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十章 緩やかに劇的に

龍王陛下は魔王を御所望らしい

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ー夕方6時ー

「はい、目をあけて大丈夫ですよ」
「あーい」

日は沈み月が見え建物に明かりが灯り始める時間渋るアルさん背中を押して転移してきましたお城。
 

定石通りアルさんの腕の中、謎の浮遊感の後目を開けた場所はランタンの灯っ-た何処かの廊下。

「……濃くなってねえか?」
「なってますね……」
「なんの話?」
「大将軍! 」
数回瞬きをしていると廊下の先から息を乱し制服姿の男性がミネルスさんとアルさんの前に走って来ると息を整え敬礼をした。

「副将マルスであります!、国王陛下の命により宰相ミネルス様、大将軍アルギス様並びに国王陛下の御友人ラグーン様のお迎えに参りました」
「そうですか、謁見の間はどうなってますか?」
「それが……」
額に汗を垂らした男性がミネルスさんに耳打ちをすると元々寄っていた眉間の皺が更に凄くなる。

「………アルギス、急ぎましょう」
「あん? 」
声が固くなったミネルスさんがこちらに向き顔をしかめる。

「イウァンが抑えていますが城全体が今龍王の圧で急速に劣化が進んでいるらしいです、このままでは城が崩れ新築する費用「「」」が高くついてしまいますので急ぎましょう」
「……気にするとこそこかよ」
「予算はデリケートよアルさん」
「えぇそうです良いこと言いますねラグーン君、有限な予算が削られる事が確定した今出来ることは少しでも負担を減らす事……さぁ!  行きましょう!」
「え、あ、はい」
恐らく今まで見た中で最高の笑顔で凄まれ反射的に僕は首を縦に動かす。

「面倒だ」
「何か言いました?」
「……何でもねえよ」
勢いよく反応したミネルスさんにたまらずアルさんも目を逸らす。

「さ、無駄話なんて論外です、参りましょう!」



結果、誰も止められないままミネルスさんは軽やかな足取りで廊下を堂々と歩み始めた。



※※※


暗くなれば当然ロウソクとランタンを主流に廊下を照らすこの世界。

火は明かりの元、日本でも教会や誕生日、緊急時に使われるが文明の利器電気ほど照らしてはくれない。

「なんか、黒い埃みたいなの舞ってない?」
天井に設置されている風に揺れるろうそくをアルさんに運ばれながら見ていた僕はふとそれに気がついた。



「ん? あーありゃ魔力だ、龍王の」 
「ふーん……?」
上手く言葉に出すのは難しいけど……もや、黒い小さな光みたいなものが天井から浮いたり降ってきている

ふわふわと落ちてくるその小さな光に手を伸ばすと、すかさずアルさんの手に掴まれる。

「こら」
「ん~?」
「汚ねえから触るな」
「汚いのこれ」
「服に染みたらしばらく取れねえぞ」
「? ……良くわかんない」
そんな頑固な汚れじゃないんだから。

「アルギスの言う通りですよ、実体化した魔力はとても厄介なものです」
革靴を響かせ前を歩くミネルスさんは視線はそのままに続ける。

「大なり小なり人によって保有する魔力の質や力は全く違いまして、大まかに例えると癒しを与えやすい魔力、何かを破壊しやすい魔力、毒や製作等を得意とする魔力とすべては知られてませんがその根本となる魔力によって使用しやすい魔法、魔術も変わってきます」
「……血液みたいなものね」
AとかBとかABみたいな。

「今この天井から降ってきている黒い光、これは龍王が感情を昂らせた事によって溢れだした魔力が実体化したもの、この光が触れた箇所は徐々に何年も放置していたかのように劣化させていく力を持ちますのでむやみに触らないようにしてください」
「あ……はい、説明ありがとうございます」
「いえいえ、今度是非血に関しても教えてください……謁見の間が見えてきました、急ぎましょう」
廊下の向こう、壁、床、扉繊細で派手な造りの空間はまさしく王様と初めて出会った部屋、謁見の間。

「うわぁ……なにあれ」
鎧姿の騎士二人が控えるその部屋からは良く見なくても分かるあの黒い光のようなもやが閉められた扉から吹き出ている。

「扉を開けよ!! 」
眉を潜めて見ていた瞬間、ミネルスさんの前を歩いていたマルスさんが前方の騎士にむけ声を張り上げ反射的に僕の肩が跳ねた。

「ククっ」
「アルさん」
「わりいわりい、あてっ」
「ふんっ」
ニヤニヤと笑う美丈夫の額を叩きじとりと睨む。

「とっ、ついたな」
楽しそうにアルさんの歩みが止まる。

「わたしはここで!御武運を」
「えぇ、ありがとう」
肩に嵌まった礼を取るマルスさんに頷きミネルスさんは扉に向き合う。

それと同時に扉に控えていた騎士も礼を取り同時に腕を扉のノブに伸ばした。



瞬間。



「何時まで待たせるつもりだ!! 」
騎士達がノブに触れる前に突然、男性の怒気を含んだ声と共に勢いよく扉が開き、真っ赤な角を生やした男性が姿を現した。



★★★

お待たせしました





 
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