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ここで暮らし始めてから数ヶ月。最初は沢山寝れると喜んでいたのに、本当にやることがないし、もうベッドを見るのも嫌になるくらいには寝ていた。
レグウィンさんは日のない間は基本どこかへ行っていたり、本を読んだりしているのどちらかだから時間だけがありあまっているというかなんというか。
ついに痺れを切らして
「あの、ここの掃除してはいけませんか。」
「…好きにしてくれて構わない。」
と仕事とは言えないかもだけど綺麗にしようと決意する。記憶にはないが、どこかのお屋敷で掃除屋として働いていたので少々身体が覚えていた。
それに歩くたびに舞う塵は俺の身体にはよくないだろう。
立派な掃除道具は大量にあったのでそれを取り出す。昔ここで働いていた人がいるのかなと思いながら、井戸で水を汲み布を濡らした。
果たしてこんな広い豪邸で1人で掃除……いったい何年かかることかと思いながらもやることがなくならないのはかなり有り難い。
でも、この箇所を掃除していたらまたどこかで塵が積もってエンドレスな気もするが…深くは考えないでいよう。
「……?」
蜘蛛の巣を取り払っていた所、ぞくりと何かを感じあたりを見渡す。
そこにはレグウィンさんが本を持ちながら険しい顔でじっとこちらを見つめていた。
「っ!?」
「驚かせてすまない人の子よ。つい背後をとりたくなるんだ。」
「心臓に…悪い…です」
どんな習性だよと内心悪態をつきつつ、バクバクとする変な鼓動を落ち着かせる。
「何か粗相をしましたでしょうか。」
「いや、そうではないが。純粋に見ていただけだ。」
やはりペットがおもちゃで遊ぶのを眺めるような感覚なのだろう。顔は無表情だが目からとても楽しそうなのが伝わってくる。
「そんなに面白いものでもないですよ。」
「ふふ僕は面白いよ。」
「そう、ですか、」
それから食事の時間までじっと視線を感じたまま掃除をする羽目になったのだから居心地がわるかった。
「あの、レグウィンさん。」
「どうした。」
「俺のこと名前で呼びません?」
「それは構わないが……真名じゃないだろうな。」
「真名?」
「本来の名前のことだ。レグウィンだって仮の名であるからね。無闇に我々に名を教えないほうがいい。縛られてしまう。」
スッと目を細めそれが真面目な話しであることを認識する。縛られるというのは物理的な意味ではなさそうだが、どういうことだろうか。まあ、彼の忠告を聞いて損はないだろう。
「あの、そもそも俺名前思い出せなくて…レグウィンさんが付けてくれませんか?」
「僕が?…そうだな。」
しばしば時間をかけて考え込んだあと
「………「カーレス」はどろうだろうか。」
「!とってもカッコいいです!」
素直に喜んだ俺に彼は満足そうな頷きを見せる。
カーレス、カーレス!名前をつけてもらうって嬉しいことなのだと噛み締めていると、目の前にそっと手を差し伸べてきた。
「そろそろ夕食の時間だ。行こうかカーレス。」
「はい!」
一緒に暮らし始めてから、数ヶ月。
彼はどうやら情深い性格らしく、心を開いてくれた暁には「弟ができたみたいだ。」と家族のように可愛がってくれていた。もう恐怖心なんかとうになく、むしろ俺も家族のように思い始めていた。
レグウィンさんは日のない間は基本どこかへ行っていたり、本を読んだりしているのどちらかだから時間だけがありあまっているというかなんというか。
ついに痺れを切らして
「あの、ここの掃除してはいけませんか。」
「…好きにしてくれて構わない。」
と仕事とは言えないかもだけど綺麗にしようと決意する。記憶にはないが、どこかのお屋敷で掃除屋として働いていたので少々身体が覚えていた。
それに歩くたびに舞う塵は俺の身体にはよくないだろう。
立派な掃除道具は大量にあったのでそれを取り出す。昔ここで働いていた人がいるのかなと思いながら、井戸で水を汲み布を濡らした。
果たしてこんな広い豪邸で1人で掃除……いったい何年かかることかと思いながらもやることがなくならないのはかなり有り難い。
でも、この箇所を掃除していたらまたどこかで塵が積もってエンドレスな気もするが…深くは考えないでいよう。
「……?」
蜘蛛の巣を取り払っていた所、ぞくりと何かを感じあたりを見渡す。
そこにはレグウィンさんが本を持ちながら険しい顔でじっとこちらを見つめていた。
「っ!?」
「驚かせてすまない人の子よ。つい背後をとりたくなるんだ。」
「心臓に…悪い…です」
どんな習性だよと内心悪態をつきつつ、バクバクとする変な鼓動を落ち着かせる。
「何か粗相をしましたでしょうか。」
「いや、そうではないが。純粋に見ていただけだ。」
やはりペットがおもちゃで遊ぶのを眺めるような感覚なのだろう。顔は無表情だが目からとても楽しそうなのが伝わってくる。
「そんなに面白いものでもないですよ。」
「ふふ僕は面白いよ。」
「そう、ですか、」
それから食事の時間までじっと視線を感じたまま掃除をする羽目になったのだから居心地がわるかった。
「あの、レグウィンさん。」
「どうした。」
「俺のこと名前で呼びません?」
「それは構わないが……真名じゃないだろうな。」
「真名?」
「本来の名前のことだ。レグウィンだって仮の名であるからね。無闇に我々に名を教えないほうがいい。縛られてしまう。」
スッと目を細めそれが真面目な話しであることを認識する。縛られるというのは物理的な意味ではなさそうだが、どういうことだろうか。まあ、彼の忠告を聞いて損はないだろう。
「あの、そもそも俺名前思い出せなくて…レグウィンさんが付けてくれませんか?」
「僕が?…そうだな。」
しばしば時間をかけて考え込んだあと
「………「カーレス」はどろうだろうか。」
「!とってもカッコいいです!」
素直に喜んだ俺に彼は満足そうな頷きを見せる。
カーレス、カーレス!名前をつけてもらうって嬉しいことなのだと噛み締めていると、目の前にそっと手を差し伸べてきた。
「そろそろ夕食の時間だ。行こうかカーレス。」
「はい!」
一緒に暮らし始めてから、数ヶ月。
彼はどうやら情深い性格らしく、心を開いてくれた暁には「弟ができたみたいだ。」と家族のように可愛がってくれていた。もう恐怖心なんかとうになく、むしろ俺も家族のように思い始めていた。
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