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十章 緩やかに劇的に

お迎えが来ました

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「念を押して言ったはずなんですけどね、全く響いてなかったんですねこの馬鹿には、悲しいです」
「響くってなんだよ……、あだ!!」
部屋に響いた鈍い打音、数分前までのゆったりした空気は消え失せアルさんの元気な悲鳴を耳に僕は一人ソファーに沈む。

そんなアルさんの目の前で突然現れたミネルスさんは握った拳を降ろすとため息をついた。

「イウァンにラグーン君を連れてきてくださいと口酸っぱく、あれほど言われたのに何を悠長に貴方はのんびり寛いでるんですか」
「ちっとラグが落ち込んでたから体使って癒してただけだぜ、それにあいつの前に連れてくのは……駄目だろ」
「ん? んむ」
僕の頭をなでて身を起こしたアルさんの固い声、もぞぞとアルさんを見上げ大きな手に顔を覆われる。

「……それとこれとは別えす、一時間も戻らなかったお陰でイウァンももう限界なので……分かってますね?」
「……ちっ」
結構修羅場してるじゃない……。

アルさんの説明を少しまとめると。

今お城にセンブレルと張り合える位凄い龍国の王様がやって来たらしく今お城は混乱してて、王様が龍王様の相手をしてるとか。

単独アポなしで来た龍王様の目的は紫の目をした白い髪の少年を探してると。


紫の目……白い髪……。

僕の目は……紫。

髪の毛は……一応白? いやメインは黒でメッシュみたいに三割白髪。

……違うね。

と納得したいけど今ご登場したミネルスさんのちょっと白くなった顔や面倒そうだったり怒ったり難しそうな顔をしてるアルさんを見る限りやっぱり僕っぽい。

んで僕を迎え来たアルさんがダルーダさんとのいざこざと僕の落ち込みを癒すために……一時間くらいまったりしたと。

「……全然大丈夫じゃないじゃん」
「……だってよー」
「彼を睨むんじゃありませんよ、イウァンに言われた事を忘れたのですか? 」
「覚えてるがよぉ、あのドラゴンの意図が全く読めねえ内にほいほいとラグを危険な目にあわすとかあり得ねえだろ」
トゲのある声で言い切ったアルさんは鼻息荒く肘をつく。

「それは私も思ってますが今は時間が無いもので、龍王の怒気に当てられて失神する者が続出してましてね……すいませんラグーン君」
「なんでしょう……」
「今までの話の流れで察してるとは思いますが……一緒に来て頂けますか」
僕の顔を真っ直ぐ見て言ったミネルスさんに僕はふむと顎に手を当てる。

疑問系じゃない辺り決定次項なんだろうね……内容が内容なだけに仕方ないのだけど。

「王様が青ざめるような相手に呼ばれる覚えはないけど……行かなきゃ解決しないよね?」
「勿論」
「……ちょっと気持ちの整理させて」
「手短にお願いいします」
「はいぃ……」
ミネルスさんの許可は降りた……さぁ目を閉じて心穏やかに……。

「アルさん、手出して」
「ん? こうか?」
「ありがと」
膝に乗せられたアルさんの掌を開いてその上に僕の手を握らせて…にぎって貰ってもぞもぞと……温かい手のぬくもりの安心感たるや。

「……進展はしたんですね」
「おう、どうだ可愛いだろ

「愛らしいですね」
「やらねえからな」
「必要ありません」
「なんだと」
「ちょっと静かにして貰える?」
お世辞にも今僕は何でも寛容にできる心境じゃないのよ。

「すいません」
「わりい」

本当ならダルーダさんの事で二日か三日は布団から出ずに落ち込んで寝込む内容なんだよねこれ。

それを今アルさんに癒されて僕も何も考えないようにして自覚して向き合ったときの傷を少なくしようとしたときのこれ。

龍王が? お怒り? せめて二ヶ月後に来ておくれ、  なんだい今日は、王様とオークちゃんで和やかにする日じゃないのかね、濃いよなんか。

こんなの平凡メンタル の僕が耐えれる訳無いじゃない馬鹿なの?

あぁぁ……正直もうベッドに潜りたい、寝たい、美味しいもの食って風呂入ってもふもふにまみれたい。
 
想像するのはベッドの中でまどろむ僕、お肉をほおばる僕、今日の夕飯はローストビーフ……よし、現実逃避終了。

「……整理つきました、行きましょう」
しっかりと目を開けてミネルスに伝える。

正直怒鳴る系統の怖い人は体が受け付けないけど大事なのは心の余裕、心に貴婦人のお茶会を招いておほほほっと。

よっしゃいくざますよ。


「敬語になってますね」
「なってるな」
お黙り遊ばせ。






★★★
吹っ切れたラグーンは少し行動力アップ!






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