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番外編
5、番になったその後4
しおりを挟む櫻井は俺の真剣な顔を見て噴き出した。そしておでこにデコピンをしてきやがった!
「な、なんだよ!」
「そんな顔は正樹には似合わないよ。俺は俺で納得しているんだから大丈夫!」
「それでも、俺は……」
「じゃあさ、最後にキスして?」
「……は?」
櫻井がにっこりとそんなことを言った。まさか王子様からそんな言葉を聞くとは思わなかったから素で驚いたわ。
「だから、俺たち本来は番契約するにあたってセックスもする予定だったじゃない?」
「セ、セっ、ええ、えええ?」
「だから、セック、」
「やめろ――公衆の面前でお前は何、放送禁止用語を言っているんだよ!?」
クスクス笑う櫻井。
「俺、未だに正樹とはキスもしてないなんて、辛い。思い出に最後くらいキスしてよ。そしたらきれいさっぱり俺の恋を終わらせられるし、次に行こうって思えるからさ」
「えっと、それで終わらせられるの? 次にいける?」
俺の唇一つで、櫻井が番を得ることをトラウマにしないでくれるなら安いものか? どうせそれ以上のことをするつもりであの日ホテルに行ったんだし、それくらいしてもいいかな? ダメ? 良くわからないけど俺は今、目の前のアルファの未来を潰すか輝かしいものにするかの選択を迫られている。
「正樹? やっぱりダメかな」
「そ、れは……」
そんな司と同じようなワンコみたいな顔されたら、俺ほだされて、いや決してほだされないが、ほだされないぞ! だけどそれくらいいいか?
「じゃ、じゃあ少しなら」
「正樹、ありがとう」
櫻井が俺の手を握ってきた、番を得た今、若干ゾワっと不快な感じがした。でもこの一瞬を過ぎれば、櫻井は俺のことをただのいい思い出にすることができるんだ! 俺さえ一瞬我慢すれば!
俺は目をぎゅっとつぶった。櫻井の気配が近づいてくるのを感じる。
「ぷっ、正樹、西条とする時もそんなに色気のない顔するの? 笑わせないでよ、はは」
「ふえ?」
うっすら目を開けたら、櫻井の顔がまじかにあり、盛大に笑われた。
「ごめんね、意地悪した。もうタイムオーバーみたい」
そう櫻井が言った瞬間、司の香りがした。
「櫻井! このクソアルファが! 正樹に何してんだよ!?」
「つかさぁ!?」
またもや司乱入で、櫻井の首元を抑えている。
「けほっ、ちょっと離せよ、冗談だってば。まだ何もしてない」
「正樹の手を握っただろう!」
「それくらい、前から握っていたよ?」
「握るな、それにもう俺の番だ!」
どういうこと? なんで司がそんなキス直前のタイミングでここに来たわけ?
「正樹、今からでも俺にしとく? その首輪、盗聴器付きだよ。そんなの付けるがちがちの縛り癖のある男で、大丈夫?」
「へ、盗聴器? なにそれ……」
「GPSに盗聴器、それから他にはどんな機能がついているんだろうね?」
「黙れ!」
なんだかまた見覚えのあるカオスな現場だよ。しかもここ昼時のカフェ。他の人もいる公共の場所ですが……。
「お前ら、とにかくここを出るぞ」
「「……」」
俺は静かに怒った。そして、司にお茶代を払わせて外に出た。
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