26 / 69
季節話
龍神様と傘
しおりを挟む
梅雨の時期になり、昼夜問わずよく雨が降るようになりました。龍平はそんな雨の中でも時々故郷の村に顔を見せに行っておりました。
「ふー、雨が降っていると転ばないようにこの山を登るのも結構疲れるな...。でもいい鍛錬になるな。」
「龍平、お帰りぃ。」
「えっ、龍神様?なぜここへ?」
村に挨拶を済ませ龍神様の屋敷へ帰っていた龍平は、目の前に現れた龍神様の姿に驚きました。この雨ですが、龍神様は神の力を使い、一滴たりとも濡れていません。
「この雨だしなぁ、山登りは危ないと思って迎えに来たのだぁ。むぅ?なんだ龍平、傘をさしているというのに濡れているのぉ。」
「まあ、傘を持った手も身体の体幹を使うために酷使していますから...。」
「ならば私が龍平の傘を持とう。龍平は体幹を使うことに専念すると良いぃ。」
「え。」
龍神様は龍平の返答も待たず、龍平の手からひょいと傘を取り、龍平が濡れないようにさしてくれました。龍平は悪いと思いつつ助かっているので、ありがたく持ってもらうことにしました。
「それにしても最近よく降るのぉ。屋敷の庭で育てておる野菜も元気に育つだろうなぁ。」
「そうですね。水やりもしなくていいですし、恵の雨です。」
龍神様と龍平は他愛もない話をしながら屋敷へ戻ります。龍平はその間、龍神様が濡れてはいないとは言え、自分だけが傘に入っていることに多少罪悪感を感じました。
「あの、龍神様?龍神様が濡れないのは分かっていますが、自分だけ傘に入れてもらうというのが何とも...。もう屋敷もすぐですが、屋敷まで龍神様も傘に入りませんか?」
「むぅ?龍平、申し出はありがたいが私も入ると龍平が濡れてしまうから遠慮しようぞぉ。」
「まあ、龍神様ならそう言いますよね。」
「じゃが私としても残念で仕方ないのだぁ。未来では二人で一つの傘をさすことを『相合傘』と呼ぶようでなぁ。夫婦円満の私たちとしては体験しておきたかったのだが。」
「あ、俺もうここからは一人で帰ります。」
龍平は龍神様から傘を奪い取り、すたすたと屋敷へ戻っていきました。
「むぅ!?龍平、つれないことを言うなぁ。龍平ぃ。」
二人が一緒の傘をさすときが来るのは、もう少し未来の話。...かもしれません。
「ふー、雨が降っていると転ばないようにこの山を登るのも結構疲れるな...。でもいい鍛錬になるな。」
「龍平、お帰りぃ。」
「えっ、龍神様?なぜここへ?」
村に挨拶を済ませ龍神様の屋敷へ帰っていた龍平は、目の前に現れた龍神様の姿に驚きました。この雨ですが、龍神様は神の力を使い、一滴たりとも濡れていません。
「この雨だしなぁ、山登りは危ないと思って迎えに来たのだぁ。むぅ?なんだ龍平、傘をさしているというのに濡れているのぉ。」
「まあ、傘を持った手も身体の体幹を使うために酷使していますから...。」
「ならば私が龍平の傘を持とう。龍平は体幹を使うことに専念すると良いぃ。」
「え。」
龍神様は龍平の返答も待たず、龍平の手からひょいと傘を取り、龍平が濡れないようにさしてくれました。龍平は悪いと思いつつ助かっているので、ありがたく持ってもらうことにしました。
「それにしても最近よく降るのぉ。屋敷の庭で育てておる野菜も元気に育つだろうなぁ。」
「そうですね。水やりもしなくていいですし、恵の雨です。」
龍神様と龍平は他愛もない話をしながら屋敷へ戻ります。龍平はその間、龍神様が濡れてはいないとは言え、自分だけが傘に入っていることに多少罪悪感を感じました。
「あの、龍神様?龍神様が濡れないのは分かっていますが、自分だけ傘に入れてもらうというのが何とも...。もう屋敷もすぐですが、屋敷まで龍神様も傘に入りませんか?」
「むぅ?龍平、申し出はありがたいが私も入ると龍平が濡れてしまうから遠慮しようぞぉ。」
「まあ、龍神様ならそう言いますよね。」
「じゃが私としても残念で仕方ないのだぁ。未来では二人で一つの傘をさすことを『相合傘』と呼ぶようでなぁ。夫婦円満の私たちとしては体験しておきたかったのだが。」
「あ、俺もうここからは一人で帰ります。」
龍平は龍神様から傘を奪い取り、すたすたと屋敷へ戻っていきました。
「むぅ!?龍平、つれないことを言うなぁ。龍平ぃ。」
二人が一緒の傘をさすときが来るのは、もう少し未来の話。...かもしれません。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


ある意味王道ですが何か?
ひまり
BL
どこかにある王道学園にやってきたこれまた王道的な転校生に気に入られてしまった、庶民クラスの少年。
さまざまな敵意を向けられるのだが、彼は動じなかった。
だって庶民は逞しいので。


クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。
とうふ
BL
題名そのままです。
クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。


乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる