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一歩一歩が大切です 4

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 結局真さんが個展開催の一週間の間は私は燈火さんのカフェに通い詰めた。
 先にコーヒーを頂いてそれからまだまだ寒い季節の為に体が冷え切ってる真さんに体を温めてもらう為に退屈している付喪神様達と少し体を動かすようにと周囲を散歩してもらう。作品の展示物の説明は初日にしっかりと聞かせてもらったので代わりの説明も何とかこなせた。
 もちろん散歩の後は温かなコーヒーを燈火さんの所でいただくというのも忘れていない。
 私は上がった事はないけど店内には二階の部分があって、真さんは空いていたらそこを使うという。
 人目がないのでゆっくり朱華達とお茶が出来るからねと言って紅茶は飲めるので受け皿に紅茶を淹れてみんなで楽しんでいるという。
 受け皿本来の使い方をされるというン百年前のマナーの現代的使い方を理解して私がお店にいるときこっそりおやつをねだりに来る真白さんにはそうしてお茶を楽しんでもらっていた。ちなみに朱華さんはやっぱり嘴なのでカップから飲む方が飲みやすいという。
 イソップ物語か何かにこんな話があったなとニヤニヤしながら焼きたてアツアツのワッフルを一緒に楽しんでもらうのだった。
 もちろんその後レジ横のヴィーガンおやつも忘れない。

 燈火さんは実は既婚者で美園屋さんのパティシエのお姉さまと夫婦だと先日知った時は驚いたけど、美園屋さんのケーキをコーヒーとセットで販売している事を考えたら納得をしたし、レジ横にも並ぶ驚くほど種類の豊富なヴィーガンスイーツもお姉さまの試行錯誤の一品だという。
 観光がメインのこの街でアレルギーの方にも一緒に楽しんでもらいたいという思いからの挑戦だという。
 まだまだ試行錯誤の段階だけど米粉主体のお菓子はヴィーガンでなくても皆様にはヘルシーねと好評のようだ。
 しかしお師匠様にはまだまだ合格がもらえず研究の一途だというのだからこのクオリティで完成だと言わない探求心には本当に感心する。 
 これは私も見習う姿勢だなと背筋を伸ばして私の未知の領域のお菓子作りの世界に耳を傾けるのはひどく穏やかな時間だと感じていた。
 
 一人ポツンと蔵の中で店番をしている間、仕事をしようと思ってもかじかむ指先では仕事にならなかった。
 仕方がないのでタブレットを持ち出して宛先の一覧表を作る。
 これはなかなかいい時間つぶしだとついでにショップのHPのデザインも変更しようかなと苦手意識はあるも奮闘していれば

「高守さんお待たせしました」

 ふんわり、コーヒーの香りと共に真さんがやって来た。
「おかえりなさい。ゆっくりしてて良かったのですよ?」
 約束の時間までまだ10分はある。
 スマホにセットしたアラームを解除しながら
「もうちょっとしたら込みだす時間だし、先にお昼も食べれたので高守さんに甘えてばかりはさすがに悪くて」
 言いながら私の真っ赤な指先を見て
「いつも甘えさせてもらってすみません。
 お礼は個展が終わったらさせてください」
「えー?じゃあ、お言葉に甘えさせてもらってカフェでケーキセットおごってください」
「それだけでいいの?」
 なんてどれだけ甘い誘惑をするのだろうと思えば
「じゃ、じゃあ、ケーキ二個と言う背徳をお許しください!」
 言えば
「ケーキ?!朱華はブルーベリーがいっぱい乗ったケーキが好き!ラズベリーとかイチゴとかいっぱい乗ってるケーキ大好き!」
 ケーキと言うワードを聞いて朱華さんが一度は蔵の二階にみんなと上がって行ったけどぴょんぴょんと階段を一段ずつ飛び降りながらやってくれば
「真白は、チーズのケーキ!真っ白で、真っ白だけどジャムが乗っているケーキが好き!」
 器用にも頭を下に駆け下りてやって来た真白さんは最後の段で躓いてその勢いのまま真さんの足元まで転がってきた。
 痛くはないのだろうかというくらいころころと転がったけど、すぐにぴょんぴょんとジャンプをしておねだりしている様子を見れば大丈夫だろう。
「玄はー、イチゴのケーキが大好きー。
 だけどクリのケーキも大好き!黄色い方じゃなくて茶色の方が良いな?」
「岩もー!」
 二階の階段を降りる所から顔を出す玄さんと岩さんの相変わらずの仲の良さにニヤニヤしていれば
「緑青は、ユズのジャムがいっぱい乗ったタルトが好き!イチゴがいっぱい乗ってたりブドウがいっぱい乗ってたりして美味しいんだよ!」
 思い出したように口元がもごもごと動いてしまう緑青の隣で
「もっくんは、もっくんは……」
 何が一番か選べないというようにぽろぽろと涙を流し始めてみんなでぎょっとしていれば

「どれが一番か分かんないよー!」

 そんなかわいらしい悲鳴。
 みんな揃ってほっとしながら 

「じゃあ、もっくんに俺のを一口分けてあげるから。
 好きなケーキを探そうか」

 そんな真さんの優しい言葉に

「緑青のも分けてあげるね?」
「じゃあ玄さんのもあげる!」
「岩もあげるね!」

 そんな優しい言葉もあれば

「朱華は、朱華だって、朱華の好きなケーキ……」
「真白のケーキ、もっくんお腹痛い痛いになっちゃうから……」

 ケーキをどうしても譲りたくないのだろう朱華さんと真白さんの挙動不審なその態度にさすがに真さんも苦笑すれば私も苦笑せざるを得なく……

 個展も終わったあとみんなで燈火さんのお店で打ち上げをした。 
 お礼のケーキは改めてと約束をしてニマニマしていればやがて集まった人数に私以外にも沢山の方が真さんを風邪ひかせないようにと協力していた人数に驚いた。
 さらに女の人もお手伝いしていて綺麗な字を書くのだからやっぱりモテるんだと思うもご主人らしき人がお子さんを連れてくるのだから急にアットホームな雰囲気になって、そんな中集まった皆さんに真さんは私を紹介してくれたのだった。
 
 こういってはいけないが人生初の大人数の友人が出来た事に嬉しくもあると同時に根暗な引きこもりは戸惑っていたのは当然だ。



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