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しおりを挟む私とリシャール様は、今でこそ不仲な婚約関係だけど幼い頃は仲が良かった。幼い頃から華やかさに欠け、性格も引っ込み思案な私は同年代の男の子たちに揶揄われることが多かった。それをぶっきらぼうに庇ってくれていたのがリシャール様だ。仄かに恋心を抱いていたリシャール様と婚約を結ばれて、私はとても嬉しかった。だが婚約が結ばれた頃からリシャール様との関係はギクシャクし始め、最近ではあの酷いお茶会をこなすだけだ。
「アニエス。大丈夫?」
お茶会の翌日、クロエはショッピングに誘ってくれた。二人で女性に人気の雑貨屋を回っているがなかなか気分が浮上せず暗い顔をしていたらしい。
「ごめんなさい。ぼんやりしてしまって。」
「いいのよ。ほら、これも可愛いわよ。アニエスに似合いそう。」
クロエの手には可愛らしい髪飾りが乗せられていた。私の口はまた暗い言葉がついて出そうになったが慌てて止める。
「ふふふ。可愛いわね。」
「今度のアニエスのお誕生日パーティーでプレゼントしようかしら?」
「そんな……っ!」
“そんな可愛らしいものは私に似合わない”、そう告げそうになってぐっと堪えた。伝えてしまえば大事なクロエの顔を曇らせてしまうだけだ。
「アニエス?」
「そんなの悪いわ。クロエがパーティーに来てくれるだけで嬉しいもの。」
「まぁ!」
嘘ではない、本当の気持ちを伝える。嬉しそうに頬を綻ばせるクロエの顔を見ていると私の心も晴れていくようだ。
「アニエスへのプレゼントはもう少し考えるとして、他の雑貨店にも寄っていいかしら?」
「ええ。もちろん!」
クロエと目的のお店へ向かう。親友との楽しいおしゃべりの時間を過ごしていたが、目的の雑貨屋に辿り着きドアに手を掛けると私は表情を凍らせた。
「アニエス?どうし……。」
私の視線の先を見てクロエも息を呑んだ。雑貨屋の外から見えた光景―――それはリシャール様と美しい女性が寄り添い買い物を楽しんでいる場面だった。
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