勇者でも渡り人でもないけど異世界でロリコン魔族に溺愛されてます

サイカ

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はい、お腹ペコペコです

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「大丈夫か?」

 目を覚ますとジーク様がわたしの手を握り、泣きそうな顔でわたしを見ていた。

 わたしが寝てる間に何があったのだろうか?というか、わたしいつの間に寝たんだろう

 まだ起きたばかりだからかあまり頭が働かない、でも、色々考えていると少しずつ昨日のことが思い出されてきた。

 クシェル様のご両親に会いにいくために馬車に乗って、初めての外で、クシェル様に髪飾りを買ってもらってーークシェル様のご両親はとても嬉しい方々でクシェル様のことやヴァンパイアのことを聞いて、クシェル様に首を舐められてーーピチャピチャという水音が、ジーク様の声が、クシェル様の息が耳を掠める度ゾクゾクして背筋が震え……自分の声とは思えない声が出て、ジーク様の名前を呼んだ時なんかまるで甘えたネコみたいな声で……わー何してんのわたし!!穴があったら入りたい!昨日のことを無かったことにしたい!あれはわたしじゃない!って待ってあの時わたしジーク様の腕に思いっきり爪たててなかった⁈ヤバイ!絶対痛かったよね!本当何してんのわたしっ!

 そして、色々やらかした挙句、最後は血が足りなくなってーー意識を手放したのだった。

「はい、すみません。お見苦しいものを見せてしまい、もう本当、色々迷惑をかけてすみません」
「見苦しい?いや、コハクは何も悪く無い。俺が付いていながら、すまなかった」

 ジーク様は深々と頭を下げた。

「え⁈あ、頭を上げてください!」

 ジーク様は悪くない!多分わたしが二人が思っていたよりひ弱だったんだ。

「えと、腕とか大丈夫ですか?あの時、思いっきり爪を立ててしまって……本当すみません」
「腕?あー大丈夫だ」

 そう言うと昨日わたしが爪を立ててしまった方の腕を上げて見せてくれた。しかしそこには傷一つ無かった。

「え?」
「あんなのは傷のうちに入らない」

 やっぱり魔族は人間より治癒能力も高いんだ、すごい。
 

 ジーク様はわたしをもう一度ベッドへ寝かせると「クシェル達を呼んで来る」と言って部屋を出て行ってしまった。


 治癒能力の話からふと気になって首に触れてみたが、傷痕らしきものはなかった。

これもクシェル様の唾液の効果の一つなのだろうか

 そうこうしていると、ドアが開き、落ち着いた様子のフレイヤ様と、慌てた様子のクシェル様とシェーンハイト様を連れてジーク様が帰ってきた。

「おはようコハクちゃん、調子はどう?」

 そう言うとフレイヤ様はそっとわたしの額に触れる。

「お、おはようございます…?」

 すると暖かい光がわたしを包む。

「大丈夫そうね、でもまだ血が足りてないみたいだから、今日は安静にしていないとね」

 フレイヤ様は回復魔法を得意としている。
 きっとフレイヤ様が、気を失ったわたしを診てくれたんだ。

「はい、ありがとうございます。すみませんご迷惑をおかけしました…」
「迷惑だなんて、悪いのは暴走したクシェルなんだから、コハクちゃんが謝る必要はないわ」

 フレイヤ様は微笑み、頭を撫でてくれる。

「そうだ、全ては自分を制御出来なかった俺が悪いんだ!すまなかったコハク」

 フレイヤ様の診察が終わるとクシェル様は俯き、身を縮める。

「顔を上げてください」
「………」

 クシェル様は俯いたままわたしと目を合わせようとしない。

 ーーわざと見ないようにしてる?もしかして、見ないようにしてるのはわたしの感情?

「クシェル様」

 右手を伸ばしクシェル様の頰に添え顔を覗く。
 やっぱり目を逸らされた。

「大丈夫です。感謝こそすれ、嫌いになるなんて事はありませんから」
「…かん、しゃ?」

 クシェル様は信じられないという感じで目を見張る、しかし目は合わせてはくれない。

「はい、昨日は全く痛くありませんでした!わたしが痛いのが苦手だって言ったからですよね、それにわたしの血をつい飲み過ぎてしまったのもそれだけわたしの血が美味しかったって事じゃないですか!わたし嬉しいです」

 わたしが痛いのが苦手だって言ったからクシェル様は念入りに準備をしてくれた。そんな優しい人が、わたしの血を飲んで抑えが効かなくなったんだとしたら、それだけわたしの血を求めてくれたという事、クシェル様の役に立てたという事だ。

「コハクーー」
「はい」

 恐々とではあるが目を合わせてくれた。わたしは怖がる必要はないのだと、不安になる必要は無いのだという思いを込めて頷いた。

「コハク~」

 今日は昨日のようにベッドに倒れる事なくクシェル様の抱擁を受けとめられた。
 クシェル様の隣に立っていたジーク様は頭を撫でてくれ、後ろで見守ってくれていたシェーンハイト様はフレイヤ様のハンカチを涙で濡らしていた。

「食欲はあるか?」

 ジーク様の声を合図にクシェル様の抱擁が解かれる。

「はい、お腹ペコペコです」

 血が多く失われたからか、実はすごくお腹が空いていた。
 お腹がならなかった自分を褒めてやりたいくらいだ。

「じゃあ私たちは出て行くからここでゆっくり食べるといいわ、あ!クシェル後で伝えたい事があるから落ち着いたら昨日の部屋へ来て」

 そう言うとフレイヤ様は未だに泣いているシェーンハイト様の背中を押しながら部屋から出て行った。

 クシェル様に伝えたいことって何だろう

 食事はメイドさんが三人分持ってきてくれ、部屋に備え付けてあった丸いテーブルに並べられる。朝食はクシェル様が食べさせてくれる。
 スープの肉はよく煮込まれていて噛むとホロホロと崩れるほど柔らかく、優しめの味付けで美味しかった。
 わたしの分は病み上がり?ということで特別メニューらしく、二人の前には朝から塊り肉やこんがり焼けたパンが並べられていた。

 食事を終えるとすぐに身なりを整え、フレイヤ様が待つ昨日お茶をした部屋へと急いだ。

 ノックをして部屋へ入るとフレイヤ様とシェーンハイト様がお茶をして待っていた。

「来たわね、ささ座って」

 フレイヤ様に急かされて二人の向かい側に座る。もちろんわたしはクシェル様とジーク様の間だ。

「コハクちゃん無事で良かった」

 再びシェーンハイト様が涙ぐむ。

「ご心配おかけしました」

 シェーンハイト様は涙もろい人なのかもしれない。

「で、伝えたい事って?」

 クシェル様は涙ぐむシェーンハイト様には構わず、フレイヤ様を急かす。
 するとフレイヤ様はクシェル様だけ連れて部屋から出て行ってしまった。わたしには聞かせたくない事なのかもしれない。
 
 わたし達は三人でここで二人を待つことになった。


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