【BL】記憶のカケラ

樺純

文字の大きさ
上 下
8 / 45

8話

しおりを挟む
タカラside

悪いのはキイチのはずなのに、なぜか俺が攻めれなきゃいけないのだろう?キイチが俺を好きなんてありえない。

アイツとキイチが付き合っていたと知っているはずのみんななのに、何故そんな事を言うのか俺には理解できなかったし、まるでその言葉はお前はアイツの代わりなんだよって言われてるみたいで余計に胸が痛くなった。

T「でも…キイチはアイツが好きだったじゃん…!実際、アイツとも付き合ってたし…!今だっていっつもいっつも夢に出てくる人間の話を俺にしてきてさ!?どうせ俺はいつも誰かの代わりなんだよ。」

俺はみんなの言葉を否定するようにそういうが、みんなは何食わぬ顔をして俺の話を聞き、興奮しているのは俺だけだ。

M「でも、キイチはアイツの記憶ないじゃん?まぁ、ぶっちゃけ無防備なタカラを前にしたらそりゃ誰だって我慢出来なくなると思うよ?俺だって襲うしノンケの男でも襲うとおもう。」

確かにキイチはあの事故のせいで記憶の一部を失い、キイチの頭の中からアイツの存在だけが消え去った。

しかし、キイチがアイツに惚れていた事実は変えられるものではなく、たとえキイチにその記憶がなかったとしても俺の中で生き続けている。

俺は自分の気持ちが伝わらないもどかしさから思わず口を閉ざした。

H「もう!!ミズキ!!また始まった!!」

ヒノハちゃんのヤキモチの声が響き渡ると、ミズキは焦りながらご機嫌の斜めになったヒノハちゃんに愛嬌を見せる。

M「あ…ヒノハそういう意味じゃなくて…俺はヒノハが世界一好きだよ?愛してるよ?だけどタカラはこう…無意識に人を誘うから。」

H「タカラ!!私の彼氏に色目使わないで!」

俺は今まで生きてきたなかで誰も誘った事はないし、少なともミズキに対して色目なんて使ったことなど1ミクロンもない。

変な濡れ衣を俺にかけておいて、俺たちのことを気にすることなくイチャイチャとし始めたミズキとヒノハちゃんにため息を落とすと、リヒトくんは真剣な顔で言った。

L「本気でキイチが嫌なら追い出せば良いだけのこと。追い出さずにいるタカラは…優しさからかもしれないけどキイチにしたらその方が残酷だよ。」 

リヒトくんの言葉が俺の胸にザクっと刺さる。

T「アイツの代わりに俺にキスするキイチの方が残酷だと思うけど…」

俺は散々アイツの代わりだと文句を言いながらも、なぜかキイチを追い出しキイチから離れる勇気はなくて…

何事もなかったかのように俺はキイチと今日という日まで同居生活をしてきたのだ。

俺はグラスに入っているキラキラと光るシャンパンを見つめながら、皆んなにそんな事を言われた日のことを1人思い出していた。

シャンパンをグッと飲み干すと料理を取り終えたキイチが微笑みながら俺の元に戻ってきた。

K「タカラくんの好きなものだけ取ってきたよ。はいフォーク。」

T「ありがとう。」

俺とキイチのそんな様子を酒のつまみにするかのようにみんなはじーっと見つめながらニヤニヤとする。

K「タカラくんこれ美味しいね?生ハムメロン。」

T「うん。キイチこれ好きだもんね。」

モグモグと料理を食べているとノイルくんの声が店内に響き渡り、隣にいるキイチが振り返ってボソッと何かを呟いた。

キイチの顔を見るとキイチは呆然としていて不思議に思った俺も釣られるように振り返り時が止まった。

そこには今、俺が1番会いたくないアイツが微笑みながら立っていたから。

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Endless Summer Night ~終わらない夏~

樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった” 長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、 ひと夏の契約でリゾートにやってきた。 最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、 気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。 そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。 ***前作品とは完全に切り離したお話ですが、 世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***

林檎を並べても、

ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。 二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。 ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。 彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。

【本編完結】明日はあなたに訪れる

松浦そのぎ
BL
死してなお隣にいたい。ワンコ系×マイペース ※一応死ネタですが、最後まで二転三転するのでぜひ最後まで。 死を望む人達と生を望む人達、その両方のために 心臓さえも生きている人からの移植が認められた世界。 『俺』の提供者になってくれるというおにいさんは提供を決意したきっかけのお話をしてくれました。 それは、甘酸っぱくて幸せで、儚い、お話。 -------------------- 別サイトで完結済みのものを移動。 モデル×(別のモデルの)マネージャー 執着強めイケメン×担当モデルにぞっこん美人

【悲恋BL】家柄で評価されたくない若き将校×仲間を失ったひとりぼっちの亜人【完結済み】

DD
BL
異世界戦争モノです。 ※センシティブな表現があります。 【戦場の猫】 "ヤモク"と呼び蔑まれてきた猫のような特徴を持つ亜人、いち。 家柄を理由に出世する事を拒んでいる若き少尉、北葉月 アラタ。 二人は戦場で出会い、お互いの価値観の違いに苦しみながら少しずつ寄り添っていく。

【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした

月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。 人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。 高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。 一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。 はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。 次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。 ――僕は、敦貴が好きなんだ。 自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。 エブリスタ様にも掲載しています(完結済) エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位 ◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。 応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。 ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。 『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』 https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748

泣き虫な俺と泣かせたいお前

ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。 アパートも隣同士で同じ大学に通っている。 直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。 そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。

しのぶ想いは夏夜にさざめく

叶けい
BL
看護師の片倉瑠維は、心臓外科医の世良貴之に片想い中。 玉砕覚悟で告白し、見事に振られてから一ヶ月。約束したつもりだった花火大会をすっぽかされ内心へこんでいた瑠維の元に、驚きの噂が聞こえてきた。 世良先生が、アメリカ研修に行ってしまう? その後、ショックを受ける瑠維にまで異動の辞令が。 『……一回しか言わないから、よく聞けよ』 世良先生の哀しい過去と、瑠維への本当の想い。

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

処理中です...