妄想日記8<<FLOWERS>>

YAMATO

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Chapter10(霹靂編)

Chapter10-⑨【雷が鳴る前に】

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「だったら競泳用にしようかな。」
片付けの手伝いをする前にすべき事があった。
「えっ、着てくれるのですか?」
「ビキニはハイレグ過ぎて、恥ずかしいや。」
人の事を言えた立場ではない。
自分もリョウキにソラの代わりを求めていた。
メッシュのマスクはソラと錯覚させる手段でしかない。
そう偽りのソラ。
楽しい食事を知ってしまった。
もう一人ぼっちの夕飯は食べたくない。
偽りでもいい。
そして例え誰かの代わりでも、一緒にいてくれればそれで良かった。
 
メンブラは幾つか持っている。
それが女性用になった所で、大差ない。
ただ多くの視線を集めるのは初めてだった。
注目を浴びる事に慣れていない。
良くも悪くもリヒトは影が薄い。
いや、目立たぬ様に生きてきたのだ。
今、好奇の視線とはいえ、多くの者が見ていた。
メンズオンリーのこの聖域でレディースを着ている。
それは自分が異常者と、宣言しているのと同じだ。
はっきりではなく、チラチラ見る人が多いのは、関わりたくない証拠だろう。
「とても素敵です。」
真っ直ぐに見詰めてくれる瞳が嬉しい。
身体にフィットした水着はかなり小さい。
捲れた生地を直してくれた。
身体を締め付ける感覚は経験した事がない。
そして股間を気にする必要がない。
心からリラックス出来た。
何も隠す事なく、素でいればいいのだ。
 
「想像通りです。
本当に素晴らしい。」
リョウキが愛しげに股間を撫でる。
リングが睾丸を圧迫した。
痛い筈なのに気にならない。
それを越える快楽に全身が包まれていた。
横になり、瞼を閉じる。
オレンジ色の世界に二人はいた。
ソラとは叶わなかった日焼けだ。
大陽とリョウキを同時に感じ、独りでない事を実感した。
股間に息が掛かるのか分かる。
「いい香りです。
丸でキンモクセイだ。」
夢心地でそれを聞く。
リョウキが望むなら、暫くケージを付けててもいい。
「私の部屋でも花を咲かせて下さい。
あなたの香りで満たして欲しいです。」
このまま時が止まればいい。
二度あることは三度ある。
雲が大陽を覆う。
時の経過は三度目に向かっているのか?
冷たい風が小さな不安を運んできた。
 
滴が頬に当たる。 
「降ってきましたね。
午後は大気が不安定になると予報で言ってました。」
「なら、急ごうか。」
辺りの人々は荷物を片付け、足早に去っていく。
のんびりしているのは自分達位だ。
「手遅れです。」
『ドォーン!』
雷鳴が轟く。
それが合図となり、大粒の雨に変わった。
「あの木の下で雨宿りしましょう。
ゲリラ雷雨であれば、そう長く降らないと思います。」
リョウキに促されて、大きな枝の下に退避する。
既に競泳水着は濡れて、本当にプールあがりの様相となってしまった。
逃げ遅れた二人がいる。
先程、こちらを見ていた今日一番黒い男だ。
もう一人は脂の乗ったマッチョで、Tバックを穿いている。
そこへ異常者が入ってきたのだ。
マッチョが音を立てて、鼻を嗅ぐ。
汗とオイルと饐えた臭いに反応したのだ。
二人の会話は止まり、気まずい空気が漂う。
雨の激しさは増すばかりだ。
対岸のビル群はけぶって見えない。
 
(つづく)
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