20 / 69
季節話
龍神様と四月馬鹿
しおりを挟む
桜も満開に咲く四月。龍平は今日もいつものように庭の掃き掃除や育てている食物の収穫をしていましたが、どうやら龍神様の様子が少しおかしいです。
「龍平、裏庭の桜の木に桃がなっておるぞぉ。」
「龍平、畑にあった野菜たちに足が生えて逃げてしまったぁ。」
「龍平、空から柿が降ってきとるぅ。」
「龍平…」
「いい加減にしてください!」
時間を置いては訳の分からないことを言ってくる龍神様に、龍平はついに大声を上げました。
「何なんですかさっきから!桜の木に桃だの野菜に足だの空から柿だの!あるわけないでしょうそんなこと!」
「そうだぁ、あるわけが無い。だが今日はそんなあるわけの無いことが起こる日なのだぁ。」
「また未来視ですか?」
龍神様は特殊な御力、未来視の能力を持っています。時々その力を使っては楽しんでいるので、龍平は「またか」という気持ちで言います。
「そうだぁ、今日は未来では四月馬鹿と呼ばれ、嘘をついても許される日なのだぁ。楽しい嘘をついて皆で楽しむ日でもあるなぁ。」
「ああそうですか、でも俺のいた村にはそんな伝統ないので。今日もいつもと至って変わらない普通の日ですよ。」
「龍平…お主行事ごと嫌いなのかぁ?」
「いや、嫌いとかじゃないですけど。」
「私は行事ごとを通して龍平を喜ばせたり一緒に楽しみたいだけなのだが…龍平が嫌と言うならもうせぬよぉ。龍平の嫌がることはしたくないからなぁ。」
龍神様は珍しく少ししおらしく龍平に言います。その龍神様の様子を見て、龍平も少しうぐっとします。
「べ、別に嫌なわけでは無いのですよ…。ただ、その、龍神様はいつも優しくて裏表なく真っ直ぐに言葉をぶつけて下さるので、嘘をつかれるというのが慣れないと言いますか…。」
「龍平…。」
「そもそも、私は龍神様のことを信頼しているのに、間違ったことを言われると信じていいのか分からなくてどうしたら良いのか分からなくなるのです。だから別に嫌というわけでなくて…あ、その、嘘ならすぐに嘘だと言って欲しいと言いますか、からかうのは一瞬にして欲しいと言いますか何と言うか…!」
龍平は自分でも何を言っているのか分からないほど早口でしどろもどろに喋ります。
「だから、その!伝わりましたか!?」
結局自分で何を言っているのか分からなくなったので、無理やりに話をまとめます。
「うむ、しっかり伝わったぞ。龍平が私を愛しているということが。これは婚姻も近いのぉ。」
「何も伝わってないじゃないですか!!」
龍平の真意は伝わったの伝わっていないのか。それでもその後、二人は他愛もない嘘をついてはすぐにねたばらしをし、一日だけの四月馬鹿を楽しんだのでした。
「龍平、裏庭の桜の木に桃がなっておるぞぉ。」
「龍平、畑にあった野菜たちに足が生えて逃げてしまったぁ。」
「龍平、空から柿が降ってきとるぅ。」
「龍平…」
「いい加減にしてください!」
時間を置いては訳の分からないことを言ってくる龍神様に、龍平はついに大声を上げました。
「何なんですかさっきから!桜の木に桃だの野菜に足だの空から柿だの!あるわけないでしょうそんなこと!」
「そうだぁ、あるわけが無い。だが今日はそんなあるわけの無いことが起こる日なのだぁ。」
「また未来視ですか?」
龍神様は特殊な御力、未来視の能力を持っています。時々その力を使っては楽しんでいるので、龍平は「またか」という気持ちで言います。
「そうだぁ、今日は未来では四月馬鹿と呼ばれ、嘘をついても許される日なのだぁ。楽しい嘘をついて皆で楽しむ日でもあるなぁ。」
「ああそうですか、でも俺のいた村にはそんな伝統ないので。今日もいつもと至って変わらない普通の日ですよ。」
「龍平…お主行事ごと嫌いなのかぁ?」
「いや、嫌いとかじゃないですけど。」
「私は行事ごとを通して龍平を喜ばせたり一緒に楽しみたいだけなのだが…龍平が嫌と言うならもうせぬよぉ。龍平の嫌がることはしたくないからなぁ。」
龍神様は珍しく少ししおらしく龍平に言います。その龍神様の様子を見て、龍平も少しうぐっとします。
「べ、別に嫌なわけでは無いのですよ…。ただ、その、龍神様はいつも優しくて裏表なく真っ直ぐに言葉をぶつけて下さるので、嘘をつかれるというのが慣れないと言いますか…。」
「龍平…。」
「そもそも、私は龍神様のことを信頼しているのに、間違ったことを言われると信じていいのか分からなくてどうしたら良いのか分からなくなるのです。だから別に嫌というわけでなくて…あ、その、嘘ならすぐに嘘だと言って欲しいと言いますか、からかうのは一瞬にして欲しいと言いますか何と言うか…!」
龍平は自分でも何を言っているのか分からないほど早口でしどろもどろに喋ります。
「だから、その!伝わりましたか!?」
結局自分で何を言っているのか分からなくなったので、無理やりに話をまとめます。
「うむ、しっかり伝わったぞ。龍平が私を愛しているということが。これは婚姻も近いのぉ。」
「何も伝わってないじゃないですか!!」
龍平の真意は伝わったの伝わっていないのか。それでもその後、二人は他愛もない嘘をついてはすぐにねたばらしをし、一日だけの四月馬鹿を楽しんだのでした。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。


怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

30歳まで独身だったので男と結婚することになった
あかべこ
BL
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。
キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者、の予定

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな?
そして今日も何故かオレの服が脱げそうです?
そんなある日、義弟の親友と出会って…。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

使命を全うするために俺は死にます。
あぎ
BL
とあることで目覚めた主人公、「マリア」は悪役というスペックの人間だったことを思い出せ。そして悲しい過去を持っていた。
とあることで家族が殺され、とあることで婚約破棄をされ、その婚約破棄を言い出した男に殺された。
だが、この男が大好きだったこともしかり、その横にいた女も好きだった
なら、昔からの使命である、彼らを幸せにするという使命を全うする。
それが、みなに忘れられても_
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる