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第二部
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しおりを挟むエラはベッドを持ってきた教師に誤解だと必死に説明し、自分は今借りている簡易ベッドで良いので新しいベッドは義姉に送り返してほしいと懇願した。いくらナスタジアが準備してくれたものでも流石にジャックと共寝などできない。
幸い、教師はエラの気持ちを理解してはくれたが、隣国の王太子妃となるナスタジアの贈り物を返すことは憚られると言う。話し合いの結果、エラがナスタジアの贈ったダブルベッドを一人で使い、ジャックはエラが元々使っていたベッドを使う、今借りている簡易ベッドのみを返却することで意見が纏まった。
「エラさん、ナスタジア様に一筆書いていただけないでしょうか?」
「そうですよね。少しお待ちいただけますか」
教師が頷いたのを見て、エラは義姉へ手紙を書くためにパタパタと走り自室へと戻った。残ったジャックと教師とでベッドの入れ替えを行う。作業をしながら教師は改めてジャックへ頭を下げた。
「ジャック殿に負担を強いてしまい申し訳ない」
「ふん。別に負担じゃねーよ。あのクソガキが大げさに騒いだだけだ」
「……」
彼はジャックを診た医師からの話を聞いている。随分前に倒れていても可笑しくないと言われ、長時間労働を強いた教師たちに辛辣な言葉を吐いた。自分たちの管理不足が要因なので、心して話を聞いたが……。
「……見張りの増員の件ですが」
「しなくていい。あんなクソガキ一人で見れなくてどうする?」
「でしたら、夜間や教師が来ている間はベッドで休んでくださいね」
次またジャックが倒れたら、信用問題になってしまうことを恐れているのだろう。教師の都合を察したジャックは「仕方ねーな」と面倒そうに頭を掻いた。しかし、教師の口からは思いもよらぬ言葉が飛び出た。
「エラさんが心配しますから」
「……あいつが大げさなだけだろう」
「倒れるまで魔力を使い切って、目が覚めたらすぐあなたのことを心配していたんですよ」
「ふん」
ジャックだって言われなくとも分かっている。一度ビショビショのタオルを額に乗せられ目を覚ました時、自分を覗き込む彼女の顔は今にも泣きだしそうに見えた。
「随分あのクソガキに甘いんだな」
「それは……」
あなたの方でしょう、という言葉を教師は飲み込み、苦笑いを浮かべた。
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