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613.転売屋は犯罪の芽を摘む
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「調べてみたんだけど、どうも面倒なことになってそうなのよね。」
「やっぱりか。」
「狙われているのは主に新米で、お金に困っている中級も何人かいたわ。一応事情を説明して納得はさせたけど被害者はもっといるかもね。」
「まさかこの世界に来てまでマルチな詐欺に出くわすとはなぁ。」
「でもよくわかったわね。」
「明らかにおかしかったからな。それに金余りの状況からそういう問題が出てくるであろうことはシープさんとも話していたところだったし。まぁ、やっぱりかって感じだよ。」
ビアンカと共に町に戻ってきて二日。
『特別な薬草』を巡る騒動は予想通りの展開になってしまった。
ありもしない品をさもあるかのように扱い、それをネタに金を巻き上げている奴がいる。
そう感じた俺はエリザに頼んで冒険者から話を聞いたところ色々とわかってきた。
まずはじめに傷の治りが早い『特別な薬草』があり、それが銅貨50枚で売られている。
定価の倍近くするのだが、特別なだけに高いのは仕方がないという説明らしい。
しかし、仲間を紹介してその人物が薬草を買うと銅貨10枚のマージンを受け取れる。
つまり、三人以上の仲間を紹介するとただになるどころかお金が増えていくという寸法だ。
もちろん、自分で複数個買ってもマージンは入る。
いい品が安く手に入る上に、仲間を紹介すればタダになるとあって金のない新米達がカモにされているわけだな。
物品のやり取りがあるからマルチ商法って言うんだっけ?
ともかく、そんな感じの詐欺が行われているのは間違いない。
何故詐欺か。
ずばり『特別な薬草』なんてのは存在しないからだ。
何かしら理由を付けて特別感を出しているそうだが、十中八九普通の薬草だろう。
薬草の販売価格は銅貨30枚。
それを銅貨50枚で売れば利益は銅貨20枚。
一個当たり銅貨10枚のマージンを払っても銅貨10枚は確実に儲かる計算になる。
この街で禁止されているのはギルドより高く買うことであって、高く売る分には何の問題もない。
例え詐欺だとわかっていても買取はともかくわざわざ高く買うことを咎めること自体をギルド協会としては出来ないという感じなんだろう。
安いのが欲しいなら普通に露店やギルドで買えばいい。
でも、『特別感』を出すことで普通の薬草を売るのはちょっと見過ごせないよなぁ。
その被害者が俺の大事な顧客である冒険者ならば尚の事だ。
とはいえ、いきなり行って文句を言ったところでのらりくらりとかわされるだけ。
現場を押さえて目の前で偽物だと断言しない限りは捕まえることは出来ないだろう。
「で、冒険者ギルドはなんて?」
「被害者を減らすために啓蒙するしかないって。」
「それしかないよなぁ。特殊な薬草なんてありません、胡散臭い儲け話よりも地道に依頼をこなした方が稼げるぞと言うしかないだろうな。」
「ギルド協会も今は様子を見るだけなんでしょ?それで大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないが根絶は難しい。問題は特別なやつを売人から買わずに直接手に入れようとしている奴らだ。高く買うのが嫌だからってビアンカの店に行くのはどうなんだ?」
「効果があるからほしいんでしょ?」
「実際に効果なんてないんだぞ。」
「それを証明しない限りは同じようなことをするんじゃないかしら。私達の場合少しの傷が自分の命に直結するわけだし、僅かでも効果が高いならそれを欲しいと思う気持ちもわかるわ。ポーションは銀貨1枚と銅貨50枚。そちらの方が効果が高いとわかっていても値段が安いその特別な薬草で何とかしようと思ってしまうのは仕方ないわよ。」
水素が入っている水だのマイナスイオンだの、それを買わないようにと引き留めることが出来るのは命に関わらないからだ。
ガンに効くとか病気が治るとか直接命にかかわるような商材は、本人をいくら引き留めても聞く耳を持たないぐらいに必死な場合が多い。
藁にも縋りたい気持ちを否定する気は無いが、そこに付け入る悪いやつらがたくさん多いのもまた事実。
今回の件もそれと同じ感じだろう。
命を懸けてダンジョンに潜っているからこそ、何かあった時の保険を買いたい。
出来れば安く。
だからビアンカの店に行き強引に売らせようとした。
確かに話の辻褄は合うが、あの必死さの理由としては弱い気がする。
俺には薬でもやっているように見えたんだがなぁ。
「なぁ、当たり前だが麻薬はご法度だよな?」
「依存性のある薬はそうね。でも気持ち良くなる葉っぱとか薬とかは少なからず出回ってるわ。もちろん、この街にもね。」
「まぁこれだけ消費者がいれば当然か。」
「でもここは少ない方よ、みんな真面目でバカだから。」
「バカなのか?」
「そ、バカもバカ。悪い事をするぐらいならダンジョンに潜って金を稼いで美味い酒と女を買いたい、そんな真面目なバカばっかり。薬に手を出したらまともに戦えなくなるって思ってる人も多いから、それも理由かもね。」
「確かに真面目なバカだな。」
薬は悪だと理解している人が多いおかげもあるかもな。
冒険者ギルドの初心者講習でもその辺は強めに講義しているみたいだし。
だから売人が入り込んでも中々薬が流通しない。
無理やり流行らせようとするとギルド協会の目に留まってしまうから大きなことが出来ないんだろう。
真面目なのは良い事だ。
「引き続き啓蒙して貰うしかできることはないだろうな、ビアンカには悪いがしばらくはこっちで仕事をしてもらうしかないだろう。必要であれば機材をこっちに運ぶように言っておいてくれ。」
「わかった伝えとくわね。」
「俺はちょっと出かけてくる。」
「危ないことするならダメよ。」
「ちょいとダンの所に行くだけだって。」
流石に自分から犯罪に飛び込むつもりはない。
が、このまま何もしないのは俺の性格的にちょっとなぁ。
エリザ達の手前無茶はしないと決めているので他人の力を少し借りるだけだ。
屋敷を出て慣れた道を進み住宅街を進む。
「お?珍しいなこんな所で合うなんて。」
「ちょうどいいとこに。」
「なんだよ、気持ち悪いな。」
「まぁまぁ、今時間あるか?ちょっと飯でも行こうぜ。」
家までもう少しという所でダンと鉢合わせした。
手には空の籠、買い物に行く所か何かだろう。
ちゃんと時間があるかは聞いたぞ?
でも無理だと言わないのなら問題ないよな。
了承を得てからマスターの店へと移動する。
酒は無し、代わりに分厚い肉を注文した。
「二人とも元気か?」
「おかげさんで。そうだ、リンカが礼を言ってたぞ家で出来る仕事が増えたってな。」
「そりゃ何よりだ。」
「リンカの件もあるし手伝うのはやぶさかでもないんだが、こんなデカい肉で俺に何をさせるつもりなんだ?」
「ちょいと金のないふりをしてほしいんだよ。」
「は?」
「出来ればギルドで騒いでほしい、あぁ暴れてほしいんじゃない金がないっていうだけでいいんだ。ギルドにはこっちから話を通しておく。」
「一応言うが、俺はまだ冒険者をやめるつもりはないぞ?」
「もちろんわかってるって。」
俺がやってほしいのは演技だけで、やめさせたいわけではない。
俺の頭にある作戦の中で一番の適任者がダンだっただけだ。
ひとまず肉を食いながら状況を説明していく。
最初は驚いた顔をしていたが、しばらくするとなるほどなと納得したように頷いた。
「ってな感じなんだが、何か知ってるのか?」
「特別な薬草については俺も聞いたことがある。傷の治りが早く、毒にも効く。そんな夢みたいなやつが格安で売られてるって話だ。」
「信じたか?」
「信じるのはバカだけだって。そんなすごいものがあるのなら、まずはお前が買い漁ってるだろ?」
「違いない。」
そんな凄い薬草なら俺が買い付けないはずがないよな。
だって売れるし。
まぁすぐにギルド協会が固定買取にしてくるだろうけど、その時にはしっかりと交渉して良い感じの値段で買い取ってもらうぐらいは考える。
でもそれが無いってことはそんなものは存在しない。
俺を基準に話が進むのは変な感じだが、冒険者の中にはダンのように考えている人も多いというわけだ。
「それに仲間に買わせればバックがあるのも妙だ、そんなせこいことするなら初めから安く売れって、あぁ、なるほどそういう事か。」
「わかってもらって何よりだよ。金は俺が出す、引っかかってもらえないか?」
「ギルドに話を通してあるなら俺の経歴に傷がつくこともないよな。それに仲間が金儲けに使われるのは俺も良い気がしない。出来るだけ派手にやればいいんだな?」
「依頼料は・・・。」
「それはいい、この肉が報酬なんだろ?あぁ、欲を言えばリンカにも食わせてやりたい。最近マスターの味が恋しいってボヤいてたんだ。」
「ならそれは俺が用意してやる、とびきりの肉を食わせてやるよ。」
「マスター、聞いてたのか。」
ダンと同じ分厚い肉の乗った皿を手にマスターが声をかけてきた。
それを俺の前に置く。
いや、俺は注文してないんだが?
「なるほど、こっちにも似たような話が来ていたわけか。」
「そういう事。お前がやってくれるのなら話が早い、遠慮なく食っていいぞ。」
「どうせギルド協会からの依頼だろ?それを肉一枚とは随分と安く買いたたかれたもんだ。」
「それなら俺もだろ?お互いに肉一枚で派手に踊ろうぜ。」
「違いない。」
ダンを肉で誘っておいて俺がそれを安いというのはおかしな話だ。
乗り掛かった船、っていうか自分から出した船だ。
最後まで責任をもって付き合うのが筋ってもんだろう。
もちろん肉一枚で満足しない、片付いた暁にはダンと共に成功報酬を要求してやる。
マスター曰く、例の薬草は正体不明の売人が捌いているらしい。
会うためには紹介が必要で一般人は買えないんだとか。
あえて取引先を絞ることで情報漏洩を防いでいるんだろうけど、気になるのはやっぱりビアンカの所に来た冒険者だ。
「一度買ったら何度も買わなきゃいけないとかないんだよな?」
「そこまでは知らない。だが、一度使うと病みつきになるらしい。」
「麻薬かよ。」
「その可能性もあるから俺に声がかかったんだよ。汚れ仕事になる前にそっちは手を引いていい、俺は証拠を集めたいだけだ。」
「なんだよ、結局やばい仕事じゃねぇか。」
「そうなる前にバックレていいらしいし、そうなったらさっさと逃げようぜ。」
「それが出来ればな。」
真面目なバカの多いこの街で薬を流行らせようとしている何者かがいる。
思った以上に話は大きいのかもしれない。
「やっぱりか。」
「狙われているのは主に新米で、お金に困っている中級も何人かいたわ。一応事情を説明して納得はさせたけど被害者はもっといるかもね。」
「まさかこの世界に来てまでマルチな詐欺に出くわすとはなぁ。」
「でもよくわかったわね。」
「明らかにおかしかったからな。それに金余りの状況からそういう問題が出てくるであろうことはシープさんとも話していたところだったし。まぁ、やっぱりかって感じだよ。」
ビアンカと共に町に戻ってきて二日。
『特別な薬草』を巡る騒動は予想通りの展開になってしまった。
ありもしない品をさもあるかのように扱い、それをネタに金を巻き上げている奴がいる。
そう感じた俺はエリザに頼んで冒険者から話を聞いたところ色々とわかってきた。
まずはじめに傷の治りが早い『特別な薬草』があり、それが銅貨50枚で売られている。
定価の倍近くするのだが、特別なだけに高いのは仕方がないという説明らしい。
しかし、仲間を紹介してその人物が薬草を買うと銅貨10枚のマージンを受け取れる。
つまり、三人以上の仲間を紹介するとただになるどころかお金が増えていくという寸法だ。
もちろん、自分で複数個買ってもマージンは入る。
いい品が安く手に入る上に、仲間を紹介すればタダになるとあって金のない新米達がカモにされているわけだな。
物品のやり取りがあるからマルチ商法って言うんだっけ?
ともかく、そんな感じの詐欺が行われているのは間違いない。
何故詐欺か。
ずばり『特別な薬草』なんてのは存在しないからだ。
何かしら理由を付けて特別感を出しているそうだが、十中八九普通の薬草だろう。
薬草の販売価格は銅貨30枚。
それを銅貨50枚で売れば利益は銅貨20枚。
一個当たり銅貨10枚のマージンを払っても銅貨10枚は確実に儲かる計算になる。
この街で禁止されているのはギルドより高く買うことであって、高く売る分には何の問題もない。
例え詐欺だとわかっていても買取はともかくわざわざ高く買うことを咎めること自体をギルド協会としては出来ないという感じなんだろう。
安いのが欲しいなら普通に露店やギルドで買えばいい。
でも、『特別感』を出すことで普通の薬草を売るのはちょっと見過ごせないよなぁ。
その被害者が俺の大事な顧客である冒険者ならば尚の事だ。
とはいえ、いきなり行って文句を言ったところでのらりくらりとかわされるだけ。
現場を押さえて目の前で偽物だと断言しない限りは捕まえることは出来ないだろう。
「で、冒険者ギルドはなんて?」
「被害者を減らすために啓蒙するしかないって。」
「それしかないよなぁ。特殊な薬草なんてありません、胡散臭い儲け話よりも地道に依頼をこなした方が稼げるぞと言うしかないだろうな。」
「ギルド協会も今は様子を見るだけなんでしょ?それで大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないが根絶は難しい。問題は特別なやつを売人から買わずに直接手に入れようとしている奴らだ。高く買うのが嫌だからってビアンカの店に行くのはどうなんだ?」
「効果があるからほしいんでしょ?」
「実際に効果なんてないんだぞ。」
「それを証明しない限りは同じようなことをするんじゃないかしら。私達の場合少しの傷が自分の命に直結するわけだし、僅かでも効果が高いならそれを欲しいと思う気持ちもわかるわ。ポーションは銀貨1枚と銅貨50枚。そちらの方が効果が高いとわかっていても値段が安いその特別な薬草で何とかしようと思ってしまうのは仕方ないわよ。」
水素が入っている水だのマイナスイオンだの、それを買わないようにと引き留めることが出来るのは命に関わらないからだ。
ガンに効くとか病気が治るとか直接命にかかわるような商材は、本人をいくら引き留めても聞く耳を持たないぐらいに必死な場合が多い。
藁にも縋りたい気持ちを否定する気は無いが、そこに付け入る悪いやつらがたくさん多いのもまた事実。
今回の件もそれと同じ感じだろう。
命を懸けてダンジョンに潜っているからこそ、何かあった時の保険を買いたい。
出来れば安く。
だからビアンカの店に行き強引に売らせようとした。
確かに話の辻褄は合うが、あの必死さの理由としては弱い気がする。
俺には薬でもやっているように見えたんだがなぁ。
「なぁ、当たり前だが麻薬はご法度だよな?」
「依存性のある薬はそうね。でも気持ち良くなる葉っぱとか薬とかは少なからず出回ってるわ。もちろん、この街にもね。」
「まぁこれだけ消費者がいれば当然か。」
「でもここは少ない方よ、みんな真面目でバカだから。」
「バカなのか?」
「そ、バカもバカ。悪い事をするぐらいならダンジョンに潜って金を稼いで美味い酒と女を買いたい、そんな真面目なバカばっかり。薬に手を出したらまともに戦えなくなるって思ってる人も多いから、それも理由かもね。」
「確かに真面目なバカだな。」
薬は悪だと理解している人が多いおかげもあるかもな。
冒険者ギルドの初心者講習でもその辺は強めに講義しているみたいだし。
だから売人が入り込んでも中々薬が流通しない。
無理やり流行らせようとするとギルド協会の目に留まってしまうから大きなことが出来ないんだろう。
真面目なのは良い事だ。
「引き続き啓蒙して貰うしかできることはないだろうな、ビアンカには悪いがしばらくはこっちで仕事をしてもらうしかないだろう。必要であれば機材をこっちに運ぶように言っておいてくれ。」
「わかった伝えとくわね。」
「俺はちょっと出かけてくる。」
「危ないことするならダメよ。」
「ちょいとダンの所に行くだけだって。」
流石に自分から犯罪に飛び込むつもりはない。
が、このまま何もしないのは俺の性格的にちょっとなぁ。
エリザ達の手前無茶はしないと決めているので他人の力を少し借りるだけだ。
屋敷を出て慣れた道を進み住宅街を進む。
「お?珍しいなこんな所で合うなんて。」
「ちょうどいいとこに。」
「なんだよ、気持ち悪いな。」
「まぁまぁ、今時間あるか?ちょっと飯でも行こうぜ。」
家までもう少しという所でダンと鉢合わせした。
手には空の籠、買い物に行く所か何かだろう。
ちゃんと時間があるかは聞いたぞ?
でも無理だと言わないのなら問題ないよな。
了承を得てからマスターの店へと移動する。
酒は無し、代わりに分厚い肉を注文した。
「二人とも元気か?」
「おかげさんで。そうだ、リンカが礼を言ってたぞ家で出来る仕事が増えたってな。」
「そりゃ何よりだ。」
「リンカの件もあるし手伝うのはやぶさかでもないんだが、こんなデカい肉で俺に何をさせるつもりなんだ?」
「ちょいと金のないふりをしてほしいんだよ。」
「は?」
「出来ればギルドで騒いでほしい、あぁ暴れてほしいんじゃない金がないっていうだけでいいんだ。ギルドにはこっちから話を通しておく。」
「一応言うが、俺はまだ冒険者をやめるつもりはないぞ?」
「もちろんわかってるって。」
俺がやってほしいのは演技だけで、やめさせたいわけではない。
俺の頭にある作戦の中で一番の適任者がダンだっただけだ。
ひとまず肉を食いながら状況を説明していく。
最初は驚いた顔をしていたが、しばらくするとなるほどなと納得したように頷いた。
「ってな感じなんだが、何か知ってるのか?」
「特別な薬草については俺も聞いたことがある。傷の治りが早く、毒にも効く。そんな夢みたいなやつが格安で売られてるって話だ。」
「信じたか?」
「信じるのはバカだけだって。そんなすごいものがあるのなら、まずはお前が買い漁ってるだろ?」
「違いない。」
そんな凄い薬草なら俺が買い付けないはずがないよな。
だって売れるし。
まぁすぐにギルド協会が固定買取にしてくるだろうけど、その時にはしっかりと交渉して良い感じの値段で買い取ってもらうぐらいは考える。
でもそれが無いってことはそんなものは存在しない。
俺を基準に話が進むのは変な感じだが、冒険者の中にはダンのように考えている人も多いというわけだ。
「それに仲間に買わせればバックがあるのも妙だ、そんなせこいことするなら初めから安く売れって、あぁ、なるほどそういう事か。」
「わかってもらって何よりだよ。金は俺が出す、引っかかってもらえないか?」
「ギルドに話を通してあるなら俺の経歴に傷がつくこともないよな。それに仲間が金儲けに使われるのは俺も良い気がしない。出来るだけ派手にやればいいんだな?」
「依頼料は・・・。」
「それはいい、この肉が報酬なんだろ?あぁ、欲を言えばリンカにも食わせてやりたい。最近マスターの味が恋しいってボヤいてたんだ。」
「ならそれは俺が用意してやる、とびきりの肉を食わせてやるよ。」
「マスター、聞いてたのか。」
ダンと同じ分厚い肉の乗った皿を手にマスターが声をかけてきた。
それを俺の前に置く。
いや、俺は注文してないんだが?
「なるほど、こっちにも似たような話が来ていたわけか。」
「そういう事。お前がやってくれるのなら話が早い、遠慮なく食っていいぞ。」
「どうせギルド協会からの依頼だろ?それを肉一枚とは随分と安く買いたたかれたもんだ。」
「それなら俺もだろ?お互いに肉一枚で派手に踊ろうぜ。」
「違いない。」
ダンを肉で誘っておいて俺がそれを安いというのはおかしな話だ。
乗り掛かった船、っていうか自分から出した船だ。
最後まで責任をもって付き合うのが筋ってもんだろう。
もちろん肉一枚で満足しない、片付いた暁にはダンと共に成功報酬を要求してやる。
マスター曰く、例の薬草は正体不明の売人が捌いているらしい。
会うためには紹介が必要で一般人は買えないんだとか。
あえて取引先を絞ることで情報漏洩を防いでいるんだろうけど、気になるのはやっぱりビアンカの所に来た冒険者だ。
「一度買ったら何度も買わなきゃいけないとかないんだよな?」
「そこまでは知らない。だが、一度使うと病みつきになるらしい。」
「麻薬かよ。」
「その可能性もあるから俺に声がかかったんだよ。汚れ仕事になる前にそっちは手を引いていい、俺は証拠を集めたいだけだ。」
「なんだよ、結局やばい仕事じゃねぇか。」
「そうなる前にバックレていいらしいし、そうなったらさっさと逃げようぜ。」
「それが出来ればな。」
真面目なバカの多いこの街で薬を流行らせようとしている何者かがいる。
思った以上に話は大きいのかもしれない。
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