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23話
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思いきってガリっと手に噛みつくと、簡単に白い肌には目立ちすぎる赤が垂れてきた。
本当にこれを食すか分からないけど……待てよ、もし彼にとって食べないとしたら俺は今とんでもない虐待してることになるのでは…?
しかしそれも杞憂に終わり、フラフラと彼は起き上がったかと思うと赤い液体に惹かれるかのようにぺろりと舐め始めた。
どうやら予想は的中したようで、これも食べ物になるらしい。
自身のゲーム知識に感心して意識を蚊帳の外にしていると、今度は小さな牙をたてて深くまで噛みつかれ、不思議と痛くはないがそれが何やら変な感覚にさせてくる。
そんなに血は吸われてないものの、ふわふわと貧血のように意識が朦朧とし、お腹あたりが疼いて仕方がなくなってくるのだ。
「なんっ、だこれ………。」
流石の異変に思わず手から引き離すと弟君も大人しくベッドに横たわり、安らかな寝顔を見せている。
額に触れれば熱は40℃くらいあったのではという熱さに比べたら、微熱程度に引いてとりあえず一安心だ。
おかしくなっていた現象もしばらくすると顔に出さない程度までに落ち着き、滲み出ていた汗を拭った。
「チエ……いるか?」
〈はい。こちらにいますよ。〉
名前を呼ぶとしばらくご無沙汰していたゲームウィンドウの彼?彼女が飛び出してきた。
「乙女ゲームの攻略対象者って4人じゃなかったか?……ハンス、レイク、アルレア、トーアの。」
〈そうですね。〉
「だけどハンスの弟って………これはなんだ!?」
眠っている弟君を起こさない声量で指を指して叫ぶと、チエもなんともいえないような顔文字を表示した。
〈ハンスの攻略のキーパーソンなのでは?〉
「…?何故疑問系?」
〈ネタバレにならないよう、そういう知識は排除されてるんです。〉
使えねえーと思ったが、またもや期待してなかったので水に流す。しかし弟君も負けじと顔が整おっており、眠っている姿も儚げな雰囲気を纏っている。
似つかわしいものはあるがどちらかと言うと、ハンスは凛々しいという印象が強いが、彼は今にも倒れてしまいそうな、思わず支えたくなる見目をしている。これが攻略対象者と言わずモブと言うのだろうか。
そこでふと俺が使えるスキル「好感度表示(勝手に名付けた)」があるのを思い出した。これを試してみるほかあるまい。もしかしたらシークレットキャラとかなんかそういうのかもしれないだろう。前世の妹が、「乙女ゲーなら王道」と熱弁していたのは記憶に新しい。
「彼の好感度を表示してくれ。」
〈???・ヴェデトの現在の好感度 : ???〉
あ、うん、全然ダメみたいだ。マジでモブなのか?この顔でモブなのか?と何度も心の中で問いかけるが、結果は変わらなさそう。まあハンスの好感度爆上げイベントに絶対必須なので無碍に扱うつもりはさらさらないが。
ーーーそうして弟との奇妙な生活が幕開けた。
本当にこれを食すか分からないけど……待てよ、もし彼にとって食べないとしたら俺は今とんでもない虐待してることになるのでは…?
しかしそれも杞憂に終わり、フラフラと彼は起き上がったかと思うと赤い液体に惹かれるかのようにぺろりと舐め始めた。
どうやら予想は的中したようで、これも食べ物になるらしい。
自身のゲーム知識に感心して意識を蚊帳の外にしていると、今度は小さな牙をたてて深くまで噛みつかれ、不思議と痛くはないがそれが何やら変な感覚にさせてくる。
そんなに血は吸われてないものの、ふわふわと貧血のように意識が朦朧とし、お腹あたりが疼いて仕方がなくなってくるのだ。
「なんっ、だこれ………。」
流石の異変に思わず手から引き離すと弟君も大人しくベッドに横たわり、安らかな寝顔を見せている。
額に触れれば熱は40℃くらいあったのではという熱さに比べたら、微熱程度に引いてとりあえず一安心だ。
おかしくなっていた現象もしばらくすると顔に出さない程度までに落ち着き、滲み出ていた汗を拭った。
「チエ……いるか?」
〈はい。こちらにいますよ。〉
名前を呼ぶとしばらくご無沙汰していたゲームウィンドウの彼?彼女が飛び出してきた。
「乙女ゲームの攻略対象者って4人じゃなかったか?……ハンス、レイク、アルレア、トーアの。」
〈そうですね。〉
「だけどハンスの弟って………これはなんだ!?」
眠っている弟君を起こさない声量で指を指して叫ぶと、チエもなんともいえないような顔文字を表示した。
〈ハンスの攻略のキーパーソンなのでは?〉
「…?何故疑問系?」
〈ネタバレにならないよう、そういう知識は排除されてるんです。〉
使えねえーと思ったが、またもや期待してなかったので水に流す。しかし弟君も負けじと顔が整おっており、眠っている姿も儚げな雰囲気を纏っている。
似つかわしいものはあるがどちらかと言うと、ハンスは凛々しいという印象が強いが、彼は今にも倒れてしまいそうな、思わず支えたくなる見目をしている。これが攻略対象者と言わずモブと言うのだろうか。
そこでふと俺が使えるスキル「好感度表示(勝手に名付けた)」があるのを思い出した。これを試してみるほかあるまい。もしかしたらシークレットキャラとかなんかそういうのかもしれないだろう。前世の妹が、「乙女ゲーなら王道」と熱弁していたのは記憶に新しい。
「彼の好感度を表示してくれ。」
〈???・ヴェデトの現在の好感度 : ???〉
あ、うん、全然ダメみたいだ。マジでモブなのか?この顔でモブなのか?と何度も心の中で問いかけるが、結果は変わらなさそう。まあハンスの好感度爆上げイベントに絶対必須なので無碍に扱うつもりはさらさらないが。
ーーーそうして弟との奇妙な生活が幕開けた。
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