信濃の大空

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二号作戦開始

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石原が現地に着任したのは雪が降り始めた11月12日だった。
「やはり、冷えるな。」
「緯度は東北と同程度ですからね。」
「それもそうか。」
辻正信の相槌に石原も同意する。
第6方面軍の司令部がある市庁舎に入ると、司令官である岡村大将が待っていた。
「本日より、第6方面軍遊撃部隊の指揮官に任ぜられました。石原莞爾です。」
「噂はかねがね。それよりまず、ここに来たからには守ってもらわなければならないことがあります。」
「なんでしょう?」
「貴方や将校、一兵卒に至るまで焼くな、犯すな、殺すなを厳守していただく。これが破られた場合は即刻更迭する。」
岡村の気迫はまさに叩き上げの軍人そのものだった。
「無論、帝国軍人として恥ぬ戦いをする所存です。」
その石原の答えを聞くと、岡村は柔和な顔になった。
「そうならいい。作戦については畑元帥から聞いている。すでに兵力の大半も集結済みだ。戦車部隊は大半がチハ車だがチヌ車もあるということだ。」
「分かりました。では諸々の連絡を済ませて明日には部隊の元に向かいます。」
岡村は驚いた。
「まさか、君が前線にでるのか?」
「不測の事態にも対応しやすいですし、私はこの方が慣れていますので。」
「そうだな。私が口を出すことでもあるまい。」
この後、作戦の名称を先の1号作戦の後継でもあることから2号作戦と呼称された。


雪がごうごうと降る中、チハを載せた貨物を機関車が必死に引っ張っている。
「今日は良く降るなぁ。」
石炭をボイラーに投げ入れながら呟く。
「これじゃあ、作戦も何もできないだろうに。」
後ろを見ながらもうひとりもそれに続く。
辺りを見回しても見えるのは一面の銀世界。
まばらに民家が埋もれているのが見える程度だ。
「こうしていると、なんだか戦争真っ只中ってことを忘れそうだ。」
運転士もどこか憂鬱そうに言った。
「そういやお前の兄さん、南方戦線だったな。」
「今も生きているのか、それすら知れない。」
運転士の頬を涙が伝っていた。
「…そろそろ、目的地だ。」
駅に入ると陸軍の軍人たちが戦車を下ろし始めていた。
「これで、ひと段落か。」
「あとは、俺らが知る由もない。任せよう。陸軍に。」
全ての戦車を下ろした後、列車は来た道を戻っていった。


「中将、最後の戦車が来ました。」
辻の言葉を受け、石原は司令部から出る。
「かなりの雪だ。だが、今の我々にとっては最適の気候だ。」
12月12日、石原は麾下の部隊に攻撃を命令。
2号作戦は開始された。
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