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196.転売屋は溜まった貸しを返してもらう
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翌朝。
断ったことに関してはアネットは何も言わず、いつものように仕事に打ち込んでいた。
まだ時間はある。
一先ず自分に出来る事をやるとするか。
「今日何か用事は入っていたっけか。」
「特に何もなかったかと。あ、いえ、昼前にシープ様がこちらに来られます。なんでも還年祭について打ち合わせをしたいとか。」
「俺は役員でも何でもないんだがな。」
「それだけ信頼されているという事でしょう。」
「これまで何度も貸しを作って来たが返してもらった覚えがない。」
「そうでしょうか。」
「多少はあるかもしれんが、返ってきている量が少ない。」
これはゆゆしき事態だ。
折角なので少し返してもらうとしよう。
「出て来る。」
「どうぞお気をつけて。」
「昼は適当に済ませてくれ。」
長くなる可能性もあるからな。
いつものように大通りを抜けギルド協会へと向かう。
その道中。
「あ、シロウさん。」
「ちょうど良い所に。」
前から向かってきた羊男の手を掴んで引っ張る。
「え、ちょっとなんですか?これから別件が・・・。」
「どうせ良くない仕事だろ?貸しを返してもらいに来たんだ、顔かせ。」
「勘弁してくださいよ~。」
とか言いながら抵抗しない所を見るとさほど重要な仕事ではないのかもしれない。
引きずるようにしてギルド協会へと戻り、適当な部屋に入る。
「全く何なんですか?」
「調べてほしいことがある。」
そう言うと、ふざけていた顔が急に真面目になった。
「悪い事ですか?」
「いいや、人助けさ。」
「なら仕方ありませんね、でも高くつきますよ。」
「今までいくつ貸してると思う?利子に決まってるだろ。」
「内容次第ですかねぇ。」
「ビアンカという錬金術師についてだ、聞いた事あるよな。」
「確か最近流れて来た新しい方ですね。冒険者としてエリザさんのチームに入っているとか。」
「なんで流れて来たかはしってるか?」
「借金を作ったとだけ。え、もしかしてそっち関係ですか?」
いやー、察しが良いねぇ。
何も言わずポンポンと肩を叩くと露骨に嫌な顔をする羊男。
「悪い仕事はしたくないんですけど。」
「悪くなんてないさ、むしろいい仕事だって言っただろ。人助けだって。」
「具体的に何をしてほしいんですか?」
「借金の理由がギルドへの納品依頼に失敗したって事なんだが、それよりも前に変な動きがあったようだ。薬草の大量買い占め、加えて莫大な違約金。まるで失敗させるために街中がグルになったような感じなんだが、それについて調べてほしい。」
「街ぐるみ・・・確かその人がいたのって山のすぐ近くにある街でしたよね。」
「良く知ってるじゃないか。」
「薬草はそこから仕入れていますから。でも、あそこで大量に買い占めがあったとは聞いていませんねぇ。」
「なら余計に怪しいな。」
「わかりました貸し三つで受けましょう。」
「貸し二つと利子はそれで勘弁してやる。」
「え~。」
「じゃあ頼んだぞ。」
返事を聞かずにもう一度肩を叩いて部屋を出る。
次は冒険者ギルドだ。
そのままギルドに向かい羊男の嫁を呼び出す。
「はいは~い、なんだシロウさんじゃない。」
「貸しを返してもらいに来たぞ。」
「えぇ?何の話?」
「旦那の貸しは嫁の貸し、そうだよな?」
「違うと思います。」
「いいから頼まれてくれ、最近薬草の買い占めやポーションの大量納品とかなかったか?」
こちらもふざけた顔が急に真面目になる。
「ビアンカちゃんの件ですね。」
「なんだ、わかってるなら話が早い。」
さすが羊男の嫁、どこかの脳筋とはえらい違いだ。
「私も調べてみたんですけど、そう言った話は聞かないですねぇ。」
「ってことは薬草が無くなるとは考えにくいのか。」
「普通に考えて粗悪品しかなかったってのは考えにくいです。」
「う~む・・・。」
「あんまり変な事に首を突っ込むと恨まれますよ。」
「なんだよ、変な事って。」
「風の噂ですけど、悪い組織が人身売買に手を染めているらしいんです。客が希望する奴隷を安く仕入れてくるとか・・・。まぁ、あくまでも噂ですけど。」
あくまでも噂と強調するあたりが嘘くさい。
ガチの人身売買が行われているんだろう。
「人身売買って、奴隷にでもするのか?」
「奴隷にしないでそのまま売買するんですって、それって違法なんだけどなぁ。」
「確か奴隷商人を通さないと買っちゃいけない決まりだよな?」
「そうなんです!でもその人たちはそういう所を通さずにやり取りしてる・・・てのが噂ですね。」
「今の苦しくないか?」
「そ、そんなことないですって。」
「まぁいい、情報ありがとな。」
「じゃあ貸し1返却で。」
「噂が本当だったら考えてやる。」
「だから噂なんですってば~。」
ヒラヒラと手を振って最後に向かうのは・・・、そう言えば自分から行くのって初めてだな。
大通りを抜けて小道へ。
裏通りへと進むとすぐに目的の店があった。
玄関に警備員が二人。
かなり強面だ。
「これは買取屋様、何用でしょう。」
「レイブさんに面会したい。」
「主は今接客中でして。」
「人身売買の件・・・と言ってくれれば。」
「・・・畏まりました。」
二人のうちの一人が小走りで中に入って行く。
少し待つと戻って来た。
「お会いになるそうです。中に入り、係の者に付いて行ってください。」
「わかった。」
レイブさんから買った奴隷が二人もいるのに、中に入ったことがないのは我ながら意外だな。
ミラを買った時もここには来なかったんだっけ。
アネットはオークションだし、機会がなかったんだろう。
大きな建物だ。
二階は正方形の吹き抜けになっていて、それぞれに二部屋ずつあるようだ。
商談用だろうか。
奴隷は・・・三階もしくは地下にでもいるんだろうなぁ。
見ただけではここが奴隷商の店とは思わないだろう。
案内してくれるのは何とも胸の大きな女性だった。
その人は無言で俺を突き当り一番奥の部屋へと誘導してくれた。
「ここで待てばいいのか?」
返事の代わりに無言で頭を下げる。
胸元が大きく開いた服なので谷間がバッチリと視界に入って来た。
デカイ。
思わず指を入れそうになるがなんとか我慢する。
胸元を見ないようにくるりと反転しソファーに座る。
待つこと五分ぐらい。
「これはシロウ様、よくお越しくださいました。」
「忙しいところ申し訳ない。」
「いえいえ、大事なお話のようですから。」
「単刀直入に聞きますが、人身売買を行っているという連中について何か知りませんか?」
「・・・その話をどこで?」
「色々と聞いて回っていると、そんな話を耳にしましてね。やはり本業の人に聞くのが一番と思いましてやってきました。」
「確かにそう言う連中はいる・・・ようです。」
珍しくレイブさんが中途半端な返事をする。
言いたくないのか、それとも知らないのか。
微妙な所だ。
「たとえばですけど、レイブさんに『錬金術師の奴隷が欲しい』と言ったらどういう風に手配されるんですか?」
「まずは仲間内に連絡を取り該当の奴隷がいないかを探します。もし複数いる場合は内容を詳しく聞き、シロウ様にお伺いする形になるでしょう。」
「もしいなかったら?」
「待ちます。」
「なるほど。」
「農作物と違い作ることはできませんから、業者間で連絡を取り合って仕入れを待つ。そんな感じになるでしょう。」
まぁ当然だよな。
簡単に手に入るようなものじゃない。
冒険者ならともかく錬金術師なんて珍しい職業だ。
加えてそこに女性が良いとか、胸が大きい方がいいとか、条件が付くと見つかる可能性はどんどん低くなる。
「目的の奴隷を手に入れるために強引な手法を取り安く仕入れる。仕事の敵ですね。」
「全くです。」
「すみません、変な事を聞きました。」
「いえいえ、ですがお気を付けください。」
「何がですか?」
「かなり危険な連中のようですから。」
「ご忠告感謝します。」
「それでですね、せっかくですから奴隷を見て帰られませんか?シロウ様が絶対に気に入る子がいるんです。」
「おっと、用事を思い出しました。それはまたの機会に・・・。」
「それは残念です。」
あぶねぇ、追加でもう一人買わされる所だった。
あわてて御礼を言ってレイブさんの店を後にする。
さーて、三か所全部でヤバイ相手だと忠告されてしまった。
手を出すか出さざるべきか、そこが問題だ・・・なんてね。
断ったことに関してはアネットは何も言わず、いつものように仕事に打ち込んでいた。
まだ時間はある。
一先ず自分に出来る事をやるとするか。
「今日何か用事は入っていたっけか。」
「特に何もなかったかと。あ、いえ、昼前にシープ様がこちらに来られます。なんでも還年祭について打ち合わせをしたいとか。」
「俺は役員でも何でもないんだがな。」
「それだけ信頼されているという事でしょう。」
「これまで何度も貸しを作って来たが返してもらった覚えがない。」
「そうでしょうか。」
「多少はあるかもしれんが、返ってきている量が少ない。」
これはゆゆしき事態だ。
折角なので少し返してもらうとしよう。
「出て来る。」
「どうぞお気をつけて。」
「昼は適当に済ませてくれ。」
長くなる可能性もあるからな。
いつものように大通りを抜けギルド協会へと向かう。
その道中。
「あ、シロウさん。」
「ちょうど良い所に。」
前から向かってきた羊男の手を掴んで引っ張る。
「え、ちょっとなんですか?これから別件が・・・。」
「どうせ良くない仕事だろ?貸しを返してもらいに来たんだ、顔かせ。」
「勘弁してくださいよ~。」
とか言いながら抵抗しない所を見るとさほど重要な仕事ではないのかもしれない。
引きずるようにしてギルド協会へと戻り、適当な部屋に入る。
「全く何なんですか?」
「調べてほしいことがある。」
そう言うと、ふざけていた顔が急に真面目になった。
「悪い事ですか?」
「いいや、人助けさ。」
「なら仕方ありませんね、でも高くつきますよ。」
「今までいくつ貸してると思う?利子に決まってるだろ。」
「内容次第ですかねぇ。」
「ビアンカという錬金術師についてだ、聞いた事あるよな。」
「確か最近流れて来た新しい方ですね。冒険者としてエリザさんのチームに入っているとか。」
「なんで流れて来たかはしってるか?」
「借金を作ったとだけ。え、もしかしてそっち関係ですか?」
いやー、察しが良いねぇ。
何も言わずポンポンと肩を叩くと露骨に嫌な顔をする羊男。
「悪い仕事はしたくないんですけど。」
「悪くなんてないさ、むしろいい仕事だって言っただろ。人助けだって。」
「具体的に何をしてほしいんですか?」
「借金の理由がギルドへの納品依頼に失敗したって事なんだが、それよりも前に変な動きがあったようだ。薬草の大量買い占め、加えて莫大な違約金。まるで失敗させるために街中がグルになったような感じなんだが、それについて調べてほしい。」
「街ぐるみ・・・確かその人がいたのって山のすぐ近くにある街でしたよね。」
「良く知ってるじゃないか。」
「薬草はそこから仕入れていますから。でも、あそこで大量に買い占めがあったとは聞いていませんねぇ。」
「なら余計に怪しいな。」
「わかりました貸し三つで受けましょう。」
「貸し二つと利子はそれで勘弁してやる。」
「え~。」
「じゃあ頼んだぞ。」
返事を聞かずにもう一度肩を叩いて部屋を出る。
次は冒険者ギルドだ。
そのままギルドに向かい羊男の嫁を呼び出す。
「はいは~い、なんだシロウさんじゃない。」
「貸しを返してもらいに来たぞ。」
「えぇ?何の話?」
「旦那の貸しは嫁の貸し、そうだよな?」
「違うと思います。」
「いいから頼まれてくれ、最近薬草の買い占めやポーションの大量納品とかなかったか?」
こちらもふざけた顔が急に真面目になる。
「ビアンカちゃんの件ですね。」
「なんだ、わかってるなら話が早い。」
さすが羊男の嫁、どこかの脳筋とはえらい違いだ。
「私も調べてみたんですけど、そう言った話は聞かないですねぇ。」
「ってことは薬草が無くなるとは考えにくいのか。」
「普通に考えて粗悪品しかなかったってのは考えにくいです。」
「う~む・・・。」
「あんまり変な事に首を突っ込むと恨まれますよ。」
「なんだよ、変な事って。」
「風の噂ですけど、悪い組織が人身売買に手を染めているらしいんです。客が希望する奴隷を安く仕入れてくるとか・・・。まぁ、あくまでも噂ですけど。」
あくまでも噂と強調するあたりが嘘くさい。
ガチの人身売買が行われているんだろう。
「人身売買って、奴隷にでもするのか?」
「奴隷にしないでそのまま売買するんですって、それって違法なんだけどなぁ。」
「確か奴隷商人を通さないと買っちゃいけない決まりだよな?」
「そうなんです!でもその人たちはそういう所を通さずにやり取りしてる・・・てのが噂ですね。」
「今の苦しくないか?」
「そ、そんなことないですって。」
「まぁいい、情報ありがとな。」
「じゃあ貸し1返却で。」
「噂が本当だったら考えてやる。」
「だから噂なんですってば~。」
ヒラヒラと手を振って最後に向かうのは・・・、そう言えば自分から行くのって初めてだな。
大通りを抜けて小道へ。
裏通りへと進むとすぐに目的の店があった。
玄関に警備員が二人。
かなり強面だ。
「これは買取屋様、何用でしょう。」
「レイブさんに面会したい。」
「主は今接客中でして。」
「人身売買の件・・・と言ってくれれば。」
「・・・畏まりました。」
二人のうちの一人が小走りで中に入って行く。
少し待つと戻って来た。
「お会いになるそうです。中に入り、係の者に付いて行ってください。」
「わかった。」
レイブさんから買った奴隷が二人もいるのに、中に入ったことがないのは我ながら意外だな。
ミラを買った時もここには来なかったんだっけ。
アネットはオークションだし、機会がなかったんだろう。
大きな建物だ。
二階は正方形の吹き抜けになっていて、それぞれに二部屋ずつあるようだ。
商談用だろうか。
奴隷は・・・三階もしくは地下にでもいるんだろうなぁ。
見ただけではここが奴隷商の店とは思わないだろう。
案内してくれるのは何とも胸の大きな女性だった。
その人は無言で俺を突き当り一番奥の部屋へと誘導してくれた。
「ここで待てばいいのか?」
返事の代わりに無言で頭を下げる。
胸元が大きく開いた服なので谷間がバッチリと視界に入って来た。
デカイ。
思わず指を入れそうになるがなんとか我慢する。
胸元を見ないようにくるりと反転しソファーに座る。
待つこと五分ぐらい。
「これはシロウ様、よくお越しくださいました。」
「忙しいところ申し訳ない。」
「いえいえ、大事なお話のようですから。」
「単刀直入に聞きますが、人身売買を行っているという連中について何か知りませんか?」
「・・・その話をどこで?」
「色々と聞いて回っていると、そんな話を耳にしましてね。やはり本業の人に聞くのが一番と思いましてやってきました。」
「確かにそう言う連中はいる・・・ようです。」
珍しくレイブさんが中途半端な返事をする。
言いたくないのか、それとも知らないのか。
微妙な所だ。
「たとえばですけど、レイブさんに『錬金術師の奴隷が欲しい』と言ったらどういう風に手配されるんですか?」
「まずは仲間内に連絡を取り該当の奴隷がいないかを探します。もし複数いる場合は内容を詳しく聞き、シロウ様にお伺いする形になるでしょう。」
「もしいなかったら?」
「待ちます。」
「なるほど。」
「農作物と違い作ることはできませんから、業者間で連絡を取り合って仕入れを待つ。そんな感じになるでしょう。」
まぁ当然だよな。
簡単に手に入るようなものじゃない。
冒険者ならともかく錬金術師なんて珍しい職業だ。
加えてそこに女性が良いとか、胸が大きい方がいいとか、条件が付くと見つかる可能性はどんどん低くなる。
「目的の奴隷を手に入れるために強引な手法を取り安く仕入れる。仕事の敵ですね。」
「全くです。」
「すみません、変な事を聞きました。」
「いえいえ、ですがお気を付けください。」
「何がですか?」
「かなり危険な連中のようですから。」
「ご忠告感謝します。」
「それでですね、せっかくですから奴隷を見て帰られませんか?シロウ様が絶対に気に入る子がいるんです。」
「おっと、用事を思い出しました。それはまたの機会に・・・。」
「それは残念です。」
あぶねぇ、追加でもう一人買わされる所だった。
あわてて御礼を言ってレイブさんの店を後にする。
さーて、三か所全部でヤバイ相手だと忠告されてしまった。
手を出すか出さざるべきか、そこが問題だ・・・なんてね。
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