年下俺様アイドルの、正しい飼い方

ryon*

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飼い犬に、手を噛まれる①

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「ただいまー、千尋さん!
 今日も1日頑張って来たお利口なペットに、ご褒美ちょうだい?」

 玄関のドアが開くのと同時に、彼は甘えた声でそう言ってこてんと愛らしく小首を傾げ、ねだった。

 そして奏くんは靴を脱いで室内に入ると、両手を拡げて受け入れ体勢をとった。
 それに動揺し、思わず後退あとずさる私。
 すると彼は笑顔のまま更にズイと一歩前に出て、無言のまま早くと催促するような視線を私に向けた。

 そう......先日から突如発生した、謎のご褒美システム。
 何が切っ掛けでそんなものが誕生したのか今ではそれすらも記憶が曖昧なのだが、彼は帰宅後、毎日当然のように私にハグを求めるようになった。

 彼が本当に夜の世界の住人なのだとしたら、むしろこれは世の女性達からすると、有料でも受けたいサービスな気がする。
 なのに私みたいな、地味で面白みのない女相手に彼は、なんでこんな事を求めるんだろう?
 彼ならきっと女の子なんて、選り取り見取りなはずなのに。
 
 そんな風に考えたら、胸がズキンと痛んだ。

「ご主人様......だっこはぁ?」

 クゥンと子犬が飼い主に甘えるみたいに、切なげに訴える奏くん。
 なんとなく納得がいかない気もするが、私はこれに弱い。
 だから目を閉じて、えいっと彼の腕の中に勢いよく飛び込んだ。

 その瞬間。
 ......彼の体から漂ってきた、女性ものと思われる甘ったるい香水の香りには、気付かないふりをした。

 私の頭を優しく撫でる、奏くんの大きな手のひら。
 これではどちらがペットか分からないなといつも思うけれど、決して不快なワケじゃない。
 むしろ心地よいから困るだなんていうのはきっと、贅沢過ぎる悩みなのだろうと思う。
 そしてこんなにも魅力的な彼の事を、独占したいなんて考えてしまうのも。
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