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六章初デート
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「甲斐くん……矢崎くんの事気になるの?」
俺がBクラスの奴らから情報を得ると、なんだか面白くなさそうな悠里。
「え、あー……なんとなく、かな」
「それは友達として?」
「友達としてだよ」
矢崎に対して友達という響きにとても違和感を覚えたが、あえてそれ以上は何も突っ込まず、考えない事にした。
昼休み、親衛隊どもを軽くあしらってから猫の家へ向かう。
親衛隊どもは忘れた頃に邪魔ばかりしてくるので、ゴキおもちゃをいつもの倍にしたらあっさり逃げて行った。あいつらの学習能力のなさと相当なゴキ嫌いはありがたいが、おもちゃに慣れてもらっても困るので、本物も混ぜているのが効果覿面である。
やはりゴキは今後も必要だな……と言いたい所だが、俺がゴキブリ好きと思われても心外である。
いくら親衛隊の奴らから「ゴキブリ好きの変態」だとか、自宅に大量に生息しているからと言って「ゴキと友達だろ」だなんてあんまりだ。誹謗中傷である。
おまけに最近ドンキでゴキおもちゃを定期的に購入しているせいか、店員に顔を覚えられちまったのだ。俺が来た途端に「またゴキっすかwwwまwwいーっすけどwww最近お宅が定期的に購入してくれているおかげで大量に入荷がきまったんすwwwゴキ好きさんあざーすwww」とか言われちまった。違うんだ。俺は決してゴキ好きではないんだああ!!
しかも、これを大量に親衛隊相手に使った後は、用務員のおじさんと掃除のおばちゃんとで一緒に片づけるのだが、その黒い物体をほうきと塵取りで掃除する時ときたらひどい地獄絵図であったよ。恐怖だったね。それを回収するゴミ収集車の皆さんの恐怖よりかはマシだとは思うが……ゴミ業者の皆さんごめんちゃい。俺が地球のごみを増やしていますよね。
まあ、ともかく。ゴキおもちゃ(本家含む)をこれ以上増殖させたくないのと、ゴキ好きだと思われたくないのが俺の切なる願いである。
猫の家にやってくると、矢崎以外の四天王三人組が二匹と猫じゃらしで遊んでいた。三人同時にこの場にいるのなんか珍しいな。
「穂高ちゃんがきっと甲斐ちゃんに会いに行くだろうなーと思って待ってたらビンゴだったね」
「ぼくは数日に一回は猫の家にやって来てるから習慣だよ」
「俺は架谷に弁当の評価をしてもらおうと待っていただけだ」
まさかの四天王三人が揃っている場面に立ち会えている俺って、かなりうらやましい事なんじゃなかろうか。親衛隊ならよだれを垂らすほど見たい光景の一つで、それを観覧料なしで独り占めしている俺はあとでファンにフクロにされるかもしれない。ま、ゴキおもちゃあるから平気なんですけど。
猫の家の奥の部屋には豪勢な食事がテーブル上に並んでいて、そばには執事が立っていて驚いた。
なんじゃこりゃ。猫の家が高級レストラン顔負けのフロアになってやがるし。昼からこれ食べるなんてさすが四天王さん達だ。
「昼に三人同時に来るとは珍しいな」
俺が二匹を撫でながら三人の野郎共を見据える。
こうして改めて見ると、一般人と比べて漂うオーラが違うよな。
「食堂なんてうるさいし、ここにくれば甲斐ちゃんにあえると思って来ただけー。ついでに豪勢な料理も甲斐ちゃんのために用意したから、今日はおごってあげるー」
「え、まじか。食っていいの?最近もやし料理ばっかで飽きてたから、昼からフルコース食えるとは嬉しいもんだ。今日の弁当だって親父が給料前なせいでもやしで統一されてんだよ」
俺がナイフとフォークを持ってステーキに目をつけようとした所で、
「甲斐くん、手つけない方がいいよ。中に大量の唐辛子や睡眠薬が入ってるかもしれない」
「ふむ、拓実ならありえそうだな。それに架谷相手だとすれば中には媚薬が入っているかもしれない。気を抜かない方がいいぞ」
穂高と久瀬がまさかと思うような不穏な事を言うので、俺の手からフォークとナイフがガシャンと崩れ落ちた。
「……まじ?」
キッと相田の顔を探るように睨む。
「もーやだなー。さすがにそこまでするわけないじゃない。純粋に甲斐ちゃんに奢りたいだけなのにさー二人ともやな事言わないでよー」
「えーいつもそう言いながら何か必ず入れてるじゃない。この前はシュークリームの中にからし入れたりして面白がってたし」
「その前はステーキにかかっていたソースがデスソースだったりしたな」
「……うわ、それ最悪。食い物粗末にするとか祟られるぞてめえ」
「もー今回はマジで何も入れてないしっ!信じてよー!」
一応、恐る恐る味見をしながら食べたが、今回は何も入っていないようで疑いはなくなった。が、恐る恐る食べる食事なんて美味くもなんともねーので、実に楽しくない食事をしたもんだよ。全く、相田相手には油断できんわ。
「そういやあさ、最近の矢崎ってCMに出てるらしいんだがどんなCMなんだよ?」
さっきのBクラスのモブ共に聞いたが、俺が首絞めたせいで怖がって教えてくれなかったからな。
「甲斐ちゃん見てないの?」
「テレビ見ないからさ、あいつがCM出てるなんて知らなかったんだ」
くどいようだが決してテレビを買う金がないというわけではないぞ。
「直くんね、子会社の方の広告塔をしばらく担当することになって最近忙しいんだ。本人は死ぬほどやりたくないだろうけど仕方なくって感じで出演してるみたい」
「全国から四天王だなんだと呼ばれてりゃあ、地道に稼ぐより己を武器にした方が業績上がりそうだなって上層部の幹部共に言われちゃっててねー。それで広告塔にされちゃってた」
「だが、それはあくまで表向きの理由。本当の理由は桐谷杏奈を探るために期間限定のCM契約をしたと考えるのが正解だ」
「え……桐谷?」
俺をはめやがった女か。そこまでして探ろうとするって結構曲者的存在なのかな。
「直は本気で桐谷杏奈を潰すために裏から少しづつ根回しをしている。今までの直からすれば考えられない行動と言ってもいいだろう」
「だってCMでキスしちゃってるし」
「キスぅ!?」
俺が素っ頓狂な声をあげて驚く。まさかのCMの内容はキスなのかよ。
「あら、CMでキスでも甲斐ちゃんは抵抗ある?」
「あーまぁー……所詮は演技、なんだろ?」
演技だと思えばどうって事はないんだろうけど、なんだか複雑な気持ちだ。
「直は嫌々キス演じてたよ。直ってHする以上にキスにこだわりあるみたいだし」
「こだわり?」
「うん。好きな人以外とはできるだけしたくないとか言ってた。柄にもなく乙女みたいな考えだよねー」
そりゃあこだわりあるなら嫌だろうな。世の中の女優や俳優がそれを演じている事に今更ながら拍手を送りたいよ。
「そういえばさ、桐谷ってそんなにヤバい女なのか?」
矢崎とはビジネス上の関係を持ってて、性格悪そうな女だとは理解しているが、そんなに危ない女なのだろうか。
「やばいよ。あの女は。直くんを手に入れるためならなんだってする。何人も合理的に人を殺しちゃうの」
穂高のマジ顔で言う内容に俺は言葉を失う。こいつが笑わないという事は相当な女なんだな。
「今まで何度もあの女に迷惑かけられたもんね~。何度、暗殺しようかって思ったよ」
そこまでかよ。ていうか暗殺が冗談に聞こえないし。
「桐谷は正之社長の最近の愛人一号と言われていて、正之社長を転がせる立場にある上に背後には白井グループを味方につけている」
眼鏡を光らせて言う久瀬。
「まじか……」
「詳細は調査中なんだけど、それだけはたしか。でなければ、今頃あんな女とっくに消されてるよ」
まだ消せないという事は、それだけバックの白井が曲者なんだろうな。
「消す以上に死にたくなるくらい拷問した末に殺してやりたいけどね~」
「架谷の前で物騒だぞ、拓実」
一般人の俺に配慮して、あえて裏社会の闇を話さないようにはしてくれているんだろうけど、相田達の顔を見れば人殺しが当たり前の世界なんだろう。
「ま、そういう事で、直はなんとしてでも桐谷関連にケリをつけたいわけ」
「これ以上調子に乗られるとさすがに痛いからね」
俺がBクラスの奴らから情報を得ると、なんだか面白くなさそうな悠里。
「え、あー……なんとなく、かな」
「それは友達として?」
「友達としてだよ」
矢崎に対して友達という響きにとても違和感を覚えたが、あえてそれ以上は何も突っ込まず、考えない事にした。
昼休み、親衛隊どもを軽くあしらってから猫の家へ向かう。
親衛隊どもは忘れた頃に邪魔ばかりしてくるので、ゴキおもちゃをいつもの倍にしたらあっさり逃げて行った。あいつらの学習能力のなさと相当なゴキ嫌いはありがたいが、おもちゃに慣れてもらっても困るので、本物も混ぜているのが効果覿面である。
やはりゴキは今後も必要だな……と言いたい所だが、俺がゴキブリ好きと思われても心外である。
いくら親衛隊の奴らから「ゴキブリ好きの変態」だとか、自宅に大量に生息しているからと言って「ゴキと友達だろ」だなんてあんまりだ。誹謗中傷である。
おまけに最近ドンキでゴキおもちゃを定期的に購入しているせいか、店員に顔を覚えられちまったのだ。俺が来た途端に「またゴキっすかwwwまwwいーっすけどwww最近お宅が定期的に購入してくれているおかげで大量に入荷がきまったんすwwwゴキ好きさんあざーすwww」とか言われちまった。違うんだ。俺は決してゴキ好きではないんだああ!!
しかも、これを大量に親衛隊相手に使った後は、用務員のおじさんと掃除のおばちゃんとで一緒に片づけるのだが、その黒い物体をほうきと塵取りで掃除する時ときたらひどい地獄絵図であったよ。恐怖だったね。それを回収するゴミ収集車の皆さんの恐怖よりかはマシだとは思うが……ゴミ業者の皆さんごめんちゃい。俺が地球のごみを増やしていますよね。
まあ、ともかく。ゴキおもちゃ(本家含む)をこれ以上増殖させたくないのと、ゴキ好きだと思われたくないのが俺の切なる願いである。
猫の家にやってくると、矢崎以外の四天王三人組が二匹と猫じゃらしで遊んでいた。三人同時にこの場にいるのなんか珍しいな。
「穂高ちゃんがきっと甲斐ちゃんに会いに行くだろうなーと思って待ってたらビンゴだったね」
「ぼくは数日に一回は猫の家にやって来てるから習慣だよ」
「俺は架谷に弁当の評価をしてもらおうと待っていただけだ」
まさかの四天王三人が揃っている場面に立ち会えている俺って、かなりうらやましい事なんじゃなかろうか。親衛隊ならよだれを垂らすほど見たい光景の一つで、それを観覧料なしで独り占めしている俺はあとでファンにフクロにされるかもしれない。ま、ゴキおもちゃあるから平気なんですけど。
猫の家の奥の部屋には豪勢な食事がテーブル上に並んでいて、そばには執事が立っていて驚いた。
なんじゃこりゃ。猫の家が高級レストラン顔負けのフロアになってやがるし。昼からこれ食べるなんてさすが四天王さん達だ。
「昼に三人同時に来るとは珍しいな」
俺が二匹を撫でながら三人の野郎共を見据える。
こうして改めて見ると、一般人と比べて漂うオーラが違うよな。
「食堂なんてうるさいし、ここにくれば甲斐ちゃんにあえると思って来ただけー。ついでに豪勢な料理も甲斐ちゃんのために用意したから、今日はおごってあげるー」
「え、まじか。食っていいの?最近もやし料理ばっかで飽きてたから、昼からフルコース食えるとは嬉しいもんだ。今日の弁当だって親父が給料前なせいでもやしで統一されてんだよ」
俺がナイフとフォークを持ってステーキに目をつけようとした所で、
「甲斐くん、手つけない方がいいよ。中に大量の唐辛子や睡眠薬が入ってるかもしれない」
「ふむ、拓実ならありえそうだな。それに架谷相手だとすれば中には媚薬が入っているかもしれない。気を抜かない方がいいぞ」
穂高と久瀬がまさかと思うような不穏な事を言うので、俺の手からフォークとナイフがガシャンと崩れ落ちた。
「……まじ?」
キッと相田の顔を探るように睨む。
「もーやだなー。さすがにそこまでするわけないじゃない。純粋に甲斐ちゃんに奢りたいだけなのにさー二人ともやな事言わないでよー」
「えーいつもそう言いながら何か必ず入れてるじゃない。この前はシュークリームの中にからし入れたりして面白がってたし」
「その前はステーキにかかっていたソースがデスソースだったりしたな」
「……うわ、それ最悪。食い物粗末にするとか祟られるぞてめえ」
「もー今回はマジで何も入れてないしっ!信じてよー!」
一応、恐る恐る味見をしながら食べたが、今回は何も入っていないようで疑いはなくなった。が、恐る恐る食べる食事なんて美味くもなんともねーので、実に楽しくない食事をしたもんだよ。全く、相田相手には油断できんわ。
「そういやあさ、最近の矢崎ってCMに出てるらしいんだがどんなCMなんだよ?」
さっきのBクラスのモブ共に聞いたが、俺が首絞めたせいで怖がって教えてくれなかったからな。
「甲斐ちゃん見てないの?」
「テレビ見ないからさ、あいつがCM出てるなんて知らなかったんだ」
くどいようだが決してテレビを買う金がないというわけではないぞ。
「直くんね、子会社の方の広告塔をしばらく担当することになって最近忙しいんだ。本人は死ぬほどやりたくないだろうけど仕方なくって感じで出演してるみたい」
「全国から四天王だなんだと呼ばれてりゃあ、地道に稼ぐより己を武器にした方が業績上がりそうだなって上層部の幹部共に言われちゃっててねー。それで広告塔にされちゃってた」
「だが、それはあくまで表向きの理由。本当の理由は桐谷杏奈を探るために期間限定のCM契約をしたと考えるのが正解だ」
「え……桐谷?」
俺をはめやがった女か。そこまでして探ろうとするって結構曲者的存在なのかな。
「直は本気で桐谷杏奈を潰すために裏から少しづつ根回しをしている。今までの直からすれば考えられない行動と言ってもいいだろう」
「だってCMでキスしちゃってるし」
「キスぅ!?」
俺が素っ頓狂な声をあげて驚く。まさかのCMの内容はキスなのかよ。
「あら、CMでキスでも甲斐ちゃんは抵抗ある?」
「あーまぁー……所詮は演技、なんだろ?」
演技だと思えばどうって事はないんだろうけど、なんだか複雑な気持ちだ。
「直は嫌々キス演じてたよ。直ってHする以上にキスにこだわりあるみたいだし」
「こだわり?」
「うん。好きな人以外とはできるだけしたくないとか言ってた。柄にもなく乙女みたいな考えだよねー」
そりゃあこだわりあるなら嫌だろうな。世の中の女優や俳優がそれを演じている事に今更ながら拍手を送りたいよ。
「そういえばさ、桐谷ってそんなにヤバい女なのか?」
矢崎とはビジネス上の関係を持ってて、性格悪そうな女だとは理解しているが、そんなに危ない女なのだろうか。
「やばいよ。あの女は。直くんを手に入れるためならなんだってする。何人も合理的に人を殺しちゃうの」
穂高のマジ顔で言う内容に俺は言葉を失う。こいつが笑わないという事は相当な女なんだな。
「今まで何度もあの女に迷惑かけられたもんね~。何度、暗殺しようかって思ったよ」
そこまでかよ。ていうか暗殺が冗談に聞こえないし。
「桐谷は正之社長の最近の愛人一号と言われていて、正之社長を転がせる立場にある上に背後には白井グループを味方につけている」
眼鏡を光らせて言う久瀬。
「まじか……」
「詳細は調査中なんだけど、それだけはたしか。でなければ、今頃あんな女とっくに消されてるよ」
まだ消せないという事は、それだけバックの白井が曲者なんだろうな。
「消す以上に死にたくなるくらい拷問した末に殺してやりたいけどね~」
「架谷の前で物騒だぞ、拓実」
一般人の俺に配慮して、あえて裏社会の闇を話さないようにはしてくれているんだろうけど、相田達の顔を見れば人殺しが当たり前の世界なんだろう。
「ま、そういう事で、直はなんとしてでも桐谷関連にケリをつけたいわけ」
「これ以上調子に乗られるとさすがに痛いからね」
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