勇者でも渡り人でもないけど異世界でロリコン魔族に溺愛されてます

サイカ

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また新しい名前の石が出て来た

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 ついに来てしまった婚約発表当日!

 今日は朝からクシェル様の55歳の誕生日を祝う式典が行われている。そのためクシェル様やジークお兄ちゃんは勿論城中の人達が忙しなく動き回っている。そんな中わたしは、自分の出番が夜のパーティーだけということで、朝から念入りにパーティーに向けての準備をしていた。

 で、誕生日パーティー開始1時間前。

「これがわたし⁈」

 ドレスに着替え終えたわたしは恥ずかしながら、鏡に映る自分に見惚れてしまっていた。

 元々美容やオシャレにさほど興味のなかったわたしは女の子らしい可愛いフリフリの服は勿論、お化粧もしたことがなかった。そんなわたしがまさかアニメや漫画などでよく見るあのシーンを再現することになるなんて。
 いや、だからこそなのだろうか。サアニャに半日掛で磨き上げられ、この日のために作られたドレスを身に纏った自分の姿はまるで物語に出てくるお姫様のようだ。

「とてもよくお似合いですよ」
「あ、ありがとうサアニャ」

 今日のドレスは皆んなで意見を出し合って作り上げてくれたもので、色はクシェル様の案で淡い黄色、種類はフレイヤ様の案でプリンセスライン?というボリュームがあるもので、シェーンハイト様の案でフリルが重なり合うフリフリの可愛さ重視のデザインとなっている。
 また、腰部分にはジークお兄ちゃんの案で、大きめのリボンが付いていて、それが動く度に揺れて可愛い。そして、ジークお兄ちゃんがこの日のために用意してくれた靴にも、くるぶし部分にリボンがあしらわれていて、ドレスとお揃いのデザインになっている。

 そんなみんなの思いが詰まった大切なドレスが似合っていると褒められ、嬉しさのあまり口元がニヨっと緩む。我ながら気持ち悪い。鏡に映った自分を見てニヨニヨと口元を緩ませ、自分に酔っているのだから。

 でも、それも仕方ない。だって、本当に自分じゃないみたいに綺麗なんだもん!



「久しぶり~コハクちゃん準備出来た?」
「ふ、フレイヤ様!」

 クシェル様とジークお兄ちゃんに貰った髪飾りやブレスレットも付けて準備万端!というちょうどその時、フレイヤ様が扉から顔を覗かせた。

「あら、可愛い。お花の妖精さんかと思っ……え⁈ちょっと待って!」
「は、はい!」

 部屋に入り数歩歩みを進めたかと思ったら、上機嫌なニコニコ笑顔から一転、急に眉を寄せ足速にこちらに向かってくるフレイヤ様。

 え?な、何か変なところがあった?どこか間違った?似合ってない?

 嫌な緊張が走る。しかしーー

「それどうし、いや聞くまでもないわね……ごめんなさいね。ちょーとそれ貸してくれる?」
「え?あ、はい」

 フレイヤ様がそれと言って指を刺したのはわたしの胸元、つまりクシェル様に貰ったネックレスだった。

 あ、そういうことか……
 
 一気に緊張が解ける。

 フレイヤ様はわたしからそのネックレスを受け取ると、部屋から出て行ってしまった。 おそらくクシェル様の元へ向かわれたのだろう。ネックレスに付いている石は魔力石と言って結婚の際に交換するものだから、それを指摘するために。

「サアニャ、やっぱりあれ貰ったらいけなかったのかな?」
「貰ってはいけないということは無いと思いますが……事前に聞かされてなかったので、驚かれたのでしょう」


 そして数分後、落ち着きを取り戻したフレイヤ様が帰ってきた。

「心配させてごめんなさいね。てっきりまたクシェルが詳しい説明もなしに押し付けたのかと」
「い、いえ。でも、その、本当にわたしが付けてて大丈夫ですか?本物の婚約者でもないのに」
「んー、コハクちゃんが迷惑に感じてないのなら……でも、そのままだと危険だったからちょっと改良させてもらったわ。勝手にごめんなさいね」

 そういって手渡されたネックレスは前とどこも変わっていないように見えた。金色の細かいチェーンに卵型の黒色の石。それに何かが付け加えられたわけでも、外されたり削られたりしたわけではない。

 一体どこを改良したんだろうーー

「って、危険だったんですか⁈」
「えぇ、魔力が馬鹿みたいに漏れてたから、それを抑えて、魔塊石だってバレないようにしといたわ!」
「魔塊、石?魔力石ではなく、ですか?」

 また新しい石の名前が出てきた。

「え?……あのバっ、全然ちゃんと説明してないじゃない!何が今回はちゃんとコハクちゃんの了承を得てる。よ⁈良い加減にしないとそのうち本当に嫌われるわよ?」

 フレイヤ様は頭を抱える。

「フレイヤ、様?」
「あら、ごめんなさいね。つい頭に血が昇ってフフフ」

 その後、改めてこのネックレスに付いている石について説明を受けた。

 フレイヤ様曰く、魔石には魔鉱石、魔力石、魔塊石の三つがあって、その中でも魔塊石は
 純粋に魔力だけで出来た石のことで、自らの魔力を圧縮し結晶化させて作るらしい。
 それを作るには相当な魔力操作の腕と膨大な魔力が必要で、作れる人はこの世にほんの一握りしかいないらしい。

「そ、それをクシェル様が⁈」
「あとはシェーンハイトくらいかしら、それを作れるの」

 魔王様にしか作れない代物ーーま、まさに魔王級!

「それがあれば人族でも魔法が使えるようになっちゃうし、バレたら色々危ないでしょう?」
「人族でも⁈」
「誰でもってわけではないけど、その素質を持っている者ならね」
「更に込められた魔力は恐らく魔王様が使える全属性。しかもその色の濃さと大きさとなれば、シイナ様を殺してでも手に入れたいと言う輩はごまんといるでしょうね」
「こ、殺……」
「あら、せっかく言葉を控えめにしたのに」
「すみません。てっきりフレイヤ様は正直にお伝えする方針なのかと」
「……ま、いいわ。他にクシェルから口止めされてる事はある?」
「口止めされているわけではありませんが、判断に困っているものがいくつか……」

 え⁈まだわたしに隠していたことがあるの?しかも複数⁈


 フレイヤ様とサアニャの内緒話が続く中わたしはただただ待つことしか出来なかった。

 そして、二人の会議の結果。名前に関する情報が一つ増えた。何と、名前で呼ぶことには親しみや格付け以外にもう一つの意味合いがあった。

 それはーー

「プロポーズ⁈」
「そこまでちゃんとしたものじゃないですけど、そう捉えられかねないということです」

 親しいものにしか許さない名前呼びを自分から求める行為はそのままそう意味になって、それが同性なら何の問題もないのだが、しかしそれが異性、更には初対面ともなると……

『私、貴方に一目惚れしましたの!どうか私との未来をお考えになってくださいませんか?』的な意味になってしまうのだ。両者が未婚となれば尚更ーー

「まさか、イダル先生は…」
「未婚ですね」
「っーー!」

 やらかしてる。完全にやらかしてる!

 だからあの時クシェル様はあんなに怒ってたのか~。うぅ~イダル先生はわたしがその気がないって、そういうつもりで「名前で呼んで欲しい」と言ってるわけではないとわかっていたから、呼んでくれただけなのに、クシェル様的にはわたしがイダル先生に告白してイダル先生がそれをOKした形になってたんだ。

 100歳以上歳下の初対面の女子との未来を受け入れた変態男ーー酷い言われようだ!ごめんなさいイダル先生!知らなかったとはいえとんだ誤解を招いてしまい本当に本っ当に申し訳なさ過ぎる!

「す、すみませんわたしのせいでイダル先生が」
「気にしないで下さい。あれは叔父さんが悪いんですから」
「え?そんなこと」
「そもそもその時にこの事を教えていれば良かったんですよ。そしたら誤解もなく丸く収まっていたのに」

 と、イダル先生の事をやれやれとため息混じりに話すサアニャ。

 なんか、イダル先生が可哀想……確かにサアニャの言う通りなんだけど…普通思わないじゃん?そんなことで魔王様に激怒されるなんて!そもそもクシェル様かジークお兄ちゃんがもっと早くその事を教えてくれてたらわたしも「名前で呼んでほしい」なんてこと、言わ、なーーあれ?

「たしか、クシェル様も結構早い段階で……しかもジークお兄ちゃんにはあっさり許して」
「さぁ!問題も解決したことだしそろそろ移動しましょうか!」
「え⁈もう!」

 パーティー開始まであと30分以上はある。

「さぁさぁみんなが待ってるわ!行きましょう!」

 フレイヤ様に手を引かれ、わたしは部屋を後にした。


 何か誤魔化された気がするけどーー


 会場に繋がる王族用の控え室に入ると……

「可愛すぎる!俺の天使が可愛すぎるんだが!」
「もはや可愛いの暴力!!」
「ハァハァこれが世に言う可愛すぎてつらい!というやつか。ハァハァコハクちゃんありがとう」


 三人の勢いが凄過ぎて、全てが吹き飛んだ。


 わたしが控え室に入るや否や挨拶する間も無くクシェル様とジークお兄ちゃんは胸を押さえ叫び、シェーンハイト様には何故か感謝され拝まれた。


 ーーーーロリコン怖い

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