【完結】就職氷河期シンデレラ!

たまこ

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第二部

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「おい、ベッドが届いたみてーだぞ」


 翌日、すっかり回復したジャックがエラを呼びに来た。昨日はジャックはそのままエラのベッドに寝ており、エラは教師が置いていった簡易型のベッドに寝ていた。エラは読んでいた教科書を閉じると立ち上がった。


「何か、簡易型のベッドもお前のベッドも回収していくって言ってるけど?」


「はぁ?そしたら結局ベッドが足りなくなるじゃないの!」


「チッ、俺に言うなよ」


 ジャックの歩調に合わせるようにエラは足を一生懸命動かして、塔の出入口まで向かった。そこには不思議そうにしている教師が経っていた。物体を軽くする魔法を掛けて一人でベッドを持ってきたという彼は、必ず二つともベッドを持ち帰るよう言い渡されているという。


「こちらがナスタジア様からのお手紙です」


「お義姉様の?」


 エラは慌てて封を切った。ナスタジアからは物語のように長い手紙が綴られていたが、それは後から読むとしてベッドのことを書かれている部分を探した。十枚の便せんにざっと目を通しながら捲っていくと、最後の一枚にとんでもないことが書かれていた。



『人に興味のないエラが私に助けを求めてまで見張りの方を心配していたこと、とても嬉しかったわ。

 あなたがそこまで彼に心を砕いているということは……ふふ、大丈夫。何も言わなくても分かるわ。私、あなたのお姉さまだもの。




 追伸: 愛する人との共寝は幸せなものよ。あなたもきっとそう思うわ』



 教師が持ってきたのは、明らかにダブルベッドだ。


「お、お義姉さま……」



「やっぱり、お前共寝して欲しかったのか。さっさとそう言えばいいのに、素直じゃねーな」

 手紙を覗き込んだジャックは可笑しそうに揶揄った。


「そ、そんな訳ないでしょう!」

 いつも以上に方向性を間違っている義姉にどう苦言を呈したらいいものか、エラはジャックを怒鳴りつけながら思案した。
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