アルカディアンズ ~とある世界の転移戦記譚~

タピオカパン

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猫の国の動乱

動乱と新しい流れ2

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<<ミャウシア連邦首都ニーチア>>

ただでさえ出歩く人が少なくなった街が夜になり更にひと気をなくす。
そんな街の一角にある数階建てのボロアパートにゥーニャが入っていった。
結局今日も収穫なくアジトに引き返しただけだった。
部屋に入ったゥーニャは防寒具をかけて机に座るとパンや缶詰を食べ始めた。
家具がほとんどない殺風景な部屋でカチャカチャと食事の音だけが響く。

そしてゥーニャは度数の高い酒ボトルに手を出そうとするが気が向かないのか止める。
頭の中では護身拳銃で自害したくなるほど虚しさがこみ上げてくる。
けれども自分のために犠牲になった人がいるのを考えれば最後まで足掻くしかなかった。

そんななか廊下から声がする。

「隊長、しっかりしてください。次の階で部屋ですから」

男性の声だった。
地球人の男性ような野太い声ではなくアッテリア人特有の少年のような声である。

「え?バケツですか?見つけるまで我慢してください」

トントン!

ドアを叩く音がする。

「すいません。バケツをお借りしたいのですがご協力お願いします」

おそらく酒によったやつが吐きたいのだろことはすぐわかった。
無視しようかとも思うがいざこざの原因になるかもしれないので騒ぎにならないようゴミ箱を持って出る。
そこに立っていたのは軍服を着た軍人だった。

「ありがとうございます!」

軍人の男性はそう言うと廊下にうずくまる上官の女性にバケツを渡す。
すると女性は思いっきりバケツに嘔吐した。
よく見ると今日であった軍人、フニャンであった。
部下はウーでありフニャンの背中をさする。

「らしくないですよ隊長」

フニャンは部下にそう言われるが気分が持ち直したのか眠りに落ちてしまいそうで全く立てなくなった。
ウーが困ってしまうのを見たゥーニャは言う。

「よかったら私の部屋のベットを使っていいですよ」

「いいんですか?」

「ええ」

「そうですか、ではお言葉に甘えて」

ウーはフニャンを抱えるとゥーニャの部屋に入っていき椅子に座らせる。

「服は私が脱がせます」

ゥーニャはフニャンの軍服を脱がせてベットに寝かせた。
その間ウーは部屋の日借りをキャンセルしに行く。
戻ってきたウーはゥーニャに感謝する。
ウーはフニャンをあの状態で宿舎には連れていけなかったなど事情を説明しフニャンを一晩預かってもらうことになった。

「本当に何から何までありがとうございます」

「いえ、いいんです」

「では明日また伺います」

ウーはそう言うとアパートを後にした。
残されたフニャンをゥーニャはじっと見る。
恩を売れば首都から出るのを手伝ってくれるかもしれないというさんだんで引き受けたが薄々同情もしていた。
よく見るとベットで横になっているフニャンの眼角から涙が流れているのを見えた。
まるで夢の中で懺悔や謝罪をしているかのような悲しそうな寝顔である。
見かねたゥーニャはフニャンの涙を拭く。

そして今後のことを考え始めた。
曲がりなりにも政治家なのでこの手の策謀を考えるのは得意だが、展望を考えれば主導権はフニャンにあり、ここは下手に出るしかないと結論に至る。
それと同時にフニャンの人間味、誠実さを垣間見ているだけにもしかしたら損得にかかわらず力になってくれるかもしれないという要素もあった。
結局話さないことにはわからないと思い、考えるのを止めて防寒具を来て椅子に座ったまま寝ることにした。

翌朝、ゥーニャが目を覚ましと軍服に着替え中のフニャンが目に入った。

「おはようございます」

フニャンがゥーニャに挨拶する。

「おはようございます。昨日ぶりですね」

「ええ。それよりお礼を言わないと」

「いいんですって、大したことじゃないですよ」

「でも言わさてください。ありがとう」

「どういたしまして、それよりちょっとお話があるんですがお時間頂いていいですか?」

「...構いません。同志、ゥーニャ」

ゥーニャは面食らうが不思議と余り動揺しなかった。

「いつから?」

「初めてあった時からもしやと思いましたが、この状況とあなたの顔をじっくり見てそうなのだろうと」

「そうですか」

ゥーニャは話がはやそうだと考え単刀直入に言うことにした。

「実はあなたにお願いがあるのですが...」

フニャンとゥーニャの話は続く。
ミャウシアに新しい流れが芽生えつつあった。


<<グレースランド王国>>

「王女殿下、こちらへどうぞ」

犬耳の男性が窓の前に置かれた椅子に座る高貴そうな身なりの女性を案内する。
連れられる女性はグレースランド連合王国の女王エリザ・スカルディア・クローデンであった。
彼女の連れられた先は各国から集まった特使達が集まる会議だった。
ミャウシアに虐げられた周辺国の中でも近代化した国、もしくはミャウシアに対抗し得る力を持つ国だけが集まる会議だ。

「王女陛下がお見えになったので会議を開催させていただきます」

主催国グレースランドが進行役となって会議が進められる。
参加国はグレースランドと同じ犬の様な特徴を持つザイクス共和国と先日海戦を行ったポンポタニア王国、小柄でがっしりした体格を持つドワーフのような種族、そして欧州連合から派遣されたドイツ、イギリス、フランス、イタリアの武官、外交官達からなる地球人勢の4勢力だった。

犬のような耳と尻尾を持つ種族が住む国の首都にある宮殿のような立派な建物の中にある議場では大勢の多様な種族が集まって話し合いが行われる。
通訳がすべて揃わない国もあったがそこは充実していた欧州側がフォローした。
もともとは国交などの話し合いがメインテーマだったがミャウシア軍のとてつもない兵力の動員を欧州側から知らされグレースランドとザイクスが事実確認を行い、話し合いは国交の話そっちのけで共闘を呼びかけ始めるなど大混乱となった。

グレースランド「今我が国は膨大な数の敵兵に囲まれつつあります。このままではこの国の陥落は時間の問題なのです。できれば今回の話し合いはミャウシア問題の討議はもちろんでしたが、深く踏み込んで同盟まではいかなくても協力体制の構築に関しての議論まで進展させたいのですがよろしいですかな?」

ザイクス「我が国もその提案に賛成です。」

本題が逸れたたうえにまだ互いの素性も知れていない状態で同盟の話を持ってきたことでこの2国が相当追い詰められていることが伺えた。
その点で海で隔たっているポンポタニアと強い攻勢をあまり受けていないミャウシア南方のドワーフのような種族の国、グワルゴは消極的だった。
そもそもお互い召喚によって初めて出会った未知の種族であり、お互いを理解し合うところから始めなければならないのだ。
でなければ判断のしようがないしそもそも国の意向を聞かなければならないので当然だった。
だがこの2国はミャウシアの脅威を十分に理解してないように思われたため、グレースランドに同調したい欧州側は援護することにした。

欧州はできればこの話に持っていければと考えてここに来ていたので、この流れを加速させるために議論を主導し始めた。


欧州「我々も貴国の提案に賛成です。ミャウシア軍の軍備は想像を絶するほどの規模です。無策では各個撃破の憂き目にあいます。ここは種族の垣根を超えて強調することが望ましいでしょう」

ポンポタニア「我々は彼らの兵力を正確に把握していないがどれほどの規模なのかね?」

「我々が把握している陸軍兵力は約600万。海軍は数千隻の艦艇を保有し、総トン数は1,200万トンから2,000万トンの間でしょう」

「2000万トンだと!?」

「そうです、こちらの資料をご覧ください」

イギリス軍の武官が資料を用意する。
それは偵察写真で映っていたのはミャウシア海軍の軍港であった。
そこにはおびただしい数の艦艇がひしめいていて極めつけは超大型戦艦だった。

「この戦艦は?」

<i364452|25921>

「ソミューニャ級という6万トン超の大型戦艦で、全部で80隻就役しています。武装は40cm砲12門です。その他に3万トン級戦艦も30隻程確認しています」

ポンポタニアの派遣団は絶句する。
海で隔たっているポンポタニアは直接侵攻の難易度を考えれば大したことはないと思っていたが前回遭遇したのは主力でも何でもない主力戦艦も配備されないほんのひと握りの弱小部隊だったことを知り動揺する。
一方のグワルゴ側も陸軍600万人と聞いて焦りを見せていて、畳み掛けるように助言する。

「実はミャウシア軍は貴国を攻略するために周辺に多数の前哨基地を設け始めているのをこちらの偵察機で確認してます。ミャウシア軍は予備役の動員や徴兵制の実施も計画しているようでいずれ貴国に対し大規模な侵攻が始まることが予想されます。ミャウシア軍はその兵力を1000万や2000万に増やすのが容易いほどの大国なのです」

それを聞いたグワルゴの代表団は更に顔色が悪くなる。
実はこの国は第一次世界大戦レベルの国なのでミャウシア軍の軍勢を押しとどめる力はほぼないのである。
戦車や航空機に関しても大したことがなく、ミャウシア及びこの会議の参加国の実力についても理解があまり及んでいなかった。
この国に来て薄々科学力に気づき始めたがそれでも正常な判断を下せるほどではなく、欧州側はそれを先に知っていたので兵力というわかりやすいパラメーターで教えたのだ。
実際そんな数で攻められたら徴兵制を再開する体制を整え始めたばかりの欧州連合でも敗北は濃厚だ。

ザイクス「お聞きしたいのだが、あなた達はやけにミャウシアに詳しいのですね。それにこの写真やあなた達が乗ってきた輸送機、ずいぶん高度な技術で作られたものだと我々の顧問の者が言っておりますが。それに皆さんは各国代表団という形でここに来たようですが、詳しく聞いても?」

「ええけっこうです」

今回欧州連合代表を務めるフランスの使節が言った。
ここで欧州側はもっと詳しい自己紹介を始めた。
自分たちの素性、国、連合、そして科学力を淡々と説明していく。
そして今は結束を強めている小国の集まりであることを説明し締めくくる。

参加国は地球人が自分たちより遥かに進んだ文明を有し特殊な安全保障観を持っていることを知り、ただでさえ混乱しているのに更にややこしくなる。
会議は一次閉会し、各国が本国とやり取りを行ってまたすぐ再開されることが決まる。

ここで欧州連合に個別の話し合いを持とうと最初に接近してきたのはグレースランドだった。
代表団は宮殿内の別の広い部屋に招かれグレースランド政府と会談する。
会談の結果、中身はあまりないものの協力関係や今後のことで見解の一致を確認した。
それがわかれば後は話を詰めればよいのである。

そして会談が終わり会食会が開かれる。
ちなみにこちらの食事を食べても平気なことは確認済みである。
先程の会議でも発言する機会がなかったグレースランド連合王国の王女エルザが各国の使節団に話しかけ質問攻めにする。

「欧州連合の代表団はずいぶん固く結束しておりますが昔からそうだったのでしょうか?」

「いえ、むしろ今でも仲違いはよく起きます。それどころか数十年前はお互い数千万人もの犠牲を出すほどの戦争をしあった間柄でもあります」

ドイツの代表が他の代表をチラ見する。

「そんなことがあったのに今では友好国なのですか?」

「ええ」

王女は最初理解し難かったが話を聞く内、同じ価値観や経済を共有すれば自ずとそうなることを知った。

「我々のいた世界では戦争は絶えませんでしたが、共に発展すればいずれそのような社会が訪れるのですね。とても素晴らしいと思います。もしかしたらいずれはミャウシア連邦の民とも分かり合える日が来るのも夢ではありませんね」

少々楽観的だったが代表団はこの王女がとても優しい人なのだと認識した。
しかし、実際の地球は第三次世界大戦に突入しかけていたので同じ価値観を持たなければ最終的には分かり合える可能性が低いということは全員が理解しており、ミャウシアと分かり合えるとは期待していなかった。
けれどそんな残酷なこと事実は少なくともこの場での話としては省略されるのだった。


そしてこの王女の優しさは後にミャウシアに現れる英雄を大いに手助けするのであった。
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