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582.転売屋はイメチェンする
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「いいな~いいな~私も髪切りたいな~!」
「行けばいいじゃないか。」
「だって半月待ちだよ!?そんなに待てないわよ。」
「じゃあ自分で切るしかないな。」
「わざわざ変になるのに切る?」
「俺ならしないな。」
予約をすっ飛ばして俺が髪を切ってきたもんだからエリザの機嫌がすこぶる悪い。
だがそんなことで動揺する俺ではない。
これは決してズルなどではなく、等価交換によって成り立った取引だ。
文句言われる筋合いはない。
「しかし、随分さっぱりされましたね。」
「まぁそうだな、ここまで短いのははじめてかもしれん。」
「よくお似合いですよシロウ様。」
「まるで冒険者みたいですね!」
「冒険者?」
「皆さんそういうさっぱりした髪型されてるじゃないですか。」
産まれて初めて地肌がガッツリ見えるぐらいに短くしたかもしれない。
これからの季節を考えると涼しくてよさそうなのだが・・・。
確かにメルディの言うとおり短髪の冒険者が増えている気がする。
冬場はともかく夏場は装備が蒸れるので短髪にしている人が多いのかもしれない。
もっさりした髪の毛で重厚な金属製の兜は邪魔になるからなぁ。
必然的にそうなるんだろう。
「せっかくだから服装もそういうのにしてみたら?」
「そういうのって冒険者か?」
「そうそう。どうしてもおとなしい感じが多いでしょ?鎧を着ろとは言わないけど、普段しないような感じにしてみたら面白いじゃない。」
「それ、いいですね!」
「面白さで服を選ぶのかよ。」
「そうよ、シロウを着飾って遊ぶの。そうと決まれば誰が一番似合う服装を選べるか勝負しましょ。」
人を着せ替え人形をしようなんざ良い度胸じゃないか。
誰がそんな面倒なこと・・・。
「やります!」
「私も是非やらせてください。」
「じゃ、じゃあ私もやります!」
じゃあってなんだよじゃあって。
「決まりね、時間は・・・今日の夕方まで。予算はどうする?」
「夏服用の予算が金貨1枚分ございます、皆さんの分もありますがそれで足りますか?」
「私は春服作って貰ったし今回はいいわ。」
「私も去年のがありますから。」
「では決まりですね、一人銀貨25枚でシロウ様に一番似合う服を選びましょう。」
「いや、選びましょうっておまえらなぁ。」
「シロウは黙ってて。」
「・・・はい。」
エリザはともかく全員でにらまれると何もいえなくなってしまう。
アネットはともかくまさかミラまでやる気になるとは。
まさか率先して自分たちの夏服費用を全部俺に回すとは思わなかった。
一体どんな服を着せられるんだろうか。
正直不安しかない。
嬉しそうに四人が部屋を出て行った後、入れ替わるようにグレイスが入ってきた。
「お疲れ様です。」
「まったくだ。」
「でもよろしいじゃありませんか、奥様方に服を選んでいただける殿方は中々おりませんよ。ちなみにハーシェ様には報告済みです、これから選びにいかれるとか。」
「マジか。」
「むしろ除け者になんてした日には何十年と恨まれるかと。」
食べ物の恨みは怖いというが、まさか服の恨みのほうが恐ろしいとは。
この流れだと他の人にも話が行きそうだなぁ。
今のうちに手を打っておくか。
参加者はマリーさんとアニエスさんまでにしてくれよ、ルティエやモニカは金がないんだから。
「ご心配には及びません、もう代金と共に使いを出しておりす。」
「全然大丈夫じゃないし。」
「愛されていますねお館様。」
「不安しかないっての。」
金はある。
こういう遊びを気兼ねなく出来るぐらいにはある。
だが、自分のために金を使われるのはなんだか気が引けてしまう。
貧乏性という奴だろうか。
この辺は何十年も積み上げてきたものだけに金を持ったからといってすぐに変わることはないようだ。
屋敷から出ないようにきつく言われて待つこと二時間。
ホクホク顔の女達が応接室に集まっていた。
総勢6人。
ルティエとモニカは仕事が忙しくて参加出来なかったそうだ。
それならマリーさんはどうなるのかって?
知らねぇよそんなの。
「で?」
「話し合ったんだけど勝手にシロウの服を決めるのは無理があるってわかったの。」
「それは何よりだ。」
「でもね、せっかくの機会だから普段しないものを買うことになったのよ。」
「結局買うのかよ。」
「ってことでまずは私とアネットからね。」
司会者宜しく事情を説明していたエリザが我先にと後ろから取り出したのは・・・。
「帽子?」
「そう!シロウって普段帽子かぶらないでしょ?だから夏に向けて似合いそうなのを見つけてきたわけ。私はコレ、丈夫さと快適性ならバッチリよ。」
エリザが取り出したのはどこにでもありそうな野球帽・・・ではないな、キャップと呼ばれる前につばのあるシンプルなやつだ。
色は濃いブラウン。
シンプルイズベストって感じだな。
っていうか二人からなのか。
よく見るとミラとメルディ、マリーさんとアニエスさんそしてハーシェさんとなぜかグレイスが並んでいる。
つまりあと三回これが続くわけだな。
『ランドホエールの帽子。土の中を移動するランドホエールは外の熱気を遮断し体内の冷気を外に逃さないように保冷性が高い皮で覆われている。最近の平均取引価格は銀貨11枚。最安値銀貨8枚最高値銀貨15枚最終取引日は19日前と記録されています。』
土の中を行くクジラ。
現物は見たことないが、ちょくちょく持ち込まれる奴だ。
加工が難しいらしく量は持ち込まれるんだけど単価が安いんだよなぁ。
「思ったよりも軽いな。」
「でもすっごい丈夫なの。上から石が落ちてきても大丈夫なんだから。」
「それは破れないという意味でか?それとも衝撃の意味でか?」
「どっちも。熱にも強いから日差しの下を歩いても大丈夫よ。」
日常生活で石が落ちてくることはまずないが、日差しに強いのは有難い。
草原地帯だけに日差しがきついからなぁ、ここは。
「デザインはなかなかいいな、シンプルだし使い勝手がよさそうだ。」
「選んだのはアネットよ。私はもう少しごついのが好きなんだけど。」
「気に入ってくださってよかったです。」
満足そうな二人が後ろに下がり、今度はミラとメルディが一歩前に出た。
「私達はこちらを。」
「一生懸命選びました!」
元気いっぱいのメルディが取り出したのは・・・ベレー帽?
「普段身に着けないものとのことでしたので、少し珍しい形を選んでみました。よくお似合いですよ。」
「すっごいかっこいいです!」
「そりゃどうも。しかしアレだな、軍人みたいだなやっぱり。」
「グンジン?」
「戦いに出る人の事だ。まぁ、冒険者でもたまにいるか。」
「レンジャーや弓使いなんかはたまにかぶってるわね。」
何だろう、視界を広く取れるとか何か理由があるんだろうが、わからん。
『アイアンウールのベレー帽。ウール種の中でも特に毛が硬いアイアンウールは通常の鋏で刈り取りができずまた織り込むのにも専用の工具を使用しなければならない。しかし重量は変わらずに強度が高いためヘルムの内側や帽子そのものに広く使われている。最近の平均取引価格は銀貨19枚。最安値銀貨11枚最高値銀貨24枚。最終取引日は49日前と記録されています。』
「アイアンウールなんてのがいるのか。」
「ダンジョンには生息していないのでシロウ様が知らないのはいたし方ありません。」
「でもでも珍しい上に丈夫なんですよ!」
「勉強になった。この色もいいな。」
「黒のように重たくグレーのように軽いわけでもありません、普段落ち着いた色の服を着られていますからよく似合うと思います。」
さすがミラよく見てるなぁ。
確かに気分を変えるのにはいいかもしれない。
「では次は私達です。」
「実用とデザインを重視させていただきました。」
満を持して登場したのがマリー・アニエスペア。
取り出したのは・・・。
「これ、なんていうんだっけ?」
「キャスケットです。」
「そうそう、それ。」
「主に狩猟などする際に使われるものです。散歩をするときには持ってこいでしょう。またダンジョンにもぐる際にも頭をしっかりと守る性能があります。」
「これもアイアンウールなのか?」
「いえ、それが違うんです。」
確かにグレーではなく濃紺のような青みがかった色をしている。
デニムでもなし染物に近いだろうか。
『聖布のキャスケット。マジックインディゴで染められた聖糸は防刃性能が高く傷つきにくい。通気性がいいため主に修道服や聖衣に使用される。最近の平均取引価格は銀貨77枚。最安値銀貨54枚最高値金貨1枚。最終取引日は144日前と記録されています。』
ん?
なんか金額おかしくない?
「聖布、しかも染めて作られてるのか。どう考えても予算オーバーだろ。」
「あ、それ私も見た!」
「私も最初はそうだったんですが、アニエスが交渉すると値段を下げてくださったんです。」
「事情を説明すると快く譲ってくださいました。」
「快くねぇ・・・。」
「予算内です、問題はありません。」
確かに問題はないかもしれないが・・・。
まぁいい物みたいだし、何よりこの色が好きだ。
青でも黒でもない日暮れの一瞬に見える藍色。
センスが良いなぁ。
「では最後は私ですね。皆さんのようにいい物ではないのですが・・・。」
最後にハーシェさんが取り出したのは布?
「これは?」
「短くされたので似合うと思って。」
そう言いながらハーシェさんは幾何学的な模様の描かれた真っ赤な布を手に俺の後ろに回る。
そしてそれを頭に巻きつけ、最後に顔に垂れた奴を後ろに引っ張った。
あ、バンダナだコレ。
「「「「おぉ~。」」」」
様子を見ていた女達から感嘆の声が漏れる。
シンプルイズベストとはまさにこの事。
まさかこういうので来るとは思わなかった。
こんなのをつけるのなんていつ以来だ?
学生の頃につけた記憶もあるが、すぐにしなくなったんだよな。
「どうだ?」
「ふふ、お似合いです。」
「そりゃ何よりだ。」
『祈りの布。妊婦の安産を願う強い願いの込められた布。最近の平均取引価格は銅貨50枚。最安値銅貨25枚最高値銀貨1枚。最終取引日は二日前と記録されています。』
そういえば、お腹の大きくなってたハーシェさん用にグレイスが手配していたのがこれだった気がする。
まさかこういうので来るとは・・・。
「ハーシェ様の願いが込められています。どんな危険も寄せ付けないことでしょう。」
「グレイス、その言い方は卑怯だぞ。」
「本当の事ですから。」
「じゃあじゃあ私も同じの作るわ!」
「それはよろしいですね、是非お作りになってください。」
「その流れだといずれ全員分増えることになるのか。」
「日替わりでいかがでしょうか。」
「定食かよ。」
確かにイメチェンにはなるが、それが毎日続くとイメチェンにならないわけで。
とはいえ、みんなの気持ちは有難く頂戴しよう。
ちょうど新しい帽子が欲しかったところだ。
いつもと違う自分になれる、なるほどこうのもたまにはいいな。
「行けばいいじゃないか。」
「だって半月待ちだよ!?そんなに待てないわよ。」
「じゃあ自分で切るしかないな。」
「わざわざ変になるのに切る?」
「俺ならしないな。」
予約をすっ飛ばして俺が髪を切ってきたもんだからエリザの機嫌がすこぶる悪い。
だがそんなことで動揺する俺ではない。
これは決してズルなどではなく、等価交換によって成り立った取引だ。
文句言われる筋合いはない。
「しかし、随分さっぱりされましたね。」
「まぁそうだな、ここまで短いのははじめてかもしれん。」
「よくお似合いですよシロウ様。」
「まるで冒険者みたいですね!」
「冒険者?」
「皆さんそういうさっぱりした髪型されてるじゃないですか。」
産まれて初めて地肌がガッツリ見えるぐらいに短くしたかもしれない。
これからの季節を考えると涼しくてよさそうなのだが・・・。
確かにメルディの言うとおり短髪の冒険者が増えている気がする。
冬場はともかく夏場は装備が蒸れるので短髪にしている人が多いのかもしれない。
もっさりした髪の毛で重厚な金属製の兜は邪魔になるからなぁ。
必然的にそうなるんだろう。
「せっかくだから服装もそういうのにしてみたら?」
「そういうのって冒険者か?」
「そうそう。どうしてもおとなしい感じが多いでしょ?鎧を着ろとは言わないけど、普段しないような感じにしてみたら面白いじゃない。」
「それ、いいですね!」
「面白さで服を選ぶのかよ。」
「そうよ、シロウを着飾って遊ぶの。そうと決まれば誰が一番似合う服装を選べるか勝負しましょ。」
人を着せ替え人形をしようなんざ良い度胸じゃないか。
誰がそんな面倒なこと・・・。
「やります!」
「私も是非やらせてください。」
「じゃ、じゃあ私もやります!」
じゃあってなんだよじゃあって。
「決まりね、時間は・・・今日の夕方まで。予算はどうする?」
「夏服用の予算が金貨1枚分ございます、皆さんの分もありますがそれで足りますか?」
「私は春服作って貰ったし今回はいいわ。」
「私も去年のがありますから。」
「では決まりですね、一人銀貨25枚でシロウ様に一番似合う服を選びましょう。」
「いや、選びましょうっておまえらなぁ。」
「シロウは黙ってて。」
「・・・はい。」
エリザはともかく全員でにらまれると何もいえなくなってしまう。
アネットはともかくまさかミラまでやる気になるとは。
まさか率先して自分たちの夏服費用を全部俺に回すとは思わなかった。
一体どんな服を着せられるんだろうか。
正直不安しかない。
嬉しそうに四人が部屋を出て行った後、入れ替わるようにグレイスが入ってきた。
「お疲れ様です。」
「まったくだ。」
「でもよろしいじゃありませんか、奥様方に服を選んでいただける殿方は中々おりませんよ。ちなみにハーシェ様には報告済みです、これから選びにいかれるとか。」
「マジか。」
「むしろ除け者になんてした日には何十年と恨まれるかと。」
食べ物の恨みは怖いというが、まさか服の恨みのほうが恐ろしいとは。
この流れだと他の人にも話が行きそうだなぁ。
今のうちに手を打っておくか。
参加者はマリーさんとアニエスさんまでにしてくれよ、ルティエやモニカは金がないんだから。
「ご心配には及びません、もう代金と共に使いを出しておりす。」
「全然大丈夫じゃないし。」
「愛されていますねお館様。」
「不安しかないっての。」
金はある。
こういう遊びを気兼ねなく出来るぐらいにはある。
だが、自分のために金を使われるのはなんだか気が引けてしまう。
貧乏性という奴だろうか。
この辺は何十年も積み上げてきたものだけに金を持ったからといってすぐに変わることはないようだ。
屋敷から出ないようにきつく言われて待つこと二時間。
ホクホク顔の女達が応接室に集まっていた。
総勢6人。
ルティエとモニカは仕事が忙しくて参加出来なかったそうだ。
それならマリーさんはどうなるのかって?
知らねぇよそんなの。
「で?」
「話し合ったんだけど勝手にシロウの服を決めるのは無理があるってわかったの。」
「それは何よりだ。」
「でもね、せっかくの機会だから普段しないものを買うことになったのよ。」
「結局買うのかよ。」
「ってことでまずは私とアネットからね。」
司会者宜しく事情を説明していたエリザが我先にと後ろから取り出したのは・・・。
「帽子?」
「そう!シロウって普段帽子かぶらないでしょ?だから夏に向けて似合いそうなのを見つけてきたわけ。私はコレ、丈夫さと快適性ならバッチリよ。」
エリザが取り出したのはどこにでもありそうな野球帽・・・ではないな、キャップと呼ばれる前につばのあるシンプルなやつだ。
色は濃いブラウン。
シンプルイズベストって感じだな。
っていうか二人からなのか。
よく見るとミラとメルディ、マリーさんとアニエスさんそしてハーシェさんとなぜかグレイスが並んでいる。
つまりあと三回これが続くわけだな。
『ランドホエールの帽子。土の中を移動するランドホエールは外の熱気を遮断し体内の冷気を外に逃さないように保冷性が高い皮で覆われている。最近の平均取引価格は銀貨11枚。最安値銀貨8枚最高値銀貨15枚最終取引日は19日前と記録されています。』
土の中を行くクジラ。
現物は見たことないが、ちょくちょく持ち込まれる奴だ。
加工が難しいらしく量は持ち込まれるんだけど単価が安いんだよなぁ。
「思ったよりも軽いな。」
「でもすっごい丈夫なの。上から石が落ちてきても大丈夫なんだから。」
「それは破れないという意味でか?それとも衝撃の意味でか?」
「どっちも。熱にも強いから日差しの下を歩いても大丈夫よ。」
日常生活で石が落ちてくることはまずないが、日差しに強いのは有難い。
草原地帯だけに日差しがきついからなぁ、ここは。
「デザインはなかなかいいな、シンプルだし使い勝手がよさそうだ。」
「選んだのはアネットよ。私はもう少しごついのが好きなんだけど。」
「気に入ってくださってよかったです。」
満足そうな二人が後ろに下がり、今度はミラとメルディが一歩前に出た。
「私達はこちらを。」
「一生懸命選びました!」
元気いっぱいのメルディが取り出したのは・・・ベレー帽?
「普段身に着けないものとのことでしたので、少し珍しい形を選んでみました。よくお似合いですよ。」
「すっごいかっこいいです!」
「そりゃどうも。しかしアレだな、軍人みたいだなやっぱり。」
「グンジン?」
「戦いに出る人の事だ。まぁ、冒険者でもたまにいるか。」
「レンジャーや弓使いなんかはたまにかぶってるわね。」
何だろう、視界を広く取れるとか何か理由があるんだろうが、わからん。
『アイアンウールのベレー帽。ウール種の中でも特に毛が硬いアイアンウールは通常の鋏で刈り取りができずまた織り込むのにも専用の工具を使用しなければならない。しかし重量は変わらずに強度が高いためヘルムの内側や帽子そのものに広く使われている。最近の平均取引価格は銀貨19枚。最安値銀貨11枚最高値銀貨24枚。最終取引日は49日前と記録されています。』
「アイアンウールなんてのがいるのか。」
「ダンジョンには生息していないのでシロウ様が知らないのはいたし方ありません。」
「でもでも珍しい上に丈夫なんですよ!」
「勉強になった。この色もいいな。」
「黒のように重たくグレーのように軽いわけでもありません、普段落ち着いた色の服を着られていますからよく似合うと思います。」
さすがミラよく見てるなぁ。
確かに気分を変えるのにはいいかもしれない。
「では次は私達です。」
「実用とデザインを重視させていただきました。」
満を持して登場したのがマリー・アニエスペア。
取り出したのは・・・。
「これ、なんていうんだっけ?」
「キャスケットです。」
「そうそう、それ。」
「主に狩猟などする際に使われるものです。散歩をするときには持ってこいでしょう。またダンジョンにもぐる際にも頭をしっかりと守る性能があります。」
「これもアイアンウールなのか?」
「いえ、それが違うんです。」
確かにグレーではなく濃紺のような青みがかった色をしている。
デニムでもなし染物に近いだろうか。
『聖布のキャスケット。マジックインディゴで染められた聖糸は防刃性能が高く傷つきにくい。通気性がいいため主に修道服や聖衣に使用される。最近の平均取引価格は銀貨77枚。最安値銀貨54枚最高値金貨1枚。最終取引日は144日前と記録されています。』
ん?
なんか金額おかしくない?
「聖布、しかも染めて作られてるのか。どう考えても予算オーバーだろ。」
「あ、それ私も見た!」
「私も最初はそうだったんですが、アニエスが交渉すると値段を下げてくださったんです。」
「事情を説明すると快く譲ってくださいました。」
「快くねぇ・・・。」
「予算内です、問題はありません。」
確かに問題はないかもしれないが・・・。
まぁいい物みたいだし、何よりこの色が好きだ。
青でも黒でもない日暮れの一瞬に見える藍色。
センスが良いなぁ。
「では最後は私ですね。皆さんのようにいい物ではないのですが・・・。」
最後にハーシェさんが取り出したのは布?
「これは?」
「短くされたので似合うと思って。」
そう言いながらハーシェさんは幾何学的な模様の描かれた真っ赤な布を手に俺の後ろに回る。
そしてそれを頭に巻きつけ、最後に顔に垂れた奴を後ろに引っ張った。
あ、バンダナだコレ。
「「「「おぉ~。」」」」
様子を見ていた女達から感嘆の声が漏れる。
シンプルイズベストとはまさにこの事。
まさかこういうので来るとは思わなかった。
こんなのをつけるのなんていつ以来だ?
学生の頃につけた記憶もあるが、すぐにしなくなったんだよな。
「どうだ?」
「ふふ、お似合いです。」
「そりゃ何よりだ。」
『祈りの布。妊婦の安産を願う強い願いの込められた布。最近の平均取引価格は銅貨50枚。最安値銅貨25枚最高値銀貨1枚。最終取引日は二日前と記録されています。』
そういえば、お腹の大きくなってたハーシェさん用にグレイスが手配していたのがこれだった気がする。
まさかこういうので来るとは・・・。
「ハーシェ様の願いが込められています。どんな危険も寄せ付けないことでしょう。」
「グレイス、その言い方は卑怯だぞ。」
「本当の事ですから。」
「じゃあじゃあ私も同じの作るわ!」
「それはよろしいですね、是非お作りになってください。」
「その流れだといずれ全員分増えることになるのか。」
「日替わりでいかがでしょうか。」
「定食かよ。」
確かにイメチェンにはなるが、それが毎日続くとイメチェンにならないわけで。
とはいえ、みんなの気持ちは有難く頂戴しよう。
ちょうど新しい帽子が欲しかったところだ。
いつもと違う自分になれる、なるほどこうのもたまにはいいな。
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本当に、ありがとうございます。
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