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562.転売屋はサプリメントを飲む

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「と、いうわけで成分的には既存のものよりも多いのは間違いないの。問題は効果を遅延させる成分が含まれているので結果として即効性が出ないことが考えられる部分かしら。」

「そこで濃縮する際にその成分を薄める別の薬を混ぜてみました。これでコレまで判明していなかったような効果が出てくると思われます。」

例の種を使った薬(サプリメント)が完成した。

朝一番でその知らせを受けて応接室へ行くと、カーラさんとビアンカが白衣姿で俺達を出迎える。

まるで科学者のようないでたちだが、二人とも中々に似合っているんだよなぁ。

白衣姿ってこう、仕事が出来ますっていう感じがするのは俺だけだろうか。

「具体的には?」

「それを今から試すんじゃない、頑張ってねシロウ。」

「そうなるよなぁ。」

全員の目がそいつに釘付けだ。

大きさはBB弾ほど。

色目的にも某胃腸薬といわれても信じてしまうかもしれない。

まぁ、例の臭いはしないので口に入れる前に気づきそうなものだけどな。

「他にも複数の被験者に協力をお願いして効果を調べるつもり、害はないのは間違いないからそこは安心して。」

「種が消費できるのは非常にありがたい事だが・・・、いや今更だったな。ミラ水をくれ。」

「どうぞ。」

丸薬を二粒掴み水で流し込む。

苦味やエグみは一切感じなかった。

『滋養強壮丸。心身の疲れを回復し持続力を高める効果がある。取引履歴はありません。』

鑑定結果を見ても滋養強壮薬が毒薬に変わっている心配はなさそうなので、後は効果を確認するだけ。

とはいえ今までの薬と違って即効性がないのでどうやって効果を見極めるのかが正直難しい所だ。

「持続的な効果といわれてもどう評価すればいいんだ?」

「ずっと体を動かすしかないんじゃない?」

「散歩か?」

「それじゃわからないわよ、もっと激しい奴じゃないと。」

「いえ、できれば同じ負荷を長時間かけ続けていただけると効果がわかりやすいので、そういうのでお願いします。」

「うーむ、むずかしいな。」

一定負荷の作業なんてあっただろうか。

悩んでみたもののコレというものが思いつかなかったので、ひとまず経過観察という形で今日一日カーラとアネットが俺と一緒に行動することが決まった。

いつものように仕事をしてくれという事なので、まずは露店めぐりから始めるとしよう。

「何か変化はありますか?」

「特に無し。しいて言えば体がいつも以上に熱く感じるぐらいか。」

「代謝が上がっているんでしょう、若干の発汗も見られますから間違いないかと。」

「体がエネルギーを作っているわけか。」

「滋養のある食べ物を食べるとよく出る症状です。とはいえ程度はあまり強くないようですね、やはり即効性ではなく持続性の高い効果がありそうです。」

「持続性ねぇ・・・。と、アレは何だ?」

カーラがメモを取るのを横目に、気になる露店へと足を向けた。

「いらっしゃい!」

「この豆なんだ?」

「お、いいのに気が付いたね。こいつはスカイビーンズっていって夏に実るやつさ。名前の通り空に昇るぐらい高く成長するやつだ。美味いぞ。」

「屋根よりも上ってか?」

「そんなの序の口だ、記録は塔のてっぺんらしいがまだまだ伸びると俺は思ってる。」

「別に高さを競いたいわけじゃないんだが・・・。」

『スカイビーンズ。通称登り豆。天高くどこまでも伸びるのが特徴で、伸びれば伸びるほど実が多く生る。食用のほか乾燥させたものは腹下しの薬にもなる。最近の平均取引価格は銅貨33枚。最安値銅貨21枚最高値銅貨49枚最終取引日は9日前と記録されています。』

食用のほか薬にも使えるようだ。

アネットの方を見ると小さく頷くのがわかった。

どうやら買ってもいいそうだ。

「ちなみにこれ全部でいくらだ?」

「全部買ってくれるなら銀貨20枚でいいよ。だがそんなに買って大丈夫か?畑が大変なことになるぞ?」

「半分は薬にするさ。」

「なら今度薬が出来たら分けてくれよ、最近腹が弱くてさぁ。」

他にもいくつか珍しい豆を売っていたのでそれも買い付け他の店も見て回る。

今日はなかなかに収穫が多い。

薬の材料のほか化粧品に使えそうな素材もあったので、そいつもまとめて買っていく。

気付けばかなりの量になってしまった。

「ちょっと買いすぎたか。」

「そうですね、この量ですし屋敷まで運んでもらいましょう。管理室で手配してきます。」

「任せた。」

小走りで駆けていくアネットの後姿を見ながら、俺は大きく伸びをした。

「かなり歩いたけどあまり疲れていないみたいだね。」

「そういやそうだな。しんどいのはしんどいがドッと来るようなのはない。」

「ふむ、滋養強壮というよりも持久力の方が勝っているようだ。別の成分を混ぜたからかはまだわからないが、そっちの方が需要はありそうだね。」

「持久力が上がれば長時間の探索や移動が楽になる。特に短時間で一気に移動しないといけないときなんかは、いいだろう。」

「これは被験者を増やして調査するべきだね。他に違和感はないかな。」

「今の所はないな。体の熱も最初とさほど変わりない。」

火照る、までは行かないが何となく体が熱い感じ。

一つだけ言っていない事があるとすれば朝よりもムラムラしている。

薬の副作用かは定かではないが、カーラがいなかったらアネットを部屋に連れ込んで致しているぐらいには性欲が高い。

なんならカーラでも良いぐらいだ。

あれ、俺呼び捨てにしてたっけ?

「どうした?」

「いや、何でもない。」

「発汗が最初よりも多いな、まぁこれだけ歩けば当然だろう。少し待ってろ水を買ってくる。」

顔をのぞきこまれ一気に脈拍が早くなった。

小走りで走った後のような脈拍の速さがあるのに体は全く疲れていない。

それどころか、臍の下のあたりにエネルギーか何かがたまっているような錯覚すら覚える。

うぅむ、勃起はしてないみたいだがこのムラムラ感はやばいな。

とはいえ、誰でもいいってわけじゃない。

さっき目の前を通った際どい服を着た女性にはまったく反応しなかった。

この違いは何だろうか。

「お待たせしました。あれ、カーラ様は?」

「水を買いに行ってる。」

「今日は少し暑いですからね、体調はいかがです?」

「カーラにも言ったが特に変わりはないな。しいて言えばこの熱さぐらいか。気温のせいなのか歩いたせいなのかはわからないが汗が結構出る。」

「確かに、ちょっと失礼します。」

アネットが近づいてきて額の汗をぬぐってくれた。

その時にふわりと薬草の香りと一緒にアネットの少し甘い香りが鼻をくすぐる。

その瞬間。

さっきまで臍の下あたりで渦巻いていた何かが暴れだすのがわかった。

下半身に血液が集まるのがわかる。

これはやばい。

勃起しながら歩くとか世間体的にまずすぎる。

いやいや、それより離れないと。

「どうされました?」

「大丈夫だ、問題ない。」

「そんなわけありません、そんなに呼吸が早くなって・・・。遅効性の副作用?ううんそれとも別の何か?」

アネットが俺の手を掴み手首で脈拍を計っている。

アネットもそれなりに熱いんだろう、今度は汗の香りが俺に襲い掛かってきた。

したい。

今すぐに、アネットと・・・。

「お待たせって、どうしたんだい?」

「カーラ様、急にシロウ様の呼吸が荒くなったんです。脈拍もかなり早く、そして強くなっています。」

「それはまずいな。すぐにでも屋敷に戻ろう。」

「それよりも店に移動しましょう、そこの方が早いです。」

水を手に戻ってきたカーラがグイっと顔を近づけ、俺の目を覗き込んでくる。

化粧品の香りがまるでストレートパンチのように突き刺さる。

股間が痛い。

さっきまで何ともなかったというのに。

どう考えてもやばい状況だ。

二人に抱きかかえられるようにして市場から店へと移動する。

何度も触れる胸のふくらみ、それと女の香りに気が狂いそうだ。

早く二人を抱きたい。

それしか頭に浮かんでこない。

流石に店に戻るまではまずいという理性は働いているようだが、言い換えれば店にさえ戻れば歯止めが効かなくなるのは明白だ。

アネットはともかくカーラはまずい。

いや、まぁ抱いた事はあるから別に問題ないといえば問題ないのだが。

「いらっしゃいま・・・どうしたんですか!?」

「メルディ様ご主人様が体調を崩されたようで、ベッドをお借り出来ますか?」

「どうぞ、早く上へ。」

カウンターをくぐるときにメルディが心配そうに近づいてきたが、不思議とそういう気分は強くならなかった。

それよりも横にいる二人を抱きたくて仕方がない。

「何があっても上がってくるな、わかったな。」

「それと出来ればミラ様を呼んできてください。」

「わかりました!」

慌てた様子でメルディが店を飛び出していく。

ちゃんと不在の札にしたのは偉いが、鍵はかけといてほしかったなぁ。

とはいえ邪魔者はいなくなった。

もう我慢できそうにない。

二人に抱きかかえられながらなんとか二階に上がったところで、俺の理性はプツリと切れた。

「え?」

「あ!」

肩越しに二人の胸を強く揉む。

痛いかもしれないとか、そういう気配りをする余裕はなかった。

驚いた顔をしたアネットの口を強引にふさぎ、胸を鷲掴みにしたままカーラを抱き寄せる。

そこで、俺の意識はぷつりと途絶えた。

ハッと意識を取り戻したとき、最初に目に飛び込んできたのはあられもない姿でベッドの上に横たわる二人の姿だ。

意識はあるが息も絶え絶えという感じ。

もちろん俺も全裸だ。

「お気づきになられましたか?」

横からミラの落ち着いた声が聞こえてくる。

ゆっくりとそちらを向くと、柔らかい表情をしたミラが水を持って立っていた。

無言で手渡されたそれを受け取り喉の奥に流し込む。

受け取るときにミラの爽やかな香水の香りを嗅いだのだが、不思議とさっきのような激しい感情は湧いてこなかった。

「何があった。」

「お二人が倒れるまで抱き続けられました。」

「マジか。今何時だ?」

「もうすぐ夕方です。ご心配なくメルディ様は屋敷に残ってもらっています。」

「意識を失うまでヤリ続けるとかやばすぎるだろう。」

未だ意識の戻らない二人を見ながら俺はため息をついた。

薬のせい、としか考えられない。

若くなったとはいえ、それぐらいの分別はつく大人だ。

自分の家ならともかく他人のベッドでしこたまヤルとかありえないだろ。

「薬のせいだと思いますか?」

「それしかありえないだろう。」

「なら素晴らしい薬かもしれません。」

「なに?」

「いつもでしたら途中で休憩されるのに、今回は休むことなく二人を抱き続けられました。滋養強壮、いえ持久力が上がっているのでしょうか。」

「いや、何を冷静に・・・。」

「つまりそれだけ長い事行為に及べるという事は、たくさん愛していただけるわけです。」

二人のあられもない姿を見ながらもミラはいたって冷静だ。

いや、違うな。

その目は劣情に濡れてうるんでいる。

自分も同じようになりたいと。

いやいやいや、どこのエロ漫画だよ!

いくら何でも他人のベッドでそのまま致すとかいくら何でもダメだろう。

早く服を着て帰らないと。

いや、シーツも替えないとまずいな。

「ミラ、一つ言うがここではしないからな。」

「なら帰ってからというわけですね、喜んでお相手させて頂きます。」

「だからそうじゃなくてだな。」

「ちなみに先程のお水にお薬を混ぜておきましたが、お気づきになりませんでしたか!?」

「おま、嘘だろ!」

「冗談ですよ。」

いや、ぜんぜん冗談に聞えないから。

なんとか二人を着替えさせシーツを交換してから店を出る。

結局のところ、こんな風になった原因はやはり薬のせいだった。

被験者を替えつつデータを取った所、お互いに好意がある相手には持久力アップと同時に性欲が刺激される事が判明。

副作用としてはかなり致命的に感じるが、片恋慕では効果が発しないとの事なので引き続きデータが収拾される運びとなった。

持久力アップの効果はなかなかなので、副作用を理解しつつ使いたいという冒険者も多いのだとか。

加えて、俺達のような関係であれば副作用が副作用とはならずむしろプラスになる事もある。

えぇ、それはもう凄い効果でしたよ。

薬を飲んで行為に及べば朝までノンストップでやり続けるんだから。

それでいて翌日は気分爽快。

これはやばい薬だと改めて認識させられた。

よって、普段は使用せずここぞという時以外は飲まないと約束させることにした。

いくら薬でヤリつづけられるとはいえ朝までやり続けるのは宜しくない。

早く子供が欲しい気持ちはわかるが、薬の副作用が他にもないとも限らないからな。

何事も普通が一番だ。

そう、改めて感じる一日だった。
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