勇者でも渡り人でもないけど異世界でロリコン魔族に溺愛されてます

サイカ

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【クシェル】俺を置いて行かないでくれ!

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 俺はコハクが痛みを感じないように念入りにコハクの首を舐め、出来るだけ多くの液を垂らし塗り込んでいく。すると自然と水音が部屋に響く。

「は、ぁーークシェル、様ぁ」

 そのせいか、コハクから艶かしい声が漏れ始め、こっちまでそういう気分になってくる。
 跡が残るくらい強く吸ってみるとコハクの身体がビクッと跳ね更に高い声が発せられた。

 ーーもっとその声が聞きたい

 しかしコハクはジークとイチャつき出す。
 俺はイラつきをコハクにぶつけるように、更に強く吸う。すると、1回目より真っ赤な跡が残った。それを見るとさっきまでのイラつきが収まっていった。


 そろそろいいだろう。
 首から口を離しコハクを見ると息が上がり表情はトロリととろけきっていて、酷く欲情をそそられる。

 ーー早くあの首に牙を突き立て、コハクの血を飲みたい

「コハク」

 名前を呼ぶとコハクはとろけた目で俺をとらえゆっくりと頷いた。
 限界に近かったが、俺は残っている理性を総動員して出来るだけ痛くないように、ゆっくりゆっくりと牙を突き立てていく。
 コハクの薄い皮膚を突き破る感覚と同時に爽やかな甘い香りが香ってきて、俺は堪らず残りの牙を一気に進めた。
 牙を抜くと一層コハクの血の匂いが濃くなり、ジワジワと鮮血が溢れてくる。
 母さんやジークの血はただ鉄臭く生臭かったが、コハクの血はまるで熟す寸前のみずみずしい果実のようだ。

 これが愛しい者の血ーー

 思い切って流れるコハクの血を余すことなく舐めとる。それは今までに味わった何にも例えようのない味だった。爽やかで優しい甘みとトロリとしたコクーー俺の全ての細胞が喜び湧き上がるような、ずっとコレだけを求めていたような、そんな感覚に侵された。
 次いである程度の量を含み一気に飲み込むと内部からジンワリと温もりが広がっていく。
 まるでコハクに抱きしめられている時のような幸福感と安心感。

 ーーコハク、コハク、コハク、もっともっともっと、コハクを感じたい味わいたい!

「く、クシェル様」

 ーーあぁコハクも俺を求めてくれている

 そう思った矢先、次はジークの名を口にし、縋り求めはじめるコハク。

 ーー気にくわない!俺はこんなにもコハクを求めているのに、コハクだけなのに、どうして俺以外の名を呼ぶ!
 俺は一旦口を離し、コハクの首に残った血を舐めとると、少し出の悪くなったそこを強く吸った。するとまたコハクは俺の名を呼んでくれた。

 ーー嬉しい、もっと俺の名を、俺を呼んで求めて

 コハクの血は俺を満たしてくれる。コハクが俺を満たしてくれ、コハクが俺だけのものになったような錯覚を起こす。
 その感覚に浸っているといきなりコハクから離された。

 ーー誰だ!誰であれ俺からコハクを奪う奴は許さない!

 そいつがいるであろう方向を睨むと険しい表情のジークと血の気の引いた青白い顔のコハクが見えた。
 俺は案の定暴走してしまったようだ。

「す、すまないコハク!」

 しかしコハクはこんな時でさえ自分の事より俺の事を気に掛けてくれる。

「美味しかった、ですか?」
「え⁈あ、あーとても」

 あれは美味しかったなんて言葉では表現出来ない、俺の求めていた全て、まさにこの上ない味、香り、感覚だった。

「良かったーー」

 コハクはそう微笑むとそのまま目を閉じてしまった。

「コハク?」

 反応が無い⁈

「コハク!起きてくれコハク!目を開けてくれ!俺を置いて行かないでくれ!」

 ーーそんな、俺は自分の身勝手な欲のせいでコハクを失ってしまうのか?俺が暴走したせいで、俺がヴァンパイアであるせいで!

「落ち着け!気を失っているだけだ!」
「で、でもこんなになって人間は生きられるのか?」

 そう、人間は極端に弱い。1分、2分息が出来ないだけで死ぬ、軽く焼かれただけで死ぬ、殴っただけで死ぬ。

「大丈夫だ!とりあえずフレイヤ様に診てもらおう」

 コハクはジークに任せて、両親の寝室へ急ぐ、本当はコハクのそばに居たかったが今の俺が側にいるよりジークの方が落ち着いた適切な対応が取れるだろう。
 今の俺にノックをする余裕なんてなく、ドアを壊れるのではないかという勢いで開ける。と、そこには窓際の椅子に座り目を見開いてこちらを見る親父だけしか居なかった。

「ど、どうした⁈」
「母さんは?」
「フレイヤなら何か調べ物が有るとかで書庫に籠っているがーーまさか、コハクちゃんに何かあったのか⁈」

 俺の慌てようと、母さんに用がある事から、コハクに何かあり、母さんの回復魔法を頼ってきた事を察したようで、親父は青ざめていき俺を問い質そうとかけてくる。
 しかしそんなのに構っている暇はない!
俺は母さんが居るという地下の書庫へ急いだ。

 地下の書庫には母さんの趣味で集められた童話から歴史の書、魔道書と、ありとあらゆる本がある。そして更に部屋の奥の扉を開き階段を下ると、カビ臭く薄暗い小さな部屋がありそこには小さな机と椅子が一つあり、古くからヴァンパイアに伝わる書物が無造作に積み立ててある。
 それらは古代の文字で書かれていて、母さんにしか読めないらしい。
 そして母さんはその椅子に座っていた。

「母さん!」
「クシェルーーっ!、もしかして」

 俺からコハクの血の匂いを感じたらしく、母さんは立ち上がり口元を手で押さえた。

「こ、コハクが真っ青で、俺のせいでコハクが!」
「事情は何となく察しがついたわ、コハクちゃんは寝室?」
「うん」

 三人して廊下を全力疾走で、コハクの元へ向かう。擦れ違う使用人たちも何ごとかと後からついてくる。

「今日はもう下がっていい!」

 親父はそんな使用人たちに自分の部屋に帰るように命令を下した。
 すると、主人に逆らうことも出来ず何ごとかと気になりつつも皆会釈をして下がっていく。

「かしこまりましたーー」

 部屋に着くとコハクはベッドに寝かされていて、ジークはコハクの手を握り髪を撫でていた。

「フレイヤ様」
「大丈夫よジーク」

 ジークのこんな声は初めて聞いた。今にも消えてしまいそうな、不安に押しつぶされそうな声。あの時はコハクの事で頭がいっぱいで気付かなかったが、ジークからは不安と恐怖が見えた。
 ジークは自分もコハクを失う恐怖に襲われていたにもかかわらず、俺を落ち着かせるために「大丈夫だ」と冷静でいようとしてくれていたのだ。

「ーーコハク」

 ジークの声は震えていたーー母さんが来てくれた事で緊張の糸が切れたのだろう。

 母さんはコハクの状態を診ると回復魔法で体温調節などの応急処置をほどこした。
 回復魔法は傷口をふさいだり、本人の治癒力を高めたりは出来るが、失われたものを作り出すことは出来ない。つまり造血はコハクの生体機構に頼るしかない。

 母さん曰く、コハクは命には別状はないが、急激に血液が失われたため、激しい貧血で倒れてしまったらしい。明日中には回復するだろうとのことだった。
 
 そして、その後両親に激しく責められたのは言うまでもない。


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