龍神様の住む村

世万江生紬

文字の大きさ
上 下
19 / 69
季節話

龍神様と甘味

しおりを挟む
 桜が咲き出した暖かい日、龍平は龍神様の御屋敷の縁側でのんびりとしておりました。

「あ~こののんびりとした雰囲気、和むな~。ずっとこんな時間が続けば」

「龍平、甘味を作ったから一緒に食べようぞぉ。」

「一瞬で終わりましたね。」

「?何がだぁ?」

「いえ、なんでも。甘味ですか?頂きます。」

「そうかそうかぁ。で、何が食べたい?」

「え?あー、じゃあぜんざい、とか?」

「ぜんざいだなぁ。ほら。」

龍神様の手からぜんざいの入った椀を渡された龍平は、少し魔が差しました。

「あー、すみません龍神様、やっぱり俺団子が食べたくなりました。餡子のかかったやつ。」

「団子だなぁ。ほら。」

「え、あ、ああー、じゃあ羊羹とか…。」

「羊羹だなぁ。ほら。」

「…じゃあ大福というものも食べたいです!」

「大福だなぁ。ほら。」

「龍神様作ったって言いましたよね!?これだけの甘味を作ってたんですか!?」

「くはははは。龍平、私は未来を見ることが出来るのだぞぉ?龍平が可愛らしいお茶目をしてくることくらい視えておるわい。」

龍神様は龍平の考えなどお見通しとばかりに大きく口を開けて笑います。

「くっ…。何も言い返せない…!」

「ほら、龍平。ぜんざい。団子も羊羹も大福も食べて良いから、一緒に食べようぞぉ。」

「…はい。」

笑い終えた龍神様は優しく龍平にお椀を渡します。龍平はそれを少し悔しそうな、それから罰の悪そうな顔をして受け取りました。

「龍平、私はなぁ、お主がそうやって私をからかおうとしてくれたことすら愛おしく感じるんだぞぉ。だからこれからも、私に可愛らしい意地悪をしてくれ。」

「慰めてくれているのですか。ありがとうございます。ですが龍神様、可愛いは余計です。」

「くはは、それでこそ龍平だなぁ。」


さすがにぜんざい、団子、羊羹、大福、全ては食べられなかったものの、2人はゆっくりと甘味を楽しむのでした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。

マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。 いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。 こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。 続編、ゆっくりとですが連載開始します。 「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた! どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。 そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?! いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?! 会社員男性と、異世界獣人のお話。 ※6話で完結します。さくっと読めます。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

処理中です...