38 / 151
飼い犬に、手を噛まれる②
しおりを挟む
「おかえりなさい、奏くん。
今日も、お疲れ様」
もう少し甘えたくなったから彼に身を預け、全身の力を抜いた。
すると彼は満足そうにふっと笑い、私を抱き締める腕に力を込めた。
「ありがと、千尋さん。
あぁ......家に帰ってきたって、感じがする!」
すりすりと頬に頬をあて、擦り付けられた。
日々スキンシップのレベルが上がっている気がしないではないけれど、やっぱり嫌じゃない。
人肌の温もりは心地いいし、奏くんにこうやって求められるのは嬉しい。
だけどこんな不安定な関係を、彼の言葉に甘えてずるずると続けていく事は出来ないというのも、ちゃんと理解していた。
時が経てば経つほど、私はきっとこの人の側から、離れるのが辛くなる。
「そう言えば今日、お姉ちゃんに会いに行ってきたの」
私がそこまで言うと彼は、ビクッと体を強張らせた。
それにちょっと驚きながらも、彼にぎゅっとハグされたまま言葉を続けた。
「家賃は今後私が直接受け取る事と、あと部屋が見つかるまでの間、お姉ちゃんの家に住ませてくれないかって話をしてきた」
「......何?それ。
そんなの俺、聞いてない」
さっきまでの明るい口調とはまるで異なる、不機嫌そうな声色。
こんな風に過剰な反応をされると思わなかったから、また少し動揺した。
「うん。それは、ごめんなさい。
でもいつまでもここで、一緒に暮らすワケにはいかないでしょ?」
すると彼は私の両肩を掴んで体を離すと、じっと顔を覗き込むようにして聞いた。
「なんで?それの一体、何が駄目なの?」
その理由は、明確だった。
......私が年の離れた彼の事を、単なる同居人やペットなんかじゃなく、完全に異性として見てしまっているからだ。
そんな馬鹿げた事を口にするなんて真似、絶対に出来ないけれど。
今日も、お疲れ様」
もう少し甘えたくなったから彼に身を預け、全身の力を抜いた。
すると彼は満足そうにふっと笑い、私を抱き締める腕に力を込めた。
「ありがと、千尋さん。
あぁ......家に帰ってきたって、感じがする!」
すりすりと頬に頬をあて、擦り付けられた。
日々スキンシップのレベルが上がっている気がしないではないけれど、やっぱり嫌じゃない。
人肌の温もりは心地いいし、奏くんにこうやって求められるのは嬉しい。
だけどこんな不安定な関係を、彼の言葉に甘えてずるずると続けていく事は出来ないというのも、ちゃんと理解していた。
時が経てば経つほど、私はきっとこの人の側から、離れるのが辛くなる。
「そう言えば今日、お姉ちゃんに会いに行ってきたの」
私がそこまで言うと彼は、ビクッと体を強張らせた。
それにちょっと驚きながらも、彼にぎゅっとハグされたまま言葉を続けた。
「家賃は今後私が直接受け取る事と、あと部屋が見つかるまでの間、お姉ちゃんの家に住ませてくれないかって話をしてきた」
「......何?それ。
そんなの俺、聞いてない」
さっきまでの明るい口調とはまるで異なる、不機嫌そうな声色。
こんな風に過剰な反応をされると思わなかったから、また少し動揺した。
「うん。それは、ごめんなさい。
でもいつまでもここで、一緒に暮らすワケにはいかないでしょ?」
すると彼は私の両肩を掴んで体を離すと、じっと顔を覗き込むようにして聞いた。
「なんで?それの一体、何が駄目なの?」
その理由は、明確だった。
......私が年の離れた彼の事を、単なる同居人やペットなんかじゃなく、完全に異性として見てしまっているからだ。
そんな馬鹿げた事を口にするなんて真似、絶対に出来ないけれど。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
小野寺社長のお気に入り
茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。
悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。
☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。
☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる