29 / 32
七月二十九日|梢ちゃんの結婚祝い
しおりを挟む
梢ちゃんの結婚祝いに、ハンドメイドのアクセサリーをあげることになった。わたしは梢ちゃんのリクエスト通り、外国の海を彷彿とさせる青緑色のペンダントを作った。材料にするシーグラスを探すところからこだわったのでかなり大変だったけれど、小さい頃からずっと仲のいい梢ちゃんのためならちっとも苦じゃなかった。しばらく他の依頼はストップして時間を作り、プレゼントはなんとか完成した。
「ほんとにうれしい、一生大切にする」
梢ちゃんはそのペンダントを見て、心から喜んでくれた。わたしはうれしくなるよりも先にほっとした。梢ちゃんは小学生の頃からファッションにこだわりがあって、全身のコーディネートをすべて同じブランドで揃えるような子だった。だから、いくらアクセサリー作りで生計を立てているとはいえ、わたしなんかの手作りで本当に喜んでもらえるか心配だったのだ。
「だってわたしがリクエストしたんだよ? うれしいに決まってんじゃん」
不安だったことを正直に打ち明けると、梢ちゃんは茶化すように笑った。それでわたしもようやく安心し、心からおめでとうと言うことができた。
プレゼントしてから一ヶ月も経たないうちに、梢ちゃんから連絡が来た。半年後にある結婚式でわたしが作ったペンダントを付けるから、あのペンダントに合うピアスも作ってほしいという連絡だった。
「これは友達にじゃなくて、ハンドメイド作家に対する依頼だから」
梢ちゃんは何度もそう言ったので、わたしはありがたく料金を受け取って制作した。ペンダントと似た色のシーグラスで作ったピアスは、我ながらいい出来だった。納品すると、梢ちゃんは「イメージにぴったり」と喜んでくれた。
再び連絡を受けたのは、その翌週だ。電話がかかってきたときにはまさかと思ったけれど、そのまさかだった。梢ちゃんは、今度は指輪を、それも結婚指輪を作ってほしいと言った。
「結婚指輪、もう買ったって言ってなかった? 梢ちゃんが好きなブランドのやつ」
「うん、買ったんだけど、ペンダントもピアスも作ってもらったし、せっかくだから揃えたくて」
指輪だって作ったことがないのに、ましてや結婚指輪なんて、わたしの作風でどう作ればいいか見当もつかなかった。でも、電話の向こうで頼み込む梢ちゃんの声を聞くと、依頼を断れなかった。一番高級そうに見えるリングパーツを取り寄せ、シーグラスをできるだけ小さく加工し、なんとか結婚指輪に見えそうな指輪を二つ作った。
そこまではまだよかった。問題はそのあとだ。
「せっかくだからドレスも作ってほしいの」
その依頼はさすがにどう考えても無理だったので、わたしははっきり断った。でも梢ちゃんは絶対に譲らなかった。「大丈夫、市販のドレスに飾りつけるだけでいいから」と頑なに言い張って、結局わたしは依頼を受けてしまった。
引き受けてしまった以上はなんとか期待に応えようと、買ったウェディングドレスに加工したシーグラスを飾りつけてみた。でも、高級感にあふれるドレスにシーグラスの素朴さは合わなくて、幼稚園のお遊戯会のようなちぐはぐなドレスになった。
「がんばってはみたけど、とても結婚式で着られるものじゃないよ。やっぱり普通のドレスを着た方がいいと思う。ほら、梢ちゃんの好きなブランドのドレスとか……」
なんとか思い直してもらおうとわたしが言うと、梢ちゃんはあっけらかんとした調子で言った。
「だって、ペンダントもピアスも指輪も作ってもらったんだよ。これでドレスだけ別のブランドなんて気持ち悪くない? わたし、コーディネートは全部同じブランドじゃなきゃ嫌なの」
ドレスだけ違うブランドになるくらいだったら、ちぐはぐなドレスを着た方がいい。梢ちゃんにそうとまで言われたら、わたしはもう何も言えなかった。
結婚式の日はすぐそこまで迫っていた。ドレスとシーグラスの相性は悪く、デザインをし直したところでまったく噛み合わない。頭を抱えていると、電話が鳴った。梢ちゃんからだ。出るか出ないか迷いながら、そういえば全身コーディネートするには靴が足りていないなと思った。
「ほんとにうれしい、一生大切にする」
梢ちゃんはそのペンダントを見て、心から喜んでくれた。わたしはうれしくなるよりも先にほっとした。梢ちゃんは小学生の頃からファッションにこだわりがあって、全身のコーディネートをすべて同じブランドで揃えるような子だった。だから、いくらアクセサリー作りで生計を立てているとはいえ、わたしなんかの手作りで本当に喜んでもらえるか心配だったのだ。
「だってわたしがリクエストしたんだよ? うれしいに決まってんじゃん」
不安だったことを正直に打ち明けると、梢ちゃんは茶化すように笑った。それでわたしもようやく安心し、心からおめでとうと言うことができた。
プレゼントしてから一ヶ月も経たないうちに、梢ちゃんから連絡が来た。半年後にある結婚式でわたしが作ったペンダントを付けるから、あのペンダントに合うピアスも作ってほしいという連絡だった。
「これは友達にじゃなくて、ハンドメイド作家に対する依頼だから」
梢ちゃんは何度もそう言ったので、わたしはありがたく料金を受け取って制作した。ペンダントと似た色のシーグラスで作ったピアスは、我ながらいい出来だった。納品すると、梢ちゃんは「イメージにぴったり」と喜んでくれた。
再び連絡を受けたのは、その翌週だ。電話がかかってきたときにはまさかと思ったけれど、そのまさかだった。梢ちゃんは、今度は指輪を、それも結婚指輪を作ってほしいと言った。
「結婚指輪、もう買ったって言ってなかった? 梢ちゃんが好きなブランドのやつ」
「うん、買ったんだけど、ペンダントもピアスも作ってもらったし、せっかくだから揃えたくて」
指輪だって作ったことがないのに、ましてや結婚指輪なんて、わたしの作風でどう作ればいいか見当もつかなかった。でも、電話の向こうで頼み込む梢ちゃんの声を聞くと、依頼を断れなかった。一番高級そうに見えるリングパーツを取り寄せ、シーグラスをできるだけ小さく加工し、なんとか結婚指輪に見えそうな指輪を二つ作った。
そこまではまだよかった。問題はそのあとだ。
「せっかくだからドレスも作ってほしいの」
その依頼はさすがにどう考えても無理だったので、わたしははっきり断った。でも梢ちゃんは絶対に譲らなかった。「大丈夫、市販のドレスに飾りつけるだけでいいから」と頑なに言い張って、結局わたしは依頼を受けてしまった。
引き受けてしまった以上はなんとか期待に応えようと、買ったウェディングドレスに加工したシーグラスを飾りつけてみた。でも、高級感にあふれるドレスにシーグラスの素朴さは合わなくて、幼稚園のお遊戯会のようなちぐはぐなドレスになった。
「がんばってはみたけど、とても結婚式で着られるものじゃないよ。やっぱり普通のドレスを着た方がいいと思う。ほら、梢ちゃんの好きなブランドのドレスとか……」
なんとか思い直してもらおうとわたしが言うと、梢ちゃんはあっけらかんとした調子で言った。
「だって、ペンダントもピアスも指輪も作ってもらったんだよ。これでドレスだけ別のブランドなんて気持ち悪くない? わたし、コーディネートは全部同じブランドじゃなきゃ嫌なの」
ドレスだけ違うブランドになるくらいだったら、ちぐはぐなドレスを着た方がいい。梢ちゃんにそうとまで言われたら、わたしはもう何も言えなかった。
結婚式の日はすぐそこまで迫っていた。ドレスとシーグラスの相性は悪く、デザインをし直したところでまったく噛み合わない。頭を抱えていると、電話が鳴った。梢ちゃんからだ。出るか出ないか迷いながら、そういえば全身コーディネートするには靴が足りていないなと思った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる