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七章 欠片

体に馴染んできてるこの頃

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ぼんやりと、目が覚めた。


ゆっくりと体を動かし窓の外を見れば雲ひとつない青空。



目が覚めて早々、アルさんがごろごろとしている横で僕はステータスの画面を見る。

黒い画面には満タンになった体力ゲージと、半分ほど回復した魔力。



体力は一晩寝れば回復するけれど、魔力が回復するのは個人差、種族差はあれど結構と遅い。

だから僕は極力魔力を節約しない全快しない、難儀なもの……。



今日は休日だと言うアルさんとベッドの上で寝そべっていると、部屋の扉をノック音でぴくりと反応する。


めんどくさそうなアルさんがドアを開けるとそこには笑顔のミネルスさんが立っており、王様が呼んでいると言ってきた。


アルさんが行きたくねえと駄々をこねたがすぐにミネルスさんの笑顔で潰された。



「なぁラグ~……」

「そんなみっともない顔しないの、行くよ」

「……最近こいつ遠慮がなくなって来たな」

「良いことです」



アルさんの駄々は一時間続き、漸く動き出したアルさんを引っ張り場所は移り王様の執務室にて。






目の前には部屋の主である王様がソファーに座ってる。


その手には棒つきのキャンディーが握られ、膝には積み木を持って遊んでいるオークちゃんが……。


「キャンディー食べるか~? 」

「ぶう」

「そうか食べるのか、ほれあーん」

「ぷっ」

「よしよし、じゃあ次はこれを食べなさい」


蕩けきった笑顔で膝の上のオークちゃんを撫で、菓子を与えてた。







「赤ちゃん相手にするパパじゃん……」

「最近親戚でちびが生まれてなかったからなぁ……」

「そうなの? 」

「昔から小さな孫子供相手には砂糖より甘く接してきたからな、流石に慣れる」

「大変微笑ましいことで……」

「な~」

「うるさいだまれ! 人を目の前に好き放題やかましい! 」

「開き直りましたよアルさん」

「まぁこういう奴だからな」

「やかましい! ん? どーしたテル」

耳を真っ赤に怒る王様に茶々をいれていると、ふいにオークちゃんが頭の葉っぱを揺らし王様の服の裾を引っ張る。


「ぶーぶ? 」

「んー?」

「ぶぶー、ぶ? 」

「ふむ? 」

「ぶー? 」

「ん~…………すまないラグーン」

「はいはい? 」

「テルの言葉を翻訳して貰ってもいいか? 」

「僕魔獣語知らないから無理」

「んんー……」

「ぶー」

難しい顔をした王様はおもむろにオークちゃんを抱き締める。


「……今度調べてみるか」

「あんまりやるとナパスにまた言われるぞ~」

「所で、ラグーン、お前の魔力が枯渇してるようだが今は大丈夫なのか? 」  

「無視するなよ」

「半分くらいは回復してるよ~」

「あぁ……少し遅いんだな、よく休んでくれ……と忘れる所だった! ラグーン!、悪いが伝えたいことがある、もう少しだけ我慢してくれな」

「え? 」

凄いぎこちなさげな王様に“早くいっとくれ”と急かせば“まぁまて”と止められる。



「そろそろ来る頃だ………」

壁に取り付けられている時計を見た王様と同時にガチャリと部屋の扉が開かれる。


その音につられ扉を見ればにこにこと笑みを張り付けたミネルスさんが顔を出し僕に会釈をした。


「お待たせしましたイウァン、首尾の方はどうです? 」

「あぁ、今から伝える所だ、ナパスは?」

ん?、首尾?


「牢屋を覗きに行くと言っていましたので恐らく少ししたらこちらに来るでしょう」

「そうか………なら先に進めておこう、前に座ってくれ」

「……なに始めるの?」

キョロキョロと二人を見比べ、ソファーに座る僕に王様はにやりと口角をあげる。


「ではラグーン」

「へい? 」

「返事は、はいだ」

「はい」 

厳しいな。


「今ラグーンに伝えたいことが二つある」

「ほう」

ずいっと王様は前屈みになる。


「あぁ? 二つ?」

ここでなぜアルさんが反応するのか………。


「アルギスにとって嬉しい情報とアルギスにとって嫌な情報、どっちを先に聞きたい? 」

ニヤリと笑った王様、そして僕は顎に手を当て考える。


「ほほう」

アルさんにとって……、、なにそれ凄い気になる。


「おいまてイウァン、嫌な情報ってなんだ」

「で、ラグーン、どっちから聞く? 」

にやにやとしている王様にアルさんなんか騒いでるけど………うん。


「なら嫌な情報で」

「おい」

「ほぎゃ」

ふに、とアルさんなごつごつした手が頬を摘ままれ変な声がでる。


やめい。


「今の気分的に人の不幸を聞きたい気分」

「最悪な気分だなおい………」 

「じゃあいくぞ? 覚悟しろアルギス」

「何故俺がダメージを食らう………」

絶句したように顔を曇らせるアルさんに王様はにやりと黒く笑う。


「ククッ、じゃあ手短にいくぞ? 出立は二週間後、任務は三ヶ月、西の国境沿いの砦へ遠征を命ずる」


「あ? はぁああ?! 」

「今小競り合いになってるサンラグ王国の領地と隣り合わせになっている砦だ、頼むぜ? 」

「あ"ぁ"!? 」

ドスを聞かせ剣呑なオーラを放出し始めたアルさんに王様は怯むことなく笑みか更に黒く染まる。


「そして喜べ、賊も出没しているらしい、ついでに片付けてくれ」

「喜べるかぁ!! 」

僕がいるからか立ち上がれないアルさんの咆哮、耳鳴りいてえ。するといつの間にか扉の前にいたアイデンさんが笑い声を上げ。


「ハッハッハ!! ミネルスに呼ばれたから何だと思えば、安心しろアルギス! ラグーンの面倒は俺に任せておけ!! 」

と、いつの間にか扉の前にいたアイデンさんが親指を立て、ハンサムな笑みを浮かべる。

するといつの間にか扉の前にいたアイデンさんが笑い声を上げ。


「アイデン、お前も行くんだぞ?」

「えっ"」

「西の国境がきな臭いから頼む」

「………なんだと? 」

勝ち誇るアイデンさんだけどすぐに真顔になって撃沈………面白いね。



「てことで頑張れお前ら」


「「はぁ………!?」」

二人の声がハモった…………。


「ラグーン君の身の回りは私が引き受けますね」

今まで空気になっていたミネルスさんがにこりと手を上げれば王様はすやすやと眠るオークちゃんを撫でながら頷く。


「頼む」

「………とりあえず二人とも頑張ってね? 」 

くらーいオーラを出す二人に弔いの言葉をかけてみて……すぐにびくりと肩を動かす。


「些か軽くないか………!? 」

「もっと悲しめよこのやろう…………! 」

「あはは……」

ゾンビのような二人の光のない視線をむけられ笑ってごまかす。


う、うん。


「い、逝ってらっしゃい?」

「おいこら」



……二人とも頭を抱えちゃった、流石ににやけそうになるけど不謹慎かな?。


「でかい二人が沈んでる所で残りの方伝えよう」

「ん? あ、あぁそうだっ、お願い」

「素直に喜べなくなったじゃねえかよ! くそっ……! 」

暗い顔をしているアルさんを不思議に思いながらもにやにやしている王様に視線を移す。


「よしよし、アルギスが喜ぶ方も手短にいくぞ」

「ほい」

「返事は、はい、だ」

厳しい。


「はい」

にやけた顔を引き締めた王様に自然と僕の表情も固くなる。



「アルギスとラグーン、お前たちの結婚式の日取りが決定した、半年後の年明けだなた」


ん?



………………ん?



…………………………んん?



けっ……こん? 結婚?



「へ? 」

結婚?












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