43 / 120
05-08 初恋
しおりを挟む「ネージュ様、好きだったわ」
「だった、ですか」
「そう。初恋の人なの」
はっきりと語るセーリスに少しだけ驚く。きっと今でもあの男のことが好きなのだと、そう思っていたからだ。
「知り合ったのは二年前。中傷に怯えて人前に出られなくなった私を、勇気づけてくれた人。優しくて聡明で、憧れてた。そう、ヘニルが前に言ったこと、あれを最初に言ったのも彼なの」
「(やっぱり)」
「結構、仲良くできてたつもりだった。勉強を見てもらったり、よくお話ししたり……無様にもね、あの頃は両想いなんだって、そう思ってたのよ」
セーリスは自嘲気味に笑う。
その表情にヘニルは胸が苦しくなる。そんな顔をするということは、まだ相当未練があるのか。
「なんで、向こうはそうじゃなかったんですか」
「そうよ。……あの人はね、今は……お姉様の婚約者なの」
思わず息を呑んだ。
セーリスはかなり姉に対してコンプレックスを抱えている。その姉に想い人を奪われたのは、彼女としては何よりも辛いことだっただろう。
「お姉様もね、ネージュ様のこと好きだったのよ……ほら、私なんて勝てる要素ないでしょ。だから……」
じわりとその目に涙が浮かぶ。今度はヘニルが彼女を強く抱きしめ、優しく頭を撫でてやる。
「婚約の話を聞いたのは、お父様が死んだ一週間後だった……。辛くて、悲しくて、もう何度も死にたいって思った。今まで言われたどんな酷い言葉より、自分を否定された気分だった」
「姫様……」
その時の心情を思えば、死を意識するのも当然だろう。ようやく自分を理解し受け入れてくれそうな男が、自分ではなく姉を選んだのだ。
こうした話を聞く度に、ヘニルは感心せずにはいられなくなる。そんな苦しい日々を超えて、セーリスは自分の前に現れたというのだ。
酷く、愛おしくなる。そのひたむきさが、死を望ませるほどの苦難に立ち向かう強さが、ヘニルを惹きつけて、捉えて、離してくれない。彼女のそういうところが憧れで、一番好きなところだった。
「(俺が絶対に姫様を……)」
「今日はね、お別れをしたの。苦しいからもう話したくない、顔も見たくないって。本当は嬉しいけど、でも、泣いてしまいそうになるの……優しくされる度、また虚しくなる……」
セーリスの腕がヘニルの背に回る。ぎゅうっと強く力がこもって、彼女は震える声で言う。
「ヘニル、お願い……都合がいいのは、分かってる……慰めて」
「っ……」
「もう忘れたい、もう思い出したくないの……」
初めてセーリスの方から誘われ、ヘニルは一気に身体が熱くなるのを感じる。優しく押し倒して、涙の浮かぶその目元に口付けを落とす。ぺろりと塩気のあるそれを舐めて、やんわりと胸を撫で回す。
「仰せのままに、姫様」
「ん、ふ……」
「俺が全部、忘れさせてあげますよ。あんたを選ばなかった男のことなんて……」
指を小さな口に突っ込めば、いじらしく舌が無骨なそれを舐め、吸い付いてくる。その淫な光景に股座は熱り勃ち、彼は興奮したように息を吐き出す。
「今夜は俺のことだけを考えてください。いっぱい抱きしめて、いっぱいキスをしましょう」
セーリスの唾液に塗れた指を、自分の剛直に馴染み切った秘裂へと挿し込む。ちゅくちゅくと中を刺激しながら、片手で器用に自分の服を乱していく。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
379
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる