三十路の恋はもどかしい~重い男は好きですか?~

キツネ・グミ

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発展編

29.約束

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ねぇ私たち、地上に降りてもきっとまた一緒になれるのね?


ああ、もちろんだよプシュケー。君と僕がここを離れてもまたきっと出会える。


でもアモール、私は心配よ。いつも道に迷うもの。


大丈夫だよ、プシュケー。もし君が道に迷っていても必ず僕が君を見つけてあげるから。 


本当?約束よ?きっと私を見つけてね。


ああ。必ず君を捜しだすよ。


じゃあ指切りしましょう! 

 

ふふ。もちろんだよ。





そろそろ行く時間だ。


ええ。絶対、私を見つけてね。


ああ。絶対、君を見つけるよ・・・



……...



心の奥のもっと奥に隠してしまって、もはや自分では隠した場所すらわからなくなっていた子どものころの傷。

その傷が美云に出会ったことで疼きだし顔を出してしまった。


幸せになりたい。

愛されたい。

愛したい。


そこにはただそれだけの思いのちっぽけな獅朗がいた。
人並みのありきたりな意識をもった男が存在するだけだった。
自分にそんな感情があったことに今更ながら気持ちを乱された。
感情を持つことの辛さ、悲しみ、そして嬉しいという感覚もジワジワと取り戻しているようだった。

どうにも落ち着かなくて成徳のもとに行った後、しばらくしてから一課に戻ったが、どうにも感情が暴走して自分が何をしでかすか分からなかったため、獅朗は午後から半休をとることに決めた。

㬶天の研修初日だと言うのに不甲斐ない思いでいっぱいだったが、半休を取ることを㬶天と美云に伝えに行く。

「半休ですか?むしろもっと休んでも良いんですよ」

美云にはケロッとした態度で、㬶天の研修は自分と暁丹がいるから心配しないでくれと言われてしまった。

「そう言えば、社長からは獅朗さんに無理をさせないようにと言われています。だから僕も美云さんの意見に賛成です」

㬶天からもそう言われ、暁丹も横で強く頷く。

「私は、、良い部下を持って幸せです。ではお言葉に甘えて・・・」

「そうよぉ、甘えなさいよ、もっとお」

獅朗が最後まで言い終わらないうちになぜか佳敏がひょっこりやってきて止めを刺す。

そばで暁丹が"三人揃うとすごいビジュアル"と小声で囁くのが聞こえる。


獅朗は結局、美云たち四人に追い出されるように退勤し、家に帰り着くなり疲れた頭と心を癒すため泥のような眠りについた。
その姿を心配そうに見守るジンにすら気づかず。



………


「ねぇ美云、アンタはいったい獅朗にどんな魔法をかけちゃったわけ?」

㬶天の研修初日の退勤後、今度こそイケメンのお店行きましょう♪と鼻歌交じりに佳敏に誘われて、美云は今、イケメンだらけのボーイさんがいるお店で料理が出てくるのを待っている。 

念のため、獅朗には明日も休むようにメールでやんわり伝えておいた。もし明日出勤してもしなくても、それは本人の意思なので何も言わないことを誓いつつ。本当は休んで欲しいと思ってるけど。

「え?ここは魔法の世界じゃ無いんだから魔法なんて使ってないわよ」

「何よ、その面白くない返事は」

「だって、本当のことだもの」

「ふふん。冗談よ。それよりもアタシが気になるのは獅朗よ。あの子、アンタと出会ってから本当に変わったわ」

ロボットみたいな男だと思ってずっとからかってきたけど、美云と出会ってからの獅朗はどんどん人間らしさが滲み出てきて、最近は迂闊にからかうのを止めたほどだ。

「そうかなぁ。あ、でも成徳さんにも獅朗をよろしくってお願いされてたな」

正直、お願いされても飼い慣らせるとは思ってないし、何をお願いされたのか分からなかった。

「アンタはさあ、恋愛になると疎くなるから言わせてもらうけど」

「何よ?」

「アンタは愛されたい女でしょ?」

「そうだけど?」

「たぶん、獅朗は、、愛に目覚めたのよ!」

「はぁ?」

もう!これだけ言っても分かんないの?ダメな子ねぇと佳敏は料理をつつきながらため息をつく。食べたり話したりため息ついたり忙しい。

「つまりぃ、獅朗は愛したい男なのよ、本当は。それしかないわよ」

佳敏はやだぁ楽しそう。と自分のことのように瞳をキラキラさせてワクワクしている。

「そんなこと言われても」 

恋してる獅朗を頭に思い描こうとしたけれど、そもそもそんな人に見えないからイメージが沸かない。

「違うわよ、恋じゃないわよ。愛よ、愛」

「何が違うの?」

「恋は遊びよ、所詮。でも、愛は違うわ。恋より重くてずっと続くのよ」 

「じゃあ、もし獅朗が例えば愛に目覚めて誰かを愛したくなったらどうなるの?」

「たぶん、身悶える程の重さだと思うわ。きゃあ、楽しみぃ」

重い獅朗?身悶える程?美云にはそのイメージがどうしても浮かんでこない。でももし佳敏が言うように獅朗が愛に目覚めて誰かを愛したいと思ったらきっとその姿は美しいんじゃないかと思った。

今でさえ女性にチヤホヤされているのに愛に目覚めたら、さらにチヤホヤ度が増してきっと仕事どころじゃなくなるかも?

美云はイケメンに浮かれてキャイキャイしてる佳敏の隣で愛に目覚める獅朗をイメージしようとがんばった。



………


冒頭について

コンセプトがソウルメイトなので、獅朗と美云の魂がまだ地上に降りる前。アモールとプシュケとして天上で誓い合った話になります。



明日も投稿予定です!
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