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飯田家の事情 9
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水野と植田が語るのは俺達の知らない庵の生活。
休日でも頼まれたら手を貸してくれる話にお母さんは驚いたように、お父さんは嬉しそうに口を綻ばしていた。
全く分かりにくいけどね。
話し上手な植田に空気も緩んできたけど
「結局庵は頼まれたから手を貸した程度の協力じゃないか。
自ら動いて周囲に手を貸したり指示を出したり、そういう事をせず流れに身を任せただけじゃないか」
本日の狂犬飯田はなかなかお怒りを納めない。
何を引き合いに出せば庵を認めるのかどうしたものかと情報の少ない相手だけに頭を悩ませる俺はいつの間にか二人の仲たがいと言うわけではないがまた家族が仲良くなってもらいたいと言う気持ちを膨らませている。
あれだけ俺の中から庵の存在を切り捨てたのに、水野と植田、そして陸斗から語られる話の中に庵がちゃんと住み着いているのだ。
ああ、庵もあの深山の子供の一人なんだな。
かつて離れを修繕して手を貸してくれた人達を招いてのお祝いの席に庵がいた事を思い出す。
その頃から水野と植田に引っ付かれて、陸斗も手伝いという役柄に追いかけるように後をついていて。
その関係が今も続いている、ただそれだけの簡単で難しくもある継続という人の生き方という課題を十分こなしている。
むしろ、水野や植田達の人の輪の中にちゃんと庵がいる事にほっとしている俺がいて、少し遠くの枯山水の広がる庭を見ながら仕方がないと心の中で溜息を吐く。
ただし今回行動したのは水野達だ。最後まで責任を取らせるために口は出さない。それでありながら応援をする。
要はお母さんや飯田さんの口が上手くて負けてしまう二人だけど園田や葉山という二大ブレーンも今回来れなかっただけで東京でいろいろ攻略法をかんがえてきただろうし、ひょっとしたらと言う考えが浮かび上がる。
どう考えても青山さんも一枚噛んでいるだろうと……
俺を動かして会いに行く程度なら園田達でも考えられる。水野達だけじゃ無理でも園田が何とか動かす方法を考えたのだろう。
その結果俺はここにいる。
後はお父さんとお母さんを黙らす方法は兄弟でもある青山さんが二人のツボを押さえているからお父さんは口元を緩めて落としどころを探している。お母さんに至ってはお父さんが決めた事には基本反対はしない人。だとしたら後は飯田さんを攻略するだけ。
何か秘策あるのだろか?
視線を水野に向ければ気が付いたようで机の下からちょいちょいと植田のシャツを引っ張る。
未だに兄弟げんかを続ける飯田さんと庵にノーマークになった植田は水野に促されて俺へと視線を向ければ笑って見せる。
準備は良いな?
タイミングとしてはベストなくらい飯田さんのフラストレーションは溜まって居る。
それを覆す何かを用意してきたんだろ?
期待を込めた視線を向ければ少しだけ視線を彷徨わせ、なぜか陸斗のシャツの裾を引っ張って注意をひいていた。
え?まって?
まさか陸斗が今回のキーパーソン?
止めてよ。
ガチで圭斗がうちに乗り込んでくるじゃんと止めさせたかったけど既に今が突撃のタイミングだと言うようにどこか決意を込める視線に三人の頼もしさが一気に不安に転換されながらもタイミングを見計らう、までもなく
「そう言ってお前は俺がマンションを引き払うと言ったのにどうせ未だにアパートを探しても居ないんだろ!」
「別に引き払わなくてもいいじゃないか!
あんないい場所なんだから管理をきちんとするからいきなり一か月なんて言わなくてもいいじゃないか!」
もうどちらも引き際を失ったと言う状態にもう行けと言うように俺は顎をしゃくって合図を送れば陸斗は緊張した面持ちで小さく頷き
「二人とももうやめてください!」
机をバン!と叩いて体を乗り上げればさすがの飯田さんも言葉を飲み込んで庵と共に滅多に大きな声をあげる事のない陸斗の様子に口をパクパクとさせるだけだった。
さて、どうするかと視線だけ期待を込めて向ければ
「庵さん、いつも飯田さんの事を尊敬している話をしてくれるのだからもうちょっと素直になりましょう!」
それはそれは面白い話だと言うように庵に視線を向ければここでそれをばらすか?!と秘めた思いではないが顔を真っ青にしてこれ以上言わないでくれと手を伸ばすも届かない距離はただ宙を掴むだけ。
だけど本日の陸斗はまだ止まらない。
このミッションはここからが本番だと言うように飯田さんと向き合って
「薫お兄ちゃんもちゃんと庵さんを認めてあげてくださいっ!」
飯田さんを薫お兄ちゃんとは俺も聞き間違いかと思うくらいの破壊力。
陸斗も尊敬する飯田さんとは言えよっぽど恥ずかしかったのだろう。
言い切った後しばらく飯田さんと睨み合う様にしていたけど首から上どころか全身真っ赤にしてついには恥ずかしさに植田にしがみ付いてしまったけど、言われた飯田さんも何やら面食らったかのように顔を赤くしてしまえば
トン……
お茶を飲み終えたお父さんの茶器の音が静かになった一瞬、この室内に響き渡った。
さっきまでの熱が途端に何もなかったと言うくらい静まってしまえば
「薫、もうそれだけ言いたい事を言えば十分だろう。
庵もだ。お前がしっかりしないからこんなにも皆さんに迷惑をかけた。
東京に帰ってからちゃんと挨拶に行きなさい」
「はい」
しゅんと項垂れる庵だけど飯田さんはまだ言い足りないと言うように口を開けるものの
「飯田さん」
俺がこれ以上言いあうのはもうやめましょうと口をはさむ。
「庵さんがかわいいからって口を出したくなるのは判りますが飯田さんがやっている事は単なる自己満足でしかありません。
それは庵の為に一切役に立たない愛情です。
そろそろ飯田さんも成長して庵を見守るという愛情に切り替えましょう。
結果庵が身の破滅と言う結果になっても自分の事は自分で責任を取る年齢なのです。
飯田さんのその過保護なまでの優しさは庵を危機感のない人間にしてしまったのがこの結果です」
じっと見れば当然心当たりがある顔は客観的に見ればそう見られるのかと初めて知ったと言うように面食らっていた。
「だそうだ薫。
お前はそろそろ弟離れをしなさい。
あと紗凪もだ。お前のしたことは決して悪いとは言えないがそうやって口をはさむ前に私たちは薫と庵の親だ。
どんな状況でもちゃんと公平にしなさい」
お父さんの目には飯田さんと一緒に庵を責めていたように見えていたらしい。実際そうだけどそう言われると一貫してどちらにもつかなかったお父さんのメンタルは見習いたい所がある。
お母さんはお父さんに向かって頭を下げていた。
お酒を飲んで酔っ払って「きゃっはー!」なんて叫んでいた姿とはまるで違う料亭の女将の姿に飯田さんもまだ何か言おうとする口を開けては閉じて同じように頭を下げる。
そうなれば後は家長でもあるお父さんの言葉を待つだけ。
だけどその前に
「さてと……
やっと話し合う場が準備できました。
少し席を外させていただきます。
水野と植田、そして陸斗はあとからこの話し合いの結果を俺に報告するように」
そう言って俺は立ち上がった。
理由は言わずもながら連絡もなくやってきた俺にしいさんとこまさんがテンションをあげて俺にモフモフ攻撃をしてくる上にタイミングを見計らって
「「主―!お散歩行きましょう!」」
この可愛いモフモフおねだりに誰が勝てる?
多少『しいさん、こまさん、今日のお散歩はもう終わったのだろ?』と抵抗して見ても
「主にこの街の素敵な所をご案内したいのです!」
「主に我々のお気に入りスポットを教えて差し上げたいのです!」
と俺をモフモフするのだ。
本当に誰がこのモフモフに勝てるのだと思うよ。
俺は一人敗走の道と言うようにお散歩に出かける事にした。
決してしいさんとこまさんのもふもふに癒されたいと言う理由ではないからねと誰に言うわけもなく主張しておく。
休日でも頼まれたら手を貸してくれる話にお母さんは驚いたように、お父さんは嬉しそうに口を綻ばしていた。
全く分かりにくいけどね。
話し上手な植田に空気も緩んできたけど
「結局庵は頼まれたから手を貸した程度の協力じゃないか。
自ら動いて周囲に手を貸したり指示を出したり、そういう事をせず流れに身を任せただけじゃないか」
本日の狂犬飯田はなかなかお怒りを納めない。
何を引き合いに出せば庵を認めるのかどうしたものかと情報の少ない相手だけに頭を悩ませる俺はいつの間にか二人の仲たがいと言うわけではないがまた家族が仲良くなってもらいたいと言う気持ちを膨らませている。
あれだけ俺の中から庵の存在を切り捨てたのに、水野と植田、そして陸斗から語られる話の中に庵がちゃんと住み着いているのだ。
ああ、庵もあの深山の子供の一人なんだな。
かつて離れを修繕して手を貸してくれた人達を招いてのお祝いの席に庵がいた事を思い出す。
その頃から水野と植田に引っ付かれて、陸斗も手伝いという役柄に追いかけるように後をついていて。
その関係が今も続いている、ただそれだけの簡単で難しくもある継続という人の生き方という課題を十分こなしている。
むしろ、水野や植田達の人の輪の中にちゃんと庵がいる事にほっとしている俺がいて、少し遠くの枯山水の広がる庭を見ながら仕方がないと心の中で溜息を吐く。
ただし今回行動したのは水野達だ。最後まで責任を取らせるために口は出さない。それでありながら応援をする。
要はお母さんや飯田さんの口が上手くて負けてしまう二人だけど園田や葉山という二大ブレーンも今回来れなかっただけで東京でいろいろ攻略法をかんがえてきただろうし、ひょっとしたらと言う考えが浮かび上がる。
どう考えても青山さんも一枚噛んでいるだろうと……
俺を動かして会いに行く程度なら園田達でも考えられる。水野達だけじゃ無理でも園田が何とか動かす方法を考えたのだろう。
その結果俺はここにいる。
後はお父さんとお母さんを黙らす方法は兄弟でもある青山さんが二人のツボを押さえているからお父さんは口元を緩めて落としどころを探している。お母さんに至ってはお父さんが決めた事には基本反対はしない人。だとしたら後は飯田さんを攻略するだけ。
何か秘策あるのだろか?
視線を水野に向ければ気が付いたようで机の下からちょいちょいと植田のシャツを引っ張る。
未だに兄弟げんかを続ける飯田さんと庵にノーマークになった植田は水野に促されて俺へと視線を向ければ笑って見せる。
準備は良いな?
タイミングとしてはベストなくらい飯田さんのフラストレーションは溜まって居る。
それを覆す何かを用意してきたんだろ?
期待を込めた視線を向ければ少しだけ視線を彷徨わせ、なぜか陸斗のシャツの裾を引っ張って注意をひいていた。
え?まって?
まさか陸斗が今回のキーパーソン?
止めてよ。
ガチで圭斗がうちに乗り込んでくるじゃんと止めさせたかったけど既に今が突撃のタイミングだと言うようにどこか決意を込める視線に三人の頼もしさが一気に不安に転換されながらもタイミングを見計らう、までもなく
「そう言ってお前は俺がマンションを引き払うと言ったのにどうせ未だにアパートを探しても居ないんだろ!」
「別に引き払わなくてもいいじゃないか!
あんないい場所なんだから管理をきちんとするからいきなり一か月なんて言わなくてもいいじゃないか!」
もうどちらも引き際を失ったと言う状態にもう行けと言うように俺は顎をしゃくって合図を送れば陸斗は緊張した面持ちで小さく頷き
「二人とももうやめてください!」
机をバン!と叩いて体を乗り上げればさすがの飯田さんも言葉を飲み込んで庵と共に滅多に大きな声をあげる事のない陸斗の様子に口をパクパクとさせるだけだった。
さて、どうするかと視線だけ期待を込めて向ければ
「庵さん、いつも飯田さんの事を尊敬している話をしてくれるのだからもうちょっと素直になりましょう!」
それはそれは面白い話だと言うように庵に視線を向ければここでそれをばらすか?!と秘めた思いではないが顔を真っ青にしてこれ以上言わないでくれと手を伸ばすも届かない距離はただ宙を掴むだけ。
だけど本日の陸斗はまだ止まらない。
このミッションはここからが本番だと言うように飯田さんと向き合って
「薫お兄ちゃんもちゃんと庵さんを認めてあげてくださいっ!」
飯田さんを薫お兄ちゃんとは俺も聞き間違いかと思うくらいの破壊力。
陸斗も尊敬する飯田さんとは言えよっぽど恥ずかしかったのだろう。
言い切った後しばらく飯田さんと睨み合う様にしていたけど首から上どころか全身真っ赤にしてついには恥ずかしさに植田にしがみ付いてしまったけど、言われた飯田さんも何やら面食らったかのように顔を赤くしてしまえば
トン……
お茶を飲み終えたお父さんの茶器の音が静かになった一瞬、この室内に響き渡った。
さっきまでの熱が途端に何もなかったと言うくらい静まってしまえば
「薫、もうそれだけ言いたい事を言えば十分だろう。
庵もだ。お前がしっかりしないからこんなにも皆さんに迷惑をかけた。
東京に帰ってからちゃんと挨拶に行きなさい」
「はい」
しゅんと項垂れる庵だけど飯田さんはまだ言い足りないと言うように口を開けるものの
「飯田さん」
俺がこれ以上言いあうのはもうやめましょうと口をはさむ。
「庵さんがかわいいからって口を出したくなるのは判りますが飯田さんがやっている事は単なる自己満足でしかありません。
それは庵の為に一切役に立たない愛情です。
そろそろ飯田さんも成長して庵を見守るという愛情に切り替えましょう。
結果庵が身の破滅と言う結果になっても自分の事は自分で責任を取る年齢なのです。
飯田さんのその過保護なまでの優しさは庵を危機感のない人間にしてしまったのがこの結果です」
じっと見れば当然心当たりがある顔は客観的に見ればそう見られるのかと初めて知ったと言うように面食らっていた。
「だそうだ薫。
お前はそろそろ弟離れをしなさい。
あと紗凪もだ。お前のしたことは決して悪いとは言えないがそうやって口をはさむ前に私たちは薫と庵の親だ。
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お父さんの目には飯田さんと一緒に庵を責めていたように見えていたらしい。実際そうだけどそう言われると一貫してどちらにもつかなかったお父さんのメンタルは見習いたい所がある。
お母さんはお父さんに向かって頭を下げていた。
お酒を飲んで酔っ払って「きゃっはー!」なんて叫んでいた姿とはまるで違う料亭の女将の姿に飯田さんもまだ何か言おうとする口を開けては閉じて同じように頭を下げる。
そうなれば後は家長でもあるお父さんの言葉を待つだけ。
だけどその前に
「さてと……
やっと話し合う場が準備できました。
少し席を外させていただきます。
水野と植田、そして陸斗はあとからこの話し合いの結果を俺に報告するように」
そう言って俺は立ち上がった。
理由は言わずもながら連絡もなくやってきた俺にしいさんとこまさんがテンションをあげて俺にモフモフ攻撃をしてくる上にタイミングを見計らって
「「主―!お散歩行きましょう!」」
この可愛いモフモフおねだりに誰が勝てる?
多少『しいさん、こまさん、今日のお散歩はもう終わったのだろ?』と抵抗して見ても
「主にこの街の素敵な所をご案内したいのです!」
「主に我々のお気に入りスポットを教えて差し上げたいのです!」
と俺をモフモフするのだ。
本当に誰がこのモフモフに勝てるのだと思うよ。
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