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好きだけど④
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「......私はちゃんと、話すつもりだったのに。
冗談だと思ってスルーしたのは、華月じゃない!」
またしても子供みたいに、唇が尖るのを感じだ。
だけど華月はニヤニヤとゲスな笑みを浮かべ、早く話せとでも言いたげに、無言のまま私の顔をただ凝視した。
「元々私が居ない間、部屋の管理をお姉ちゃんに頼んでたんだけど。
......あの守銭奴、私がずっと不在だからって、勝手にここを奏くんに又貸ししていたみたいで......」
華月は何度か、うちの姉にも会った事がある。
普通であればこんな話、驚くところだと思うけれど、姉の性格を知る彼女は合点がいったのか、『あぁ......』とだけ答えて頭を抱えた。
「でも私、仕事を辞めたばかりだったじゃない?
奏くんが、行く所が無いなら居ても良いよって言ってくれて」
すると華月は不思議そうに首を傾げ、矢継ぎ早に聞いた。
「居ても良いよって、おかしくない?
そんなの奏を、追い出しゃ良かったんじゃない?
ここは千尋のマンションなんだし、アンタはお金は一切受け取って無かったんだよね?」
「うーん......最初は、ね。
でも一緒に暮らすようになってからは話し合いの末、元々支払う予定だった家賃の半額分を直接私が受け取ってる。
私はいらないって最初は断ったんだけど、奏くんも引いてくれなくて」
そこで私はのそのそと立ち上がり、引き出しから一枚の紙を取り出した。
「契約書。
......こんなもんまで、用意してたんだ」
それを見て彼女は、呆れたようにボソッと呟いた。
だからコクンと頷き、まだ不満顔の華月に、話すべきか迷いながらも告げた。
「そう。この部屋の所有者は私だって、一応ちゃんと説明したんだけどね。
......自分は詐欺被害に遭ったのかなって奏くんに言われて、それ以上強く言えなくて」
すると華月はぐわっと瞳を見開き、大きな声で吠えた。
「はぁ!?何よ、それ。
脅迫じゃん、そんなの!」
なんて答えるのが正解か分からず、私はただ曖昧に微笑んだ。
冗談だと思ってスルーしたのは、華月じゃない!」
またしても子供みたいに、唇が尖るのを感じだ。
だけど華月はニヤニヤとゲスな笑みを浮かべ、早く話せとでも言いたげに、無言のまま私の顔をただ凝視した。
「元々私が居ない間、部屋の管理をお姉ちゃんに頼んでたんだけど。
......あの守銭奴、私がずっと不在だからって、勝手にここを奏くんに又貸ししていたみたいで......」
華月は何度か、うちの姉にも会った事がある。
普通であればこんな話、驚くところだと思うけれど、姉の性格を知る彼女は合点がいったのか、『あぁ......』とだけ答えて頭を抱えた。
「でも私、仕事を辞めたばかりだったじゃない?
奏くんが、行く所が無いなら居ても良いよって言ってくれて」
すると華月は不思議そうに首を傾げ、矢継ぎ早に聞いた。
「居ても良いよって、おかしくない?
そんなの奏を、追い出しゃ良かったんじゃない?
ここは千尋のマンションなんだし、アンタはお金は一切受け取って無かったんだよね?」
「うーん......最初は、ね。
でも一緒に暮らすようになってからは話し合いの末、元々支払う予定だった家賃の半額分を直接私が受け取ってる。
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そこで私はのそのそと立ち上がり、引き出しから一枚の紙を取り出した。
「契約書。
......こんなもんまで、用意してたんだ」
それを見て彼女は、呆れたようにボソッと呟いた。
だからコクンと頷き、まだ不満顔の華月に、話すべきか迷いながらも告げた。
「そう。この部屋の所有者は私だって、一応ちゃんと説明したんだけどね。
......自分は詐欺被害に遭ったのかなって奏くんに言われて、それ以上強く言えなくて」
すると華月はぐわっと瞳を見開き、大きな声で吠えた。
「はぁ!?何よ、それ。
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なんて答えるのが正解か分からず、私はただ曖昧に微笑んだ。
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