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五章仮面ユ・カイダー爆誕
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「おれは……二ヶ月前までホワイトコーポレーションで働いていたんだ。最初は不本意じゃなかったが、借金返済のためにって無理矢理労働させられて連れてこられたんだ。だが、そこから歯車が狂いだしたっつうか……ホワイトコーポレーションってやべえとこだって気づいたんだよ」
「その前に、そこで働く前からあなたは借金をしていましたよね?母から何度も金の無心をして……時々、私の所にも来て金をくれと……」
うわ、以前から借金に金の無心か。クソだなこいつ。
「それは仕方なくだったんだ。どーしても金がほしくてさ、パチンコと競馬にハマっちまってよ……中毒になってるって自覚があってもやめられなかったんだ。何度やめようやめようって思っても、今日は勝つような気がするとか、気分がいいとか、根拠もないのに溺れちまって、のめり込む度に借金は膨れ上がる一方で、どうしていいかわからなかったんだ!」
被害者ズラして言い訳ばかりか。あきれるわい。
「ふん、完全なギャンブル依存症だな。昔の俺を見ているかのよーだ」と、ゲス谷。
「職務中にタバコ吸ってるようなあんたならありえそうな過去ですもんねー」
と、カツ丼爆食いする俺。うまうま。
「ふん、好きでこうなったんじゃねーよ!てめーもカツ丼食いながらしゃべんじゃねえ!」
「まあ、ギャンブル依存症って麻薬みたいなものでなかなか侮れませんから。病院に行った方がいいでしょうね」
助手の熊谷がため息がちに調書をパソコンでとっている。相棒のゲス谷が過去ギャンブル依存症だったなら苦労していそうだなこの人も。
「消費者金融からも限度額一杯まで借りて……でもやめられなくて、とうとう別の消費者金融に手を出しちまった数ヵ月後、ホワイトコーポレーションから借金取りみたいな奴等がわんさか来るようになった。ホワイトコーポレーションてテレビとかでよく見かけるから、良心的なサラ金かと思ったらそうじゃないって知った」
「ホワイトコーポレーションが良心的なのはテレビでの表向きだけだったって事だろ。ある意味サラ金の仮面をかぶった闇金業者だ」
「う……騙されたのか……おれ」
「たぶんな。そもそも借金なんてするなって話だ。サラ金だろうが闇金だろうが、借金取りがくるってのわからなかったのかよ」
「うう……」
浅井は返す言葉もなく縮こまっている。ギャンブル依存症は相当根深いようだな。
「で、続きは?」
「えーと……それでよ、なかなか金返せねーからホワイトの人間から直々に子会社で働いてもらうって言われて、半ば無理やり連行されてそこで働いていたんだ。てっきりマグロ漁船に乗せられるかと思って違っててさ、楽だなと思ってたらこれが激務で人権もくそもなくてさー、はやく辞めたくなってよ、足を洗うためには手っ取り早く借金返済と手切れ金が必要になったんだ」
「それで先生から300万の封筒をさっき受け取っていたんだな。だからってな……まあ、いろいろと最低だな」
一同が軽蔑するような眼差しを浅井にぶつける。身から出た錆である。
「仕方ないだろ!はやくホワイトの子会社といえどそこから足を洗いたかったんだ!そのためにはまず数百万の金が必要だったんだ!」
「数百万ねー……変なのから逃げたいために金をもらうのも仕方がなかったと。虫がよすぎると思わねーわけ?」
俺がカツ丼を食い終わってから浅井を冷たい目で見下ろすと浅井は何も言えなくなった。ううとかあーとか言って体を震わせている。今更罪悪感かよ。
「ふむ、ホワイトコーポレーション、か」
ゲス谷と熊谷が曰くありげに深いため息を吐いた。
「なんかありそうね刑事さん方」
「あー……えーとねーこれはあまり言いたくないんだけどねー……」
煮えきらない熊谷の様子にゲス谷が続ける。
「あそこは警察が介入しづらいんだ。今まで市民から散々奴等の不正をどうにかしろとかガサ入れしろとか言われているが、上からのおかしな圧力でもあるのか我々は踏み込めないんだ。そりゃ俺たちだってホワイトコーポにはいろいろ思うところがあるから逮捕してーんだが……してーんだけどな、奴等を逮捕してもどうせなんらかの圧力が働いて刑が軽くなったり、大物を逮捕した所で多額の保釈金を用意されて出てくるってのが落ちなんだよ。上級国民サマサマってやつだ。今回の爆発の犯人も、どうせ捕まえても何かと不起訴にされてのパターンだ。市民の嘆願虚しく釈放。逮捕するだけ無駄ってやつ」
「そ、そんな……」
浅井と先生が落胆した様子で肩を落とす。悪人を逮捕しても、それが正当に裁かれない事に嘆きたくなるものだ。
「あんたもまた嫌な所から金借りちまったな」と、あきれる健一。
「だ、だってホワイトコーポが闇金みたいな会社かなんて知らなかったし、こんな会社だなんて知ってたら俺だって借りなかったよ!しかも放火や爆発で命を狙われるなんて聞いてねえし」
こいつほんと言い訳ばっかだな。仕方ないとか、だってとか、そんなんばっか。
「で、奴等から命を狙われているのはなんでだ?」
「た、たぶん……その……丁度ホワイトコーポレーション本社へ書類を届けに行ったんだけどよ、待ち時間とかあって待ってる内にひまになってな、探検して中を見て回ってたら変なフロアに来ちまってて……」
「変なフロア?」
「その……フロアの奥の部屋をなんとなく覗いたら……う、ぐ、…あ」
浅井はその後の言葉を口にできず、急に喉元をおさえて苦しみ出す。
「ぐあ、ああ、あ」
「お、おい!」
ゲス谷と健一が慌てて浅井に声をかけるが、浅井は喉元をおさえて悶絶したまま苦しんでいる。顔色が悪くなり、今にも窒息しそうな勢いで口から泡まで吹いている。
「どうしたんだよこいつ!?急に苦しみだしたぞ!」
「これ……催眠術だ」
俺が冷静に分析した。自分も城山事件で催眠されていたからすぐにわかった。
「その前に、そこで働く前からあなたは借金をしていましたよね?母から何度も金の無心をして……時々、私の所にも来て金をくれと……」
うわ、以前から借金に金の無心か。クソだなこいつ。
「それは仕方なくだったんだ。どーしても金がほしくてさ、パチンコと競馬にハマっちまってよ……中毒になってるって自覚があってもやめられなかったんだ。何度やめようやめようって思っても、今日は勝つような気がするとか、気分がいいとか、根拠もないのに溺れちまって、のめり込む度に借金は膨れ上がる一方で、どうしていいかわからなかったんだ!」
被害者ズラして言い訳ばかりか。あきれるわい。
「ふん、完全なギャンブル依存症だな。昔の俺を見ているかのよーだ」と、ゲス谷。
「職務中にタバコ吸ってるようなあんたならありえそうな過去ですもんねー」
と、カツ丼爆食いする俺。うまうま。
「ふん、好きでこうなったんじゃねーよ!てめーもカツ丼食いながらしゃべんじゃねえ!」
「まあ、ギャンブル依存症って麻薬みたいなものでなかなか侮れませんから。病院に行った方がいいでしょうね」
助手の熊谷がため息がちに調書をパソコンでとっている。相棒のゲス谷が過去ギャンブル依存症だったなら苦労していそうだなこの人も。
「消費者金融からも限度額一杯まで借りて……でもやめられなくて、とうとう別の消費者金融に手を出しちまった数ヵ月後、ホワイトコーポレーションから借金取りみたいな奴等がわんさか来るようになった。ホワイトコーポレーションてテレビとかでよく見かけるから、良心的なサラ金かと思ったらそうじゃないって知った」
「ホワイトコーポレーションが良心的なのはテレビでの表向きだけだったって事だろ。ある意味サラ金の仮面をかぶった闇金業者だ」
「う……騙されたのか……おれ」
「たぶんな。そもそも借金なんてするなって話だ。サラ金だろうが闇金だろうが、借金取りがくるってのわからなかったのかよ」
「うう……」
浅井は返す言葉もなく縮こまっている。ギャンブル依存症は相当根深いようだな。
「で、続きは?」
「えーと……それでよ、なかなか金返せねーからホワイトの人間から直々に子会社で働いてもらうって言われて、半ば無理やり連行されてそこで働いていたんだ。てっきりマグロ漁船に乗せられるかと思って違っててさ、楽だなと思ってたらこれが激務で人権もくそもなくてさー、はやく辞めたくなってよ、足を洗うためには手っ取り早く借金返済と手切れ金が必要になったんだ」
「それで先生から300万の封筒をさっき受け取っていたんだな。だからってな……まあ、いろいろと最低だな」
一同が軽蔑するような眼差しを浅井にぶつける。身から出た錆である。
「仕方ないだろ!はやくホワイトの子会社といえどそこから足を洗いたかったんだ!そのためにはまず数百万の金が必要だったんだ!」
「数百万ねー……変なのから逃げたいために金をもらうのも仕方がなかったと。虫がよすぎると思わねーわけ?」
俺がカツ丼を食い終わってから浅井を冷たい目で見下ろすと浅井は何も言えなくなった。ううとかあーとか言って体を震わせている。今更罪悪感かよ。
「ふむ、ホワイトコーポレーション、か」
ゲス谷と熊谷が曰くありげに深いため息を吐いた。
「なんかありそうね刑事さん方」
「あー……えーとねーこれはあまり言いたくないんだけどねー……」
煮えきらない熊谷の様子にゲス谷が続ける。
「あそこは警察が介入しづらいんだ。今まで市民から散々奴等の不正をどうにかしろとかガサ入れしろとか言われているが、上からのおかしな圧力でもあるのか我々は踏み込めないんだ。そりゃ俺たちだってホワイトコーポにはいろいろ思うところがあるから逮捕してーんだが……してーんだけどな、奴等を逮捕してもどうせなんらかの圧力が働いて刑が軽くなったり、大物を逮捕した所で多額の保釈金を用意されて出てくるってのが落ちなんだよ。上級国民サマサマってやつだ。今回の爆発の犯人も、どうせ捕まえても何かと不起訴にされてのパターンだ。市民の嘆願虚しく釈放。逮捕するだけ無駄ってやつ」
「そ、そんな……」
浅井と先生が落胆した様子で肩を落とす。悪人を逮捕しても、それが正当に裁かれない事に嘆きたくなるものだ。
「あんたもまた嫌な所から金借りちまったな」と、あきれる健一。
「だ、だってホワイトコーポが闇金みたいな会社かなんて知らなかったし、こんな会社だなんて知ってたら俺だって借りなかったよ!しかも放火や爆発で命を狙われるなんて聞いてねえし」
こいつほんと言い訳ばっかだな。仕方ないとか、だってとか、そんなんばっか。
「で、奴等から命を狙われているのはなんでだ?」
「た、たぶん……その……丁度ホワイトコーポレーション本社へ書類を届けに行ったんだけどよ、待ち時間とかあって待ってる内にひまになってな、探検して中を見て回ってたら変なフロアに来ちまってて……」
「変なフロア?」
「その……フロアの奥の部屋をなんとなく覗いたら……う、ぐ、…あ」
浅井はその後の言葉を口にできず、急に喉元をおさえて苦しみ出す。
「ぐあ、ああ、あ」
「お、おい!」
ゲス谷と健一が慌てて浅井に声をかけるが、浅井は喉元をおさえて悶絶したまま苦しんでいる。顔色が悪くなり、今にも窒息しそうな勢いで口から泡まで吹いている。
「どうしたんだよこいつ!?急に苦しみだしたぞ!」
「これ……催眠術だ」
俺が冷静に分析した。自分も城山事件で催眠されていたからすぐにわかった。
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