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28話
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タカラside
はぁ…何だよ最悪。
なんで俺がイオリのためにキイチに会いに行かなきゃいけないんだよ。
それでなくてもこっちはキイチと気まずい仲になってるのに。
そう思いながらも仕方なく俺は立ち上がり、オーバーサイズの白シャツに短パンのデニムをはいた。
チャリで海岸に行くとキイチが砂浜にある階段に座って待っているのが見え、吹き抜ける春先の風が少し冷たい。
太陽の光でキラキラと光る海を目を細めながら見つめるキイチ。
久しぶりにちゃんと見たその姿はどこか大人っぽくなっていて俺はまた気づかされるんだ…
俺はやっぱキイチが好きだな…って。
チャリを止め、ゆっくりと歩いてキイチの元に近づいていくと俺の心臓がうるさく鳴り響き息苦しくなる。
俺はこんなにキイチが好きなのに……なぜキイチはよりによって俺の双子の兄と付き合ったんだろうって。
そう思うと自然と目に涙が溢れ出しこぼれ落ちそうになった俺はキイチが待つ場所に背中を向けた。
やっぱ無理…
イオリなんかと付き合ってるキイチの顔なんてまともに見れる訳ない…
イオリが来なければそのうちキイチも諦めて帰るだろう…
俺は涙で滲んだ瞳をシャツの袖で拭きながら歩いていると背後から声をかけられた。
K「ちょ…待って…待てって!!」
その声は間違いなくキイチの声で、久しぶりに聞いたキイチの声が愛しくて堪らないのに、俺は聞こえないフリをして早歩きで逃げるとキイチに手首を掴まれた。
K「ん…?イオリ…くん…?」
イオリの名を呼ぶキイチの声を聞いた俺は苦しくてギュッと下唇を噛んだ。
そうだった。
高校生になり突然、服装が変わったイオリも最近、俺と似た白シャツをよく着ていた。
キイチの目には俺の後ろ姿がイオリに見えるんだ。
なんで俺とイオリは双子として生まれちゃったんだろ…?
キイチのそんな間違いがまた俺に追い討ちをかけるように悲しみへと追いやって、悲しさの限界を知った俺はふと思った。
そんな間違いするくらいなら…どうせ同じDNAなんだからイオリの代わりに仲の良かった俺を愛してくれたら良かったのに…と。
キイチに掴まれた手首に全神経が集中し、俺はゆっくりと瞼を閉じると突然、後ろからギュッと抱きしめられた。
そっか…イオリはいつもこうやってキイチに抱きしめてもらってるんだ。
キイチのその温もりが愛しくて堪らないのにその温もりがイオリのモノなんだと思ったら憎くて堪らなかった。
そう思いながら瞼を開けると俺の目からは涙が溢れ出し、思いもよらないキイチの声を聞いて俺は固まった。
K「タカラくんだね………」
後ろから抱きしめられたまま耳元でそう呟かれ、ハッと我に返った俺は咄嗟に振り返るとキイチを突き飛ばし離れた。
つづく
はぁ…何だよ最悪。
なんで俺がイオリのためにキイチに会いに行かなきゃいけないんだよ。
それでなくてもこっちはキイチと気まずい仲になってるのに。
そう思いながらも仕方なく俺は立ち上がり、オーバーサイズの白シャツに短パンのデニムをはいた。
チャリで海岸に行くとキイチが砂浜にある階段に座って待っているのが見え、吹き抜ける春先の風が少し冷たい。
太陽の光でキラキラと光る海を目を細めながら見つめるキイチ。
久しぶりにちゃんと見たその姿はどこか大人っぽくなっていて俺はまた気づかされるんだ…
俺はやっぱキイチが好きだな…って。
チャリを止め、ゆっくりと歩いてキイチの元に近づいていくと俺の心臓がうるさく鳴り響き息苦しくなる。
俺はこんなにキイチが好きなのに……なぜキイチはよりによって俺の双子の兄と付き合ったんだろうって。
そう思うと自然と目に涙が溢れ出しこぼれ落ちそうになった俺はキイチが待つ場所に背中を向けた。
やっぱ無理…
イオリなんかと付き合ってるキイチの顔なんてまともに見れる訳ない…
イオリが来なければそのうちキイチも諦めて帰るだろう…
俺は涙で滲んだ瞳をシャツの袖で拭きながら歩いていると背後から声をかけられた。
K「ちょ…待って…待てって!!」
その声は間違いなくキイチの声で、久しぶりに聞いたキイチの声が愛しくて堪らないのに、俺は聞こえないフリをして早歩きで逃げるとキイチに手首を掴まれた。
K「ん…?イオリ…くん…?」
イオリの名を呼ぶキイチの声を聞いた俺は苦しくてギュッと下唇を噛んだ。
そうだった。
高校生になり突然、服装が変わったイオリも最近、俺と似た白シャツをよく着ていた。
キイチの目には俺の後ろ姿がイオリに見えるんだ。
なんで俺とイオリは双子として生まれちゃったんだろ…?
キイチのそんな間違いがまた俺に追い討ちをかけるように悲しみへと追いやって、悲しさの限界を知った俺はふと思った。
そんな間違いするくらいなら…どうせ同じDNAなんだからイオリの代わりに仲の良かった俺を愛してくれたら良かったのに…と。
キイチに掴まれた手首に全神経が集中し、俺はゆっくりと瞼を閉じると突然、後ろからギュッと抱きしめられた。
そっか…イオリはいつもこうやってキイチに抱きしめてもらってるんだ。
キイチのその温もりが愛しくて堪らないのにその温もりがイオリのモノなんだと思ったら憎くて堪らなかった。
そう思いながら瞼を開けると俺の目からは涙が溢れ出し、思いもよらないキイチの声を聞いて俺は固まった。
K「タカラくんだね………」
後ろから抱きしめられたまま耳元でそう呟かれ、ハッと我に返った俺は咄嗟に振り返るとキイチを突き飛ばし離れた。
つづく
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