七月の七等星

七草すずめ

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七月十九日|氷漬け

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 なんでも凍らせる力を持っていたら、迷わず自分を氷漬けにする。一番美しい状態で時間を止められるなら、全部おしまいにしてもいいと思う。
 でも一人は寂しいから、自分を氷漬けにする前に彼氏を氷漬けにしてもいいかもしれない。美しいわたしの横には、美しい彼氏にいてほしい。美術館とかの涼しい部屋で、二人並んで展示されたい。
 だけど、別々に氷漬けになったら二度とハグできない。だったらいっしょに凍るのがいいかもしれない。抱きあった状態で発見された化石の横で、抱きあったまま凍って展示されたい。そうして人類の愛の歴史の一部になりたい。
 そのうち有名になったら、二人いっしょに海外に連れ出されたい。いろんな美術館や博物館に展示されて、いろんな国の言葉で「美しい二人ね」って言われたい。寒い国では外に展示されたいし、暑い国ではわたしたちのための特別つめたい部屋で展示されたい。
 もし遠い未来、冷凍保存された人間を解凍する技術が発展したとしても、絶対にわたしたちを解凍しないでほしい。それはちっとも幸せじゃない。抱きしめたときのあたたかい体温を感じることより、永遠に抱きしめあったまま美しく固定される幸せを選びたい。
 もしわたしになんでも凍らせる力があれば、きっとそうする。彼氏と共に生きる未来よりも、美しいままで過ごす永遠を選ぶ。
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