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十章 緩やかに劇的に
心は受け入れる
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胸がぽかぽかとするようなちょっと満たされていくこの安らぎ……間違いなくこの気持ちは好意なんだろうけど。
この感情に名前を付けるのは……後でいいや。
軍服のジャケットを脱いで灰色のタンクトップのアルさんに目一杯抱きついて大きくて慣れ親しんだ胸に頭を押し付け目を閉じる
「おぉ? 今日は甘えたがりなんだな」
「うむ、ちょっと気持ちが落ちてるから休む」
「……可愛いじゃねえか」
「ノーコメントで」
自分に気持ちに正直になる。
これ大事っていうのはわかるんだけど、いまいち踏ん切りと言うものがつかない。
率直に、簡潔に言えば僕はアルさんの事が好き、無意識に体を預けられる位…・大好きだ。
これが恋愛かと問われたらまだ首を捻る……まぁでもちょろい僕にはそれだけで十分懐ける。
なにより、形はあれだけどアルさんはとても優しい。
強引だけど加減と言うか手心が加えられた強引さで今思うとあれが……無いか。
「ねーアルさん」
「んー?」
「えっとねー、……何喋ろうとしてたんだっけ」
「それは知らんが……その状態で喋るのか」
頭撫でられ背中ポンポンされ思いの外多い絶大な包容力を味わっている僕は深く考えずに声を出す。
逞しい胸に頭当てて喋ればまぁ……くぐもった声になるよね。
「んー、居心地が良いから」
「そうかい……で、なんだ?」
「んーと」
なんか大事なこと言おうと思ってたんだ、なんだっけ。
えーっと。
うん、
「まぁいいや」
「いいのかよ」
「うん、んじゃ別の聞いて良い?」
「おうよ」
ゆっくりと顔をあげた僕は緩く笑うアルさんを見た。
「王様が慌てていたようだけどそれって解決したの?」
ダルーダさんとか王様が言ってた話題……お城が大変な事になってるんだだっけ?
「大丈夫だ」
「いやでも王様が…」
「大丈夫だ」
「……一大事なんじゃ」
「大丈夫だ……多分」
「解決してないんだね」
不安しかないんだけど
「気にするな、ラグには関係ねえ」
「ほんとぅ?」
「おう」
「竜王がどうのと言ってたけど……」
「……割りと知ってるんだな」
半目でじっとアルさんを見ると気まずそうに苦笑いをする。
「まぁね、事情とか簡単な事くらいは教えてよ」
「ん~……」
「おーしーえーて~」
抗議の意を込めて唸るアルさんの頬をつつけばその手を取られる。
「 くすぐってぇ」
「教えてくれなきゃ今度は……」
「今度は?」
「耳引っ張る」
叩いたりつねったりしても素で固いアルさんには効かない、だからと言って変な方法を取るのもめんどくさい。
その結果残るのはささやかな嫌がらせ未満のなにかとなる。
「あと一分以内に言ってくれないと寝るよ」
疑問をもってみたは良いけど精神的な疲労でちょっとうとうとしてたんだよね?
ん? アルさんの顔が近いような……。
「だぁくそっ」
「へぶっ」
「可愛いい事すんじゃねえよ、犯すぞ」
「……ふへ?」
確認しようと目を凝らした瞬間強い力で抱き締められ胸に顔をぶつける、頭をよじって顔を拘束を抜けアルさんを見て間抜けな声をあげればにやけたアルさんと目が合った。
「なんだ……なんだ今の声……可愛い 」
「……えー」
「無自覚ってこえーよな」
「何が? へぁ 」
「こんな柔くて可愛くて、無防備なようで固くて」
「ふぇ?」
僕の頬を大きな掌で包みむにむにと触ってツラツラと言葉を並べるアルさん、ちょっと怖い。
「甘やかしたくていじめたくて、生活の全てを俺無しじゃできねえような体にしてぇしお帰りなさいと笑顔で出迎えられて上手い飯を食いてえ願望もある」
何言ってるのこの人。
「……む?」
怪訝な顔でアルさんを見れば真っ直ぐな目を返されたじろぐ。
「可愛い……いや、もっとだ、なんだ……なんだこの気持ちは」
「……アルさん?」
「ラグからすれば意味わかんねぇだろうが、これ全部ラグに対する気持ちだ」
「……む」
気持ちとな。
言葉の代わりに声を出した僕にそれまで真剣な顔をしていたアルさんは嬉しそうに笑う
「愛してるや好きと散々言っちゃいるがいまいち響いてねえだろ?」
「否定は出来ない」
「今も実感は沸いてねえだろうがそれで良い、のんびり…ゆっくりと馴染んでくれ」
「……むー」
馴染んでるかないかはともかく好感度は上がってるけど……んー。
「思いが通じあって式を上げて、そしたらのんびりと暮らそうぜ」
「まぁ、うん……善処はする」
「約束だからな?」
「……へへっ」
がしがしと頭を撫で満足気に笑うアルさんに吊られて僕の口もにやける。
そして首を上げるのに疲れた僕はまたアルさんの胸に頭を預け目を瞑る。
あぁ……ゆったり……。
「……幸せだな」
「んー」
僕の背中に手を置いたアルさんが染々と言い、もう一つの手で僕の髪の毛をかき混ぜる。
「所で、龍王の話聞いてないんだけど」
「……ここでそれ聞くか?」
「うやむやなままだと気持ち悪いし……駄目?」
流されはされるけど大事な所は抑えるよ。
「……いいぜ」
最後は諦めたように言ったアルさんにもぞもぞと動いた僕は顔をあげにっこりスマイル。
「アルさん大好き」
「くっ……俺もだ! 」
「ぐえっ!」
笑うと抱きつかれる事に関して不服なり……。
★★★
読んでいただきありがとうございます。
のんびりとですが楽しく描いてます(=゚ω゚=)
この感情に名前を付けるのは……後でいいや。
軍服のジャケットを脱いで灰色のタンクトップのアルさんに目一杯抱きついて大きくて慣れ親しんだ胸に頭を押し付け目を閉じる
「おぉ? 今日は甘えたがりなんだな」
「うむ、ちょっと気持ちが落ちてるから休む」
「……可愛いじゃねえか」
「ノーコメントで」
自分に気持ちに正直になる。
これ大事っていうのはわかるんだけど、いまいち踏ん切りと言うものがつかない。
率直に、簡潔に言えば僕はアルさんの事が好き、無意識に体を預けられる位…・大好きだ。
これが恋愛かと問われたらまだ首を捻る……まぁでもちょろい僕にはそれだけで十分懐ける。
なにより、形はあれだけどアルさんはとても優しい。
強引だけど加減と言うか手心が加えられた強引さで今思うとあれが……無いか。
「ねーアルさん」
「んー?」
「えっとねー、……何喋ろうとしてたんだっけ」
「それは知らんが……その状態で喋るのか」
頭撫でられ背中ポンポンされ思いの外多い絶大な包容力を味わっている僕は深く考えずに声を出す。
逞しい胸に頭当てて喋ればまぁ……くぐもった声になるよね。
「んー、居心地が良いから」
「そうかい……で、なんだ?」
「んーと」
なんか大事なこと言おうと思ってたんだ、なんだっけ。
えーっと。
うん、
「まぁいいや」
「いいのかよ」
「うん、んじゃ別の聞いて良い?」
「おうよ」
ゆっくりと顔をあげた僕は緩く笑うアルさんを見た。
「王様が慌てていたようだけどそれって解決したの?」
ダルーダさんとか王様が言ってた話題……お城が大変な事になってるんだだっけ?
「大丈夫だ」
「いやでも王様が…」
「大丈夫だ」
「……一大事なんじゃ」
「大丈夫だ……多分」
「解決してないんだね」
不安しかないんだけど
「気にするな、ラグには関係ねえ」
「ほんとぅ?」
「おう」
「竜王がどうのと言ってたけど……」
「……割りと知ってるんだな」
半目でじっとアルさんを見ると気まずそうに苦笑いをする。
「まぁね、事情とか簡単な事くらいは教えてよ」
「ん~……」
「おーしーえーて~」
抗議の意を込めて唸るアルさんの頬をつつけばその手を取られる。
「 くすぐってぇ」
「教えてくれなきゃ今度は……」
「今度は?」
「耳引っ張る」
叩いたりつねったりしても素で固いアルさんには効かない、だからと言って変な方法を取るのもめんどくさい。
その結果残るのはささやかな嫌がらせ未満のなにかとなる。
「あと一分以内に言ってくれないと寝るよ」
疑問をもってみたは良いけど精神的な疲労でちょっとうとうとしてたんだよね?
ん? アルさんの顔が近いような……。
「だぁくそっ」
「へぶっ」
「可愛いい事すんじゃねえよ、犯すぞ」
「……ふへ?」
確認しようと目を凝らした瞬間強い力で抱き締められ胸に顔をぶつける、頭をよじって顔を拘束を抜けアルさんを見て間抜けな声をあげればにやけたアルさんと目が合った。
「なんだ……なんだ今の声……可愛い 」
「……えー」
「無自覚ってこえーよな」
「何が? へぁ 」
「こんな柔くて可愛くて、無防備なようで固くて」
「ふぇ?」
僕の頬を大きな掌で包みむにむにと触ってツラツラと言葉を並べるアルさん、ちょっと怖い。
「甘やかしたくていじめたくて、生活の全てを俺無しじゃできねえような体にしてぇしお帰りなさいと笑顔で出迎えられて上手い飯を食いてえ願望もある」
何言ってるのこの人。
「……む?」
怪訝な顔でアルさんを見れば真っ直ぐな目を返されたじろぐ。
「可愛い……いや、もっとだ、なんだ……なんだこの気持ちは」
「……アルさん?」
「ラグからすれば意味わかんねぇだろうが、これ全部ラグに対する気持ちだ」
「……む」
気持ちとな。
言葉の代わりに声を出した僕にそれまで真剣な顔をしていたアルさんは嬉しそうに笑う
「愛してるや好きと散々言っちゃいるがいまいち響いてねえだろ?」
「否定は出来ない」
「今も実感は沸いてねえだろうがそれで良い、のんびり…ゆっくりと馴染んでくれ」
「……むー」
馴染んでるかないかはともかく好感度は上がってるけど……んー。
「思いが通じあって式を上げて、そしたらのんびりと暮らそうぜ」
「まぁ、うん……善処はする」
「約束だからな?」
「……へへっ」
がしがしと頭を撫で満足気に笑うアルさんに吊られて僕の口もにやける。
そして首を上げるのに疲れた僕はまたアルさんの胸に頭を預け目を瞑る。
あぁ……ゆったり……。
「……幸せだな」
「んー」
僕の背中に手を置いたアルさんが染々と言い、もう一つの手で僕の髪の毛をかき混ぜる。
「所で、龍王の話聞いてないんだけど」
「……ここでそれ聞くか?」
「うやむやなままだと気持ち悪いし……駄目?」
流されはされるけど大事な所は抑えるよ。
「……いいぜ」
最後は諦めたように言ったアルさんにもぞもぞと動いた僕は顔をあげにっこりスマイル。
「アルさん大好き」
「くっ……俺もだ! 」
「ぐえっ!」
笑うと抱きつかれる事に関して不服なり……。
★★★
読んでいただきありがとうございます。
のんびりとですが楽しく描いてます(=゚ω゚=)
応援ありがとうございます!
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