649 / 1,063
647.転売屋は旅立つ
しおりを挟む
「忘れ物はないな?」
「大丈夫よ。」
「引き出しの中も確認しておきました。仮に何かあった場合は送っていただきます。」
「便利じゃのぅ。」
「実家ですから。」
各自準備を整え王城のエントランスに集合。
主要な荷物は一足先にミラとアニエスさんが馬車に運び込む指示を出している。
ちなみにハーシェさんは先に乗車中だ。
忘れ物はない方がいい。
下手に残すと本来の物とは別の物が大量に送られてくる可能性がある。
自慢の息子、いや娘の初産だ。
それはもうテンション爆上がりしてるからあの人。
「で、昨夜は何を話していたの?」
「美味い酒を飲ませてもらっただけだ。」
「それだけじゃないでしょ?あんなことやこんな事、聞かせてもらったんじゃない?」
「まさかお父様がこっそりと旦那様を呼び出しているとは思いませんでした。アニエスも教えてくれたらよかったのに。」
「聞かせたくない事があったんだろう。まぁ、俺にはそれが何かは分からなかったけどな。」
「男同士の秘密という奴だ。」
「「「エドワード陛下!?」」」
執務の為に見送りはないと聞いていたのだが、わざわざ見送りに来てくれたらしい。
ま、それもそうか。
娘の見送り位はするよなぁ。
大臣らしき人が大量の書類を持って早く戻って来いというオーラを発しているにもかかわらず、何も気にせずそれぞれに話しかけている。
「シロウ、気をつけて帰るのだぞ。」
「聖騎士団の馬車を襲う不届き者がいない限り大丈夫でしょう、あとは天候次第です。」
「その心配はないよ。離れていても君達の周り位は晴らせるさ。」
「ガルの力があればそれぐらい容易いじゃろう。わざわざ見送りか?」
「そんな顔しないでおくれよディネストリファ。君の邪魔をする気はないからさ。」
陛下に続いて第二の古龍ガルグリンダム様まで登場だ。
初日以降姿を見せなかったが、何かあったんだろうか。
心なしか俺を見る目が優しくなっているような気がする。
「後200年大人しくしておれば復縁も考えてやろう。ただし、私とシロウの子に手を出さすなよ。」
「わかってるさ。という事だから、彼女をくれぐれもよろしく頼むよ。」
「いや、よろしく頼むってどういうことだ?」
「そういう事じゃ。ほれ、さっさと行くぞ。」
「皆様準備が出来ました。」
待ってましたと言わんばかりのタイミングでミラとアニエスさんが戻って来る。
色々と聞きたいことがあるのだが、まぁ馬車の中でいいだろう。
陛下と古龍、そして王城の人たちに見送られながら来た時同様豪華な馬車に乗り込む。
「遅かったな。」
「リングさんが送ってくれるのか。」
「せめて港までは王家の目がある方がいいだろう。家名を汚すようなことはしないと思うが念のためにな。それに友人を見送るのは当然だろう?」
「それはありがたい、よろしく頼む。」
馬車に乗り込むと先に乗車していたハーシェさんとリングさんが談笑していた。
ドンダーク家が何かしてこないとも限らないと、気を回してくれたんだろう。
それか陛下の指示かもしれない。
どちらにせよ心強い味方がいるのはありがたい事だ。
「出発します。」
運転手の掛け声で馬車がゆっくりと動き出す。
全部で10台の車列、行きと違うのはその前後に聖騎士団が加わっている事だ。
ホリアさんの指示なんだろうけど、ぶっちゃけ目立ちまくってるんだよなぁ。
車窓から外を覗けば町中の人が何事かとこちらを見ている。
堂々としていればいいんだろうがどうも気持ちが悪い。
「そうそう、大聖堂のジャンヌ大司教から託けだ。『この度は素敵な贈り物をありがとうございました。皆様の旅に幸多きことを』だとさ。それと妊娠中の三人と未来の妊婦全員にお守りと聖水を預かっている。」
「大司教直々の聖水とかどんな効果があるんだろうな。」
「絶対にベッキーに渡しちゃだめよ。」
「悪霊じゃないんだが・・・幽霊も一緒か。」
「可能性はありますね。」
「屋敷で大事に保管するしかないな。後は各自が肌身離さず持っていれば大丈夫だろう。」
「モニカ様に渡すのはどうでしょうか。」
「やめてやれ、大聖堂の大司教からと聞けば卒倒しかねない。」
テンパってしまい落とす可能性だってある。
会ったぐらいは言ってもいいだろうが、物とかは止めておこう。
しばらくして馬車がグンと速度を上げた。
城下を抜け街道に出たようだ。
流れるような景色を横目にしばし王都での日々を語り合う。
その日は行きと同様リングさんの別荘で一泊し、翌日の昼過ぎに港へと到着した。
「遅かったですわね。」
「あれ、イザベラなんでいるんだ?」
「何でとはなんです、主人を送るのは当然の事でしょう。後は魔石の確認と新しい取引先との契約についてお伝えするために来ただけです。」
「とか言いながら心配だから見送りに行きたいと言い出したのはイザベラなんだけどね。」
「ちょっとウィフ!」
「あはは、とりあえず荷物の積み込みはこっちで見ておくから少しゆっくりしたらどうだい?生憎と本命は到着していないけど、若きデザイナーは首を長くして待っているよ。」
「ん?」
馬車から降りた俺達を待っていたのはイザベラとウィフさんだった。
王都で見送りに来なかった理由はこれだったか。
それにしても若きデザイナーってのは。
「シロウ様、この度はありがとうございました。」
「あれ、マリアルさんなんでここに?」
「契約書をお持ちしました。」
「契約書って、別にイザベラに渡すだけで良かったんだぞ?」
「あれだけ気に入っていただいた上に定期購入までしていただけるんです、直接お会いしてお渡しするべきだとした二人に言われまして。」
その為にわざわざこんな遠くまで、大変だっただろう。
「まさか王都の裏通りにあんなに素晴らしい服屋が眠っているとは思いませんでしたわ。早速秋冬物を注文させて貰いましたの。」
「イザベラの目からしても間違いないか。」
「縫製の丁寧さ、デザインの良さ、細工仕事の精巧さどれをとっても申し分ありませんわ。シロウ様の注文がなければ全て買い占めてしまいたい所でしたが、それではこの服の良さが広がりませんもの。次の夏には表通りに店を出しているのではないかしら。」
「まさかさすがにそこまでは無理ですよ。」
「無理じゃありませんわ、大通りの店が見習うべき点は沢山あります。」
あのイザベラがべた褒めじゃないか。
余程気に入ったんだろうなぁ。
照れまくったマリアルさんから契約書を受け取り中身を確認する。
ふむふむ、毎月20~30着を毎月イザベラが買い上げてこっちに流すのか。
枚数にもよるが費用はおおよそ金貨3枚程度。
まぁ予想通りって感じだな。
「いいんじゃないか?最高の品を送ってくれれば問題ない。イザベラ、良い奴だけ先に抜くなよ?」
「そんなことしませんわ。ちゃんとオーダーメイドした物をウィフに買ってもらいます。」
「え、そうなの?」
「当り前ですわ。だって私奴隷ですもの、お金なんて持っていません。」
堂々と胸を張るイザベラを前にウィフさんと二人で苦笑いを浮かべる。
その後荷物の搬入作業を経て後は出発するだけ、という所まで来たのだが。
「来ないな。」
「いや、ちょうど来たようだ。」
本命が来ないなぁと思っていると、ウィフさんが港の入り口を指さした。
不釣り合いな豪華な馬車が猛スピードでこちらにむかってくる。
土煙を上げながら俺達の前で停車し、そして開いた扉からストーン氏がゆっくりと姿を現した。
「遅くなってしまい申し訳ない。」
「ちゃんと来てくれたんだ、問題ない。」
「当然だろう。魔石はもうすぐ到着するはずだ、先にこれを確認してくれ。」
くるくると丸まった上質な紙が真っ赤な蝋封で固定されている。
何とも絵になるなぁ。
「イザベラ中身の確認を頼む。」
「畏まりましたわ。」
「リング様もご一緒とは、随分と仲がよろしいのですね。」
「シロウは私と妻とのきっかけを作ってくれた男だからな、王家に入る前からの友人でもある。今日は見送りに来ただけだ。」
「そうですか。」
何故この人がここに?という目でストーン氏がリングさんを見る。
陛下と親密なだけでなくリングさんともなれば余計に悪い事は出来ない筈。
まぁ、そんな事はしないだろうという体で来ているわけだけども。
はてさて契約書の中身はどうなっているのかな。
「確認が終わりました、今回の納品は小型が千個中型が千五百個となっています。残りは三か月後、夏までに全数を揃えて納品されるそうです。よろしいですか?」
「三か月なら問題ない。残代金を支払おう、待っていてくれ。」
船の前で待機していたミラから金貨を受け取り、元の場所に戻る。
「ここで確認するか?」
「いや、王家の前で嘘はつくまい。陛下の顔に泥を塗るような男ではないと、私は思っている。」
「そりゃどうも。とはいえ、本当に足りないのであればそこのイザベラに請求してくれ。いや、後ろにいるウィフさんか。」
「どっちでもいいよ。」
「今後の窓口もイザベラが担当する、王都からの輸送も彼女を通して行うから品だけウィフさんの所に搬入してくれれば問題ない。よろしく頼む。」
「こちらこそ感謝しているよ。」
「感謝ねぇ・・・。」
「なにかな?」
意味ありげな顔で俺を見るストーンさんから目線をそらし、俺はリングさんを見る。
とりあえず魔石は手に入った。
後は野となれ山となれ、だ。
「なんでもない。今後ともよい取引を期待している。」
「こちらこそよろしく頼むよ。」
話は終わりだ。
そうこうしているうちに大量の馬車がこちらに向かって来るのが見えた。
アレが魔石を積んだ馬車なんだろう。
中身を確認して積み込めば本当にこの旅も終わり。
とはいえ、家に帰るまでが本当の旅。
さて、ドレイク船長に挨拶でもしてくるかな。
意味ありげな視線を背中に感じつつ、俺はゆっくりと船へと向かうのだった。
「大丈夫よ。」
「引き出しの中も確認しておきました。仮に何かあった場合は送っていただきます。」
「便利じゃのぅ。」
「実家ですから。」
各自準備を整え王城のエントランスに集合。
主要な荷物は一足先にミラとアニエスさんが馬車に運び込む指示を出している。
ちなみにハーシェさんは先に乗車中だ。
忘れ物はない方がいい。
下手に残すと本来の物とは別の物が大量に送られてくる可能性がある。
自慢の息子、いや娘の初産だ。
それはもうテンション爆上がりしてるからあの人。
「で、昨夜は何を話していたの?」
「美味い酒を飲ませてもらっただけだ。」
「それだけじゃないでしょ?あんなことやこんな事、聞かせてもらったんじゃない?」
「まさかお父様がこっそりと旦那様を呼び出しているとは思いませんでした。アニエスも教えてくれたらよかったのに。」
「聞かせたくない事があったんだろう。まぁ、俺にはそれが何かは分からなかったけどな。」
「男同士の秘密という奴だ。」
「「「エドワード陛下!?」」」
執務の為に見送りはないと聞いていたのだが、わざわざ見送りに来てくれたらしい。
ま、それもそうか。
娘の見送り位はするよなぁ。
大臣らしき人が大量の書類を持って早く戻って来いというオーラを発しているにもかかわらず、何も気にせずそれぞれに話しかけている。
「シロウ、気をつけて帰るのだぞ。」
「聖騎士団の馬車を襲う不届き者がいない限り大丈夫でしょう、あとは天候次第です。」
「その心配はないよ。離れていても君達の周り位は晴らせるさ。」
「ガルの力があればそれぐらい容易いじゃろう。わざわざ見送りか?」
「そんな顔しないでおくれよディネストリファ。君の邪魔をする気はないからさ。」
陛下に続いて第二の古龍ガルグリンダム様まで登場だ。
初日以降姿を見せなかったが、何かあったんだろうか。
心なしか俺を見る目が優しくなっているような気がする。
「後200年大人しくしておれば復縁も考えてやろう。ただし、私とシロウの子に手を出さすなよ。」
「わかってるさ。という事だから、彼女をくれぐれもよろしく頼むよ。」
「いや、よろしく頼むってどういうことだ?」
「そういう事じゃ。ほれ、さっさと行くぞ。」
「皆様準備が出来ました。」
待ってましたと言わんばかりのタイミングでミラとアニエスさんが戻って来る。
色々と聞きたいことがあるのだが、まぁ馬車の中でいいだろう。
陛下と古龍、そして王城の人たちに見送られながら来た時同様豪華な馬車に乗り込む。
「遅かったな。」
「リングさんが送ってくれるのか。」
「せめて港までは王家の目がある方がいいだろう。家名を汚すようなことはしないと思うが念のためにな。それに友人を見送るのは当然だろう?」
「それはありがたい、よろしく頼む。」
馬車に乗り込むと先に乗車していたハーシェさんとリングさんが談笑していた。
ドンダーク家が何かしてこないとも限らないと、気を回してくれたんだろう。
それか陛下の指示かもしれない。
どちらにせよ心強い味方がいるのはありがたい事だ。
「出発します。」
運転手の掛け声で馬車がゆっくりと動き出す。
全部で10台の車列、行きと違うのはその前後に聖騎士団が加わっている事だ。
ホリアさんの指示なんだろうけど、ぶっちゃけ目立ちまくってるんだよなぁ。
車窓から外を覗けば町中の人が何事かとこちらを見ている。
堂々としていればいいんだろうがどうも気持ちが悪い。
「そうそう、大聖堂のジャンヌ大司教から託けだ。『この度は素敵な贈り物をありがとうございました。皆様の旅に幸多きことを』だとさ。それと妊娠中の三人と未来の妊婦全員にお守りと聖水を預かっている。」
「大司教直々の聖水とかどんな効果があるんだろうな。」
「絶対にベッキーに渡しちゃだめよ。」
「悪霊じゃないんだが・・・幽霊も一緒か。」
「可能性はありますね。」
「屋敷で大事に保管するしかないな。後は各自が肌身離さず持っていれば大丈夫だろう。」
「モニカ様に渡すのはどうでしょうか。」
「やめてやれ、大聖堂の大司教からと聞けば卒倒しかねない。」
テンパってしまい落とす可能性だってある。
会ったぐらいは言ってもいいだろうが、物とかは止めておこう。
しばらくして馬車がグンと速度を上げた。
城下を抜け街道に出たようだ。
流れるような景色を横目にしばし王都での日々を語り合う。
その日は行きと同様リングさんの別荘で一泊し、翌日の昼過ぎに港へと到着した。
「遅かったですわね。」
「あれ、イザベラなんでいるんだ?」
「何でとはなんです、主人を送るのは当然の事でしょう。後は魔石の確認と新しい取引先との契約についてお伝えするために来ただけです。」
「とか言いながら心配だから見送りに行きたいと言い出したのはイザベラなんだけどね。」
「ちょっとウィフ!」
「あはは、とりあえず荷物の積み込みはこっちで見ておくから少しゆっくりしたらどうだい?生憎と本命は到着していないけど、若きデザイナーは首を長くして待っているよ。」
「ん?」
馬車から降りた俺達を待っていたのはイザベラとウィフさんだった。
王都で見送りに来なかった理由はこれだったか。
それにしても若きデザイナーってのは。
「シロウ様、この度はありがとうございました。」
「あれ、マリアルさんなんでここに?」
「契約書をお持ちしました。」
「契約書って、別にイザベラに渡すだけで良かったんだぞ?」
「あれだけ気に入っていただいた上に定期購入までしていただけるんです、直接お会いしてお渡しするべきだとした二人に言われまして。」
その為にわざわざこんな遠くまで、大変だっただろう。
「まさか王都の裏通りにあんなに素晴らしい服屋が眠っているとは思いませんでしたわ。早速秋冬物を注文させて貰いましたの。」
「イザベラの目からしても間違いないか。」
「縫製の丁寧さ、デザインの良さ、細工仕事の精巧さどれをとっても申し分ありませんわ。シロウ様の注文がなければ全て買い占めてしまいたい所でしたが、それではこの服の良さが広がりませんもの。次の夏には表通りに店を出しているのではないかしら。」
「まさかさすがにそこまでは無理ですよ。」
「無理じゃありませんわ、大通りの店が見習うべき点は沢山あります。」
あのイザベラがべた褒めじゃないか。
余程気に入ったんだろうなぁ。
照れまくったマリアルさんから契約書を受け取り中身を確認する。
ふむふむ、毎月20~30着を毎月イザベラが買い上げてこっちに流すのか。
枚数にもよるが費用はおおよそ金貨3枚程度。
まぁ予想通りって感じだな。
「いいんじゃないか?最高の品を送ってくれれば問題ない。イザベラ、良い奴だけ先に抜くなよ?」
「そんなことしませんわ。ちゃんとオーダーメイドした物をウィフに買ってもらいます。」
「え、そうなの?」
「当り前ですわ。だって私奴隷ですもの、お金なんて持っていません。」
堂々と胸を張るイザベラを前にウィフさんと二人で苦笑いを浮かべる。
その後荷物の搬入作業を経て後は出発するだけ、という所まで来たのだが。
「来ないな。」
「いや、ちょうど来たようだ。」
本命が来ないなぁと思っていると、ウィフさんが港の入り口を指さした。
不釣り合いな豪華な馬車が猛スピードでこちらにむかってくる。
土煙を上げながら俺達の前で停車し、そして開いた扉からストーン氏がゆっくりと姿を現した。
「遅くなってしまい申し訳ない。」
「ちゃんと来てくれたんだ、問題ない。」
「当然だろう。魔石はもうすぐ到着するはずだ、先にこれを確認してくれ。」
くるくると丸まった上質な紙が真っ赤な蝋封で固定されている。
何とも絵になるなぁ。
「イザベラ中身の確認を頼む。」
「畏まりましたわ。」
「リング様もご一緒とは、随分と仲がよろしいのですね。」
「シロウは私と妻とのきっかけを作ってくれた男だからな、王家に入る前からの友人でもある。今日は見送りに来ただけだ。」
「そうですか。」
何故この人がここに?という目でストーン氏がリングさんを見る。
陛下と親密なだけでなくリングさんともなれば余計に悪い事は出来ない筈。
まぁ、そんな事はしないだろうという体で来ているわけだけども。
はてさて契約書の中身はどうなっているのかな。
「確認が終わりました、今回の納品は小型が千個中型が千五百個となっています。残りは三か月後、夏までに全数を揃えて納品されるそうです。よろしいですか?」
「三か月なら問題ない。残代金を支払おう、待っていてくれ。」
船の前で待機していたミラから金貨を受け取り、元の場所に戻る。
「ここで確認するか?」
「いや、王家の前で嘘はつくまい。陛下の顔に泥を塗るような男ではないと、私は思っている。」
「そりゃどうも。とはいえ、本当に足りないのであればそこのイザベラに請求してくれ。いや、後ろにいるウィフさんか。」
「どっちでもいいよ。」
「今後の窓口もイザベラが担当する、王都からの輸送も彼女を通して行うから品だけウィフさんの所に搬入してくれれば問題ない。よろしく頼む。」
「こちらこそ感謝しているよ。」
「感謝ねぇ・・・。」
「なにかな?」
意味ありげな顔で俺を見るストーンさんから目線をそらし、俺はリングさんを見る。
とりあえず魔石は手に入った。
後は野となれ山となれ、だ。
「なんでもない。今後ともよい取引を期待している。」
「こちらこそよろしく頼むよ。」
話は終わりだ。
そうこうしているうちに大量の馬車がこちらに向かって来るのが見えた。
アレが魔石を積んだ馬車なんだろう。
中身を確認して積み込めば本当にこの旅も終わり。
とはいえ、家に帰るまでが本当の旅。
さて、ドレイク船長に挨拶でもしてくるかな。
意味ありげな視線を背中に感じつつ、俺はゆっくりと船へと向かうのだった。
5
お気に入りに追加
332
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる