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05-08 初恋

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「ネージュ様、好きだったわ」
「だった、ですか」
「そう。初恋の人なの」


 はっきりと語るセーリスに少しだけ驚く。きっと今でもあの男のことが好きなのだと、そう思っていたからだ。


「知り合ったのは二年前。中傷に怯えて人前に出られなくなった私を、勇気づけてくれた人。優しくて聡明で、憧れてた。そう、ヘニルが前に言ったこと、あれを最初に言ったのも彼なの」
「(やっぱり)」
「結構、仲良くできてたつもりだった。勉強を見てもらったり、よくお話ししたり……無様にもね、あの頃は両想いなんだって、そう思ってたのよ」


 セーリスは自嘲気味に笑う。
 その表情にヘニルは胸が苦しくなる。そんな顔をするということは、まだ相当未練があるのか。


「なんで、向こうはそうじゃなかったんですか」
「そうよ。……あの人はね、今は……お姉様の婚約者なの」


 思わず息を呑んだ。

 セーリスはかなり姉に対してコンプレックスを抱えている。その姉に想い人を奪われたのは、彼女としては何よりも辛いことだっただろう。


「お姉様もね、ネージュ様のこと好きだったのよ……ほら、私なんて勝てる要素ないでしょ。だから……」


 じわりとその目に涙が浮かぶ。今度はヘニルが彼女を強く抱きしめ、優しく頭を撫でてやる。


「婚約の話を聞いたのは、お父様が死んだ一週間後だった……。辛くて、悲しくて、もう何度も死にたいって思った。今まで言われたどんな酷い言葉より、自分を否定された気分だった」
「姫様……」


 その時の心情を思えば、死を意識するのも当然だろう。ようやく自分を理解し受け入れてくれそうな男が、自分ではなく姉を選んだのだ。

 こうした話を聞く度に、ヘニルは感心せずにはいられなくなる。そんな苦しい日々を超えて、セーリスは自分の前に現れたというのだ。
 酷く、愛おしくなる。そのひたむきさが、死を望ませるほどの苦難に立ち向かう強さが、ヘニルを惹きつけて、捉えて、離してくれない。彼女のそういうところが憧れで、一番好きなところだった。


「(俺が絶対に姫様を……)」
「今日はね、お別れをしたの。苦しいからもう話したくない、顔も見たくないって。本当は嬉しいけど、でも、泣いてしまいそうになるの……優しくされる度、また虚しくなる……」


 セーリスの腕がヘニルの背に回る。ぎゅうっと強く力がこもって、彼女は震える声で言う。


「ヘニル、お願い……都合がいいのは、分かってる……慰めて」
「っ……」
「もう忘れたい、もう思い出したくないの……」


 初めてセーリスの方から誘われ、ヘニルは一気に身体が熱くなるのを感じる。優しく押し倒して、涙の浮かぶその目元に口付けを落とす。ぺろりと塩気のあるそれを舐めて、やんわりと胸を撫で回す。


「仰せのままに、姫様」
「ん、ふ……」
「俺が全部、忘れさせてあげますよ。あんたを選ばなかった男のことなんて……」


 指を小さな口に突っ込めば、いじらしく舌が無骨なそれを舐め、吸い付いてくる。その淫な光景に股座は熱り勃ち、彼は興奮したように息を吐き出す。


「今夜は俺のことだけを考えてください。いっぱい抱きしめて、いっぱいキスをしましょう」


 セーリスの唾液に塗れた指を、自分の剛直に馴染み切った秘裂へと挿し込む。ちゅくちゅくと中を刺激しながら、片手で器用に自分の服を乱していく。
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