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第三十三章
パフパフビューイング
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「ふんふん、宮廷物語なんですね」
クエンさんから借りた『漫画で分かる! 源氏物語』をパラパラとめくりながら、アリスさんが呟いた。
「ええ。現代と違って昔の日本は帝という国王みたいなのがいまして。ただこれは政治を取り扱った作品ではなく、宮廷を舞台にした恋愛モノなんですよ」
先日までの俺の源氏物語についての知識は学校の授業で習ったの以上のものではなかった。……と表現するのは公平ではないな。正確に言えば、『学校の授業で聞き流した内容から更に時間が経って忘れた』程度の知識だ。
それでも今回の勉強会に際して資料を読み込み、他人に説明できる程度にはブラッシュアップしてきたつもりだ。
「恋愛モノ……しかも女をとっかえひっかえのハーレムモノじゃないですか!? やっぱり日本の作品ってハーレムばっかりなんですね!」
「違いますよ!」
アリスさんはなんて事を言うんだ! 俺はその見解については全力で否定するぞ! 背後から謎の圧を受けながら、な!
「現代日本の創作物は世界的に見ても極めて多様性に満ちてまして、あらゆる属性、階級、展開の物語が日々増産されているんですよ。因みに源氏物語の作者は昔の女性なんですが、そんな時代に女性が創作活動をしてしかもそれが残っているといのうも……」
「ほうほう」
俺が熱弁を始めるとアリスさんは早速、筆記用具を並べてノートを取り出した。あ、いや、そんな風に真面目に受け止められるとちょっと急に恥ずかしいな。
「ちなみに実際ハーレムを構築しているショーキチ先生から見て、作品のリアリティはどうなんですかー?」
「いや構築してませんから!」
くそ、ちょっと受け身に回るとこれだよ!
「そうなんですか。えっと『被告人は、疑惑を否定する供述しており……』と」
「何で供述書みたいなノートとってるんですか!」
あらぬ事を呟きながら筆記するアリスさんに、俺は思わずツッコミを入れた。
「そう言えば次はフェリダエ族との試合なんですよね?」
「はい? ええ、そうです。ただ『アウェイ』と言いまして相手の本拠地へ乗り込んでの試合なので、ここのスタジアムで観て頂く事はできないのですが」
アリスさんは急に話を変えてきた。しかしまあ、こういうタイプの女性はしばしば話のテーマがあちらこちらへ飛ぶので意外でもない。
「あーそうなんですね」
「地球には『パブリックビューイング』と言って、スタジアムや映画館にファンが集まって中継を観ながら応援するイベントもあるんですが。まあ今回はありませんが……」
言いながら、導入してみても良いな? と俺は脳内で算盤を弾き始める。もちろん、ある程度は集客が見込める試合でないと儲けは出ないだろう。準備や宣伝も必要だし、彼女に言ったように今回は無理だ。
だがもっと大事な試合、例えばエルドワクラシコや1部残留やタイトルがかかった試合ならやる価値はあるだろう。そもそもパブリックビューイングがこの異世界の住人にとって未体験のイベントなので、もの珍しさも加われば更に勝算が増える筈だ。
「そうなんですね。そうそう、何でそんな事を言い出したかというとですね。実はフェリダエ族も、ショーキチ先生みたいにハーレムを作る性質があるんですよ」
「へーフェリダエ族もなんですね……」
まだ新たなビジネスチャンスの計算をしていた俺は上の空でそう返事した。
「ふふん、やはりボロを出しましたか!」
「ボロ? ボロ儲けですか……ってああ!」
アリス先生の言葉を聞いて俺は少し会話を巻き戻し――ノベルゲームではないが、俺には簡易バックログ機能がついている。コールセンター勤務で会得した能力だ――自分がミスをしていた事に気づいた。
「だから俺はハーレム作ってませんって!」
「でもさっき認めましたよね?」
「ちょっとぼーっと返事をしてただけです! ……それについてはすみません」
会話を訂正する為には自分がアリスさんの言葉を聞き流していた事を表明する必要があり、それはそれで非常に失礼な事ではあるのだが、とは言え認めない訳にもいかなかった。
「まあ! 授業に集中できてない悪い子ですね!」
そんな俺の頬をアリスさんは指でツンツンと突いた。
「はい、ごめんなさい……」
今は俺が先生でこの子供っぽいエルフが生徒のターンなのだが、その違いについては指摘できないでいた。
「でも素直に認められるのは良い子!」
アリスさんは一転、その指を俺の頭に持って行ってまた頭をワシワシと撫でた。どうやらそういう癖らしいな。
「それは、どうも」
俺は失礼でない程度に首を逸らし、彼女の手から頭を外す。
「あの、話のついでで、できればフェリダエ族の事を教えて欲しいのですが」
これだけで禊ぎが済んだとは思わないが、元は彼女から振ってきた話題だ。しかもすぐ使う事になるかもしれない知識でもある。俺は図々しさを発揮してお願いしてみた。
「はい? なんですっけ?」
「フェリダエ族のハーレムです」
俺がそう言うと女教師は何故だか嬉しそうな顔になった。
「そうそうハーレム! やっぱり興味あるんですね!」
「ハーレムじゃなくてフェリダエ族の文化にですよ!」
これについては素早く訂正を入れる。
「もう、さっきは素直だったのにー」
「今も本心からです!」
冷静に考えれば何もアリスさんから仕入れなければいけない知識でもない。このエルフはエルフの国語教師ではあるがフェリダエの専門家ではないし、ウチにはニャイアーコーチもいるし。
「もう拗ねないで! テキストはないので記憶で話しますけど良いですか?」
俺の顔色で察したのか、アリスさんは宥めるようにそう言うと、フェリダエ族のあれこれを話し出した……。
クエンさんから借りた『漫画で分かる! 源氏物語』をパラパラとめくりながら、アリスさんが呟いた。
「ええ。現代と違って昔の日本は帝という国王みたいなのがいまして。ただこれは政治を取り扱った作品ではなく、宮廷を舞台にした恋愛モノなんですよ」
先日までの俺の源氏物語についての知識は学校の授業で習ったの以上のものではなかった。……と表現するのは公平ではないな。正確に言えば、『学校の授業で聞き流した内容から更に時間が経って忘れた』程度の知識だ。
それでも今回の勉強会に際して資料を読み込み、他人に説明できる程度にはブラッシュアップしてきたつもりだ。
「恋愛モノ……しかも女をとっかえひっかえのハーレムモノじゃないですか!? やっぱり日本の作品ってハーレムばっかりなんですね!」
「違いますよ!」
アリスさんはなんて事を言うんだ! 俺はその見解については全力で否定するぞ! 背後から謎の圧を受けながら、な!
「現代日本の創作物は世界的に見ても極めて多様性に満ちてまして、あらゆる属性、階級、展開の物語が日々増産されているんですよ。因みに源氏物語の作者は昔の女性なんですが、そんな時代に女性が創作活動をしてしかもそれが残っているといのうも……」
「ほうほう」
俺が熱弁を始めるとアリスさんは早速、筆記用具を並べてノートを取り出した。あ、いや、そんな風に真面目に受け止められるとちょっと急に恥ずかしいな。
「ちなみに実際ハーレムを構築しているショーキチ先生から見て、作品のリアリティはどうなんですかー?」
「いや構築してませんから!」
くそ、ちょっと受け身に回るとこれだよ!
「そうなんですか。えっと『被告人は、疑惑を否定する供述しており……』と」
「何で供述書みたいなノートとってるんですか!」
あらぬ事を呟きながら筆記するアリスさんに、俺は思わずツッコミを入れた。
「そう言えば次はフェリダエ族との試合なんですよね?」
「はい? ええ、そうです。ただ『アウェイ』と言いまして相手の本拠地へ乗り込んでの試合なので、ここのスタジアムで観て頂く事はできないのですが」
アリスさんは急に話を変えてきた。しかしまあ、こういうタイプの女性はしばしば話のテーマがあちらこちらへ飛ぶので意外でもない。
「あーそうなんですね」
「地球には『パブリックビューイング』と言って、スタジアムや映画館にファンが集まって中継を観ながら応援するイベントもあるんですが。まあ今回はありませんが……」
言いながら、導入してみても良いな? と俺は脳内で算盤を弾き始める。もちろん、ある程度は集客が見込める試合でないと儲けは出ないだろう。準備や宣伝も必要だし、彼女に言ったように今回は無理だ。
だがもっと大事な試合、例えばエルドワクラシコや1部残留やタイトルがかかった試合ならやる価値はあるだろう。そもそもパブリックビューイングがこの異世界の住人にとって未体験のイベントなので、もの珍しさも加われば更に勝算が増える筈だ。
「そうなんですね。そうそう、何でそんな事を言い出したかというとですね。実はフェリダエ族も、ショーキチ先生みたいにハーレムを作る性質があるんですよ」
「へーフェリダエ族もなんですね……」
まだ新たなビジネスチャンスの計算をしていた俺は上の空でそう返事した。
「ふふん、やはりボロを出しましたか!」
「ボロ? ボロ儲けですか……ってああ!」
アリス先生の言葉を聞いて俺は少し会話を巻き戻し――ノベルゲームではないが、俺には簡易バックログ機能がついている。コールセンター勤務で会得した能力だ――自分がミスをしていた事に気づいた。
「だから俺はハーレム作ってませんって!」
「でもさっき認めましたよね?」
「ちょっとぼーっと返事をしてただけです! ……それについてはすみません」
会話を訂正する為には自分がアリスさんの言葉を聞き流していた事を表明する必要があり、それはそれで非常に失礼な事ではあるのだが、とは言え認めない訳にもいかなかった。
「まあ! 授業に集中できてない悪い子ですね!」
そんな俺の頬をアリスさんは指でツンツンと突いた。
「はい、ごめんなさい……」
今は俺が先生でこの子供っぽいエルフが生徒のターンなのだが、その違いについては指摘できないでいた。
「でも素直に認められるのは良い子!」
アリスさんは一転、その指を俺の頭に持って行ってまた頭をワシワシと撫でた。どうやらそういう癖らしいな。
「それは、どうも」
俺は失礼でない程度に首を逸らし、彼女の手から頭を外す。
「あの、話のついでで、できればフェリダエ族の事を教えて欲しいのですが」
これだけで禊ぎが済んだとは思わないが、元は彼女から振ってきた話題だ。しかもすぐ使う事になるかもしれない知識でもある。俺は図々しさを発揮してお願いしてみた。
「はい? なんですっけ?」
「フェリダエ族のハーレムです」
俺がそう言うと女教師は何故だか嬉しそうな顔になった。
「そうそうハーレム! やっぱり興味あるんですね!」
「ハーレムじゃなくてフェリダエ族の文化にですよ!」
これについては素早く訂正を入れる。
「もう、さっきは素直だったのにー」
「今も本心からです!」
冷静に考えれば何もアリスさんから仕入れなければいけない知識でもない。このエルフはエルフの国語教師ではあるがフェリダエの専門家ではないし、ウチにはニャイアーコーチもいるし。
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