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27. 判明
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「おい、俺らそろそろ風呂の時間だぞ」
「え?ああもうそんな時間か、佐野、サンキュー!」
部屋にかけてある時計の針を見て俺はそんなことを思い出した。須山がそう応じたのを確認し、俺は風呂への用意をする。
「佐野くん」
「ん?あ、志知くんか。どうしたんだ?」
すると不意に横から声が。飯盒炊飯の時から喋るようになった志知くんだった。すると、彼はやや不満そうに言う。
「どうしたじゃないよ!飯盒炊飯の時、男子僕1人にしたでしょ~!もう、僕は君達と違って女子と上手く喋れないんだから勘弁してよ…」
「あ…、ごめん。あと、俺は別に女子とうまく喋れないぞ…」
「嘘つきなよ、佐伯さんとの絡み見てたよ?あれで喋れてないって言うのは僕への当てつけだよ当てつけ!」
手を腰に置き、頬を膨らましながらいじける志知くん。考えてみればあまり喋ったことのない女子3人のところに彼1人だけがいるのって確かに酷だ…。
「あいつはなんか人懐っこいだけだから…。そしてごめん、今度からはないようにするよ…」
「もう…。まあいいけどさ、先に帰ってきたのは須山くんだったけど、その時まで佐伯さんが気を使って僕に話しかけてくれてたし…」
志知くんはため息混じりにそう言った。元から少し喋る仲とは聞いていたが、さすがは茜だなと俺は思った。
「ありがとな志知くん。…というかさ、」
先程の志知くんの発言で俺はあることを思い出した。
「須山、お前食事中椛とどっか行ってなかったか?」
「え゛」
自分に急に話が回ってくるとは思っていなかったであろう須山はカバンからバスタオルを出しながらそんな濁点混じりの声を出した。
「あ、須山くんが言ってたヤボ用って唐津さんとのってこと?」
「そうだぜ須山、俺は見てたんだ」
「人の用事を凝視するとか趣味悪いぜ…」
やや引きながら須山はそう言った。
「で?何してたんだ?」
自分でも分かるほど顔をニヤつかせ、須山に尋ねた。
「…別に。ちょっと話を聞いてもらってただけだよ…」
「話…?」
その瞬間、俺の頭には1つ。決定的なものの考えが浮かんだ。
「おおお、お前。やっぱり告ったのかーー!」
「え!?須山くん。あの時間帯でそんなことしてたの!?」
俺のあの時の予想は間違ってはいなかった!今忘れかけようとしていた記憶が志知くんによって思い出された、志知くんほんまおおきに!
「え?」
だが、そんな盛り上がる俺と志知くんの態度とは対照的に須山は変に冷静だった。
「え?じゃねえよ。惚けるな?お前は椛に告白したんだろ?」
「いやいや、違うぜ?そもそも告白っつーか、俺椛のこと好きじゃねえよ?」
ポカーンとした表情で俺にそう告げた須山。え?須山の好きな人は椛じゃない…?
「ああ、好きじゃないってそういう意味じゃないぜ?異性として普通ってだけで友達としては普通に好きだぞ?」
「お、おう…。そうか…」
嘘をついているような顔には見えないし、違和感のあるこいつの真剣な表情。そんな彼の態度に俺は少したじろいだ。すると志知くんは首を傾げていった。
「んー?じゃあ須山くんは唐津さんと何してたの?」
「だから言ってるじゃんか、ちょっとした話だって。まあその内容は少なくとも話せないが…」
「へぇー。気になるなぁ、ダメー?須山くん」
「おい志知!ベタベタしてくるな!暑苦しい!」
襖の前でイチャつく須山と志知くん。志知くんはこんな一面もあったのね…。
「と、とりあえず風呂行こうぜ風呂!ほら早く準備しろよ。佐野、志知!あと渡辺と山口も!」
須山は奥にいる俺たちとは班が異なる2人にも声をかけ、風呂への支度を促した。彼らは須山と同じ中学出身らしく、須山は普通に喋れるらしい…。こいつ、やっぱりコミュ障じゃねぇ…。俺にはコミュ障だってずっと言い張ってんのに…。
「よくわからんなあいつわ…」
そう呟きながら俺は着替えを用意するのだった。
「おおー、ちょうどいい大きさ!」
「確かに、シャワーはちょっと少ないが…。まあ大丈夫か」
俺たちは1階にある大浴場へと足を運んだ。シャワー数は少し少なかったが、それでも十分すぎる設備だと思った。
「おおー、佑!お前なんか久しぶりやなー!」
すると横から聞き覚えのある関西弁が聞こえてきた。誰だ?と思う間もなく俺はそいつに言葉を返す。
「確かに、久しぶりな気がするな棚橋…。どうだ?野活は楽しめてるかー?」
「おお!めっちゃ楽しいで!カレーも美味かったわ!」
相変わらずの喋りやすさ。これが本当の陽キャってやつか…?
「そうだよな!そして2日目はいよいよキャンプファイヤーだな!天気も大丈夫そうだし、楽しみだな!」
「おう、せやな!」
そんな他愛のない会話で盛り上がる俺たち。すると湯船に浸かっているnowな須山は俺たちに言った。
「おいおい、早く体洗って湯船浸からねぇと交代の時間くるぞ!その話は風呂後までとっておけよー」
「おお、そうだな。じゃあまた棚橋」
「おお、じゃあな佑!」
そう言って俺はちょうど空いてたシャワーのところでまず体を洗うのだった。
風呂上がり、俺たちには自由時間が与えられた。とは言っても部屋移動は無しで、自分の部屋で過ごしとけってだけなんだが…。とりあえずまあ、消灯時間である10時半まではフリーダムってことだ。
「佐野佐野~、何する~??」
「相変わらずのバグり散らかしたテンションだな須山…。俺はなんでもいいぞ、トランプやそこらのカードゲームがあればそれしようぜ?」
「あ、僕、トランプ持ってきてるよ!」
そう言って自分のカバンからトランプを取り出した志知くん。この子本当に気が効く。
「よし、じゃあババ抜きとか大富豪とかそこら辺のゲームでもすっか!渡辺と山口も来いよ!」
そんなこんなでこの部屋5人でババ抜きをすることになった。結果から言うと、志知くんの5戦5敗。恐らく最初からババが一度も動かず彼の元へといたのだろう。一度も引かれないのはともかく、5階連続で最初から志知くんの元にババが行くのもすごいと思ったのだが…。
そうしているうちに、消灯時間が来た。ちなみにあのあと大富豪もしたのだが、今度は志知くんが5連勝した代わりに須山が5連敗を喫した。この部屋の勝敗確率はどうなってるんだと思わずツッコみそうになった。
「よし、じゃあ電気消すぜー」
「あ、待って!僕ちょっと明るいやつじゃないと寝れない!」
布団から頭だけ出して志知くんはそう言った。
「…だそうだが、佐野、渡辺、山口。大丈夫か?」
電気の紐を持ちながら須山は俺たちにそう尋ねた。なんら問題ないと3人の意見が一致したので、須山は少し明るい電気に設定した。
「ありがとう!これで眠れる!」
そう言った志知くんはすぐに就寝態勢に入った。本当に真面目だな…、俺もこんな人になってみたい…。
「おし、じゃあ俺らも寝ようか。おやすみ、須山」
「おう…。おやすみ、佐野…」
須山のそんな声が返ってきたことを耳で確認し、俺は就寝態勢に入った。だがしかし、その刹那。俺にギリギリ聞こえるか聞こえないかの狭間の声が俺の耳に通った。
『佐野…。少しいいか…?』
わざわざ小声にすると言うことは、志知くんや渡辺くん、山口くんに聞かれたくないためと勘づいた俺はその声に小声で応じることにした。
『なんだ…?』
『ちょっと話があるんだ』
俺と須山は頭が向かい合うような体の向きであるため、会話は容易にできた。そんな状態で須山は俺に話を持ちかけた。
『おう…。どうした?』
『………』
あれ?返事がないぞ?もしかして話しかけておいてこいつ寝ちまったのか…?
『おい、須──』
『佐野は、』
彼の名前を呼ぼうとした瞬間、前から声が飛んできた。そして彼はそのまま続けて言った。
『いいのか?大丈夫なのか?』
『は…?何がだ?』
主語のない質問をされた俺はそんな素っ頓狂な声を出した。
『俺は、朝にも言ったが好きな人がいるんだ。そして野活中、言ってもまだ1日だけだが、そいつとまあまあ喋って、俺の気持ちは確かなものになったんだ』
『は、はぁ…』
『で、その好きな人に俺は自分の気持ちを伝えたいと思うまでに来た。だから佐野にそれをしてもいいか確認をしたい』
『俺に確認…?』
え?なんで???と頭の中で疑問符がうごめく。なんで俺にわざわざ確認を?
『まあとりあえず、それをしてもいいかダメかだけ言ってくれ、俺の気持ちはそれによって決められるんだ』
『よく分かんないが…。まあいいんじゃないか?俺に左右されずに、お前はお前の気持ちをそいつに伝えればいいと思うぞ?』
天井を見上げながら俺は彼にそう言った。すると須山は声から嬉しかったのか分かるように、
『そうか!分かったありがとう!おやすみ!』
と、やや興奮気味にそう言った。
『お、おう…?』
困惑した返事を俺は返した。というか、要件だけ言ってそそくさと寝てしまうとは…。都合のいいやつだ。須山…。
それにしても、俺に確認を取った必要性ってなんだ…?わざわざ告白するなら俺に言わなくてもいいし、それで振られたならバカにされてしまうことも少しは目に見えていたはず…。じゃあなぜ…?
『…あ』
小声で俺は呟き、同時に昼間のあることを思い出した。それは2人でカヤックの操縦をしていた時…。彼は前を見ながら言ってたんだ。
『お前と同じ女子としか関わりがない…か』
天井に消えていくその言葉をぼーっと見ながら俺はそう小さく呟いた。俺が関わっている女子は椛と茜。それに今日喋った瀬川さんと橘さん。でも瀬川さんと橘さんは違う気がするし…。椛も違うと言ってたな…。ん?てことは?
『え…?嘘だろ、あいつの好きな人って…』
小声にしては少し大きいような声量で俺は言う。
佐伯茜(あいつ)なのか…?
そう言った瞬間、確かに俺の胸は軽く締め付けられた。なんなんだよお前は、今日くらいからずっと俺を苦しませやがって。この感情はなんなんだよ…。お前の正体はなんなんだよ…。
そう心の中で幾度も問いかけても、答えが降ってくるわけでもなく、今までで1番の胸の苦しみ、表すなら"モヤモヤ"だろうか。そのような違和感なる感情を俺は思わず頭を抱えそうになりながら抱くのだった。そんな今の俺の神経は睡魔とは全く逆の方向へと移動してしまった。今日は眠ることができるのだろうか…。
「え?ああもうそんな時間か、佐野、サンキュー!」
部屋にかけてある時計の針を見て俺はそんなことを思い出した。須山がそう応じたのを確認し、俺は風呂への用意をする。
「佐野くん」
「ん?あ、志知くんか。どうしたんだ?」
すると不意に横から声が。飯盒炊飯の時から喋るようになった志知くんだった。すると、彼はやや不満そうに言う。
「どうしたじゃないよ!飯盒炊飯の時、男子僕1人にしたでしょ~!もう、僕は君達と違って女子と上手く喋れないんだから勘弁してよ…」
「あ…、ごめん。あと、俺は別に女子とうまく喋れないぞ…」
「嘘つきなよ、佐伯さんとの絡み見てたよ?あれで喋れてないって言うのは僕への当てつけだよ当てつけ!」
手を腰に置き、頬を膨らましながらいじける志知くん。考えてみればあまり喋ったことのない女子3人のところに彼1人だけがいるのって確かに酷だ…。
「あいつはなんか人懐っこいだけだから…。そしてごめん、今度からはないようにするよ…」
「もう…。まあいいけどさ、先に帰ってきたのは須山くんだったけど、その時まで佐伯さんが気を使って僕に話しかけてくれてたし…」
志知くんはため息混じりにそう言った。元から少し喋る仲とは聞いていたが、さすがは茜だなと俺は思った。
「ありがとな志知くん。…というかさ、」
先程の志知くんの発言で俺はあることを思い出した。
「須山、お前食事中椛とどっか行ってなかったか?」
「え゛」
自分に急に話が回ってくるとは思っていなかったであろう須山はカバンからバスタオルを出しながらそんな濁点混じりの声を出した。
「あ、須山くんが言ってたヤボ用って唐津さんとのってこと?」
「そうだぜ須山、俺は見てたんだ」
「人の用事を凝視するとか趣味悪いぜ…」
やや引きながら須山はそう言った。
「で?何してたんだ?」
自分でも分かるほど顔をニヤつかせ、須山に尋ねた。
「…別に。ちょっと話を聞いてもらってただけだよ…」
「話…?」
その瞬間、俺の頭には1つ。決定的なものの考えが浮かんだ。
「おおお、お前。やっぱり告ったのかーー!」
「え!?須山くん。あの時間帯でそんなことしてたの!?」
俺のあの時の予想は間違ってはいなかった!今忘れかけようとしていた記憶が志知くんによって思い出された、志知くんほんまおおきに!
「え?」
だが、そんな盛り上がる俺と志知くんの態度とは対照的に須山は変に冷静だった。
「え?じゃねえよ。惚けるな?お前は椛に告白したんだろ?」
「いやいや、違うぜ?そもそも告白っつーか、俺椛のこと好きじゃねえよ?」
ポカーンとした表情で俺にそう告げた須山。え?須山の好きな人は椛じゃない…?
「ああ、好きじゃないってそういう意味じゃないぜ?異性として普通ってだけで友達としては普通に好きだぞ?」
「お、おう…。そうか…」
嘘をついているような顔には見えないし、違和感のあるこいつの真剣な表情。そんな彼の態度に俺は少したじろいだ。すると志知くんは首を傾げていった。
「んー?じゃあ須山くんは唐津さんと何してたの?」
「だから言ってるじゃんか、ちょっとした話だって。まあその内容は少なくとも話せないが…」
「へぇー。気になるなぁ、ダメー?須山くん」
「おい志知!ベタベタしてくるな!暑苦しい!」
襖の前でイチャつく須山と志知くん。志知くんはこんな一面もあったのね…。
「と、とりあえず風呂行こうぜ風呂!ほら早く準備しろよ。佐野、志知!あと渡辺と山口も!」
須山は奥にいる俺たちとは班が異なる2人にも声をかけ、風呂への支度を促した。彼らは須山と同じ中学出身らしく、須山は普通に喋れるらしい…。こいつ、やっぱりコミュ障じゃねぇ…。俺にはコミュ障だってずっと言い張ってんのに…。
「よくわからんなあいつわ…」
そう呟きながら俺は着替えを用意するのだった。
「おおー、ちょうどいい大きさ!」
「確かに、シャワーはちょっと少ないが…。まあ大丈夫か」
俺たちは1階にある大浴場へと足を運んだ。シャワー数は少し少なかったが、それでも十分すぎる設備だと思った。
「おおー、佑!お前なんか久しぶりやなー!」
すると横から聞き覚えのある関西弁が聞こえてきた。誰だ?と思う間もなく俺はそいつに言葉を返す。
「確かに、久しぶりな気がするな棚橋…。どうだ?野活は楽しめてるかー?」
「おお!めっちゃ楽しいで!カレーも美味かったわ!」
相変わらずの喋りやすさ。これが本当の陽キャってやつか…?
「そうだよな!そして2日目はいよいよキャンプファイヤーだな!天気も大丈夫そうだし、楽しみだな!」
「おう、せやな!」
そんな他愛のない会話で盛り上がる俺たち。すると湯船に浸かっているnowな須山は俺たちに言った。
「おいおい、早く体洗って湯船浸からねぇと交代の時間くるぞ!その話は風呂後までとっておけよー」
「おお、そうだな。じゃあまた棚橋」
「おお、じゃあな佑!」
そう言って俺はちょうど空いてたシャワーのところでまず体を洗うのだった。
風呂上がり、俺たちには自由時間が与えられた。とは言っても部屋移動は無しで、自分の部屋で過ごしとけってだけなんだが…。とりあえずまあ、消灯時間である10時半まではフリーダムってことだ。
「佐野佐野~、何する~??」
「相変わらずのバグり散らかしたテンションだな須山…。俺はなんでもいいぞ、トランプやそこらのカードゲームがあればそれしようぜ?」
「あ、僕、トランプ持ってきてるよ!」
そう言って自分のカバンからトランプを取り出した志知くん。この子本当に気が効く。
「よし、じゃあババ抜きとか大富豪とかそこら辺のゲームでもすっか!渡辺と山口も来いよ!」
そんなこんなでこの部屋5人でババ抜きをすることになった。結果から言うと、志知くんの5戦5敗。恐らく最初からババが一度も動かず彼の元へといたのだろう。一度も引かれないのはともかく、5階連続で最初から志知くんの元にババが行くのもすごいと思ったのだが…。
そうしているうちに、消灯時間が来た。ちなみにあのあと大富豪もしたのだが、今度は志知くんが5連勝した代わりに須山が5連敗を喫した。この部屋の勝敗確率はどうなってるんだと思わずツッコみそうになった。
「よし、じゃあ電気消すぜー」
「あ、待って!僕ちょっと明るいやつじゃないと寝れない!」
布団から頭だけ出して志知くんはそう言った。
「…だそうだが、佐野、渡辺、山口。大丈夫か?」
電気の紐を持ちながら須山は俺たちにそう尋ねた。なんら問題ないと3人の意見が一致したので、須山は少し明るい電気に設定した。
「ありがとう!これで眠れる!」
そう言った志知くんはすぐに就寝態勢に入った。本当に真面目だな…、俺もこんな人になってみたい…。
「おし、じゃあ俺らも寝ようか。おやすみ、須山」
「おう…。おやすみ、佐野…」
須山のそんな声が返ってきたことを耳で確認し、俺は就寝態勢に入った。だがしかし、その刹那。俺にギリギリ聞こえるか聞こえないかの狭間の声が俺の耳に通った。
『佐野…。少しいいか…?』
わざわざ小声にすると言うことは、志知くんや渡辺くん、山口くんに聞かれたくないためと勘づいた俺はその声に小声で応じることにした。
『なんだ…?』
『ちょっと話があるんだ』
俺と須山は頭が向かい合うような体の向きであるため、会話は容易にできた。そんな状態で須山は俺に話を持ちかけた。
『おう…。どうした?』
『………』
あれ?返事がないぞ?もしかして話しかけておいてこいつ寝ちまったのか…?
『おい、須──』
『佐野は、』
彼の名前を呼ぼうとした瞬間、前から声が飛んできた。そして彼はそのまま続けて言った。
『いいのか?大丈夫なのか?』
『は…?何がだ?』
主語のない質問をされた俺はそんな素っ頓狂な声を出した。
『俺は、朝にも言ったが好きな人がいるんだ。そして野活中、言ってもまだ1日だけだが、そいつとまあまあ喋って、俺の気持ちは確かなものになったんだ』
『は、はぁ…』
『で、その好きな人に俺は自分の気持ちを伝えたいと思うまでに来た。だから佐野にそれをしてもいいか確認をしたい』
『俺に確認…?』
え?なんで???と頭の中で疑問符がうごめく。なんで俺にわざわざ確認を?
『まあとりあえず、それをしてもいいかダメかだけ言ってくれ、俺の気持ちはそれによって決められるんだ』
『よく分かんないが…。まあいいんじゃないか?俺に左右されずに、お前はお前の気持ちをそいつに伝えればいいと思うぞ?』
天井を見上げながら俺は彼にそう言った。すると須山は声から嬉しかったのか分かるように、
『そうか!分かったありがとう!おやすみ!』
と、やや興奮気味にそう言った。
『お、おう…?』
困惑した返事を俺は返した。というか、要件だけ言ってそそくさと寝てしまうとは…。都合のいいやつだ。須山…。
それにしても、俺に確認を取った必要性ってなんだ…?わざわざ告白するなら俺に言わなくてもいいし、それで振られたならバカにされてしまうことも少しは目に見えていたはず…。じゃあなぜ…?
『…あ』
小声で俺は呟き、同時に昼間のあることを思い出した。それは2人でカヤックの操縦をしていた時…。彼は前を見ながら言ってたんだ。
『お前と同じ女子としか関わりがない…か』
天井に消えていくその言葉をぼーっと見ながら俺はそう小さく呟いた。俺が関わっている女子は椛と茜。それに今日喋った瀬川さんと橘さん。でも瀬川さんと橘さんは違う気がするし…。椛も違うと言ってたな…。ん?てことは?
『え…?嘘だろ、あいつの好きな人って…』
小声にしては少し大きいような声量で俺は言う。
佐伯茜(あいつ)なのか…?
そう言った瞬間、確かに俺の胸は軽く締め付けられた。なんなんだよお前は、今日くらいからずっと俺を苦しませやがって。この感情はなんなんだよ…。お前の正体はなんなんだよ…。
そう心の中で幾度も問いかけても、答えが降ってくるわけでもなく、今までで1番の胸の苦しみ、表すなら"モヤモヤ"だろうか。そのような違和感なる感情を俺は思わず頭を抱えそうになりながら抱くのだった。そんな今の俺の神経は睡魔とは全く逆の方向へと移動してしまった。今日は眠ることができるのだろうか…。
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