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季節話
龍神様と四月馬鹿
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桜も満開に咲く四月。龍平は今日もいつものように庭の掃き掃除や育てている食物の収穫をしていましたが、どうやら龍神様の様子が少しおかしいです。
「龍平、裏庭の桜の木に桃がなっておるぞぉ。」
「龍平、畑にあった野菜たちに足が生えて逃げてしまったぁ。」
「龍平、空から柿が降ってきとるぅ。」
「龍平…」
「いい加減にしてください!」
時間を置いては訳の分からないことを言ってくる龍神様に、龍平はついに大声を上げました。
「何なんですかさっきから!桜の木に桃だの野菜に足だの空から柿だの!あるわけないでしょうそんなこと!」
「そうだぁ、あるわけが無い。だが今日はそんなあるわけの無いことが起こる日なのだぁ。」
「また未来視ですか?」
龍神様は特殊な御力、未来視の能力を持っています。時々その力を使っては楽しんでいるので、龍平は「またか」という気持ちで言います。
「そうだぁ、今日は未来では四月馬鹿と呼ばれ、嘘をついても許される日なのだぁ。楽しい嘘をついて皆で楽しむ日でもあるなぁ。」
「ああそうですか、でも俺のいた村にはそんな伝統ないので。今日もいつもと至って変わらない普通の日ですよ。」
「龍平…お主行事ごと嫌いなのかぁ?」
「いや、嫌いとかじゃないですけど。」
「私は行事ごとを通して龍平を喜ばせたり一緒に楽しみたいだけなのだが…龍平が嫌と言うならもうせぬよぉ。龍平の嫌がることはしたくないからなぁ。」
龍神様は珍しく少ししおらしく龍平に言います。その龍神様の様子を見て、龍平も少しうぐっとします。
「べ、別に嫌なわけでは無いのですよ…。ただ、その、龍神様はいつも優しくて裏表なく真っ直ぐに言葉をぶつけて下さるので、嘘をつかれるというのが慣れないと言いますか…。」
「龍平…。」
「そもそも、私は龍神様のことを信頼しているのに、間違ったことを言われると信じていいのか分からなくてどうしたら良いのか分からなくなるのです。だから別に嫌というわけでなくて…あ、その、嘘ならすぐに嘘だと言って欲しいと言いますか、からかうのは一瞬にして欲しいと言いますか何と言うか…!」
龍平は自分でも何を言っているのか分からないほど早口でしどろもどろに喋ります。
「だから、その!伝わりましたか!?」
結局自分で何を言っているのか分からなくなったので、無理やりに話をまとめます。
「うむ、しっかり伝わったぞ。龍平が私を愛しているということが。これは婚姻も近いのぉ。」
「何も伝わってないじゃないですか!!」
龍平の真意は伝わったの伝わっていないのか。それでもその後、二人は他愛もない嘘をついてはすぐにねたばらしをし、一日だけの四月馬鹿を楽しんだのでした。
「龍平、裏庭の桜の木に桃がなっておるぞぉ。」
「龍平、畑にあった野菜たちに足が生えて逃げてしまったぁ。」
「龍平、空から柿が降ってきとるぅ。」
「龍平…」
「いい加減にしてください!」
時間を置いては訳の分からないことを言ってくる龍神様に、龍平はついに大声を上げました。
「何なんですかさっきから!桜の木に桃だの野菜に足だの空から柿だの!あるわけないでしょうそんなこと!」
「そうだぁ、あるわけが無い。だが今日はそんなあるわけの無いことが起こる日なのだぁ。」
「また未来視ですか?」
龍神様は特殊な御力、未来視の能力を持っています。時々その力を使っては楽しんでいるので、龍平は「またか」という気持ちで言います。
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「いや、嫌いとかじゃないですけど。」
「私は行事ごとを通して龍平を喜ばせたり一緒に楽しみたいだけなのだが…龍平が嫌と言うならもうせぬよぉ。龍平の嫌がることはしたくないからなぁ。」
龍神様は珍しく少ししおらしく龍平に言います。その龍神様の様子を見て、龍平も少しうぐっとします。
「べ、別に嫌なわけでは無いのですよ…。ただ、その、龍神様はいつも優しくて裏表なく真っ直ぐに言葉をぶつけて下さるので、嘘をつかれるというのが慣れないと言いますか…。」
「龍平…。」
「そもそも、私は龍神様のことを信頼しているのに、間違ったことを言われると信じていいのか分からなくてどうしたら良いのか分からなくなるのです。だから別に嫌というわけでなくて…あ、その、嘘ならすぐに嘘だと言って欲しいと言いますか、からかうのは一瞬にして欲しいと言いますか何と言うか…!」
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「うむ、しっかり伝わったぞ。龍平が私を愛しているということが。これは婚姻も近いのぉ。」
「何も伝わってないじゃないですか!!」
龍平の真意は伝わったの伝わっていないのか。それでもその後、二人は他愛もない嘘をついてはすぐにねたばらしをし、一日だけの四月馬鹿を楽しんだのでした。
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