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龍の国と死者の番

厚い厚い歓迎 3

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「お呼びくださいとお伝えした筈……! 」
「いや、あの……違うんですよ」
僕はただお茶を飲んでた、うん、飲んでカップの中身がなくなって、なんとなく、無意識にだよ? 自然な流れでポットを持ってお茶を注いでいたら、悲しそうな顔したモルガレグさんが部屋に飛び込んできて今にこうして僕が現実から逃げてるんだけど……うーん、なんだかなー。


「慣れない地で心労が増えてることでしょうと距離を取っていたのが間違いでした……!」
「そこまで言うことはないかと思います……? 」
「いいえ!! 殿下に苦労などさせてはいけませんので! 何をするにも是非この私を使って頂きたいと! ええ!! 是非!!」
「ひえ」
「”上に立つ者として下の者を使う事に慣れていない”と陛下より言葉を頂いてますのでそちらの面でも是非私をお使い頂けたらと思いまして暫くの間専属で付かせていただきますのでどうぞよろしくお願いいたします! 」
「……脅しです? 」
「いえ! 宣言のようなものですね! 」
「脅しじゃないですかやだー」
「ははは」
笑って誤魔化したぞこやつ、やだ、この人こわい……。



てなことがあって圧とか、気配みたいなものをほんわかと感じながらのティータイム、のんびりとケーキを味わっていて、なんとなく外が気になってしまった。







「真っ白やん……」
「外が気になりますか?」
「ああ、はい」
親切の押し売りってこういうのを言うんだなあ、としみじみ考えていたら部屋に立ち始めたモルガレグさんを無理矢理意識から遠ざけて、何となく気になって窓の外を見て思わず一言零すと、音もなくモルガレグさんが後ろに立ってびっくり。

それはそれとして、窓の外の方が気になる。

霧なのか雲なのか、昼間だというのになにも見えやしない、なんでだろうね。

「普段なら見応えのある山脈をお見せできたのですが……申し訳ございません」
「天気です?」
「いえ、山向こうの鍛冶街が活発に活動しておりまして、健康に害はありませんが風に乗って様々なものが流れてきますので城の外の探索にはお気をつけくださいませ」
「はい、ありがとうございます……もしかしてこの火薬みたいな匂いもそこから?」
「……おや、それは珍しい」
微かに鼻に届く燃えた後の花火みたいな、燃えている花火を水バケツに突っ込んだ時に一瞬する匂いみたいな。

それにについて聞いてみると、モルガレグさんは意外そうに眉をあげた。

「ふうむ……窓は全て閉めていたはずですが何処からか入ってしまったのでしょう、換気に気をつけますね」
「いえそんな、ありがとうございます」
「こちらの不手際で御座いますので、では殿下、お腹の余裕はありますでしょうか」
「え、満腹ではないですけど……ええと、まさか?」
「昼食の時間でございますね! 」
「あー……あんまり、たくさん食べられない、かも? ですが」
「でしたらご安心ください! 二時間ほどズラし胃を休ませれば問題ございませんね!」
「んー、ソウデスネ」
胃薬、飲まなきゃ、いや、いやいや、おかしくない? 朝から口もぐもぐしてるんですけども、毎日これなら冗談抜きで太るよこれ、危機感持たなければいけないよこれは、持つよね? 食べ物の誘惑なんかにきっと負けないと思うけど自身が無いから頑張ろう、うむ。


「では申し訳ありませんが数分、会場の様子を確認をして参ります」
「あ、はい……んぇ? 」
かいじょうって言った? いま。

「ではっ どうぞごゆるりとお過ごしくださいませ」
一礼して部屋から出て行ったモルガレグさんに色々と追い付けない自分がいるけど多分仕方ないよね? ね?


残ったケーキはどうしようか、ああそうだ、影の中に入れて後で食べよう。


「ちょっとつかれちゃった」
主にメンタルがだけどまあいいか、多分慣れる。

多分ね。





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