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同棲編

41.重い男

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同棲編スタートです。
お付き合いいただけたら嬉しいです。  


……



美云が獅朗の家に引っ越してきてから1週間が経った。

二人の共同生活=同棲が始まってから美云が困ることと言えば、獅朗が過剰に世話を焼きたがることかもしれない。特に朝のバタバタしてる時間帯にストッキングを履かせようとするのは時間無いし自分で履けるし恥ずかしいしで本当にやめて欲しいと思う。

それでケンカになるかと言うとケンカにはならない。獅朗がしょんぼりするだけだ。だけど一度、あまりにも世話を焼きすぎるから、ふざけて女の子と一緒に暮らしてるみたいだと言ったらどうもそれが気に入らなかったみたいで、その日の夜は獅朗がベッドの上で野獣になり美云は口は災いの素だということを充分に理解した。
これでもかと言うくらいの甘いせめぐに美云がびっくりして泣き出したら獅朗の理性が戻ったようで、後からすごい謝り倒されたけれど。

まだ二人の共同生活は始まったばかりだと言うのに、度が過ぎる愛されように美云の心は怖じけ付きそうになることがしぼしばだ。この人、変わり過ぎではないだろうか?

今日も獅朗は楽しそうに美云の分まで洗濯物を洗って干している。美云が何かしようとするたびに"良いから座っていて"と言われてしまい、まるでお姫様のような気分だ。

「ねぇ獅朗、そんなに私を甘やかさないでよ。いつか私、何もできない人になってしまいそう」

獅朗が出張で家を留守にしたり、最悪は今後別れるってことも無きにしもあらずだから。

「じゃあ、私たちいつ結婚しましょうか?」

美云がまたお決まりの不安に陥ると、獅朗が爆弾発言をする。

「えええっ?!」

「美云、言ったでしょう?私は遊びじゃないって」

ええ。ええ。聞きましたとも。全てが変わってしまったあの日に。

「それとも美云は最初から私を弄ぶつもりだったんですか?」

ご丁寧に美云のパンツを干しながら、やってることに不似合いな真剣な顔で獅朗がこんなことを言ってくる。

「ええと。獅朗は私で良いの?」

年上の背高ノッポの女で良いのだろうか?だって獅朗だったらどんな女性でも選り取りみどりだろうに。

「ええ。私は美云が良いんです。むしろ美云じゃなきゃ嫌です」

すごい力の入った答えになぜか照れてしまう。

「美云には知っていて欲しいんですが・・・私は今まで女性を愛したことがありません。好きになったこともありません」

美云と出会うまでの獅朗はただ息をしていただけの人間だった。生きる目的がわからなかった子ども時代。自分を偽りの感情で塗り固め仕事だけに生きてきた男。そこには人に恋し人に心を開くと言う目的は存在しなかった。ただそれだけのちっぽけな人生だった。
それは子どもの頃の心の傷がそうさせたとは今ならわかるけれど。そんな獅朗を変えてくれた相手が美云であり、唯一手に入れたいと思う女性も美云だ。

「でも今すぐ返事がもらえなくても構いません。どうせ私のことですからきっとこれからも言い続けるでしょうから」

きっと、結婚してからもプロポーズするかもしれない。そんなイメージが頭に浮かんで獅朗はクスッと笑う。

「ただ、私は真剣そのものだし、この気持ちは変わりませんよ」

うっ。なんて重いんだ、と美云は今までの軽すぎる獅朗を思い浮かべる。獅朗の中ではきっとグレーゾーンが無くて、白か黒のハッキリした意識が働いているようだった。プロポーズの答えを待つと言ったのはもしかしたらグレーと言えるかもしれないけど・・・

「心が決まったら言います」

「はい。期待して待っています」

「うっ」

「ふふ」

重い雰囲気を纏いつつも、何か未来が見えるのか獅朗は余裕綽々だ。まるで仕事をしている時の獅朗そのものだった。
冷静な判断、的確な手段、結果を出すためのトライアンドエラー。何度も諦めず、何度も果敢に挑戦する。

プライベートと仕事は分けて考えていた美云は、もしかしたら獅朗のような考え方をしたら結婚についても前向きになれるかもしれないと気づいた。
いや、その前にまだ共同生活は始まったばかりなんだけどと、やはり獅朗のような考え方に中々付いていけない。

「今はまだ恋してたいです」

獅朗が好きと言う感情がやっとこ定着した美云にとって、蜜月のような甘い時間を過ごしている今も大切な時間だった。

「はい。美云の仰せのままに」

美云のおでこに口づけると買い物に行きましょう。今日は何を作りましょう?と楽しそうに獅朗は出かける準備を始めた。


……


筆者、ロン毛優男に奉仕(愛)されたい願望



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