102 / 108
心細いときには、2
しおりを挟む
ファミリーレストランの会社に勤めているのに、料理の一つもできない事に少し恥ずかしさを覚えている自分がいた。
キッチン業務もしていたので、まったく出来ないわけではないのだが、人に…ましてや、病人にふるまえるようなものは作ったことがない。
とりあえず、ということで経口補水液とゼリー飲料を持っていく。
「隆弘さん…?」
そっと寝室の扉を開ける。
「…んん…?」
「なにか、食べられそうですか?」
「…うぅん…、食欲…あんまりないな…」
「病院は行きました…?」
「うん。朝、行ってきた…。…昼は薬飲んだんだけど…」
「じゃあ、少しで良いので食べてから、夜の分飲みましょう?」
「わかった…」
日和は、そっと額に手を乗せる。けっこうな熱さだった。
「熱、高そうですね。体温計はありますか?」
「…寝る前に測った時には…、39℃くらい…だったと思う…」
枕元の体温計のスイッチを入れると、直前の検温は39.3℃になっていた。
「かなり高いですね。何かいま、欲しい物とかありますか?」
「ん…わかんない…」
「ゼリー飲料とか、スポーツドリンクとか買ってきましたから…」
「喉は…かわいたかも…」
「起き上がれますか?」
「ん…」
副島がゆっくりと身体を起こすので、それを手助けする。
背中のあたりが汗でしっとり濡れていた。
「着替えもしましょうか」
フタをあけた経口補水液を渡し、日和はクローゼットから副島のパジャマの着替えを出した。
普段の10分の1くらいの速度で水分補給をしているようすで、日和は副島の具合の悪さを心配した。
「ありがとう、日和…」
着替えと交換でペットボトルを受け取る。こぼれないけれどきつくない強さでフタを閉めて、近くに置いた。
「着替え手伝います?」
「ん、大丈夫…」
「じゃあ、おかゆと氷枕の準備してきます」
副島が着替え始めたので、日和はタオルを持ってキッチンに向かう。
先ほど入れておいた氷枕を一つ取り出して、タオルでくるんだ。
器におかゆを半分ほどあけて、レンジで温める。それらをトレーに乗せて寝室に戻ると、着替えが終わったのか副島がぐったりと座り込んでる。
「隆弘さん、おかゆ持ってきましたから、少し食べてください」
サイドテーブルにおかゆを置き、枕のところに氷枕を置いた。
「食欲…あんまりないな…」
「そうですよね…」
日和があまりに困った顔をしているので、副島は微笑んだ。
「ごめんね、日和にそんな顔させてしまって…」
「あっ、いえ、そんなっ、俺が勝手に来て、勝手に困ってるだけですからっ」
「ふふ…、本当は、一人で心細くなってたから…嬉しいよ」
「良かったです」
副島におかゆを手渡して、日和は、
「少しで良いですから、食べてくださいね」
と、スプーンを渡す。
「ありがとう」
副島は、ゆっくりとおかゆをすする。
2~3口食べたところで、副島は手を止めてしまった。
キッチン業務もしていたので、まったく出来ないわけではないのだが、人に…ましてや、病人にふるまえるようなものは作ったことがない。
とりあえず、ということで経口補水液とゼリー飲料を持っていく。
「隆弘さん…?」
そっと寝室の扉を開ける。
「…んん…?」
「なにか、食べられそうですか?」
「…うぅん…、食欲…あんまりないな…」
「病院は行きました…?」
「うん。朝、行ってきた…。…昼は薬飲んだんだけど…」
「じゃあ、少しで良いので食べてから、夜の分飲みましょう?」
「わかった…」
日和は、そっと額に手を乗せる。けっこうな熱さだった。
「熱、高そうですね。体温計はありますか?」
「…寝る前に測った時には…、39℃くらい…だったと思う…」
枕元の体温計のスイッチを入れると、直前の検温は39.3℃になっていた。
「かなり高いですね。何かいま、欲しい物とかありますか?」
「ん…わかんない…」
「ゼリー飲料とか、スポーツドリンクとか買ってきましたから…」
「喉は…かわいたかも…」
「起き上がれますか?」
「ん…」
副島がゆっくりと身体を起こすので、それを手助けする。
背中のあたりが汗でしっとり濡れていた。
「着替えもしましょうか」
フタをあけた経口補水液を渡し、日和はクローゼットから副島のパジャマの着替えを出した。
普段の10分の1くらいの速度で水分補給をしているようすで、日和は副島の具合の悪さを心配した。
「ありがとう、日和…」
着替えと交換でペットボトルを受け取る。こぼれないけれどきつくない強さでフタを閉めて、近くに置いた。
「着替え手伝います?」
「ん、大丈夫…」
「じゃあ、おかゆと氷枕の準備してきます」
副島が着替え始めたので、日和はタオルを持ってキッチンに向かう。
先ほど入れておいた氷枕を一つ取り出して、タオルでくるんだ。
器におかゆを半分ほどあけて、レンジで温める。それらをトレーに乗せて寝室に戻ると、着替えが終わったのか副島がぐったりと座り込んでる。
「隆弘さん、おかゆ持ってきましたから、少し食べてください」
サイドテーブルにおかゆを置き、枕のところに氷枕を置いた。
「食欲…あんまりないな…」
「そうですよね…」
日和があまりに困った顔をしているので、副島は微笑んだ。
「ごめんね、日和にそんな顔させてしまって…」
「あっ、いえ、そんなっ、俺が勝手に来て、勝手に困ってるだけですからっ」
「ふふ…、本当は、一人で心細くなってたから…嬉しいよ」
「良かったです」
副島におかゆを手渡して、日和は、
「少しで良いですから、食べてくださいね」
と、スプーンを渡す。
「ありがとう」
副島は、ゆっくりとおかゆをすする。
2~3口食べたところで、副島は手を止めてしまった。
0
お気に入りに追加
101
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる