【BL】記憶のカケラ

樺純

文字の大きさ
上 下
27 / 45

27話

しおりを挟む
タカラside

そんなことがあった数日後の日曜日の昼すぎ

俺は朝方までパソコンゲームをしていて数時間寝た後、あまりの空腹で目が覚め起きた。

目を擦り一階に降りると母ちゃんがバタバタと慌ただしくしていた。

T「何やってんの。」

母「イオリが高熱だしてるのよ。」

T「へぇ~」

俺の気持ちに気づいていながら当て付けのようにキイチとイチャつく姿を見せつけ、変な濡れ衣で仲間たちの前でオレンジジュースを俺にぶちまけたイオリ。

俺はそんなイオリの日頃の行いからいい気味だと腹の中で思い、冷蔵庫の中からジュースを取り出しテーブルの上にあったパンを手に取って2階の自分の部屋に戻ろうとした。

すると、2階の奥にあるイオリの部屋に母ちゃんがいて2人の声が聞こえてきた。

「母ちゃん!お願い!キイチが海で待ってるんだよ!行かなきゃバレるんだよ!」

母「こんな熱出てるのに行けるわけないじゃないの!?何がバレるのよ…ほんとにもう大人しく寝てなさい…!!」

「だから母ちゃんが俺の代わりに海に行ってキイチに言ってくれよ!!イオリが高熱出てるから今度ちゃんと話しようって言ってたって!!」

母「お母さんは行けないわよ…パートがあるから…キイチ、スマホ持ってるんでしょ?スマホに電話しなさい。」

「さっきから電話してるけど出ないんだよ!!」

高熱が出てるとは思えないほどヒステリーを出しているイオリを横目に、俺は心配することもなく冷め切った感情のまま自分の部屋へと入った。

へぇ…キイチ…

イオリとデートとかしてるだ…

普通にやだな…吐き気がする。

俺がもし…2人が付き合う前に告白してたら…

キイチはイオリとじゃなく俺と付き合ってくれたのかな…?

イオリが俺への嫌がらせでキイチと付き合っただなんてただの俺の思い過ごしで、ミズキに振られたイオリとキイチは本当に惹かれ合い、好き同士になったのかもな。

そう勝手に空想立てて考えてしまう自分が惨めであんなに空腹だったはずなのに俺は食欲が失せた。

すると、静かに母ちゃんが俺の部屋に入ってきた。

T「なに?」

母「聞こえてたでしょ…お母さんの代わりにタカラが海に行ってイオリが来れないことキイチに伝えに行ってあげて。お母さんもう、パートに行かなきゃ行けないのよ。」

T「えぇ~やだよ。ってか、俺が行くのはアイツが嫌がると思う。」

母「イオリにはお母さんが行くって言ってあるから…ね?頼んだわよ!」

母ちゃんはそう言い残すとそのままチャリに乗ってパート先へと向かった。

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Endless Summer Night ~終わらない夏~

樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった” 長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、 ひと夏の契約でリゾートにやってきた。 最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、 気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。 そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。 ***前作品とは完全に切り離したお話ですが、 世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***

林檎を並べても、

ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。 二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。 ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。 彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。

【本編完結】明日はあなたに訪れる

松浦そのぎ
BL
死してなお隣にいたい。ワンコ系×マイペース ※一応死ネタですが、最後まで二転三転するのでぜひ最後まで。 死を望む人達と生を望む人達、その両方のために 心臓さえも生きている人からの移植が認められた世界。 『俺』の提供者になってくれるというおにいさんは提供を決意したきっかけのお話をしてくれました。 それは、甘酸っぱくて幸せで、儚い、お話。 -------------------- 別サイトで完結済みのものを移動。 モデル×(別のモデルの)マネージャー 執着強めイケメン×担当モデルにぞっこん美人

【悲恋BL】家柄で評価されたくない若き将校×仲間を失ったひとりぼっちの亜人【完結済み】

DD
BL
異世界戦争モノです。 ※センシティブな表現があります。 【戦場の猫】 "ヤモク"と呼び蔑まれてきた猫のような特徴を持つ亜人、いち。 家柄を理由に出世する事を拒んでいる若き少尉、北葉月 アラタ。 二人は戦場で出会い、お互いの価値観の違いに苦しみながら少しずつ寄り添っていく。

【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした

月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。 人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。 高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。 一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。 はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。 次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。 ――僕は、敦貴が好きなんだ。 自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。 エブリスタ様にも掲載しています(完結済) エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位 ◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。 応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。 ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。 『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』 https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748

泣き虫な俺と泣かせたいお前

ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。 アパートも隣同士で同じ大学に通っている。 直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。 そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。

しのぶ想いは夏夜にさざめく

叶けい
BL
看護師の片倉瑠維は、心臓外科医の世良貴之に片想い中。 玉砕覚悟で告白し、見事に振られてから一ヶ月。約束したつもりだった花火大会をすっぽかされ内心へこんでいた瑠維の元に、驚きの噂が聞こえてきた。 世良先生が、アメリカ研修に行ってしまう? その後、ショックを受ける瑠維にまで異動の辞令が。 『……一回しか言わないから、よく聞けよ』 世良先生の哀しい過去と、瑠維への本当の想い。

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

処理中です...