やさしい異世界転移

みなと

文字の大きさ
上 下
61 / 103
第2章 マジックフェスティバル

【60話】 魔滅神矢

しおりを挟む
『それでは、時間もいい感じニャので!マジックフェスティバル3回戦を行いたいと思います!選手の2人はグラウンドへ!!』

 グラウンドへ足を踏み出す。

 高揚感と緊張が体中を駆け巡る。

 向かい合う相手は同じ学園での友、実力は恐らく互角と言っても過言ではない。
 だからこそ、今日この場でどちらが上なのかの証明をするのだ。

『2人は同じパゼーレ学園出身の選手という事でパゼーレ学園の教員であるルコードさんはこの試合、どっちが勝つと思うニャ?』

『そうですね……見た感じ、2人の実力はそう変わりないと思いますね。
ですが、学園の授業ではデイ選手の方が勝率が高いイメージがあります。』

『ニャる程、つまりこの試合デイ選手が勝つ確率が高いと?』

『さぁ、それはどうですかね?』

「それではマジックフェスティバル3回戦、第1試合を始めます。
2人とも魔性輪の準備を。」

 審判に準備を促され、魔性輪をはめる。

 デイは戦斧を取り出し、構える。

 黒と白、2つの短剣を出しそれぞれ両手で持つ。もう1本、灰色の短剣があるのだが、それは今は出さずに温存しておく。

 そして俺は。

「接続っ!」
 
 2つの短剣を1つの灰色の弓にする。

 さっきのデイの試合、ちゃんと見ていた。
 デイがタイガに触れた途端、あの魔法を放った。つまりあの魔法を放つには直接的に相手に触れるといった条件があるのだろう。

 だからこそ、直接デイに触れられてあの魔法を発動されないように、この試合では遠距離からの弓による攻撃を仕掛ける。

『ニャんですか!?あのユウト選手のあれは!?人器同士がくっついて弓にニャっちゃいましたニャ!!』

「!?」

 俺のジン器を見て、会場そしてデイも驚いている。
 それに対して俺は一言。

「本気で戦うって言っただろ?」

 それを聞いたデイは笑う。今までの試合では出さなかった奥の手を自分に使うという事が嬉しくなっているのだ。

「そ、それでは試合……開始!!」

 審判が試合開始の合図をした途端、後ろへ飛びデイから距離を取る。

 弓を構える。ドサイとの戦いではもう1つのジン器を矢にして放った。
 その時は放った後、数秒程の手足の痺れでまともに動けなかった。

 あの戦いからそのデメリットを無くす為に特訓をしていた。その成果がこれだ。

 魔力を矢状に形造る。魔力の矢を弓にかけて矢を引く。

「──魔状矢 拡散」

 矢を放つ。魔力で造られた矢は無数に分かれてデイへ向かっていく。

「……ッッ!サンダアーマー!」

 デイは魔状矢の対処として雷の魔力で身を守る。魔状矢はあっけなく防がれる。
 やはり、ジン器よりも威力が落ちる。

 それでも手を休める訳にはいかない。
 デイに触れられないように動きながら魔状矢を放つ。サンダアーマーに防がれるもそれでデイを撹乱出来ているのなら……

「……見慣れた。」

 デイが呟き、サンダアーマーを解いた。
 そして次の瞬間には魔状矢を避けて俺へ向かってくるのだ。
 そうデイはこの短時間で魔状矢を見切ったのだ。流石にジン器代わりの魔力矢では限界があったか。

 俺はデイの接近に伴い、ジン器を弓から2対の短剣に戻して接近戦の構えをとる。
 注意すべきはデイの手、あれに触れられればあの大技が来るのは確定だろう。

 そしてデイが人器である戦斧で俺に斬りかかる。それを短剣2つで受け止める。
 少しの間拮抗するが、すぐに攻防が始まる。

 デイの戦斧と俺の短剣がぶつかり合う音が幾度も鳴る。途中、デイがこちらに手を伸ばすが、それをギリギリで躱しつつ戦斧の対処をする。
 試合は長期化すると思われたが、試合はすぐに動きを見せる。

 攻防の最中、少し下がろうとした俺の背中に痺れるように痛みが走る。
 それはデイによる魔法。いつの間にか俺の後ろに雷の魔力を設置していたのだった。

 それをくらった俺は一瞬だけ、動きが止まる。この攻防の最中、動きが止まるのは致命的だった。
 デイの手が発勁のように俺の体に触れた。
 
 その発勁によるダメージは少ないが、問題はそこではない。あれが……くる。

 デイは笑みを見せながら手を天にかざす。
 途端に空は曇り始め、暗雲が立ち籠め雷鳴が鳴り出す。
 そして……

「グロムインパクト!!」

 巨大に雷が俺に迫ってくる。
  
 どうする!?あの魔法をくらったら流石に一撃だ。生半可な火力ではあの魔法を飛ばせない!
 
 俺のジン器のもう1つの形態、刀を出すか?いやあれはまだ扱えきれない。

 雷撃が迫ってくる。状況は絶望的、それでもまだ手はある。

 俺は雷撃を避けようと地面を駆け回る。
 雷撃は俺を追ってついてくる。……大丈夫俺ならやれる。失敗なんかしない。

 決心をつけて俺は1回戦で見せたように空へ舞い上がる。

 何をする気だ!?とデイの表情からはそううかがえた。俺の答えはこれだ。

 俺は暗雲の中へと入って行き、姿が見えなくなっていた。会場の観客の視線が俺が入った暗雲に集中する。
 
「接続っ!!」

 そして次にこの人たちが見た光景は暗雲から出てくる俺、その手にはさっきの弓と灰色でさっきの魔力の矢とは違う矢だった。

 弓をあの雷撃に向かって構える。チャンスは一度きり、この1発で決まる。

 優斗が今から放つ技は、彼自身が人に対して使う事を禁止した技。
 当たれば相手を死なせる一撃必殺の矢。

 その名は……

「──魔滅神矢」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪
ファンタジー
   日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。    そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。  しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。  高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。    確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。  だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。  まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。  ――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。  先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。    そして女性は信じられないことを口にする。  ここはあなたの居た世界ではない、と――  かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。  そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ@10シリーズ書籍化
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...