年下俺様アイドルの、正しい飼い方

ryon*

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飼い犬に、手を噛まれる②

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「おかえりなさい、奏くん。
 今日も、お疲れ様」

 もう少し甘えたくなったから彼に身を預け、全身の力を抜いた。
 すると彼は満足そうにふっと笑い、私を抱き締める腕に力を込めた。

「ありがと、千尋さん。
 あぁ......家に帰ってきたって、感じがする!」

 すりすりと頬に頬をあて、擦り付けられた。
 日々スキンシップのレベルが上がっている気がしないではないけれど、やっぱり嫌じゃない。
 人肌の温もりは心地いいし、奏くんにこうやって求められるのは嬉しい。

 だけどこんな不安定な関係を、彼の言葉に甘えてずるずると続けていく事は出来ないというのも、ちゃんと理解していた。
 時が経てば経つほど、私はきっとこの人の側から、離れるのが辛くなる。

「そう言えば今日、お姉ちゃんに会いに行ってきたの」

 私がそこまで言うと彼は、ビクッと体を強張らせた。
 それにちょっと驚きながらも、彼にぎゅっとハグされたまま言葉を続けた。

「家賃は今後私が直接受け取る事と、あと部屋が見つかるまでの間、お姉ちゃんの家に住ませてくれないかって話をしてきた」

「......何?それ。
 そんなの俺、聞いてない」

 さっきまでの明るい口調とはまるで異なる、不機嫌そうな声色。
 こんな風に過剰な反応をされると思わなかったから、また少し動揺した。

「うん。それは、ごめんなさい。
 でもいつまでもここで、一緒に暮らすワケにはいかないでしょ?」

 すると彼は私の両肩を掴んで体を離すと、じっと顔を覗き込むようにして聞いた。

「なんで?それの一体、何が駄目なの?」
 
 その理由は、明確だった。
 ......私が年の離れた彼の事を、単なる同居人やペットなんかじゃなく、完全に異性として見てしまっているからだ。
 そんな馬鹿げた事を口にするなんて真似、絶対に出来ないけれど。
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