいきませんが、かなり相場より割引をしてもらえます。
それに、複数人と子を成した場合、助成金の額がかなり増えます。
養育費に関してはそれでほぼ賄えるくらいの額はもらえますね。
その他にも細かいサポートが色々とありますから、ちゃんとメリットはあるんです」
「ちなみに、女性側って自分の他にも妻がいることってどう思いますか……?」
「個人差はあると思いますが、私含めて大体の女性は非常に好ましい事だと思うと思いますよ。
やはり、1人だと大変なことも多いですから。
周りに同じ立場の人がいれば協力もできますしね」
「なるほど、分かりました…… ありがとうございます、丁寧に教えてくれて……」
「いえいえ、こんな事でよかったらいつでも聞いてください」
2人はその後も色々な事を話し合い、有意義な時間を過ごした。
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