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番外編
10、真山家の家族旅行1
しおりを挟む今日は家族で温泉行くんだぁい!
前に父さんが今年は温泉連れてってくれるって言っていたやつ。今年はなんとなんと、三泊するんだってさ! 土日と祝日、そして一日は父さんが有給ってやつをとるらしい。仕事がやっと落ち着いたから、行くぞォ――って言われて俺も母さんも楽しみで仕方なかった。
司は四日も会えないなんてと泣いていたけど……ってかさ、泣くほど? 最近の司がなんだかよくわからない。もっと俺様アルファだったと思ったんだけど、あいつ変態だし、ワンコだし、良く泣くし。俺が司をアルファってフィルターで見ていたのかな、司の本質って実はアレ? やはり番は失敗だったか!? というくらい最近はウザイ。まぁ、可愛いし好きだからいいんだけどね。でもウザイ。
そんなわけで、電車に乗って温泉街へきた。
ここ、これ、この雰囲気、昔ながらの温泉街。宿に着く前にフラフラと歩いて、温泉まんじゅうを食べたりしている。父さんも母さんも楽しそう! 今日の旅館はどんなとこかなぁ――。最近は西条印のホテルばかりに連れていかれるから、庶民的な旅館とかに飢えていた。ベッドじゃなくて布団とかいいよなぁ。
そして到着した宿は、なんだかいつもよりレベルアップしている? 超豪華な温泉宿だった。仲居さんがずらりと迎えてくれて、俺ちょっとビビった。父さんに、こんな贅沢して大丈夫? って聞いたら最近昇進してお給料が増えたからそれもかねてのお祝いだって言っていた。
そうだったのか! 父さんいつも遅くまでお仕事頑張っていたもんね、お疲れ様! 今日は父さんの背中を流してあげよう、家族のために頑張る男はかっこいいな。
宿についてから、俺と父さんは早い時間に大浴場にきた、やった! 貸し切りじゃんか!? まだ誰もいない。父さんと広い風呂を楽しんで、もちろん露天でもたくさん話をして長風呂した。
「正樹、そろそろ上がろうか」
「ん――、俺もうちょっと外の風当たりたいから、先に上がっていいよ」
父さんがさっきからしきりに風呂に備え付けの時計を見て、時間を気にしている。
「いや、でも、それ以上はのぼせて夕食が食べられなくなるぞ。夜は家族風呂の予約もしているし、そこでゆっくりしような」
「そっか。まだ夜もあるもんね!」
俺の言葉を聞いて父さんは安心したような顔をした、もしかして母さんを一人にしとくのが不安なのか? だったら俺を置いて出てってもいいのに。まあ家族で来ているから俺一人個人行動もよくないか!
そんな感じで、風呂から上がっても脱衣所には誰もいなくて、そこに置いてあった冷たい麦茶も父さんと飲み放題だったぜぃ! この宿、人気ないのかな? いくら何でも夕方だし、一人も温泉つかりに来ないって大丈夫か?
部屋に戻ると、母さんはまだ戻ってなかった、やっぱ俺の親だ。きっと大浴場を独り占めしてめっちゃいろんな風呂を楽しんでいるんだな。岩風呂、内風呂、露天風呂、すげ――広かったもんな。父さんとのんびりしていると、しばらくして母さんが戻ってきた。
「あ――、いいお湯だったわぁ!」
「おう、お帰り! 母さん、冷たいお茶いる?」
「正樹、気が利くわね、頂戴! ここの泉質すごく良かったわ、見てみて、お肌つるつる!」
「百合ちゃん、いつも綺麗だけど、さらに綺麗になっちゃったね! うわっ、お肌も素敵だよ」
「いや――ん。嬉しい!」
父さんが母さんの肌を触り、褒める。そして喜ぶ母さんは父さんに抱きつく、親のラブシーンなんて見たくないけど、これ我が家の通常運転。父さんは母さんがめちゃくちゃ好きだから、隙あればすぐに母さんに触っている。なんか、司と似てねぇか?
「はい、お茶」
「ありがと! やっぱここの宿人気ね。女湯は凄く混んでいて、ドライヤー待ちしちゃった」
「えっ、男湯なんて誰もいなかったよ、ねっ! 父さんとずっと二人きりだった」
「え……ああ、そうね、そういえば女湯も始めは誰もいなくてね、ママが出る時に一気に人が来たから、この時間に来館する人が多いのね、男湯も今行けば混んでいるわよ、ラ、ラッキーだったじゃない」
ん? それでドライヤー待ちって、みんなお風呂入る前にドライヤーってかけるものなの? 女の人はよくわからねぇや。
「そ、そうだ! 百合ちゃん聞いて! 正樹がね、俺の背中を洗ってくれたんだよ。もう感動して涙が出そうになったよ」
「あらあら、良かったわね。正樹もパパをねぎらってあげて偉いわ!」
「別に、当たり前だよ。だって、父さんが頑張って仕事してくれているから、温泉に連れてきてもらえているんだもん! いつも感謝しているよ」
ちょっと照れくさいけど、父さんには頭があがらないからな。もちろん母さんにもだけどさ。そしたら父さん泣いちゃったよ。
「う、うう、百合ちゃん、正樹が大人になってしまった」
「よしよし」
そんなこんなで豪華な食事をして、家族団らんをした。
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