ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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第七章 決断

163、閑話 〜内緒の上書き〜 ※

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 先輩が寝静まった深夜、俺はこっそり目を開けた。流石に今夜はぐっすり眠っている、そりゃ相当疲れただろう。今日は体育祭があったこともあり、先輩は大活躍をしていた。本当にカッコよかったな、俺のアルファ。

 頭がいいだけではなくて、運動神経も抜群だった。俺は終始うっとりしていた自覚がある。忙しい先輩とは体育祭の間は一緒にいる時間があまりなかったから、改めて客観的に先輩を眺めることができた。

 周りのオメガたちも、きゃぁきゃぁ言っていた。ごめんねっ、この人は俺のつがいだって、心の中で余裕ぶっこいていたけど、かっこよすぎて少し不安にもなった。

 相原君がずっと俺のそばにいてくれたけど、そんな俺の心情にも気付いてくれたみたいだった。

『僕もつがいがかっこよすぎてね、時々不安になるよっ、桐生君の気持ちは当たり前のオメガの気持ちだから大丈夫』

 そうだよねっ。

 彼のつがいの活躍も凄かった、同じクラスだから彼のおかげで俺の学年ではこのクラスがトップになっていた。そのせいで相原君も今日はつがいといちゃいちゃできないって嘆いていた。オメガ組として結果、ふたりで一緒に過ごしていた。

『今夜ね、優勝したら、潤にご褒美あげる約束したんだ』
『ご褒美? このままだと間違いなく僕のクラス学年優勝だよねっ、何をあげるの?』
『それはねっ、初めての……ボソぼそっ』
『ッ!?』

 俺はこっそりと耳元で話されたセリフに真っ赤になった! そんなことを!? このかわいい相原君が?

『す、凄いねっ』
『桐生君は? したこと……』
『ないよ!』
『ははっ、だよね、ごめんごめんっ』

 俺はドキドキしながら相原君を見てしまった、そして今、昼間にしたそんな会話を思い出していた。

 隣で寝入っている俺のかっこいいつがいを見ていたら、なんだか無性にムラムラしてきた。つむっている目、今は見えないけど起きている時は熱いまなざしで俺を見つめてくる黒い瞳。寝ていると余計に長さのわかるまつげ、太くてキリッとした眉毛に、す――っと通った高い鼻、唇は少し薄くて、でもこの中にはとっても肉厚で熱くとろけるような舌がある。

「ごくっ」

 かっこよすぎるっ、起きている時はこんなにじっくり見つめることができない。だって、そうしたら先輩の方が我慢できずに俺に襲いかかるからっ、こんなゆっくりこの人の顔を見ることは今までなかったかも。

 ひたすらかっこいい。寝ていてもフワフワと深い森の香りが香ってくる、それは俺を安心させるし、欲情させるし、いろんな意味合いを持つ俺だけのフェロモン。

 先輩が俺と目があって、我慢できず欲情する気持ちが今わかった。今の俺は目こそあってないけど、見ているだけでどんどんと欲しくなってたまらない。相原君が言っていたことは俺にはハードルが高すぎてとてもできないけど、でも、俺にもできることは一つある。

 そう、フェラだ。

 前に俺がフェラを沢山したことある話をして、それをトラウマだと思ってしまったのか、一向にさせてくれない。先輩は俺のこと汚くないって言ったけど、でも本当のところどう思っているかなんてわからない。

 沢山の男に許した口は、自分には許してくれないのかもしれない。アルファは独占欲が強いから、俺の経験した唯一のフェラだけは、絶対にさせてくれないのかもしれない。

 でも俺は先輩のを本当はずっと、飲みたかった。

 あの男たちの味を上書きさせてほしいって思っている。そんなことのためにフェラをしたいなんて言えないからできないままだけど、でもあと半年も一緒に過ごせないのだから、思い出に最後の上塗りをさせてほしい。これから先、先輩以外の精液の味を覚えるつもりはない。たとえ勇吾さんでもそれをしようとは思わない。

 だから、お願い。許してっ。

 そう心で願って、先輩のズボンをゆっくりと下げた。良かった、まだ寝ている。起きることはないだろう。滅多に疲れない先輩の滅多にないチャンス、今日しか決行できない。このチャンスを逃したらもうないだろう。普段から俺の動きで目が醒めることも多い人だ、油断している今日この日こそ!

 あっ、股間は寝ていても大きめだ。でも、まだここも寝ていてかわいい。いつもピキピキに筋を立てて獰猛で毒々しいそれは、穏やかに見えた。

 ――ふふっ――

 眠っているペニスを見るのは珍しくて嬉しかった。いつも気がついた時には上を向いているから、横たわっておとなしいそれが可愛いくて愛おしくてたまらなかった。

 ちょっと触るとピクってなったけど、まだ寝息は聞こえる。

 こんなことして起きてこられても困るから、早速しなってしているそれを手に持って口にくわえた。

「んっ、ぬふっ」

 いけないっ、声を出さないようにしなければいけないのに、寝ていても大きくて加えるのは大変だった。そしてオスの匂いにうっとりしてしまって、思わず自分の後ろまで濡れてきてしまった。

 なに感じちゃってんだよ!? 先輩をたせなきゃいけないのに、俺の方が先にちそうだ。

 ぐちゅっむちゅっという粘液の音だけがこの部屋に響く、うっっって、先輩の声が出たのが聞こえた。もうそれはいつものどう猛な形になり、ぴくぴくとした動きを見せた。

 よかった、感じているみたいだ。

 舐めているとつがいの愛おしい液体が少しずつ出てきている、はやくっ、はやくっ、全部出し切って達してくれないかな、早く飲みたい!

 夢中になっていると、なんとなく視線を感じた。上を見ると横たわっている先輩が寝ぼけているような、でも目はどう猛な猛獣のようにギラギラしていて、その行為を見ている。

「ッ! うひゃっ」

 ピクンって一段と大きくなったペニスが俺の口からポロんって出てしまった。先輩と目があってびっくりしたけど、今の俺は先輩の息子さんに夢中だったので、それを必死に目でおった。あっ、まだ飲みきってないのに……急いでそれをつかもうとすると目の前のソレは、自ら俺の口に入ってきたっ!

「うをっ」

 俺の口に獰猛なソレを入れると、頭を抑えられて勢いよく出し入れされた。って、ええっっ、目が、目が怖いっ! これ寝ぼけている? 俺に見せる表情じゃないよ。くっくるしいっ。

「ぶっんんんんっ! ごくんっごくっ」

 すぐに大量の精液が俺の口に入る。そして余韻さえなく、すぐに硬さを取り戻したソレを今度は準備もなく後ろにれてきた。

「うわっっ、あああっっつう、いたいっ、いたっ、いきなりっ先輩ごめんなさいっ、やめてっ」
「ふっ、うっ、うっ」

 ふうふう言っている猛獣が、俺に乗りかかってイキリだったそれを、再奥まで一気に貫いてきた。いくらオメガといえど、ほぐしてない発情期ではない後孔は痛みを感じた。

 唯一よかったのは、先ほどの口淫で自ら後ろが濡れていたことだけだった。そのおかげで痛さはあるが、多少の滑りも助けとなり、全てを受け止められた。

「あっ、いたいっ、やめてっ、うううっっ、ああ」

 上から激しく揺さぶられて酔いそうになる、先輩の匂いも一気にぶわって強くなって、やめてって言って泣いてもなにも答えてくれない。ひたすら貫き、いいところに当てるために動くでもない、キスさえしてくれない、そしてうなじを触り、俺の首を噛んでいる。

「あああ――」

 痛みなのか、快感なのかわからない、そんな感情が体に突き抜ける。後ろは痛かったにも関わらずさすがオメガだ。その中でも快感を拾い、自らいい位置に当たるように腰を下でふっていた。そこで俺の後ろの蜜もあふれんばかりにこぼれだす。

 うなじを触られ、噛まれ、後ろを貫かれる。俺の体は今、快感しかなかった。

「あっ、あっ、きもちいいっっ、先輩っ、先輩っ、んんっっ、好き」

 先輩は多分、ラットをおこしている。俺のことを認識しないまま抱いているみたいだった。だっていつもなら必ず良太っていうし、愛しているとかさんざん言いながらしてくれる。でも今は激しい吐息しか聞こえない。

 そこで先輩がイッたみたいで、俺の中にビュって白濁を入れ込んできた。俺もさっきから自分の腹の上にいっぱいだしていて水たまりになっていた。

「ああん、きもちっ、好き、先輩、好きって言ってよ――」
「はっ、はっ、はぁ、ああ? りょうた? えっ」

「んんっっっ、あんっ、」
「うわっ、あっ、きついっ、そんな締め付けないで、うねりすぎっ、なんだこれっ」

 先輩が覚醒したみたいで、いきなり俺の中に入っているのを抜こうとして、スレて俺がまた感じて締め付けた。

「先輩すきっていって」
「ああ、好きだよ良太、愛してる」
「むふふ」

 先輩はなぜか目覚めると俺の中にいて、そして二人とも達している。不思議に思いながらも俺に愛を囁いてくれるのだ。

「良太、この状況はいったい、嬉しいけどなんだろう?」

 俺の中に挿入はいったまま、話を続ける。ふふふっ、かわいいな。俺のつがい、俺のアルファ。

「びっくりしました? 先輩ばっかり僕が寝てる時するから、お返しですっ。僕が先輩を襲おうとしたら、逆に襲われちゃったけど」
「そうか、すまない。でも嬉しいお返しだね、ありがとう、最高の目覚めだ。またいつでも襲って? 愛してるよ」

 そしてやっと待っていた、キスをくれた。

 上書きは、まぁ成功でいいか? 秘密の行為だけに言えないけど、これで心置きなく全てが先輩で上書きされた! むふふっ。俺が変な笑いをしていると、先輩は意味わかってなかったみたいだけど、そんな顔も可愛いって言って、そのまま意識のある、愛のあるセックスが始まった。
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