宝かごみかは、君しだい

七草すずめ

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切符ものがたり

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 終点、大月です。
 置いてけぼりの切符は目をさまし、しくしく涙をながしました。
 寿命をまっとうできなかった彼のことを、誰もなぐさめられません。

 「うまれたばかりのぼくを抱き上げたあのひとは、ちゃんとおうちについたかなあ」

 深まる夜のあかりは、しんしんとふる雪だけになりました。


   *


 高校生のとき、あらゆる教科の中で群を抜いて苦手なのが日本史だったけど、一番好きな授業も日本史だった。教科の先生の話がとにかくおもしろかったから。
 学生時代の自転車旅の話、五劫の果てしない長さ、週末に先生が困った話。偉人の名前を聞くときは眠っている脳も、雑談がはじまると冴え冴えとするから不思議だった。
 その中でも特に印象に残っているのが、中央線は生と死をつなぐ線路だ、という話。
 皇居のある東京駅は、生の象徴。そして中央線に乗りずっと下れば、高尾に辿りつく。そこにあるのが武蔵陵墓地。皇室墓地だ。
「中央線に乗るとき、人は知らないうちに人生を辿っているのかもしれません……」なんて怖い話風に締めていたのを覚えているけれど、今思えば、高尾に住んでいる友人はどんな思いで聞いていたのだろう。
 真梨幸子さんの「カンタベリー・テイルズ」に、「中央線って、高尾山のパワーを都心に呼び込むための仕掛けっていう説もあるんだって」という一節があった。わたしの感覚はこっちに近い気がする。高尾から東京へ。生から死へではなく、自然から都会へとすすむ、人の歩みをたどるような鉄道。
 上りでも下りでも、中央線はわくわくする。どこまでも行けるような気持ちになる。だから高尾からが本領発揮と言わんばかりの「大月行」の文字を見ると、必要以上に胸がときめいてしまうのだ。
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