龍神様の住む村

世万江生紬

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季節話

龍神様と氷

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 蒸し蒸しと暑くなってきたこの日、縁側で暑い暑いとうなだれる龍平に龍神様はちょっとした悪戯を仕掛けようとしていました。

「暑い...いや暑いだけじゃないなぁ。蒸し蒸しする...うーん、嫌な時期だな。」

龍平の後ろからゆっくりゆっくりと近寄る龍神様。そして龍平の背中に手が触れる距離まで近寄った時、龍神様は龍平の衣服の中に、ひょいとあるものを入れました。次の瞬間、

「っうわぇぇぁぁぁぁぁあああぁ!?」

龍平は素っ頓狂な声を上げました。背中を滑る”何か”から伝わる感触がぞわぞわと不快で、龍平は背中から”それ”を取り出そうと背中に手を伸ばし、ばたばたと暴れました。

「えっ、ちょ、ちょっと!?龍神様!?龍神様ですよね!?っ!ちょ、とっ、取ってください!龍神様!?」

「龍平、随分と愛らしい動きをするのぉ。」

「見てないで取って下さい!!!」

龍平があまりにも懇願するので、もっと暴れる龍平を見ていたいと思いつつ、龍神様は龍平の背中から”それ”を取り出しました。

「っ何だったんですか!」

「これは氷だなぁ。」

「氷!?なぜそれを俺の背中に!」

「暑い暑いと言っておったからなぁ。冷ましてやろうと思って。」

「嘘ですよね!?絶対悪戯心ですよね!?」

龍平は怒った声を上げますが、そこに本気の怒気はなく、龍神様もそれを分かっているのでニヤニヤと笑っています。

「もうっ...。次冷ましてくれるなら桶に入れて足を冷やしてください。」

「むぅ?何だ龍平から要求となぁ。そうだなぁ、龍平のその生足を間近でじっと見られる機会だ、さっそく用意をしてこようぞぉ。」

「あっやっぱりいいです。」

「何故だ龍平ぃ!」

「ご自分の放った言葉を思い返して下さい!」


 この後、龍神様は悪戯の仕返しか、はたまた罰なのか氷の桶を用意させられましたが、手ぬぐいを目に巻かれ、龍平の足を見ることは叶いませんでした。
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